石油とアフガン:ロシアとアメリカによる陰謀説も(アン・アップルバウム,Slate)

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投稿者 転載 日時 2001 年 12 月 01 日 08:21:22:

石油とアフガン:ロシアとアメリカによる陰謀説も(アン・アップルバウム,Slate)
http://journal.msn.co.jp/articles/nartist2.asp?w=90486
2001 年 11月 29日

原油価格の暴落をくいとめるためOPECは減産をすすめようとしている。ところが主要石油輸出国で唯一、ロシアが協調を拒否。事態は暗礁にのりあげてしまった。自国の不利益になることがわかっていながら、なぜロシアは減産しようとしないのか。にわかに湧き上がってきたのが、サウジやOPECに対するロシアとアメリカの陰謀説だ。


原油価格が下落の一途をたどっている。昨年、1バレル30ドル台にまで跳ね上がったものが、今年は世界的景気減速も手伝って、同11ドルにまで落ち込み、いまのところ、同17〜18ドル近辺をさまよっている(リンク1、2)。
OPEC(石油輸出国機構)は減産による原油価格引き上げを図り、非加盟産油国にも協調減産を迫った。ノルウェーが同意し、メキシコ、オマーンも追随した。
だが、ロシアは承知しなかった。主要石油輸出国で唯一、大幅減産を約束していない。これまでのところ、ロシアが提示しているのは、日量5万バレルの減産。OPECが要求する50万バレル(非加盟産油国合計)の減産には遠く及ばない。
ロシアの協調がなければ、OPECも減産計画を実施しない意向なので、このままでは原油価格も低迷し続けることになるだろう。
それだけではない。協調減産しないと、ロシア自身も損失を被るのだ。原油輸出はロシア歳入の4分の1を占める。原油価格がバレルあたり1ドル下がるごとに、ロシアの歳入は10億ドルずつ減ることになるからだ。
それでは、ロシアが協調しないのは、なぜか。

●ロシアとアメリカが結託?:OPECの解体とサウジの不安定化がねらいか
この問いに対し、どろどろした展開や劇的な答えを好む向きは、なんらかの「陰謀」がからんでいるのではないかという疑いを抱きはじめている。「ロシアが石油市場でのシェア拡大を狙い、OPEC総体の破壊と特にサウジアラビアの不安定化を画策している」というのである。
もし、これが真実なら、ロシアはどんな持久戦になっても、勝てるだろう。ロシアの2002年度予算は原油価格を1バレル18.50ドルとして計算されているが、1バレル15ドル台でも、若干の借金でしのげるからだ(12ドル台でもOKとする説もある)。一方、サウジの予算は、1バレル=21ドルを下回るようだと困難に直面する。
ロシアとサウジ、そしてロシアとOPECは昔から互いに敵意をあからさまにしてきた。
ロシアの大統領経済顧問は最近、OPECは「やがて消える歴史的運命にある組織」であり、「ロシアのほうがはるかに有利な立場にある」と述べた。
一方、サウジ石油省高官は今週、ロシアが減産に協力しないことに外交的表現で怒りを表明。価格下落はきわめて深刻で、「想像を超える下がり方をするかもしれない」と警告した。
この陰謀説をもう一歩先に進めたのが「アメリカもサウジ破壊の陰謀に加担している」という考えである。
実は、過去にメリカは同じような陰謀に加担しているという説があったのだが、そのときと立場はまるで逆転している。それは、1980年代に、アメリカがサウジと組んで原油価格を引き下げることにより、ソ連を破壊しよう試み、まんまと成功したという説である。
実際のところ9月11日の米同時多発テロ事件後、アメリカでは、サウジとの緊密な関係を厳しく見直そうという動きがある。サウジはアメリカの同盟国である。大いにけっこう。だが、航空機でアメリカのビルに突っ込むような市民を抱える同盟国を、本当にアメリカは必要としているのだろうか、というわけだ。サウジを不安定化させることは危ない賭けだが、政権交替があったとしても、アメリカにとって、事態はどれほど悪化するだろうか。なんといっても、オサマ・ビンラディンはサウジ出身だし、彼の資金も出所はサウジなのだ…。
しかしサウジの徹底的破壊が最終目標ではないとしても、米ロ両国が暗黙に協力関係を結んでいる可能性は排除できない。現在のところ、原油増産がロシアにとって好都合であると同時に、景気後退に直面するアメリカにとっても、原油を安く買えるのは悪くない話だからだ。さらに長期的にみると、政治的理由から、アメリカは中東石油への依存を減らしたいと切に望んでいる。ロシアも、また政治的な理由から、各国がロシアへの依存を深めるよう仕向けるのに熱心だ。

●新しいパイプラインが完成すればOPECは用済みか?
米ロが共謀して、ロシア・旧ソ連邦諸国から西側への原油輸出を増やそうとしている、との説を唱える向きにとって、カスピ海パイプライン・コンソーシアム(CPC)の存在も見逃せないはずだ。同コンソーシアムは、ロシア・欧米・カザフスタンによる合弁パイプライン事業の初めての成功例。ちょうど今月から石油輸送を始めたばかりなのだ。
パイプラインに関してはいろいろと別の可能性も考えられる。しかし、米政府がアフガニスタンで戦闘を行っているのはアフガン縦断パイプラインを建設したいから、とする説はまったくの見当違いだ。9月11日以前に、米政府内の誰がアフガンに注目していたというのだろう。
その一方で、ロシアがこの構想を一時でも忘れたことがあるとは思えない。北部同盟を武装し、養い、弾薬を供給するというロシアの決断、そして北部同盟をアフガンの「正統な政府」として承認するという最近の一方的決定の背景には、トルクメニスタンからインド洋への新パイプライン構想があるとみてよいだろう。さらに、ロシアとカザフスタンだけでなく、トルクメニスタンの石油も手にすることができるなら、アメリカにとって、もはやOPECは用済みという考え方もできるわけである…。

●ロシアの石油王たちの思惑
さらには、次のような可能性もある。ロシア政府は原油生産者に対してほとんど影響力をもっていないため、政府が減産を望んだとしても国内の石油王たちに無視されるだけだというものだ。現に数週間前、ロシア政府のある閣僚は、原油価格の落ち込みを受け、「削減を検討する時がきた」という発言をした。しかしその直後に、同僚がこれは「政治的に受け入れられない」として全面的に否定したのである。
ロシアの石油王たちにとって、政府の意向は大した問題ではない。たとえ価格が下落しても、彼らにとっては高い生産量を維持することのほうが好都合なのだ。彼らの多くは近年、採掘と新たな生産に巨額の投資を行っており、ソ連解体後に落ち込んだ生産を増大させようとしている。また、彼らは、西側の株式市場への上場に備え、世間一般へのイメージ・アップにも努めている。おそらく、生産能力が高まれば、企業価値は増大し、株価も上昇するという計算が働いているのだ。
国民の暮らしぶりを改善させるか、それとも自分たちの懐を潤すことを優先するか――この種の選択に直面したとき、ロシアの一握りの権力者たちがこれまでに一瞬でも悩んだことがあっただろうか。
(翻訳:宗正毅、MSNジャーナル編集部)


関連リンク

http://www.bry.com/prices00.htm
リンク1
http://www.bry.com/prices.htm
リンク2
Russia, Oil, and Conspiracy Theories
By Anne Applebaum(Slate)

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