フセイン大統領:最終的には査察を受け入れてください

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投稿者 あっしら 日時 2001 年 11 月 28 日 16:39:36:

このようなメッセージがイラクのフセイン大統領の目に触れることはまずないと思いつつ...


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大統領閣下、昨日(西暦2001年11月19日)、合衆国政府が求めた「UNによる大量破壊兵器査察」を条件付きで受け入れるという閣下(報道官)の声明をCNNのニュース報道を通じて拝見しました。

私は、閣下の声明を「11年にもわたって非道に行われているUNの経済制裁の解除」と「UNがイラク領土の南部及び北部の特定地域を飛行禁止としている措置の解除」を条件に査察を受け入れるものとして理解しました。
しかし、日本の代表的なTVメディアであるNHKは、「フセイン大統領、査察を拒否」との見出しで報じ、閣下が主張された条件については何も触れていませんでした。日本で最大の発行部数を誇る読売新聞も、「イラク、米国の大量破壊兵器の査察要求を拒否」という見出しで報じ、査察受け入れの条件としてではなく、付け足しのように経済制裁と飛行禁止措置の解除を求めたことを記事にしています。


私は今回の合衆国大統領の要求に対する閣下の外交的対応を注視していましたが、合衆国大統領の外交的要求に対する閣下の最初の対応は全面的に支持できるものです。UNは、すぐに対イラク経済制裁を解除すべきであり、領土内に設定している飛行禁止措置も解除すべきです。

このようなことを前提に、閣下にお願いがあります。閣下には、ぎりぎりの最終段階で、合衆国大統領の査察要求を無条件で受け入れていただきたいのです。最終段階に至るまでは、軍事的防備を固める一方で、閣下の正義を世界に向けて発信しながら、その主張が受け入れられるよう合衆国やUNと精力的な外交努力をしていただきたいとも思っております。

私は、合衆国大統領の外交的要求が、理不尽なものであり国際正義にももとるものだと考えております。閣下が合衆国で9月11日に発生した同時多発テロ以降に閣下が出された声明(3つほど拝読しています)は道理にかなったものだと考えています。私のイラク問題やパレスチナ問題そしてアフガニスタン問題に対する立場をここ述べることは致しません。別に機会があればと思っております。


ここでは、それなのになぜ、「合衆国大統領の査察要求を無条件で受け入れていただきたい」という不遜なお願いをするのかということについてのみ述べさせていただきます。

● 合衆国のブッシュ政権は常軌を逸しています

聡明なる閣下のことですから、W.ブッシュ政権が、直前のクリントン政権とは大きく違うし、“湾岸戦争”時のブッシュ政権とも少し違う性格を持った合衆国の政権ではないかと判断していることと思います。
クリントン前大統領は、1998年12月に米国及び英国が3、4日間行った貴国に対する空爆にも積極的ではありませんでした。ブッシュ元大統領は、とてつもない大惨事をもたらした“湾岸戦争”時の最高司令官でもあるわけですが、閣下を中心とする政権を軍事的に崩壊させたり、イラクという国をズタズタにするような軍事政策は採りませんでした。

しかし、現在のブッシュ政権は、アフガニスタンに対する不当な軍事行動やアフガニスタンの次に攻撃すべき対象国をリストアップしたりする動きをご覧になられておわかりのように、歴史上見られないほどの凶暴性と破壊性を秘めています。

ブッシュ政権は、合衆国国内でも、法的手続きに基づかない拘束や武装兵士による警戒態勢そしてメディアに対する言論統制(これを通じて市民の言論統制も)を行っています。

数々の国際法に違反する今回のアフガニスタン侵攻の言い訳としている9月11日の同時多発テロについても、その実行者及び主導者について明確な証拠を公開していません。それどころか、同時多発テロの具体的な経緯も公表せず、サウジアラビア王国の内務大臣が「合衆国政府が実行犯と名指しているものたちのうち7名が事件とは無関係で今も生存している」と主張しているにも関わらず、従来の19名をそのまま実行犯としたままにしています。このことは、ブッシュ政権は、同時多発テロに対してきちんとした捜査をやる意志がないことを示しています。

ブッシュ政権が唱えている「自由」・「民主主義」・「世界平和」・「人道」は、偽善者の言葉でしかありません。


● ブッシュ政権は閣下の査察拒否を喜びます

今現在、閣下の「条件付き査察受け入れ」表明に対する合衆国政府の反応はわかりませんが、世界に対しては、「フセイン政権の査察拒否は遺憾」と怒って見せるか、「無条件で査察を受け入れよ」と強硬な態度を見せるかするでしょう。

しかし、ブッシュ政権の内部で貴国に対する攻撃を主張しているグループは、閣下の「条件付き査察受け入れ」表明にほくそ笑んでいることでしょう。
貴国に対して攻撃を仕掛けようとしているグループは、アフガニスタン攻撃と同程度の言い訳さえあればいいと考えています。


● いわゆる先進諸国家に期待はできません

合衆国で発生した9月11日の同時多発テロは、直後の2時間後あたりから、イスラム教“過激派”系テロリストの仕業で首謀者がウサマ・ビン・ラディンであるとの主張がメディアで流れ始め、それを受けてかのように、合衆国政府は1週間も経ないうちに「19名の実行犯と首謀者ウサマ・ビン・ラディン(アルカイダ)」を断定しました。

そして、ブッシュ政権は、アフガニスタンのタリバン政権に対し、ウサマ・ビン・ラディン氏及びアルカイダメンバーの無条件での身柄引き渡しを要求し、要求に応じない場合はタリバンをも対象とした軍事力の行使を発動すると威嚇しました。
タリバン政権は、身柄を引き渡すべき条約を合衆国と締結していないにも関わらず、「きちんとした証拠を示せば引き渡す」と外交的対応を行い、内政的にも、宗教指導者会議を開催し「混乱を引き起こしたウサマ・ビン・ラディン氏に国外退去を促す決定」をしました。
タリバン政権は、9月11日の大惨事とブッシュ政権の強硬な態度を前にして、正義を貫きつつ国難を避けるために、ぎりぎりの外交努力をしたと思います。

しかし、いわゆる先進国(日本やNATO諸国など)では、メディアを通じて9月11日の惨事をベースにアルカイダの危険性やタリバン政権の非道ぶりを告げる各種の映像が流され、ほんの数日前までアフガニスタンの現状をほとんど知らなかった人までが、アルカイダを殲滅すること、タリバン政権を崩壊させる軍事行動を当然視してしまうような気持ちになってしまいました。

その結果、先進国がブッシュ政権の軍事行動を支持するとともにその軍事行動に加わり、アフガニスタンを攻撃するという事態をもたらしました。

先進諸国のこのような意識状況では、閣下の正義と道理は先進国に通じません。失礼な物言いですが、閣下は、“湾岸戦争”以来、“悪い奴”として先進諸国の人々の意識に刷り込まれています。今の先進国のある割合の人々は、メディアのでたらめさのために、物事を正確にかつ理性的に見ていくことができなくなっています。そして、その割合は決して少なくはないのです。

“湾岸戦争”時に、合衆国がクェート駐米大使の娘を使ってでっち上げた「保育器の新生児をイラク兵が投げ捨てた」という話でさえ、今なお信じている人がいます。もちろん、合衆国のメディアが貴国が行ったと主張した石油施設爆破によるオイル流出であえぐ水鳥の映像も同じです。

ですから、合衆国のブッシュ政権が「イラクは(無条件での)査察受け入れを拒否したので攻撃する」と公言し実行に移そうとしても、それを押しとどめることを先進国には期待できません。これは、アフガニスタンを見てもわかるように、UNにしても同じことです。


● 戦前の大日本帝国も対米英戦争に引き込まれました

私の国である日本も、今から60年前、米国・英国・オランダに対し宣戦を布告し、都市大空襲や2発の市街地に対する原爆投下も受け、200万人以上の死亡者を出しながら、最終的に無条件降伏を受け入れ、6年近く占領状態に置かれました。

簡潔に言えば、日本は、英国・フランス・オランダを中心としたヨーロッパ諸国の植民地主義的外交政策を遅れて採用し、そのあげく、自国が外国軍部隊に軍事占領されてしまうという事態を招いたわけです。もちろん、そのような日本の政策が、アジアを中心とした諸国民に甚大な災厄をもたらしたことを忘れてはいません。

私の理解という断り付きですが、日本が米国・英国・オランダに対し宣戦布告するに至った背景として、英国や合衆国に、ヨーロッパにおける戦争との関係で合衆国を第二次世界大戦に参戦させたいという思惑があったことを指摘できると考えています。

今回の同時多発テロでも、合衆国のメディアは「第二のパールハーバー」という言葉を多用しました。“パールハーバー”は、ご存じのように、軍事力・経済力で劣る日本が、対米・英・蘭に宣戦布告すると同時に、米国太平洋艦隊に先制攻撃を仕掛けるという作戦目的で行われたものです。
この計画は、日本の外務省(合衆国駐在外交官)の無能によって、“だまし討ち”の汚名を着させられる悲劇につながりました。
宣戦布告がきちんと手交されていても、合衆国は対日戦を遂行したでしょうが、国民一丸となった交渉無用の戦争にはならなかった可能性も少しはあったと思います。

“パールハーバー”がなかったらという役にも立たない仮定に立たせてもらうと、それでも、合衆国は、日本が対米戦争に踏み出すよう様々な挑発を行い続けただろうと思います。

当時の日本は、満州事変から中国での戦線拡大そしてフランス領インドシナへの軍事進駐という事態の推移に伴い、米英を中心とした諸国家から経済制裁を受け、自国が存亡の危機にあるという認識を持っていました。
その一方で、政府も軍部もそして国民も、合衆国と戦争して勝利できるという確信は持てないどころか、勝利は無理だろうと考えていました。
様々な外交努力もしましたが、最終的には、現状を打破するためには対米戦もやむなしという“雰囲気”が大勢を占めた結果、国民に未曾有の災厄をもたらすことになる対米戦争に踏み出したのです。
私の国である日本は、もっとも大事な局面で理性的な判断を放棄してしまったのです。
兵士が血を流し命までも落としながら得た権益であっても、より酷い悲劇的な結果をもたらすことになる可能性が高い対米戦争は絶対に避けるという覚悟ができなかったのです。譲る権益は、外交交渉でぎりぎりまで少なくする努力を行えばいいのです。敗戦を迎えた日本は、獲得していた海外権益は、合衆国が戦争前に要求した範囲どころかそのすべてを放棄することになりました。そして、条約に基づくもの、国際的に認められていたものも同時に失いました。

“英霊”に申し訳ないという思いが、数百倍の“英霊”を生み出すことになり、権益を守るという思いがより多くの権益を失わさせることになったのです。

敗戦した日本は、貴国と違い石油資源もほんの微量しかありません。かつては“黄金の国”とも言われましたが、明治維新政府の愚かな経済政策(誤った金と銀の交換比率設定)のためにごっそりと欧米に人たちに持って行かれました。資源が主要因ではありませんが、敗戦後に占領された日本は、様々な制限も課されましたが、貴国のような経済制裁を受けることなく、逆に様々な援助を受けながら復興の道を歩むことができました。

貴国には、近代世界の産業・軍事・市民生活にとって基礎とも言われる石油資源が豊富にあります。その石油資源を奪うという国(企業)はなくても、都合のいいようにコントロールしたいという国(企業)はあります。更に言えば、貴国の周辺には、石油資源を厖大に埋蔵している国家が数多くあります。
それらのコントロールを狙った策動があっても何ら不思議ではありません。

現在進行している世界史的悲劇を少しでも早い段階で止めなければなりません。このまま進めば、圧倒的な軍事力を誇示する諸国家が軍事的に弱い諸国家を次々と攻撃し破壊しまくるという“戦争常態世界”になります。

これは、憎悪と対立そして怨念が吹き荒れるといった精神状況を世界規模で生み出します。その修復にどれほどの年月を要するのか想像さえできません。

責任を棚上げして恐縮ですが、戦争を仕掛ける国家の国民も、そのような政府に反対すると様々な抑圧を受けるという状況になります。

アフガニスタンで止められなかった悲劇を今度で何とか止めるというためには、貴国に対する攻撃を止めなければなりません。

イラク国民の生命と生活に対する最大の守護者である大統領閣下、正常な価値観を失い傲慢と偽善さらには暴虐性までむき出しにしている諸国家とりわけ合衆国のブッシュ政権に対して、正義や理は通用しません。
次に行われるかも知れない貴国への攻撃は、“湾岸戦争”以上の規模とも予想でき、“湾岸戦争”以上の甚大な災厄を貴国及び貴国国民にもたらします。

閣下が最終的に無条件での査察受け入れを表明されれば、合衆国政府が攻撃を仕掛けないという保障はありませんが、世界の諸国家の対応は必ず変わります。ブッシュ大統領も、貴国を壊滅させるような攻撃はできなくなります。


賢明なる大統領閣下が、最大限の英知で貴国への攻撃を防止されるものと信じております。



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