アフガニスタン戦争と国際法

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投稿者 ザワヒリ博士 日時 2001 年 11 月 29 日 02:08:11:


転載です。

アフガニスタン戦争と国際法

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北沢洋子(国際問題評論家)

 米国のアフガニスタン戦争は国際法違反の不当行為である。米国自らが作成し、批准している国連憲章は、国際紛争を平和的に解決する義務を明記してある。
 10月7日以来、米国はアフガニスタンに対して、空爆と特殊部隊による攻撃を続けている。ブッシュ大統領のアフガニスタン戦争は、国際法に違反している不法行為である。

1.9月11日事件は「犯罪」行為
 ブッシュ大統領は、これを「戦争」だと宣言したが、これは単なるレトリックにすぎない。9月11日事件は無差別テロである。したがって、これは「戦争」ではなく「犯罪」である。多数の民間人を殺戮したという点で、「人道に反する罪」である。

2.報復戦争は国際法違反
 さらに、ブッシュ大統領は、9月11日事件の主犯としてオサマ・ビンラディンの名を挙げ、彼を匿っているアフガニスタンのタリバン政権に対して、「引き渡すか、さもなければ報復攻撃をする」と宣言した。
 これは、すべて国際法に違反している。
 米国は、1945年、国連を創設した連合国のリーダーであった。第2次世界大戦では、戦闘員よりもはるかに多くの民間人が犠牲になったことを反省して、「国際間の紛争を平和的手段で解決する」ために国連が創設された。それは、国連憲章の第2条に加盟国の義務として明記されている。米国はこの憲章を起草し、成立に指導的役割をはたした。
 しかし、朝鮮戦争、ベトナム戦争など「共産主義の脅威から民主主義を守る」ためという口実でこの国際法を破り続けて来た。冷戦後は、湾岸戦争を皮切りに、リビア、イラク、スーダン、ユーゴなどに対して不法な軍事攻撃を繰り返してきた。このように米国は、一貫して国際法に違反してきた。
 9月11日の無差別テロに対しても、米国は国連憲章第2条の原則を守る義務がある。さらに、いかなる国際法でも、報復のための戦争を認めていない。

3.自衛権は限定的
 ブッシュ大統領は、アフガニスタン戦争を「自衛権の発動」であると宣言した。確かに、国連憲章第51条には、「個別的又は集団的自衛の固有の権利」が認められている。しかし、この自衛権は限定的なものである。51条のはじめに、自衛権の発動を認められるのは、「安保理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」と、明確に書かれている。
 さらに、10月4日、NATOは創設以来はじめて第5条を発動させ、米国のアフガニスタン戦争への参戦を決定した。しかし、NATO条約も、国連憲章の枠の中にある。したがって、NATOの集団的自衛権も、安保理事会が平和的解決をはかるまでの期間に限定される。

4.軍事力で政権転覆は不法
 いかなる国際法も、軍事力をもって、他国の政権を転覆することは許されない。しかし、冷戦時代、共産主義の脅威を理由に、米国はCIAを使って、第三世界の政権を転覆してきた。1953年、イランのモザデグ政権、1960年、コンゴのルムンバ政権、1973年、チリのアジェンダ左翼政権などの転覆など、数え切れない。
 アフガニスタン戦争は、オサマ・ビンラディンとアルカイダを匿っているとして、タリバン政権の打倒を目的としている。これは、国際法上、重大な不法行為である。

5.民間人攻撃はジュネーブ条約違反
 1949年のジュネーブ条約の第1議定書は、無差別攻撃を禁止している。この無差別攻撃の対象には民間人ばかりでなく、軍事目標も含まれる。民間人を報復の対象にすること、食糧、収穫物、家畜、飲み水、灌漑施設など民間人の生存に不可欠な目標を破壊することは、厳密に、絶対的に禁止している。

 米国はこの議定書を批准している。したがって、アフガニスタン戦争で起こっていることはすべてジュネーブ条約に違反している。

6.11のテロ防止・禁止条約
 今日にいたるまで国際社会は、テロの規定をめぐって合意してはいない。にもかかわらず、これまで11のテロ防止・禁止の国際条約が制定されており、その内、10の条約がすでに発効している。
 9月11日事件は、2001年5月に発効した「テロリストの爆撃抑止条約」が該当する。米国はこの条約に署名したが、まだ批准をしていない。一方、米国のアフガニスタン爆撃は、この条約に違反している。したがって、米国はテロ国家ということになる。
 2000年に制定されたテロ資金抑止条約は、まだ発効にいたっていない。米国も批准していない。しかし、ブッシュ大統領は、一方的に世界に対して、オサマ・ビンラビンとアルカイダ組織の資金の凍結を要求している。
 9月11日の無差別テロ事件は「国際的犯罪」である。したがって、このような国際的な条約によって裁かれなければならない。

7.国際刑事裁判所の創設
 9月11日事件が「国際的犯罪」であるとしたら、その容疑者を裁くのは、中立の国際司法機関でなければならない。なかでも国際刑事裁判所で裁くべきだという意見が多い。しかし、これは不可能である。なぜなら、国際刑事裁判所はまだ創設されていない。しかも、国際刑事裁判所の法律(ローマ法令)の第11条によれば、同法令成立以前の犯罪を裁くことが出来ない。一方では、別の見解もある。1968年、国連は「戦争犯罪と人道に対する罪については、法の制限不該当条約」(総会決議第2391号)を制定した。
この条約によると、9月11日事件の容疑者は「人道に対する罪」で告発され、将来国際刑事裁判所が創設された場合でも、裁かれる。
 「ローマ法令」は、1998年に制定された。しかし、採決では、米国と中国を含む7ヶ国が反対した。ローマ法令の発効には、60カ国の批准が必要である。現在までに43カ国が批准している。同法令発効の時点で国際刑事裁判所が創設される。米国は、ローマ法令の起草に積極的に関与したにもかかわらず、現在では、先進国のなかで唯一反対している。さらに米議会は、「ローマ法令を批准した国に対する軍事援助と米国の国連PKO参加を禁止する法」を採択している。
 国際刑事裁判所の創設以前でも、暫定国際法廷を設けて、容疑者を裁くことができる。第2次世界大戦後、戦犯を裁いたニュールンベルグ法廷、東京法廷もローマ法令のようなものはなく、いわば暫定的に設置されたものであった。ユーゴとルアンダについての国連のハーグ法廷も暫定的国際戦犯法廷である。9月11日事件についても、同じような暫定国際テロ犯罪法廷を設けて、容疑者を裁くべきである。

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