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石油を巡る米国の夢:カブールに欧米派政権が樹立すれば、米国はカスピ海の石油を輸送するアフガンルートを確保できる『ガーディアン』紙

投稿者 dembo 日時 2001 年 12 月 28 日 21:20:41:

石油を巡る米国の夢: カブールに欧米派政権が樹立すれば、米国はカスピ海の石油を輸送するアフガンルートを確保できる
『ガーディアン』紙 2001年10月23日
ジョージ・モンビオット

 第一次世界大戦終結から1年後、ウッドロー・ウィルソンは米国民にこう尋ねた。「男性、女性、たとえ子供であっても、現代における戦争の火種は、産業または商業上の競争であるということがわからない者がいるだろうか」。1919年、ヨーロッパがその残骸をかき集めているのを目にした米国民の答えは、「もちろんいない」であったろう。しかし戦争の教訓は、決して人の心に長くとどまることはない。

 アフガニスタン侵略はもちろんテロリズムに対する軍事行動だが、それは最近の植民地的冒険なのかもしれない。イギリスの大臣は議員に対して、戦争に反対することは倫理的にヒトラーを認めることに等しいと警告したが、いくつかの点において、我々が選択した倫理は1938年よりも1956年(エジプトのナセル大統領のスエズ運河国有化宣言を機にスエズ動乱が起こり派兵したが、国際世論に押され撤兵)に近い。中東におけるエジプトのように、中央アジアの地域支配と石油輸送のために、アフガニスタンは不可欠なのである。

 アフガニスタンにも石油と天然ガスがあるが、戦略的にかなり重要というほどの量ではない。反対に、その北部の近隣諸国では、将来的な地球の石油供給に必要不可欠な量の石油が埋蔵されている。現在米国の副大統領であるディック・チェイニーが、大手石油サービス会社のCEOであった1998年当時、こう述べた。「カスピ海ほど、突然戦略的に重要な場所として出現した地域はこれまでなかった」。しかしその地の石油と天然ガスも、動かさない限り価値はない。政治的および経済的な道理にかなった唯一の輸送ルートが、アフガニスタン経由なのである。

 カスピ海に埋蔵された化石燃料を、ロシアまたはアゼルバイジャン経由で輸送することは、中央アジアの国々に対するロシアの政治的、経済的支配を大幅に強めることになる。これこそ欧米が10年かけて阻止しようとしてきたことだ。イランにパイプラインを建設することは、米国が孤立を望むイラン政権を富ませることになる。中国経由で遠回りして輸送することは、戦略的観点はさておき、とてつもなく費用がかかる。しかしアフガニスタンにパイプラインを建設すれば、米国は、「エネルギー供給源の多様化」という目的と、世界のもっとも儲かる市場への参入が可能になる。ヨーロッパ市場の石油消費の伸びは低く、競争は熾烈である。一方南アジアでは需要が大きく増え、競争はほとんどない。言い換えると、石油を南に輸送し、パキスタンとインドで販売することは西に輸送してヨーロッパに売るよりも、はるかに儲かることになる。

 アフメト・ラシードが書いたように、米国の石油会社ウノカルは、トルクメニスタンの石油と天然ガスをアラビア海にあるパキスタンの港に輸送するために、アフガニスタンにパイプラインを建設する交渉を1995年に始めている。同社の計画を達成するためには、輸送の安全を保証する政権をアフガニスタンに樹立させることが必要だった。1996年にタリバンがカブールを制圧した直後、イギリスの新聞、『テレグラフ』は次のような報道をした。「石油業界の内部情報筋によると、アフガニスタンを経由して安定したパイプラインを作るという夢があったために、米国の政治的に親しい同盟国パキスタンはタリバンを支援してきたのであり、また米国はタリバンのアフガニスタン征服を黙認したのである」。ウノカルはヒューストンにタリバンの指導者たちを招聘してすばらしいもてなしをした。同社は、タリバンが征服した土地経由で天然ガスを輸送するにあたり、千立方フィート当たり15セント支払うことをタリバンに提案した。

 タリバン支配の1年目、米国のタリバン政権に対する政策は基本的にはユノカルの利益に基づいて決定されていたと思われる。1997年、米国の外交官はラシードに、「タリバンはおそらくサウジのような発展を遂げるであろう。Armco(サウジアラビアにあった米国の石油コンソーシアム)のパイプライン、議会なしの王国、多くのイスラム法といったものが作られるだろう。我々はそれでも我慢する」。米国の政策が変わったのは、ウノカルの計画と政府がカブールを密かに支援していることに対して、フェミニストや環境団体が抗議を始めてからであった。

 しかし、戦争反対者の間で回覧されている議会の公聴会の記録によれば、ウノカルはその後もこの警告を聞かなかったようだ。1998年2月、ウノカルの国際関係部長のジョン・マレスカは、アジアにおけるエネルギー需要の増加とイランへの制裁を考えると、カスピ海の石油の「唯一の可能性のあるルート」として残っているのはアフガニスタンだけである」と議会で発言している。ウノカルは依然として、アフガン政府が外国の外交団と銀行に承認されれば、1日に百万バレルの石油を輸送する1千マイルのパイプラインを建設することを望んでいた。東アフリカで米国大使館が爆破されてから4ヵ月たった1998年12月、ウノカルはようやくこの計画を撤回した。

 しかしアフガニスタンの戦略的重要性は変わっていない。この9月、ニューヨークに同時多発テロが起きる数日前、米国のエネルギー情報局は、「エネルギーという観点からアフガニスタンが重要なのは、中央アジアからアラビア海への石油と天然ガスの潜在的な輸送ルートとして地理的に位置づけられるためである。この潜在性には、石油と天然ガスを輸出するためのパイプラインをアフガニスタンに建設する可能性も含まれる」。米国政府が元石油業界の経営者に支配されていることを考えると、こうした計画がもはや彼らの戦略的思考から抜けているとは考えられない。研究者キース・フィッシャーが指摘するように、アフガニスタンの戦争がもたらす、考えられる経済的成果は、バルカン戦争がもたらした成果と同じである。バルカンではコリドール8と呼ばれるカスピ海からヨーロッパへ石油とガスを輸送するパイプライン周りに、建設された経済圏が作られようとしており、これが同盟国の重大な関心事になっている。

 米国の外交政策は「全面的支配」という原則が適用されている。これは、世界の軍事、経済、政治的展開を米国が支配するべきだという意味である。これに対して中国は、中央アジアにおけるその利権拡大を求めている。昨年、北京で発表された防衛白書には「中国の基本的利権は新しい地域の安全保障秩序の確立と維持にある」とあった。6月に中国とロシアは4つの中央アジアの共和国を「上海協力機構」に引きずり込んだ。江沢民国家主席によると、この目的は「世界の多極化を促進」することであり、これは、米国の全面的支配に対抗することを意味している。

 もし米国がタリバンを倒し、安定した心地よい欧米派の政府に置き換えることに成功すれば、そしてもし米国がその後で、中央アジアの経済を米国の同盟であるパキスタンのそれと結び付ければ、テロリズムだけでなく、ロシアと中国の高まる野望をも砕くことになるだろう。アフガニスタンは相変わらずアジアにおける西欧支配の鍵なのである。

 我々はこれまでにもアフガニスタン侵略で、テロリズムが阻止されるか、それとも奨励されるのか、または、その飢餓の状態がタリバンを倒す試みによって改善されるか、悪化するかを論じてきた。しかしこの議論はどれも、この戦争の全体的な視野と目的を述べてはいない。ジョン・フリンが1944年に書いたように、「敵の侵略者はつねに、窃盗、殺人、略奪、野蛮行為を行う。我々はつねに我々の犠牲者を再生させるために神から与えられた運命だとして高い使命感を持って突き進むが、一方で市場を横取りし、野蛮で老いぼれた偏狭な人々を文明化させるためだといいながら、またその一方で彼らの油井をひょっこり見つけるのだ」。たとえどんなにそれが間違ったことであったとしても、米国政府は本気で軍事力によってアフガニスタンのテロリズムを踏み倒そうとしているのであろうと、私は信じている。しかし、それが唯一の目的だと信じることは、あまりにも愚直だといえよう。

http://www.billtotten.com/japanese/ow1/00501.html





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