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【島崎 光晴】家計・企業の巨額債務で29年上回る米経済恐慌に(2003・1・1)
http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/872.html
投稿者 愚民党 日時 2003 年 5 月 03 日 01:09:35:

(回答先: 【JMM4/28】ダウ・日経平均下落と日本経済の行方 投稿者 愚民党 日時 2003 年 5 月 03 日 00:44:27)

前進2003年1月1日年頭経済論文抜粋 

島崎 光晴

U 家計・企業の巨額債務で29年上回る米経済恐慌に

 (1) 住宅ローン=借金を増やし消費にあてる最末期の状況

 米経済が03年に本格的な恐慌に突入するのは、もはや確実となった。
 米経済は90年代後半、資本主義史上最大のバブルに陥った。株式投機による株高、企業・家計の巨額債務を伴った投資・消費の増加、さらにはIT部門の投機的な急拡大など、どれをとっても日本のバブルの比ではない。しかし00年4月の株価暴落をもってついにバブルが崩壊しはじめ、01年春から実体経済も下降に転じた。そこに9・11による打撃が加わった。これに対しブッシュ政権は、さまざまな恐慌対策を発動した。1961年以来41年ぶりの低金利、自動車販売でのゼロ金利ローン、大減税、9・11後の政府緊急支出・軍需支出などだ。たしかに、これらによって恐慌の本格化はいったん食い止められてきた。
 しかし、01年末から02年春にかけて米企業の粉飾会計が噴出した。エネルギー大手のエンロン、通信大手のワールドコムなどの巨大企業が利益を水増しし、損失や債務を子会社に飛ばしていた。しかも、銀行・証券会社・会計事務所などウォール街総ぐるみの粉飾会計だった。02年夏から秋にかけて、米企業と米金融市場に対する信用は、国内外で一挙に失われた。
 
この粉飾会計の続出を機に株価は02年夏から秋にかけて急落し、10月にはバブル崩壊後の最安値を更新した。S&P500種株価指数は、00年3月の最高値から49%も暴落した。上場企業の株式時価総額はピーク時から約8・5兆j(1000兆円強)が吹っ飛んだ。米GDPの8割分が消失したのだ。この株価急落を受けて夏から秋にかけて鉱工業生産が低下し、再び実体経済が落ちはじめた。
 
今や、恐慌の本格化をかろうじて防いでいるのは、家計部門の借金による消費だ。家計の借金は住宅絡みが多い。住宅価格が値上がりすると、担保価値も高まり、それに合わせて住宅ローンを借り換えることができる。住宅ローン=借金を増やして、その一部を消費に充てるやり方だ。住宅価格の上昇で家計が得た値上がり益は、97年以降の5年間で計3・2兆j(約400兆円)。日本の年間GDPの8割に相当する。株下落による逆資産効果にもかかわらず消費が激減していないのは、住宅の資産効果が大きかったからだ。

 しかし、この最後のよりどころだった住宅バブルも限界に達しつつある。住宅価格の伸び率は02年になって鈍化した。住宅価格が下落に転じれば、借金による消費は激減するとともに、何百万人もが家を差し押さえられる。すでに、家や自動車を持っているにもかかわらず、失業などで公共の無料食糧サービスを受けざるをえない「新貧困層」が激増しつつある。州によっては住民の2割がこのサービスを利用しているほどだ。

 もはや、米バブルの一方の核である家計の債務問題が噴出するのは必至となった。米家計の債務残高は年間可処分所得の22年分にも及んでいる。所得500万円の家庭に1・1億円の借金がある計算だ。すでに02会計年度の個人破産は過去最高の150万件に達したが、まだほんの始まりにすぎない。

 粉飾会計の発覚で倒産続出 信用収縮とデフレも始まる
 
他方、米バブルのもう一つの核である企業の過剰債務と過剰資本は、すでに深刻な恐慌状態を招きつつある。

 90年代のバブルは、米企業の膨大な債務を伴っていた。金融関連を除いた米企業の債務残高は約4・9兆j=600兆円弱(01年9月末)に上り、過去最高を更新しつづけている。日本の年間GDP500兆円を上回る借金だ。最も債務を増やしたのはIT関連企業で、通信業界の債務は1兆jを超えた。その借金で光ファイバー網などに投資したが、今でもその利用率は2・6%にとどまる。29年大恐慌の際、米国の鉄鋼業の稼働率は最低でも19%だった。前例のない過剰設備=過剰資本となっている。
 
借金は過大な投資に充てられただけではなく、自社株買いに向けられた。自分の会社の株式を自ら買って、株価を押し上げる手法がごく日常化してきた。98年には自社株買いは2000億j(約24兆円)にも上った。自社株買いで株高が偽装されていたわけだ。しかもその元手は借金だった。

 さらに、この間明らかになってきたのは、粉飾会計が株高を助長してきたということだ。米企業はこの間、ストックオプション(自社株購入権)を報酬・賃金として支払ってきた。現金で支払うのに比べ決算上、利益を大きく見せることができる。99年〜00年の米企業の利益は大幅増とされてきたが、このストックオプションを企業の費用として計算すると利益減少となる。粉飾会計は一企業にとどまらず、米主要企業の利益統計全体を一変させるほどに大規模だった。

 要するに、借金で自社株買いをして株価を押し上げ、さらに粉飾会計による架空の利益を元に株価をもっとつり上げ、その株高をエサに国外から資金を集めてまた株価を上げ、その株高でストックオプションを行使する、という構図だった。バブル下の株高は、企業の債務と粉飾会計によって、つまり〈借金と詐欺>で成り立っていたのだ。

 今やこの構図が完全に崩れた。株が大暴落し、粉飾会計が明るみに出てしまえば、残るのはただただ膨大な企業債務だ。29年大恐慌を上回る企業倒産・資本整理に発展せざるをえない。すでに、倒産規模の歴代10位のうち、02年に破綻した企業が6社に上る。米長距離通信会社の上位20社のうち9社の経営が行き詰まってしまった。9・11による打撃で、世界第2位のユナイテッド航空を傘下に持つUALも破綻した。

 過剰債務にあえぐ米企業は02年春以降、債務を削減しはじめた。いわゆる「バランスシート」調整だ。バブルのツケに耐えかねて企業が債務圧縮を最優先すると、投資と生産は急縮小し、それが景気をさらに悪化させ、企業の債務負担は一層重くなる。こういう悪循環に入りつつある。米企業の過剰資本と過剰債務の大きさからして、29年大恐慌を上回る投資・生産の縮小となるだろう。


 簿外貸付が最も悪化不良債権100兆円にも

 このような企業の倒産の増加で、銀行の不良債権も増加の一途をたどっている。米銀の場合、さまざまな金融技術を使って債権を多数の特別目的会社に飛ばしている。銀行自体の帳簿には付いていない「簿外」の不良債権が多い。エンロンなどが特別目的会社を使って粉飾会計をやっていたように、銀行の不良債権の最大実体はここにある。「危機的状況にある簿外貸し付け」はシティグループ1700億j(20兆円強)、バンク・オブ・アメリカ1600億j(19兆円強)、JPモルガン・チェース1400億j(17兆円弱)にも上る(01年末)。この3行合計だけで、50兆円を超す。この「危機的状況の簿外貸し付け」は各行の全貸し付けの3分の1とか4分の1に及んでいる。これは、額としても貸し付けに占める割合としても、不良債権にあえぐ日本の銀行に匹敵する。

 さらに米銀は、債権を証券化して転売している。証券化された債権の残高は1兆j(120兆円)にも及ぶ(01年末)。保険会社、年金資金、投資信託、ヘッジファンドなどさまざまな会社がそれを保有している。すでにここで、最も高い比率で債権が不良化しはじめた。°これらすべての米金融機関の潜在的な不良債権は円換算で100兆円″という試算もある。

 不良債権増加に恐怖する米銀は、すでに貸し渋りを始めている。米銀の商工業向け貸し出しは前年比7・7%減(02年7月)、これは日本が金融恐慌に入った97年の4〜5%減より深刻だ。一方で米銀は、より安全な米国債を買っている。こうなると、いくら金融を緩和しても企業や株式市場に資金は向かわない。完全な信用収縮だ。銀行の貸し渋りと国債保有、金融緩和効果の喪失――これは日本の現状とまったく同じだ。ほとんど金融恐慌に近い状況に陥りつつあるのだ。

 こうした信用収縮をも機にして、米経済はついにデフレ=物価下落に転じつつある。日本の百円ショップにあたる「99セントショップ」がにぎわい、「上昇しているのは医療費と住宅費だけ」という状況だ。直接の要因は、需要不振による価格の下落、消費者の安値志向、安い輸入品の増加と米企業の対抗的な値下げなどにある。日本のデフレは、モノの価格下落→サービス価格の下落→消費者物価の下落という3段階をたどった。米国ではすでに第2段階に達している。FRB(連邦準備制度理事会)はデフレ阻止に躍起になっている。しかしいったんデフレに入れば、デフレ・スパイラルで恐慌の急坂を転げ落ちるしかなくなる。


 (3) ドル暴落の諸条件が充まん ますます戦争と軍需生産に

 米経済恐慌の本格化は、ドル暴落の危機を一段と高めつつある。ドル暴落は世界金融恐慌を引き起こし、世界大恐慌を全面爆発させるものとなる。

 ドル相場でみると、02年初めからドル安となっている。ユーロとの関係でも1ユーロ=1jと、ほぼ2年ぶりのドル安ユーロ高となった。明白にドルの信認が低下している。米株価が暴落している上、粉飾会計が露呈したためだ。ドル資産に投資することが敬遠されつつある。もともと米バブルと米への資金流入とは一体だった。バブルによる株高が国外資金を流入させ、それがドル高を促進し、そして資金流入がバブルを膨張させてきた。だからバブルが崩れれば、資金流入も細まってドル安とならざるをえない。しかも、経常収支赤字(貿易赤字など)が年間4000億jを超え、財政赤字も再膨張している。従来は、経常赤字を資金流入で補てんしてきた。しかし02年4−6月期には、資金流入額は経常赤字を大幅に下回った。米欧間では資金流出に転じた。

 米帝は95年以来、「強いドル」政策を取りつづけてきたが、それがついに限界に達しつつある。「強いドル」政策の結果、ドルはあまりにも過大評価となった。ドルの主要22通貨に対する実効相場でみると、1j=80円を突破した95年春時点より3割も高くなっている。ドル高は、米製造業の国際競争力を低下させてきた。米製造業界は02年に公然とドル是正を求めはじめた。米経済は80年代にもドル高に耐えられなくなったことがある。その時は、85年の「プラザ合意」でドル高是正の国際協調が図られた。しかし現在は国際協調によるドル安誘導の余地はなくなっている。

 国際金融面でもドル暴落の力が強まっている。米への資金流入を担ってきたのは、米欧日の金融機関だ。しかし、日本だけでなく米欧の金融機関がITバブル崩壊で資産内容を劣化させ、取り引き上のリスクがとれなくなっている。世界中で金融機関が危なくなるというのは初めてのことだ。しかも、米に大規模に流入していたサウジアラビアなどの湾岸マネーが、流出に転じている。さらに、日本の金融機関は大量の米国債を保有しているが、経営悪化や国有化を機に米国債を投売りする可能性もある。これらを導火線にしたドル暴落−世界金融恐慌が、いよいよ現実味を持ちつつあるのだ。

 戦費膨張で財政赤字の拡大は限界超える

 恐慌の本格化とドル暴落の危機という情勢の中で、米帝はいよいよ他の帝国主義をたたきつぶしてでも生き残るしかなくなっている。イラク侵略戦争をもって、そうした世界の暴力的再編に実際に突っこみつつある。そして、イラク侵略戦争は米経済危機を加速させると同時に、米帝をますます戦争と軍需依存へと駆り立てずにはおかない。

 イラク侵略戦争は、@何よりも個人消費と企業投資をますます減退させるだろう。かつての「湾岸戦争」がそうだった。その意味で、戦争の開始が恐慌本格化の引き金となる可能性が大きい。

 Aかりに原油価格が高騰すれば、消費と投資はますます弱まる。

 B戦争の長期化は連邦財政を一層悪化させる。すでに02会計年度(01年10月〜02年9月)の財政赤字は1500億j強と、5年ぶりの赤字に転じた。減税に加え、景気悪化で税収が落ち込む一方で、国防支出などの支出が急増したためだ。°戦争が長期化すると最高2000億j(24兆円)の戦費を必要とする″との予測がある。財政力を弱めている中での戦争突入は、財政を崩壊させかねない。

 C戦争は米軍需産業をますます膨張させる。すでにこの間、イラク開戦に向けてロッキード・マーチン、ボーイング、ノースロップ・グラマンなどが兵器を増産してきた。ただし国防支出によっても、米経済全体を押し上げることはできていない。しかし、一方での恐慌の深化と他方での戦争の長期化は、軍需産業の野放図な拡大、戦争のエスカレーションへの衝動を必ず高まらせることになる。

 さらに、恐慌の本格化と戦争の長期化は、米労働者人民に対する一層の搾取と抑圧となって襲いかかるだろう。すでに11月の失業率は6%と、00年の1・5倍に上昇している。レーガン政権以来の不安定雇用化は今も加速しており、製造業だけで200万人の臨時雇用がいる。このような猛烈な資本攻勢に対し米労働者階級は不屈に闘い、今やムスリム人民との連帯をかけて立ち上がっている。

 V 不良債権の処理の加速策は恐慌激化と大失業を招く

 恐慌対策を何度発動しても過剰資本のために効果なし

 日本経済は97年秋の大手金融機関の破綻を機に恐慌に突入した。対米輸出の増加と恐慌対策の発動によって、99年初めから00年秋に若干の浮揚をみせた。しかし、米バブル崩壊に直撃されて01年には戦後最も深刻な恐慌に陥った。01年度の鉱工業生産は前年度比10%も低下した。下げ幅は1954年以来、つまり第2次大戦直後を除く最大の落ちこみとなった。01年度の生産指数は87年度以来の低さに逆戻りしてしまった。

 02年になって再び生産は若干上昇した。だが、これも輸出に依存したものでしかなかった。輸出は01年12月を底にして5カ月間で24%も増えた。99年初め〜00年秋の浮揚期を上回るペースだ。国内生産に占める輸出の割合は02年前半に、自動車が44・6%、工作機械が49・1%、粗鋼が36・3%にも及んだ。しかし、米経済が本格的な恐慌に向かいはじめたため、春から夏にかけて輸出も減少に転じた。97年の恐慌突入以降、一貫して日本経済の下支えとなってきた輸出が、ついに頭打ちになりつつある。

 90年にバブルが崩壊して、すでに13年になる。自民党・政府は、この間、累計140兆円もの景気対策を発動し、銀行救済のために23兆円弱の公的資金を投入してきた。さらに99年からのゼロ金利政策、01年からの金融の量的緩和によって、金融を超緩和してきた。前例のない財政・金融政策を使い、帝国主義史上で最大規模の恐慌対策を実施してきた。しかし、恐慌の進展を食い止めることはできなかった。むしろ、地価と株価の下落で資産価値が暴落しつづけ、デフレは深まるばかりだ。そして今、米恐慌の本格化に伴って、日本の恐慌は全面的に爆発しようとしている。

 このすべての根っこには、設備の過剰状態、つまり過剰資本状態がある。01年の製造業稼働率は65%を下回り、68年以来の最低を記録した。実に35%もの不稼働設備を抱えている。スーパーも大型店面積が90年から67%も増えており(01年末)、店舗の過剰にあえいでいる。

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