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[池田信夫氏の反書評]日銀バッシングの貧困:リチャード・ヴェルナー『円の支配者』草思社
http://www.asyura.com/0304/hasan26/msg/423.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 20 日 23:57:16:


著者は、日本に滞在する外国人エコノミストで、日銀の研究員もつとめた。私も議論したことがあるが、マクロ経済についての彼の議論はそうおかしなものではない。しかし本書は、彼を知る人でさえ「ヴェルナーは日銀で何かあったのか?」というぐらい、わけのわからない本である。ストーリーは単純で、要するにバブルの生成も崩壊も、日本を「前川リポート」に示された姿に改造するために、歴代の日銀の「プリンス」(現在の福井俊彦総裁も含む)によって仕組まれた陰謀だったというのである。バブル期には、窓口指導で通貨供給をジャブジャブにし、バブル崩壊後は「構造改革」を進めるために金融緩和を遅らせたというのだ。

まあ推理小説としてはおもしろいが、著者は、この荒唐無稽なストーリーを本気で信じているらしい。いろいろな状況証拠をあげて、いかにバブルが日銀によって計画されたものであるかを描こうとしているが、著者が日銀の「インサイダー」であったにもかかわらず、その直接証拠は一つもない。通常の司法手続きなら「起訴見送り」である。ところが、著者はこういう薄弱な根拠をもとにして憶測をふくらませ、日銀をバブル生成・崩壊の「主犯」と断定するばかりか、大蔵省を含めて日本経済のあらゆる部分が日銀にコントロールされているという誇大妄想を展開し、「セントラル・バンカーが暮らしを支配する」と主張するのである。

これは書評というよりも「診察」が必要だろう。はっきりいって、本書の後半は、まともな精神状態で書かれたとは思われない。何人かの友人から聞いた話では、彼は日銀でかなり冷たく扱われたようだ。そりゃ当たり前だ。ここに書いてあるようなことを本気で日銀の職員に言ったら、だれも相手にしてくれなくなるだろう。それが彼には「何か隠している」と映ってさらに疑惑を深め、まわりは気味悪がってよけい相手にしなくなり・・・という悪循環が生じたのではないか。たしかに1990年代の日銀の政策はまずかったし、その対外的な説明もへただ。それに、私の友人(日銀の幹部)にも「構造改革」的なバイアスがあることは事実だ。しかし金融政策の実務に携わっている彼らは、通貨供給だけでコントロールできるほど日本経済が単純ではないことを知っているのである。

こういう「日銀万能史観」ともいうべきものは、かなり広く日本の(自称)エコノミストを毒している。「ケインズ政策」に対する信仰が、まだ残っているのだろう。常識では説明できない災難が発生すると、「陰謀」によって簡単に説明する議論が流行するのは、「ユダヤの陰謀」などでおなじみだ。特に外国人からみると、日本の経済政策の長期にわたる戦略の不在はとても理解できないだろう。かつてチャーマーズ・ジョンソンなどが「通産省の陰謀」を描いたように、外国人はそこに系統的な戦略を読みとろうとしがちだ。しかし、信じられないかもしれないが、政府にも日銀にも戦略などなかったのだ。「プリンス」たちが、その場しのぎで行き当たりばったりにやっているうちに、最悪の結果になってしまっただけだ。これが日銀の最大の「秘密」である。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/werner.html


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