■前提
　闇のゲームで仕掛けられた人生双六で内臓を失っただけでなくとある防衛戦でオーラと片腕を失った元剣闘士が執筆した、現代で云うところのロマンス小説『ハーレクイン』シリーズを全巻読破した当人の感想文は、コンテンツ事業担当者により、全て、マナー本だとからかわれた。

■語り
　レンタルストレージよりも人気だった超上級者向けの「竜の眼」のレンタル情報をどこから嗅ぎ付けたのか、一番口に予約しては上の耳がある同族たちに向かって『俺は竜の眼の継承者だぞ！』と豪語していた某ヒートテック愛用者が、天井をすり抜ける竜剣侵入ではなく珍しくまともに対談の予約を取った。その相手は、談話室でおもむろに、2本の和風調味料を机に並べてきた。

『見ろ。これが恋と愛だ』
「…何が言いたい？ただの濃口醤油と薄口醤油ではないか」

『どうせ、れ(ノイズが走って認識できない)に関しては理解できないのだから、これだけは覚えておいてくれ』
「ほう？」

『お前は、もう少し対人関係の"うま味"を知るべきだ』
「砂糖の含有量なら判るぞ。水(うんたらと講釈)で、つまり、餅か」
『勝手にヤキを入れるな…』
「じゃあ、濃い方が実数で、合いモノに使う方が虚数だ」

『…今はそれでいい』

全力で誰かの何かを渡したいことは理解できた。【終】