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テラッソンの“想像の庭園”【ボルドー・デザイン便り】ランドスケープ・デザイナー:キャサリン・ガスタファソンの業績紹介。
http://www.asyura2.com/0311/it04/msg/847.html
投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 2 月 02 日 04:15:31:SoCnfA7pPD5s2
 

(回答先: 足立美術館の庭、桂離宮おさえ日本一【中国新聞】ランドスケープ・アーキテクト:中根金作の業績紹介。 投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 2 月 02 日 04:11:07)

リポート:デルマス柚紀子 / デザイン・プロデューサー

■ 1年で国際的イメージを勝ち得た地方の町

フォアグラで有名なフランス南西のペリゴール地方にある人口6000人の小さな町テラッソンは、町の所有地である丘陵6ヘクタールに公園をつくることを決定しました。目的は、テラッソンの知名度をあげ、観光による収入を増やすためです。1992年のことです。
そこで、コンペを行った結果、米国景観デザイナー、キャサリン・ガスタファソン・ポーター (Kathryn Gustafson Porter) の提案が採用されました。
丘陵を生かした設計の“想像の庭園 (Les Jardins de l'Imaginaire) ”の案が採用されたのです。

造園は木の成長を待つ必要があり、時間がかかります。出来たばかりの庭園や公園は風情に欠けますが、この庭園は、もともとあった林や植物を生かしてつくっているので、新しい庭園といえない位木々がうっそうとしていました。

造園には3年かかりましたが、そのユニークさ、素晴らしさから、オープンして短期間にその名を世界に広めました。ペリゴール地方でしか名前を知られていなかったテラッソンの町が、国際的に知られるようになったのです。自治体にとって、その意味では決して高くない投資です。CIの成功例ともいえるのではないでしょうか。

例えば、テラッソンの町にやっと着いた時、庭園が見つからなくて、広場に駐車していた清掃トラックの運転手さんに聞いたころ、彼は満足げに頷いて、「ああ、米国人のキャサリン・ガスタファソンの造った庭ですか?」という答えが帰ってきたのです。
聞けば、この庭園はオープン以来、町中の人にサポートされているそうです。


■ キャサリン・ガスタファソン・ポーター (Kathryn Gustafson Porter) について

彼女は米国に生まれ育ち、初めはテキスタイルデザイナーとして活動していました。パリに来て、L'Ecole de Paris で景観デザインの勉強をしたといいます。

ガスタファソンのデザインの特徴としては、
(1) 庭園を設計するにあたって、現実的な制約をまず重視する。(予算、納期などを含める実用的な制約)
(2) 現場について、地形は勿論、歴史的、社会学的な見地も考慮にいれ、その現場のもつ個性をひきだす。
(3) 現場を“読んだ”あと、自分の感性や経験を通して、自分独得の解釈をしてみる。そして、将来のビジターと場所の関係を位置づける。
(4) 構想の模型を制作する。

彼女は、アングロサクソン系の息のあったアーキテクト3人と共同作業をします。テラッソンの庭園の建造物も、すべてこの3人がそれぞれ別な建物を設計しています。
これまでの作品としては、パリのヴィレットの温室、シェル、エッソ、ローレアルなどの大企業の本社建物の庭園設計など。
最近、ロンドンのハイドパークにつくられる故ダイアナ妃メモリアムの噴水設計のコンペを勝ちとりました。


■ 庭園のコンセプト

光を味わい、カラーを呼吸し、フレッシュな空気を聴き、香りを撫でる。
Goutez la lumiere, respirez les couleurs, ecoutez la fraicheur, caressez les senteurs.

庭園に入るとすぐに物語が始まるのですが、啓蒙的な語りではなく、感覚や想像に訴える語りなのです。
“想像の庭”という名前は、庭に足を踏み入れた段階より、人の想像力を鼓舞する工夫がしてあることから、このネーミングとなりました。

欧米での中世からの言い伝えを使い、私たちが無意識に理解している本質的なもの、長い間意識の上にはのぼってこなかったものを呼び起こし、さらに幼い頃、信じていた世界に目配せしながら、水、空気、木々植物に語らせることにより、これを可能にします。

庭園のスローガンとして、“失われた楽園探しの庭園”とありました。

木製の小人が置かれているような直接的な作り方ではなく、基本的に喚起という手法が使われていますが、考えてみれば、日本の庭園もまさに喚起という手法によるのではないでしょうか。
ただ、テラッソンの庭園は遊びの精神が根底にながれています。庭園見学がひとつのゲームのように。ビジターもそのゲームに積極的に参加していかないと、つまらない庭になる可能性もあります。
この丘陵には、フランスによくあるような王族が作った古い庭ではなく、自然のままだったので、文化的には制約がなく、さまざまな国の文化からの引用を自由に使う事ができました。視覚的には現代的デザインが中心になっています。


■ 庭の構成

庭園がオープンされた時は、入園料を支払った後、皆が自由に散策できたのですが、庭園の傷みが激しく、現在は、ガイドの付き添いのみで鑑賞できるシステムに変わりました。従って、筆者も自由に行動ができずに、一所に自分の好きなだけじっとしていることができないことが、ちょっと物足りなかったですが。

町のはずれから庭園に登る坂道にも現代彫刻のようなステイールの橋が創られていて、庭園へと私たちを促します。



[庭園前小道からの景観]

庭園に入ると、板敷きの小道がしばらく続きます。これは、水をテーマにした想像の庭園へのイニシエーションを象徴しています。



[入口小道]

庭園に入ると、5つの滝が迎えてくれます。高さ10mほどのそれぞれの滝の上には、世界の5大河 (黄河、ガンジス河など) の源を表現した石の彫刻があります。つまり、その彫刻から滝が入口近くまで降りてきて、ビジターを迎え入れてくれます。



[大河からの滝]

右には、渋い金色に塗装されたメタリックの帯が、木々をぬうように、あるいは木々の間を飛んでいるかのように設置されています。これは時の流れを表現しています。また、ガイドの説明では、日本の言い伝えとして、夫婦というのは生まれた時から糸に結ばれていたというが、その糸でもある、といっていました。(でもそれならば、赤糸でないと!)



[時が金色の帯に乗って流れる]

フランスの庭園で一番使われている植物は、つげであるようです。ペリゴールの庭園でも、至る所につげが彫刻されていました。この“想像の庭園”も同様で、小道の両側には、様々な形にカットされたつげが、ほとんど絶えることなく、植えられていました。中世では、つげは、悪霊から保護してくれる神聖な植物とされており、特に薬草園の周囲にはつげが植えられたそうです。

様々な品種のもみじも見られます。日本のもみじもあります。

庭の1/2は、意図的に自然のままです。人間が手を入れる自然と、人を介さず、自然が自分たちだけでつくるクリエーションが共存しています。
自然のままのエリアには、妖精が住んでいるような演出も仕掛けてあります。最初は笑っていましたが、ガイドが様々な機会に、妖精のことを真面目な顔で示唆するので、庭の雰囲気も相まって、私たちは、最終的には、妖精をなかば本気で探していたのでした。

大木の林のしめった地面には、羊歯が沢山植えられていました。大晦日の夜中の12時に、羊歯の種が地上に落ちる前に手にすると、透明になれる能力を与えられ、未来を見ることが出来るようになるとか。
ガイドの方のこの辺の語りは、絶妙でした。このような言い伝えを信じるかどうかはガイドの腕次第、といった面があります。


■ 酔いを醒ましてくれる蔦

公園は丘陵を利用して造園されたので、場所によっては傾斜が50%にもなり、特につげをカットする庭師の作業を難しくしています。今はまだ完全に成長していませんが、つげを使ったみどりの海のエリアも構想の中に入っています。6ヘクタールの庭園には、町の予算の関係で、庭師が4人しかいないそうで、かなり大変だと聞きました。

傾斜の部分は、昔はぶどう畑でしたが、今は蔦がはっています。中世の頃から、ぶどうと蔦はペアーになっていて、蔦は酔いをさますというので、宿には蔦が植えられていた、といいます。

一瞬、小さな湖かと思えるものは、巨大な温室の屋根。屋根が厚いガラスのブロックで出来ていて、その上を水が流れるため、遠くから見下ろすと一瞬、湖のように見えるのです。これは英国人の建築家、Ian Ritchie の作品で、ガラスのブロックを吸盤で固定するといったユニークな手法が使われているため、海外からも建築家がこの建造物を見にきています。



[湖の屋根]

その横には、野外イベントスペースがあります。ステンレスで造られているカーブをなしたベンチが、現代彫刻のように空間を魅力的にしています。



[イベント空間]

極めつけは、細い噴水がいくつも配置された噴水です。噴水の水にぬれながら、その下を通って、上に登ります。噴水は見るだけでなく、自分も噴水の中に入って行く、そうするとまた新しい世界が現れてきます。まるでアリスの不思議な世界で、鏡の中に入って行くように。



[噴水]

この噴水は、いわば静の噴水といった印象を与えますが、ここへは、かなり急な傾斜の長くて幅の狭い滝が、勢い良く流れこんできます。底面は段々になっているので、音も倍増し、まさに動の水の表情です。



[動の水の表情]

庭園は、さまざまな水の表情をみせてくれ、まさに水の祭典です。ふんだんに水をつかった水の庭園です。
この噴水の周辺には、銀色の葉っぱの植物が植えられており、太陽の日射しをあびてキラキラしていました。



[美しい滝]

噴水を越えたところを左にまがるとまた、背の低い複数の細い噴水があります。これは、水の角度が計算されていて、常時、虹を創り出してくれます。10を数える小さな虹を見ながら、薔薇園に入ります。オールドローズを含め、2000株の薔薇が、これもまた彫刻のような、チューターをつたって、上下に左右に広がっていました。



[虹を創り出す噴水]

高所にある庭園からは、町にむかって風向計がいくつも傾斜にそって設置されていました。そして、そこに釣られているインドネシアの風鈴が時折、かすかに、鳴っています。

テラッソンの想像の庭園の粋な遊び心が、私たち日本人の趣向に合いそうです。いつか、日本の文化団体とタイアップして、この辺で赤いかさのもとで、お茶をいれる、というのはどうでしょうか?とても合う気がします。お茶もいろいろなものを喚起してくれる世界だからかもしれません。

毎年6月に、哲学者、作家、景観デザイナー、庭師が各地から集まって、フォーラムが開催されています。


Terrasson は、ラスコー洞窟で有名な Montignac (モンテイニャック) から、東へ約15kmのところにあります。

画像:テラッソンの“想像の庭”

文:テラッソンの“想像の庭園”

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