http://www.al-pha.com/fp/seisho/11seisho.htm

１１．イスラム教と聖書の関係は？

　キリスト教よりもさらに日本人にとって馴染みがないのがイスラム教でしょう。ここで、あえて簡単な説明を試みてみましょう。

　イスラム教の神はアラーですが、これは天地を創造した唯一の神ですから、旧約聖書のヤハウェと同じ神です。イスラムとはもともとアラビア語で「服従する者」という意味で、イスラム教は神の意志に服従することが目的とされています。

　マホメットが紀元７世紀のはじめに、天使ガブリエルから語りかけを受け、彼は天使から聞いた神の命令を人々に教えました。この教えを弟子達がまとめたのがコーランで、イスラム教の最も大切な聖典です。

　しかしイスラム教では、聖書も尊重されています。コーランには、「アラーはおまえ（マホメット）に真実を持ってこの聖典を下したまい、それに先立つもの（モーセの律法とキリストの福音）の確証となしたもうた。」とあります。モーセの律法とは、旧約聖書の最初の五書、つまり「創世記」から「申命記」までを、キリストの福音とは新約聖書の四つの福音書を指します。ただし、これを全部信じるのではなく、コーランが正しいと保証している部分に限り、重視しているのです。ですから、モーセやアブラハムといった旧約聖書の預言者たち、そして新約聖書のイエスも偉大な預言者のひとりとして敬われています。もちろん、イエスが神の子であることは否定します。また、最後のときに神が万人を裁くと考えており、これは新約の教えと共通しています。

　 ところが興味深いのは、アブラハムの物語が、旧約聖書と微妙に違う点です。

　 旧約聖書では、アブラハムは妻サラとの間に生まれたイサクを、犠牲として捧げるよう神に言われ、それに従います。※１ところがイスラム教では、アブラハムとハガル（サラの召し使い）の間に生まれたイシュマエルが捧げられたことになっています。そしてイシュマエルはアラブ人の祖とされているのです。イスラム教の聖地メッカでは、今も、ハガルとイシュマエルを記念する方法で巡礼が行われています。※２

　 現在エルサレムの中心にある岩のドーム（モスク）は、アブラハムがイシマエルを神に捧げた場所を記念して、紀元七世紀に建設されました。今もイスラム教の大切な聖地となっています。

　 このモスクが、エルサレムの神殿が破壊された後の、岩の土台の上に建てられているのはご存知のとおりです。

※１創世記二二：一から一九
※２ハガルがイシュマエルのために、水を求めて、二つの丘の間を七回駆け回ったといわれることから、神殿の周りを回った後に、この二つの丘の間を七回走って往復します。

◇中村芳子著「３日でわかる聖書」（ダイヤモンド社刊）より抜粋

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