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ネパール人被告 『えん罪』の理由 佐野眞一氏に聞く(東京新聞)
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投稿者 Q太郎 日時 2003 年 10 月 28 日 07:48:25:4V2zl9FyN7Ano

(回答先: Re: <東電OL強殺>ネパール人被告の無期懲役が確定へ 最高裁 (毎日新聞) 投稿者 あっしら 日時 2003 年 10 月 21 日 19:11:38)

ネパール人被告 『えん罪』の理由
佐野眞一氏に聞く

 「司法は自殺した」。東電女性社員殺人事件を追い続けた作家の佐野眞一氏は、ネパール人被告を有罪とした最高裁の判断についてこう吐き捨てた。一審の無罪判決から二審では一転して有罪へ。数奇な展開をたどった事件の結末は、どこか釈然としない。全裁判を傍聴した作家が指摘する「えん罪」の理由とは−。 (中山洋子)

 佐野氏は「解明されていない謎が多すぎる」と切り出した。「捜査は、最初からゴビンダ・マイナリさんを犯人と決めつけた証拠だけを集めるずさんなもの。薄弱な根拠をもとに高裁は有罪というゴールに向かって突っ走った」

 最高裁は二十日、被告を有罪とする高裁の二審判決を支持し上告を棄却した。被告弁護団は異議を申し立てたが、決定が覆った例はない。異議が棄却されると有罪判決が確定する。

 佐野氏は「ゴビンダさん以外に犯人がいないと証明できていない。『疑わしきは被告の利益に』という刑事裁判の前提がなし崩しにされた」と憤る。

 実際、自白などの直接証拠がないこの事件で、明暗を分けたのは状況証拠の評価だった。同じ証拠で一審は無罪、二審は有罪という全く逆の判決が出された。

 二審判決が「有罪」を証明するとしたポイントは(1)殺害現場の便器から発見されたコンドームに付着していた精液がマイナリ被告のものであること(2)殺害現場のアパートの空き室のカギを、殺害二日後までマイナリ被告が所持していたこと−などだ。

 だが、マイナリ被告は、殺害時期の十日ほど前に、被害女性と性行為に及んだとし、被告側はコンドームはその際に捨てたものだとしている。遺体発見時から逆算して約二十日前の精液であるとの主張だ。検察側は、殺害時期に合致する十日前のものだとした。

 検察側は「十日間」を裏付ける証拠として、精液の劣化についての鑑定結果を提出した。だが一審判決はこの鑑定から「二十日以上放置されていた可能性の方が、十日間放置されていた可能性より高いことを否定できない」と判断した。

 対して二審判決は、犯行の十日ほど前に性行為を行ったとする被告の供述が信用できないとしている。

 カギも同様だ。マイナリ被告が、犯行の二日前に管理人に返却したとする主張を、二審ではやはり「信用できない」と退けた。

 佐野氏は「検察がことさら強調する『カギの所持』は、彼の犯行かどうかの判断に全く関係ない」と断じる。遺体発見当時、空き室のカギはかけられておらず、窓も施錠されていなかったためだ。弁護団は、マイナリ被告と以前に部屋を使ったことがある被害者が、独自に入室した可能性を主張してきた。

 このほかにも佐野氏は、「有罪」を導いた高裁での審理について「例えば、女性の定期入れが巣鴨の民家敷地内で見つかった理由をどう説明するのか。巣鴨は被害女性にも、ゴビンダさんにも全くの生活圏外だ。これを二審判決は、たいした問題ではないと一蹴(いっしゅう)した」と指摘。
 
 佐野氏が「冤罪(えんざい)」を確信する最大の理由は、殺害から遺体発見時までの十日間、一メートルほどしか離れていない隣のアパートで、マイナリ被告が生活を続けていたことだ。「自分が殺した女性の遺体の隣で、何日も暮らし続けることができるだろうか」
 
 さらに一九九七年十月、佐野氏自身がネパールを訪れ、マイナリ被告と同居していたネパール人男性らに対して行った取材も「無実」の心証につながる。
 
 「ゴビンダさんには、アリバイがあるんです」
 
■「同居の男性に警察就職斡旋」

 目撃証言などから、検察側は、犯行時間を九七年三月八日午後十一時半以降としているが、当時、同居していたネパール人男性が「九日午前零時ごろに電話し、ゴビンダさんと話をした。午前一時ごろに帰宅するとゴビンダさんが自室にいて、三時ごろに二人で寝た」と証言したという。
 
 佐野氏によると、この元同居人は「警察に口止めされた」とも話した。警察は、取り調べの際に男性に暴行を加え、その後は一転して厚遇したという。不法就労を承知の上で、金融会社に就職の斡旋(あっせん)まで行ったというのだ。
 
 佐野氏は「もちろんアリバイなどについて、同国人同士で、口裏合わせをした可能性もある。だが、帰国後の調査で、警察による暴行と就職斡旋は、ほぼ事実と確認できた。特に、斡旋されたという金融会社の対応は不自然だった。客を装って最初に接触したときには『(会社の存在を)どこで知ったのか』と執拗(しつよう)に問いただし、二度目に連絡した際にはもぬけの殻になっていた。警察は、そこまでするのかと背筋が寒くなった」と振り返る。
 
 事件の特異さを象徴するのは、一審で無罪判決後に釈放されたマイナリ被告が再拘置されたことだ。
 
 不法滞在で有罪とされていたマイナリ被告は、釈放後にネパールへ強制退去されるはずだった。
 
 佐野氏は「再拘置は、日本人だったら絶対にありえない。さらに言えば、朝鮮半島出身者や中国人など、本国がプレッシャーをかけてくるような国でもありえない。立場の弱いネパール人だからだ」と断じる。
 
 有罪判決もその延長線上にあると強調する。
 
 「高裁で『罪を疑う理由がある』とする再拘置の決定にかかわった判事が、そのまま二審の裁判長を務めた。審理の前から『有罪』が決まっていた」と断じながら、さらに続ける。
 
 「最高裁の判断を聞いたとき、びっくりした。決定が早すぎる。早くても来春になると思っていた。上告してから三年近くなるが、弁護団が今月一日に補充の証拠を提出したばかりだ。最高裁には精査して読む時間がなかったはず。審理らしい審理が行われなかったということだ」
 
 佐野氏は「人間は無びゅうではありえない。だが、司法は依然として、起訴した以上は有罪にしなければならないという自らの無びゅう性に固執している」と強調し、こう訴える。
 
 「ゴビンダさんを疑わしいと思う人があってもいい。ただ、問題なのは、この国では、どうとでも取れる証拠だけで『有罪』が下されることの空恐ろしさだ。ゴビンダさんの問題ではない。いつ自分に降りかかるかもしれない問題だ」
 
 ゴビンダ・マイナリ被告の弁護団は、異議申し立てが棄却され有罪が確定した場合、再審請求の準備に着手する方針だという。

■東電女性社員殺害事件

 1997年3月8日深夜、東京都渋谷区円山町のアパート1階空き室で、東京電力の女性社員=当時(39)=が絞殺された。同月19日に発見された。バッグから現金4万円が奪われていた。現場の隣のアパートに住んでいたネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリ被告(37)は不法滞在の発覚を恐れ逃走したが、殺人犯と疑われていると知り出頭。入管難民法違反で逮捕された後に強盗殺人容疑で再逮捕された。一審での無罪判決後、検察側は裁判所の職権による再拘置を要請。判断は最高裁にまで持ち込まれ「一審で無罪でも、裁判所は必要性があれば拘置できる」との初めての判断を示した。

■佐野眞一

 ノンフィクション作家。56歳。3年前、独自取材で事件の核心に迫った「東電OL殺人事件」を出版。全裁判を傍聴し、事件を追い続けている。

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