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「健康は国民の責務」!?−誰も知らない健康増進法の真実 ジャーナリスト笹倉尚子氏
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投稿者 なるほど 日時 2004 年 5 月 10 日 17:32:48:dfhdU2/i2Qkk2
 

「健康は国民の責務」!?−誰も知らない健康増進法の真実 法学セミナー2003年5月号
ジャーナリスト笹倉尚子より

昨年七月に成立した「健康増進法」二条には「国民の責務・国民は健康の増進に努めなければならない」とある。この規定に代表されるように、患者の自己決定権、自己コントロール権と医療情報の国家管理など、議論すべき点は多い法律ではないか。

1 健康保険法「改正」と同時成立した健康増進法

 今年五月一日から試行される健康保険法「改正」の陰に隠れてほとんど報道されていない法律が「健康増進法」である。
 健康保険法「改正」は、サラリーマンの医療費の本人負担を二割から三割に、保険料徴収も増額になる。また、高齢者に対する医療費負担増など「命の沙汰も金しだい」時代に突入を予感させ、国民皆保険制度の原点を揺るがしかねない小泉政権の「医療制度改革」の実態だ。

<中略>

健康増進法は、いったいどんな目的で制定されたのだろうか。

<中略>

「健康は国民の責務」という言葉に唖然とした。「健康」は、国が国民に対して保障すべき義務であり、国民はそれを保障される権利を持つと、憲法二五条(生存権)に謳われているのではないのか。
 しかし、健康増進法では病気になる人は、日頃の健康管理が悪いために、国民としての責任を果たしていない「非国民」になってしまうのだろうか。この法律のねらいは、病気は自己責任のため、医療費の自己負担増も当然だということになり、増大する高齢者医療費など社会保障費の削減を目指している、と考えるのは穿った見方だろうか。

<中略>

3 行政用語「成人病」から行政用語「生活習慣病」への転換

<中略>

「『成人病』」という概念は、医学用語ではなく、昭和三〇年代に行政的に提唱された<中略>死因の中で上位を占める心臓病や脳卒中・ガンの三大疾患を成人病という「行政用語」として使用し、成人病対策として疾病の早期発見・早期治療のために「健康診断」を推奨してきた。その結果、成人病は四〇代から六〇代の中・高年が多く罹り、老化(加齢)による病気であるという認識が広まった。
 一九九六(平成八)年、厚生省の諮問機関である公衆衛生審議会は、成人病という言葉を「生活習慣病」に変更しようと提案したのである。成人病の発症には、生活習慣病(食事・運動・喫煙・飲酒など)が深く関与していることが明らかになり、これらを改善することによって、疾病の発生を予防できることが解明された。
 「『成人病』は加齢に着目した疾病群であり、生活習慣に着目した『生活習慣病』とは概念的に異なるものである」<中略>良い生活習慣を身につけることが重要であると、国民を啓発するための施策に転換したといえよう。
 「成人病」「生活習慣病」ともに医学用語ではなく、行政用語だということに着目しておくべきだろう。成人病には、老化現象から起こる病気であるという意味が含まれている。しかし、生活習慣病になると“老化現象・老化病”というより、良い生活習慣を続ければ病気が予防できるという自己責任が強調されるようになった。また、農薬や車、工場などの環境汚染によって、発ガン性物質<中略>人体に有害なさまざまな化学物質が社会問題化しているが、病気の原因としての環境要因から人々の目をそらすことになっていないだろうか。

4 健康診断で国民の「健康管理」に貢献

「生活習慣病」の提唱者は日野原重明氏である。現在、日野原氏は聖路加国際病院名誉院長として九〇代で現役医師として活躍し、最近の著書『生き方上手』(ユーリング)はミリオンセラーになり、高齢者の新しいモデルとしてマスコミにもてはやされている。日野原氏は一九七〇年代後半から「成人病は悪い習慣で起こる」と警鐘を鳴らし始め、「成人病に代わる『習慣病』という言葉の提唱と対策」という論説を発表した。日野原氏は「私の発想からいえば、成人病から生活習慣病へという厚生省の政策転換は、20年遅れである」と述べている。
 日野原氏は一九六〇年代から健康診断を簡単に行うための人間ドックを手がけ、病気の早期発見のためには、健康診断を受けるのが良いという思想を広め、それを実践してきた医師である。
「早期発見・早期治療」という思想に私たちは囚われているが、最近の欧米医学会では、中・高年の「集団健診」は、必ずしも有効ではないという論文が発表されている。慶応大学医学部講師・近藤誠氏は、これらの論文を調べ、『成人病の真実』(文芸春秋)という著書に「検査によって病気が発見できても、必ずしも医学的介入が有効だという科学的根拠がない」という主張を展開している。
 たとえ健康診断によって生活習慣病が「早期発見」され、慢性疾患を治療するには、悪い習慣を変えてセルフコントロールしていかなければ、疾病の治療にはならないことは事実である。しかし、高血圧症、高脂血症、糖尿病などを指摘された働き盛りの中年が、そんなに簡単に「良い習慣」を身につけられるような社会環境が現代日本で整備されているのだろうか。

5 正しい生活習慣は「道徳」である

<中略>生活習慣病を防ぐための健康的な生活習慣とは、「喫煙しない、定期的に運動する、飲酒は適量を守るか・しない、一日八時間の睡眠を維持する、朝食を食べる、間食をしない」という良い習慣を身につけることだ。これらの正しい習慣を守ることによって健康のためには、何でも試して見るという“健康ブーム”が到来した。
 「正しい生活習慣を守ろうという国家の要求は、国民一人ひとりに健康という名の『道徳』を強要することになる」と香川大学教授の上杉正幸氏は指摘する(『健康病』〔洋泉社新書〕 )。
 「健康日本21」の特徴は、健康を達成するための目標が数値として具体的に設定されたことである<中略>つまり、国民は、早寝早起きの規則正しい生活を実践し、毎日八時間の睡眠を確保する、バランスのとれた食事を一日三回とり、肥満にならないよう注意。そして、ストレスを上手に解消し、タバコは吸わず、酒もほどほど(ビール一本程度)に、誰もが「心身ともに健康」であることがみんなの目標となった。子供から高齢者に至るまで「自分の健康は自分で守りましょう」と人々のナルシシズムに訴え、「健康な社会」を国民運動でつくりあげていこう“不健康”で人々の健康不安をあおる政策が「健康21」ではないだろか。

6 世界一寿命・日本人の寿命を延ばす!?

日本は現在、世界一の長寿国である。その長寿国の国民の寿命をこれ以上どうやって延ばそうというのだろうか。<中略>政府は世界一の長寿国の国民の寿命を延ばすために、「健康増進法」を制定したわけではないだろう。<中略>増加する高齢者医療費を削減するために、医療費の自己負担増や、病気は自己責任という道徳を政策化したものが健康増進法ではないか。

7 患者の自己決定権を考える

 健康増進法制定の先には、健康診断の虚勢や健康手帳の交付による個人情報の国家管理がもくろまれている。健康増進法について奈良県立医大助手の御輿久美子氏は、次のような問題点を指摘する(『いのちジャーナル』さいろ社、二〇〇二年七〜八月号)。「健康診断の義務化により健診への予算を増やし、関連業界への利益を潤すねらいがあるのではないだろうか。そして、健康手帳の交付により病歴などの個人情報を記録することになり、健診を受けていなければ就職や保険加入などに不利になることも考えられる。また、健康診断データの目的利用外に対して罰則はなく、住民基本台帳ネットワークとリンクすれば、個人情報の国会管理につながる恐れがある」
 今年八月から本格稼動する住基ネットではICカードの発行が予定され、このカードには、将来的に医療情報などセンシティブ情報が入力されることは十分予想される。<中略>

8 情報公開と個人情報の自己コントロール権

<中略>

 センシティブ情報である医療情報の利便性と管理は、コインの裏と表だ。情報公開と個人情報保護はともにセットで法的な措置がとられなければならないはずである。しかし<中略>「個人情報保護(修正)新法案」が閣議決定され、今期通常国会での成立がもくろまれている。
 個人情報の自己コントロール権とは自己に関する情報を自分で管理する権利を持つということだ。ところが、医療情報の開示と個人情報保護を国家管理しようとする「監視社会」への政策転換がますます進行しているのが現実だ。<以下略>



 山田真氏(小児科医)は、2002年7月に成立した「たくましい日本人をつくる」ための健康増進法(注1)について触れ、「国家が国民の健康を管理するのは、歴史的に見て戦争準備でしかありえない」ことを訴えた。また、健康であることが「国民の責務」つまり「個人の努力の結果」という発想は、容易に優生思想へと結びつく極めて排外的な思想であることも指摘した。<中略>
 (注1)健康増進法 
 「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない」とされている。
 決して単なる「他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の防止を法的に義務づける(朝日新聞)」ためだけのものではない。「国民の責務」が規定されているという、とんでもない法律。

http://www.janjan.jp/government/0305013391/1.php



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「非国民」のすすめ 斎藤貴男著 健康は国民の責務?−喫煙者は「非国民」か

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