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雑感:太平洋戦争とトラウマ
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投稿者 如往 日時 2004 年 5 月 12 日 07:17:10:yYpAQC0AqSUqI
 

(回答先: Re: 太平洋戦争とは 投稿者 スパルタコス 日時 2004 年 5 月 10 日 08:22:59)


 スパルタコスさん、はじめまして。
 スパルタコスさんのこれまでの投稿を拝読しつつも、未だに氏の思惟の在り処を掴みかねたままでいるのですが、それを圧して今回レスするに至りました。多分、それは氏の心情の吐露に何かしら私の心の琴線を爪弾くものがあったからだと思われます。


 私自身は他でも触れましたように、戦前・戦中・戦後に通底しあるいは湧出した日本人のethosもしくはpathosの所在を受け止めようとするとき、私の世代ではお決まりのように新左翼が拠り処にした吉本隆明の歴史認識を主にトレースしていました。けれども、彼による上部構造の解体の試みからそれ以降の試行が、新たな共同体論や政体論にまで結実しているとは見てはいません。しかしながら、吉本隆明と同年代であった三島由紀夫の中空以上の事象に特定される日本的思惟の結節論は私には無縁のことと、埒外においています。

 >アメリカは絶対的な軍事力があるが、しかし、それだけでは日本より経済力の小さい国があそこまで歯向かう事ができるのかの説明がつかない。日本人の心の奥底には二つの呪縛があるからだと思います。
 >1.治安維持法体制下で議論が許されなかったこと。戦時中は戦争に反対すれば周囲から「非国民」と迫害され、職すら失った
 >2.圧倒的な物量の米軍に日本軍の少なくない部隊が全滅させられ、本土まで焦土にされた上、原爆2発も落とされたこと
 
 一般的に先の大戦を五族協和に基づくアジア植民地解放の戦争、あるいはブロック経済の打破による自存自衛の戦争と位置付けようとされますが、アジアの解放とは今般のイラク戦争において米国が一方的に掲げる「イラクの民主化」と同様で空疎な旗印であったのは概ね事実でしょう。また、国内の不況問題をブロック経済の突破で解決しようとするのは、なるほど日本にとっては可及的に採るべき自衛策だったかも知れませんが、当時の日・米・英の力関係を考慮に入れればそんなに独り善がりに尖がらなくても、もっと合理的な解決の理があったはずです。それでも戦争に突入していったのは米英の策謀に嵌められた結果だという見解も強ち根拠のない話ではないと考えますが、国内的には明治維新以来引き摺って来た日本の上層部及び中枢部の覇権争いが外化したものと言えると思います。

 >不況と凶作による生活苦は天皇への精神的依存と戦争支持を民衆の少なくない部分に広げたと思います。そして、特攻作戦が事実上強制であったのに、これを「特攻隊は国のためにたたかった」という風に美化することで、当時の参謀本部の国民犠牲作戦への怒りを封印してきたのです。実は2.へのつまりアメリカへの恐怖は1.の状況および、強制などなかった、我々は国を守るために好き好んで特攻隊へ行ったのだという自己へのマインドコントロールと無縁ではないと思うのです。

 そのように国の中枢部の人間達が挙って生活苦に喘ぐ民衆を誘導していったものと想われますし、開戦へと押し進める奔流を誰も食い止めることができないほど大多数の国民がすっかりマインド・コンロールされていったのではないでしょうか。無論、そのためには強行と懐柔の両面策を用いるのは権力側の常套手段であります。

 >あの戦争の実相を問う事が精神的な対米従属、権力への恐れから逃れる方法なのだ。治安維持法廃止、対米無条件降伏からもう半世紀以上も過ぎたのだから、もうそろそろ精神的萎縮と特攻作戦美化から抜け出して客観的に太平洋戦争を分析せねばならない。いかに他の民族にない巨大な恐れを知ってしまったからといえ、このトラウマから逃げてばかりでは本物の国家戦略はたたない。同じアジアの国があそこまでアメリカと言論で戦えるのは、恐れ・精神的な萎縮がないからだ。これを取らないと、いくら日の丸・君が代を別の国旗・国歌に変えても、必ず恐怖はぶり返す。

 戦前・戦中世代の人達が権力にたいする「恐れ」を懐いたかどうかは判りません。ただし、特にその世代の人達は日本人の心象風景として権威にたいする「畏れ」を抱懐していたのではないでしょうか。そして、お上にたいし必要以上に畏れを懐くのは、今日でも日本人に特有な心性を表わしていると思っています。
 敗戦を契機にして他国による直接的な支配を受けることになったのですが、実は日本という国にとって歴史上初めての体験でもありました。それも直接統治したのは米国一国でしかもたったの約5年間です。これは日本国にとって一面では非常に幸いしましたが、他面において精神的自立の機会を逸したという意味では不幸であったかも知れません。日本はGHQの占領政策(農地改革・選挙制度改革・民定憲法制定等)という戦後を生きるための言わば「答え」を他者から与えられてしまったのです。それが、日本人の心に大きなルサンチマンを生じさせない安全弁の機能を果たしたのは確かでしょう。もちろん、あくまで米国は国策の一環として日本を処遇したのであり、日本のためを思ってのことではないのは明白です。
 したがって、幾度も入れ代わり立ち代り他国から支配を受けてその都度甦って来た他のアジア諸国の人々が支配者(支配国)に対して懐く抵抗の気概は、日本のそれとは比較にはならぬほど自発的で確固たるものではないかと考えています。

 敗戦責任論を含めて太平洋戦争を総括するためには、以上の点を踏まえながら、先ずは日本的なethosと真摯に向き合わなければならず、それがトラウマを超克することにも繋がっていくのではないかと考えています。ただし、私自身は信頼していた大日本帝国から遺棄された沖縄の人達を除けば、どれほどのトラウマを本土の日本人が負ってきたのか判然とはして来ないのです。
 例えばとかく日本人が米英人や白人に弱く従順に傾き卑屈な態度を見せてしまうのは、何等かのトラウマによるものか、対外的なことに関して面と向わず自身で答えを出して来なかった伝統(?)によるのか、それとも自身で答えを出さずに済んでしまった負い目が為せる業なのか、日本的ethosに照らして考察することも必要でしょうし、場合によっては新たなpathosを対置することでethosに修正を加えることも視野に入れるべきだと思量しています。

 また、会いましょう。

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