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アメリカ革命は「本来あるべき姿」ではなく「今のようにこれからも生きていく姿」をめざしたもの。
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投稿者 あっしら 日時 2004 年 6 月 18 日 22:49:00:Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: 正統の哲学・解題Aアレントの説くアメリカ独立革命の成功、フランス革命の失敗 投稿者 竹林の一愚人 日時 2004 年 6 月 18 日 16:09:38)


竹林の一愚人さん、どうもです。


まず、「伝統」や「保守」がキーワードになっていることから、“未収”の後背地付き植民地でありある種伝統から「自由」であった当時のアメリカ(東部13州)と、土地にも関わる伝統の桎梏にあった当時のフランスと、大きく条件が異なる革命を比較する手法に違和感を覚えます。

内容的にも、思想基盤や目的ではなく、生存条件的条件の差異に由来する“失敗”とできるものが多々あります。

「フランス革命」であれば「ロシア革命」とは言いませんが「清教徒革命」と比較するのが望ましく、「アメリカ革命」なら、「メキシコ革命」や「カナダ政体」と較べたほうが理に適っているのではないかと思っています。

「清教徒革命」には「フランス革命」と類似的な“失敗”がありますから、「清教徒革命」なるものが何ゆえ“伝統”と“自由”の英国で一旦は成功したのかを解き明かすことは、「フランス革命」の“失敗”を解き明かす思惟に貢献するはずです。


今回も『革命について』は未読ですので、引用していただいた内容と竹林の一愚人さんのまとめに依拠したかたちになります。


>○真の革命とは伝統との断絶ではない(『革命について』ちくま学芸文庫より)
>【以前確立されたある地点に回転しながら戻る運動、つまり、予定された秩序に回転
>しながら立ち戻る運動】


>つまり、本来の革命の意味は、フランス革命によって典型的に示された社会改革(社
>会問題を政治が解決する)ではなかったということです。それは、明らかに「本来あ
>るべき姿」から外れてしまったものを、“元に戻す”ことに他なりません。

revolution の意味はそのまま受け容れられるとしても、その政治的適用については、神学論争や哲学論争になってしまうことを避けられません。

思念的自然権思想がフランス革命の動力だとすれば、「明らかに「本来あるべき姿」から外れてしまったものを、“元に戻す”こと」になるからです。

言ってしまえば、「本来あるべき姿」なる観念を持ち込んだ途端に、「フランス革命」も「ロシア革命」も「清教徒革命」も、本来の意味での革命であるとの主張を容れるか、あんたらの「本来あるべき姿」は“真の本来あるべき姿ではない”、これこそが真の「本来あるべき姿」と反論するしかありません。


>「○革命の目的は「自由な政体」を樹立することにある。(同上)


>アレントは、統治形態として、@「自由の構成(constitutio libertatis)」を達成
>した政府、A市民的権利を保障することをその目的とする立憲的政府、市民的権利さ
>えも保障できない暴政府を挙げ、アメリカ独立革命は@を達成したが、フランス革命・
>ロシア革命に代表される近代の諸革命はBに属するとしています。@は、構成員自ら
>が政治的自由をもっている状態(統治参加者)であり、Aはいわゆる「立憲主義」で
>ありましょう。

※ Bを「市民的権利さえも保障できない暴政府」と解釈。

アメリカ独立革命が@を達成し、フランス革命とロシア革命で生まれた政府は、@もAも達成しなかったBであったという説明をそのまま受け容れるとします。

しかし、その原因が何であったのか、とりわけ、思想基盤的にそれほど違っていなかったフランス革命とアメリカ革命で何ゆえそのような差異が生じたのかについての言説がなければほとんど意味がないと言える主張です。

雑駁ですが、当時のアメリカは英国支配の桎梏を振り払えば、構成員のより自由な自己実現ができる“好条件”に恵まれていたという現実です。
だからこそ、異なる経済権益であった東部13州は中央集権をめざさず連邦制を尊重しました。(中央政権政府をめざしていれば、アメリカ革命は瓦解していたと考えています)これは、各州の構成員間の“結合度”の低さの反映でもあります。

宗教的自由(これは生き方の自由でもあります)を求めてやってきた人たちの子孫も多く、肥沃な土地との関係で“過少人口”であり、国際商人は奴隷貿易やアメリカとヨーロッパの交易に利益源を見出していました(オフショア的な国際商人だと言えます)。

英国に勝手に徴税されるのはイヤ、でも、新しい国家が自分の生き方や自分の商売の仕方をあれこれ指図するのはもっとイヤという“気分”だったのです。
それは、それでちゃんとやっけいける経済条件があったことが支えです。
(二十世紀までの米国は、“未収”の後背地を手に入れ続けることとヨーロッパとの交易関係で、そのような経済条件を確保しました)


このようなことから、米国は、すでに土地と人々の関係性ができ上がり経済的連関性にも人々が組み込まれていたフランスやロシアとは個人の意味が違っていたのです。

端的には、良いか悪いかは別として、フランスやロシアで新しい秩序(革命派にとっての「本来あるべき姿」)を確立するためには、個人に政治的な箍をはめるしかなかったのです。そうでなければ、フランスやロシアは、政治的無秩序に陥っていたと推測します。
(それは、革命当時であれば他国の草刈り場になる危険性をも意味します)


当時のフランスやロシアで近代的な中央集権国家をつくろうとしたら強権的な支配が必要であり、それを政治的理想から躊躇すれば、国家の独立が脅かされていたであろうという認識です。
(それは、フランスがブルボン王朝であっても、ロシアがロマノフ王朝であってもそうだろうし、それらと革命政府のどちらが良いかは問わないものです)


当時の米国は、「本来あるべき姿」は個々人の心の問題でかまわないものであり、共同意志としては、「本来あるべき姿」をめざすものではなく、「今のようにこれからも生きていく姿」を維持することで十二分だったのです。

>○「制限君主」→アメリカ合衆国、「絶対君主」→革命フランス(同上)

>したがって、新しい絶対者たる絶対革命を、それに先行する絶対君主政によって説明
>し、旧支配者が絶対的であればあるほど、それによって代わる革命も絶対的となると
>いう結論を下すことくらい真実らしく思われることはない。十八世紀のフランス革命
>と、それをモデルにした二十世紀のロシア革命は、この真実らしさの一連の表現であ
>ると考えられることは容易であろう】


これは、「旧支配者が絶対的であればあるほど」を、“旧支配者が絶対的な権力で社会的秩序を構築したならば”、と変えるかたちで、前述の内容に結び付けたいと思います。

>絶対君主を打倒した民衆が、その打倒した君主と同じように絶対的権力を振るうとし
>たら、はたして打倒した側に正義があるのでしょうか?

それは、革命前の国家社会状況と革命後どれだけの期間そのような支配状況が続くかによって判断されるものと考えています。
(革命後の国際関係も考慮する必要があります)


>歴史は「君主制」から「共和制」に向かって進歩していると考えるならば、絶対君主
>よりは絶対民衆のほうがまだ“まし”なのかもしれません。だが、アメリカ革命にお
>いては旧秩序を破壊することなく「民主的」な「政治体」を樹立した。明らかに、
>「旧弊を改善する」という目的と、フランス革命自体の過程とは、矛盾するもののよ
>うに思われます。

ご指摘のアメリカ革命の成功は、偏に、アメリカ革命が基盤としていた“特殊条件”に由来するものだと考えています。

(アメリカ革命と同じ革命指導者が同じ理念でフランスやロシアで革命を行ったら、ニュアンスや形態は違っていても、中央集権的で強権的な支配を同じように経過したであろうという見方です)


>○保守主義と自由主義とは、アメリカ独立革命においては共存していた(同上)


>世襲的な君主が政治を執る王朝であれ、国民が間接的に統治に参加する国民国家であ
>れ、その「政治体」を存続させようと欲するならば、「保守的」な面と「進歩的」な
>面とは、双方とも持ち合わせていなくてはならないということは、まったく常識的な
>主張であると思われます。

異存はありません。


>政治学の根本問題のひとつは、「権力」と「権威」との関係であります。権力は政治
>に不可欠であるが、権力だけでは政治は安定しません。いかに進歩的な政府であって
>も、最終的な権威を必要とします。あるときは権威は権力を助け、またあるときには
>権力を制約します。

ある時期以降ある時期までの日本史は、それを如実に示しています。そして、ある時期以降の「権力」と「権威」が一体化されたとされた日本は、あのような悲劇的結末を迎えました。

安定的な支配のためには、「高貴な嘘」であれ、「神の啓示」であれ、「普遍的価値」であれ、権威という安定化装置が必要だと思っています。

「権力」と「権威」が明確に分離されているほうが安定性と持続性が高まると思っています。
権力は失敗を犯すものです。権力が権威と一体であれば、その失敗が権威を貶めることになります。
権力は取り替え自由にしておくほうが良く、権威はできるだけ超越的なものにしておくほうが良いと言えます。

米国の大統領が二期限度になっているのも、そのような考え方に由来していると思います。


(失敗と謗られる覚悟でイラク攻撃に踏み切ったブッシュ政権は、このような政治学的論理から、再選されないだろうと予測しています。米国は、権力を取り替えれば権威(理念)を回復できる構造になっています。「あのアホなブッシュ政権が迷惑をかけてすみません」と言いながら、肩を抱き合えるのです。議院内閣制の日本は、なかなかそうもいかないのですから、対外軍事活動はより慎重に考える必要があります)


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