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アングロサクソン型市場原理主義とチェーンストアの限界・・・ほか 【鈴木敏仁の米国流通情報サイト】
http://www.asyura2.com/0403/hasan35/msg/102.html
投稿者 hou 日時 2004 年 4 月 29 日 07:10:27:HWYlsG4gs5FRk
 

http://www.retailweb.net/editorial.htm#2003_4

2003年4月

 日本へ向かう機内でこれを書いています。すでにイラク戦争も終結に向かっているのですが、直後ということもあり、旅行する人もまばらで、機内に空席が目立っています。

 今回の戦争はアメリカとイギリスの一方的な主導下によって実施されました。国際社会の利益とは幻想に過ぎないというコンドリーザ・ライス大統領補佐官の考え方を奉じ、アメリカは今圧倒的な軍事力と経済力を背景として、我々が興ざめするほどの独自路線を歩みつつあります。
 ローマ帝国による広域国際支配の俗称パックスロマーナをもじり、アメリカによる国際支配をパックスアメリカーナと呼びますが、宗教が異なり対立要素の多い中東までもこのパックスアメリカーナの下に組み込もうとする戦争と見ることもできるでしょう。
 経済という観点からは、パックスアメリカーナによる国際支配はすでにかなりのレベルに達しています。アメリカ的経済運営手法がグローバルスタンダードと呼ばれ、これを他国が適用することで、双方の経済的な壁が低くなり、融合しやすくなるわけです。
 なぜこんなことを書いているのかというと、アメリカ型、というよりもアングロサクソン型(または米英型)の経済運営手法、いわば市場原理主義型経済が本当に人民のためになっているのかなと、最近考え始めたからです。

 市場原理主義経済とは、経済の秩序の形成を民間に委ねるものです。政府による介入は極力押さえ、民間の自由な競争が秩序を生み出すという考え方ですね。
 例えばアメリカでは企業訴訟が非常に多い。弁護士が多いから、アメリカ人は訴訟好きだからと理解する向きが多いと思うのですが、実は訴訟がチェック&バランス機能を果たしているという見方をすることが重要なのです。
 日本ならば行政指導や規制が実施されるような場面において、アメリカでは当局は介入しないケースが多々ある。となると、訴訟によって企業活動を監視するしか手だてがないわけです。
 このお膳立てされた自由競争という土俵上で、企業は熾烈な戦いを続けます。そして勝ち抜くためには、効率をとにかくどんどん良くしていかなければならないという環境に、アメリカのいかなる企業も置かれているわけです。

 チェーンストアとは、おそらくアングロサクソン型市場原理主義経済が生んだ典型的なビジネスモデルと言えるでしょう。とにかく店舗を増産し、規模による効率化を図り、競合を駆逐し、さらに店舗を増やし、という循環を繰り返します。
 ゆるやかな規制のもとでは、つまり経済合理性がすべてという社会においては、大きなチェーンストアほどさらに発展を続けるのです。

 激烈な争いの下、各社は生き残りをかけて経費の削減に頭を絞るわけですが、そのしわ寄せは働く人たちに向かっていきます。とりわけ米英型の企業運営手法はマネジメントとワーカーをきっちり分離し、マネジメントには手厚い報酬で報う一方、ワーカーに対して逆の方向へ向かうことを特色としています。報酬に大きな差別が生じます。
 特に労働集約的ビジネスである流通外食産業では経費に占める人件費の比率が高く、これをいかに低く押さえるかが死命を制するわけですね。
 大手チェーンストア(レストラン)は例外無く労働組合を敵視し、組合結成を徹底的につぶしにかかるのですが、働く人たちに一致団結して欲しくないからと見るのが妥当でしょう。組合はビジネスだから加入しても意味が無いというのが、企業側の一般的な主張ですが。
 この結果、アメリカのチェーンストアは、貧困層を増産し続けています。誰も認めませんが、外から見る限りそうとしか言いようが無い。

 そして企業内の効率化に限界が生じると、外に向かっていきます。企業間のゆるやかな連携によって新たな効率化の芽を探すということです。しかし連携で済んでいるうちはいいですが、しわ寄せを外に吐き出す、またはしわ寄せが出てしまうというケースも出てくるわけです。
 例えばメーカーがDCの在庫管理と補充を行うCRPにしても、DC欠品を起こさないためにメーカー在庫が逆に増えるという話もあるんですね。特にウォルマートはDC欠品に対してペナルティを課しますから、メーカーも必死です。在庫管理能力が低いと、こうなります。
 良い例はアパレル業界のスウェットショップ、奴隷労働ですね。私が住んでいるロサンゼルスにもこの手の工場があったようです。団体訴訟が起こされることで明らかとなりました。
 そして国内だけで済まず、この波は海外へも向かいます。発展途上国での搾取問題です。

 我々はいま自由を謳歌しています。豊かな経済を享受しています。チェーンストアは前近代的だったビジネスを産業へと昇華させ、我々はその恩恵を大いに楽しんでいます。チェーンストアが無ければ、我々の今の生活は成り立たないと言っても過言ではないでしょう。
 しかし一方で、そのしわ寄せがどこかに発生しているということを、我々は見過ごすべきではないのです。

 アメリカはアングロサクソン型市場原理主義を奉じて、グローバルスタンダードという旗頭の下、その申し子とも言えるチェーンストアを世界に普及させました。それはそれで良かったと思うのですが、どうも万能というわけでもないなという気が、最近してきたわけです。
 これが今回伝えたかったことです。
 結論は出ていません。たぶん死ぬまで出ないと思いますが、思索は続けたいと思っています。皆さんも考えてみてください。

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