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「森は海の恋人」運動について
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投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 6 月 07 日 16:04:02:SoCnfA7pPD5s2
 

(回答先: 気仙沼湾「牡蠣の森」(下)【十勝毎日新聞 KACHIMAI JOURNAL】 投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 6 月 07 日 15:34:02)

「森は海の恋人」は、宮城県唐桑町の牡蠣(かき)・ホタテ養殖業者の間で始まった、 「漁民が山に木を植える活動」です。 なぜ漁民が山に木を植えるのでしょうか...。読み飽きない程度に(笑)、簡単に紹介します。

海洋生態系の根幹を成しているのが、 植物性プランクトンです。 植物性プランクトンを、動物性プランクトンが食べ、それをさまざまな小さな海の生物が食べ、 それをさらに大きな生物が食べて...というサイクルを構成しています。昔風に言えば食物連鎖ですね。

では、その植物性プランクトンは、海のどこにでもあるものでしょうか。どこに一番多く存在するのでしょうか...。 実は、陸地に近いところに、植物性プランクトンは多く存在するらしいのです。 その理由は、研究から分かってきたそうなんだけど、植物性プランクトンが成長するためには、 鉄分をはじめとするミネラル等の成分及びそれらの吸収を助ける成分が必要で、これらは川からやってくるらしいんです。 (この辺は、論文を読んだわけではないので、ちょっとニュアンスが違う部分があるかも...)

で、さらにさかのぼっていくと、これが広葉樹の森から流れ出す淡水に多く含まれていることが判明したんですね。 (慕う会の畠山代表に言わせると、「だから、牡蠣の産地と呼ばれる場所は、大抵、川の近くにあるんです」とのこと。)

海洋生態系は海の中で自己完結しているわけではなく、実は、森林生態系、河川生態系と密接なつながりを持っている、という「生態系の横のつながり」の話だったわけ。 この事は、植物プランクトンに限らず、地球上の生物が単純な食物連鎖にとどまることなく、場合によっては生態系を超えて、広い範囲で相互作用を持っている事を示唆しています。


話は戻りますが、そのことを知った牡蠣・ホタテ養殖業者たちは、「牡蠣の森を慕う会」(畠山重篤代表)を組織。平成元年、唐桑町の近くの気仙沼湾に注ぎ込む大川という川の上流に当たる、岩手県室根村の室根山に、ブナなどの広葉樹の植樹運動を開始しました。この森を「牡蠣の森」と呼び、毎年広葉樹を植樹することにしたんです。

上流の室根村は、県下トップクラスの人工林率を誇っているんですが、この運動がスタートしてから、広葉樹林の知られざる機能を再認識し、この行事に全面的に協力するようになりました。

なお、大川には気仙沼市民の水がめとなる、新月ダムという多目的ダムの建設計画があり、養殖業者らは、「水を塞き止めると、水が死んでしまう」として、建設に反対していました。もちろん、反対運動はダム堤体部の地元である気仙沼市新月地区の人たちが中心でしたが、「森は海の恋人」は反対運動のバックボーンとしても機能していました。最近になって、建設省が見通しの立たないダム計画を凍結・中止する方針を打ち出しましたが、新月ダム建設計画も、凍結が決定しました。



水車小屋「こっとんこ」

さてさて、数年前のことですが、森は海の恋人運動に賛同した室根村矢越の第12区自治会は、室根山と同じく大川の源流部となっている矢越山に、広葉樹の森「ひこばえの森」を整備しました。 それ以来、そこで「森は海の恋人植樹祭」(またの名をひこばえの森植樹祭)が行われるようになりました。毎年6月第1日曜日、ひこばえの森に大漁旗が翻り、県内外から賛同者が参加して、ブナやカエデなどの広葉樹の苗木を植えています。

したがって、最近は元祖「牡蠣の森」よりも、地元自治会の協力が得られる「ひこばえの森」で、植樹イベントを行うことが多くなったわけです。でも、「牡蠣の森」も「ひこばえの森」も、植えられるだけ植えてしまったので、今後は植樹できる場所を確保することが、課題になるかも知れません。


同自治会はまた、この運動を地域活性化の柱と捉え、清流のシンボルとして、水車小屋「こっとんこ」を建設し、環境保全型農業の推進についても、熱心に研究しています。ここでは、アイガモに水田の雑草を食べてもらう「アイガモ農法」を無農薬田で実践している農家もいます。 毎月第1日曜日の午前中には、「こっとんこ市」を開催し、無農薬・低農薬農産物や加工品などを即売しています。さらに、植樹祭の日と秋の収穫祭の2回、「水車まつり」を開催しています。

森は海の恋人、という魅力的なキャッチフレーズとともに、この植樹祭はマスコミなどに取り上げられ、全国的に展開されつつあります。 小中学校の国語などの教科書にも畠山代表のエッセイが登場しているので、知っている人もいるかもしれませんね。ただし、山に木を植えた漁民は、畠山さんたちが元祖というわけではありません。20年も前に、既に実施していた漁民たちもいるようです。

広葉樹を多少植えたところで、状況が大幅に好転するわけではありません。 それでも、何もしないわけには行かない、という漁民の切実な気持ちが、こうした運動に表れているともいえます。 また、植樹祭に協力するようになった第12区自治会の人たちの意識は、大きく変化しました。 地域が一丸となって環境にやさしい農業を考え、漁民と農民が交流を重ね、さらには各地から植樹祭に訪れる人たちとのふれあいの中で、たとえ過疎にあえぐ農山村であっても、誇りを持てるようになったのです。

(97/10/19 更新)

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