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平和主義は日本人の心性か?
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投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 7 月 31 日 11:41:40:akCNZ5gcyRMTo
 

(回答先: Re: 鉄砲 投稿者 れれれ 日時 2004 年 7 月 30 日 21:07:25)

れれれさん 詳細なレスありがとございます。

議論板に移動というのも考えましたが、ponponさんからの再レスもあり、このまま
続けることにしました。

戦争板での愚考さんとのスレは拝見しておりました。

>武器のこととかバルタン星人さんはいろいろお詳しいみたいですが、私は全然詳しくないので
>受け売りばかりですから、詳しくはこの「鉄砲と日本人」(鈴木真哉著)を読んでください。
>信長の長篠の戦い方は独創的なものではない、など通説と違うことが書いてあって、
>とても面白いのでお勧めです。
あんまり詳しくないですが「信長の野望」はファミコンで遊びましたね。田植えと稲刈りの
時期に戦争を仕掛けてはいけないとか(苦笑)
前レスの繰り返しになりますが、画期的な兵器が出現すると「戦争のやり方」そのものが
変わるわけです。鉄砲が中心になれば(極論すれば)騎馬武者や「武士」自体はいらなくなる。
歩兵中心の軍隊構成、戦略、戦術、兵站に至るまで。長篠の戦いの武田軍ではないですが
密集した陣形をとっても弾幕を張られると簡単に殲滅されてしまう。

石原莞爾は中世からルネッサンスにかけて鉄砲の発明が軍事革命をもたらしたと書いていますが
同時に社会制度の変化も軍事革命をもたらすと書いています。「信長の野望」に出てくる兵士
足軽=農民なわけです。ですから農繁期に戦争をしないというのが暗黙のルールで破ると自分
の首が絞まる。しかし彼らは「しろうと」ですからマス(塊)で勝負するしかない。散兵戦
などはやりたくても出来ないわけです。バラバラにした時点で脱走してしまうかもしれない(笑)
ところがフランス革命以降の近代国家で国民皆兵=常備軍が創設されると「くろうと」になる、
非常に複雑な戦術をとれる様になるのです。(石原莞爾『世界最終戦争論』)

信長の長篠の戦の背景には堺衆や雑賀衆のような浄土真宗信徒がいます。真宗(一向宗)は
他力本願、仏の前では皆済同ですから、誤解を恐れずにいえば「水平志向」の市民軍である
わけです。信長は彼らの力を借りたけど非常に恐ろしいものだということも判ったと思います。
雑賀(浜村)孫一については司馬遼太郎の『尻啖らえ孫一』にもありますが雑賀衆はある理念
を握っている。ですから鉄砲という兵器に特化した高度な戦術をとれる訳です。(雑賀衆は紀州
の出だし、元々山人系の技能集団だったのかもしれません。)
ですから信長、秀吉、家康と三代?に渡って一向宗を徹底的に潰しにかかる。信長がイエズス会
に「寛容」だったのも一向宗へのカウンターという面も大きい。記憶が不確かですが高山、細川
といったキリシタン大名を一向一揆の鎮圧に当たらせているのは「理念を巡る言説の闘い」でも
あることを判っていたと思います。
柄谷行人という文芸評論家が、秀吉の朝鮮征伐のとき「サイカ」と呼ばれる日本人の鉄砲集団が
朝鮮軍に加担して秀吉軍と戦ったという史実を扱ったNHKの歴史ドキュメンタリーについて書いて
いましたが、この執念深さは尋常ではない。これも消されてしまった「日本人像」の一つかも
しれません。ちなみに敗北した一向宗信徒は家康によって被差別部落民に落とされたわけですが
「大逆事件」の紀州グループの僧侶高木顕明の寺が「穢寺」と呼ばれた浄土真宗であり、その檀家
が被差別部落民であったことにつながります。(柄谷行人『坂口安吾と中上健次』)


>明治維新にいたる内戦では最初の頃は戦国時代と同じような戦い方をしたりしていたそうです。
>しかし、長州藩が4ヶ国艦隊と戦って砲台を占領されたことで軍の編成を改めたことをきっかけに、
>戦国時代風は徐々になくなっていったそうです。
私は軍事史は素人なんで詳しい方のフォローを熱望するのですが日露戦争の旅順攻略で203高地
を巡る戦闘だけで3万人ぐらい兵士が死んでいる。第2次大戦の死者が300万人と言われていますが
航空機など「大量破壊兵器」が主力で無い時代に、短期間に特定区域の戦闘でこれだけ死ぬと
いうのは尋常じゃない。石原莞爾が「兵器の進歩、とくに機関銃の出現で防禦が硬くなり容易に
正面突破が出来なくなって『持久戦』化せざるを得なくなった。」と言っています。
当時日露の国力の差が歴然としており、トーナメント方式の「決戦主義」を敢えて取ったなら
話はわかりますが、乃木稀介がそれほどのタマかという疑問があります。「城攻め」の様な
戦略、戦術しかなかったのではないか、失敗が成功に偽装されたことで、兵=消耗品、やれば
出来るの精神主義が軍部や国民を席巻したとしたら、後の歴史を考えたとき非常に不幸な事
だと思います。それこそ「ライカを持ったモダニスト将軍」石原莞爾が最も忌避したものです。
今だに「ノモンハンは勝った、負けた」などという議論があるけど、石原は「ソビエト労農赤軍
は強かった」と認めたうえで、航空機を主力とした戦略への転換を主張するわけです。
とにかく『世界最終戦争論』には驚嘆させられます。石原莞爾は昭和15年の段階で
「成層圏を飛行する高性能戦闘機が投下する最終破壊兵器で戦争の雌雄が決せられるだろう」と
書いています。東条英機と対決して軍を追われた石原は戦後全面武力放棄と絶対平和主義を
唱えることになるのですが....


>鉄砲はずっと火縄銃で、洋式銃の輸入はかなり遅く、天保年間(1830〜43)あたりからです。
>著者の鈴木真哉氏によると鉄砲の進歩はほんとうに遅々たるものだったのだそうです。
私はブツさえあれば日本でも連発銃は作れたと思っています。それだけの技術はあった。
そうしたテクノロジーへの暗黙の禁止、抑圧があったと思っています。だから「茶運び人形」
の様な「からくりもの」=スノビッシュな物に屈折していったんじゃないか。
「武士道」というのもそうですね。これはあっしらさんとの別レスでのやりとりでも書いたの
ですが、いわば「武術」が「武道」になる=美学化ですね。美学というのは一般には現実に対して
無力な訳です。
国民皆兵の常備軍になれば武士などはタダの無駄飯食いで、明治維新で事実そうなった。
私は山本常朝の『葉隠』の原典は読んでいないのですが、不幸にも三島由紀夫の『葉隠入門』
は読みました。(笑) 三島的解釈なのかもしれないけど物凄くアイロニカルですね、武士道
というのは。武士が武士らしくいられたのは戦国時代=下克上のときだった。ヘーゲル的な
ポスト・ヒストリカルな「恒久平和」の時代では下克上は危険思想なわけです。一生の間
一度も刀を抜くことの無い武士に「生きる意味」を与えるイデオロギー装置ですね、武士道は。

>しかし、この解釈には少しばかり引っかかるところがある。幕府のために諸大名から百姓町人まで
>あれこれと武備武装について規制を加えていったものなら、もう一歩進めて幕府だけが新鋭の武器を
>独占できるようにするとか、幕府直参の者については制約を課さないとかいう対応をしたら
>よさそうなものである。
それは天海僧正に聞いたほうが良いかもしれない。「武」は脆い、「意識していないが、
そうせざるを得ない、従わざるを得ない」支配構造を作る事が眼目でしょう。
人の頭の中を勝手に推測するのは僭越ですが、愚考さんとのやりとりで、れれれさんは
「平和主義が日本人の心性」というのは嘘じゃないか、つくられたものではないか、仮にあったと
しても「奴隷の平和」じゃないのか、とおっしゃりたいのではないかと思ったわけです。
私は左翼と公言してますし、れれれさんとは政治的には全く異なる立場?かもしれませんが
ご指摘されたことは非常に重要なことだし、議論されることは有意義だと思っています。


>それどころか寛文二年の刀の長さの規制などは、幕府の旗本を主な目標として出されている。
>将軍の親衛隊の面々に対して、有事に役立つはずの長い刀をやめろと言っているのだから話は
>逆ではないか。」(笑)
失礼ですがその著者の方の意見には異を唱えます。。旗本奴がことさら長い刀や装飾を競ったのは上記の
スノビズムじゃないですか。「傾く」(かぶく)じゃないけど歌舞伎や時代劇の知識があれば
「幡随院長兵衛」「鈴ヶ森」の長兵衛と水野十郎左衛門(白鞘組)との確執劇とかは当然頭に
浮かぶはずです。(旗本の二男、三男坊というのは「生きる意味」が無い屈折した存在な訳です。)
その時代なら屋外での合戦より、天井が低く、欄干、襖、障子で仕切られた日本家屋の中での
斬り合いを想定してるはず、ましてや「親衛隊」と来れば長い刀なと無用の長物です。

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