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【曽我さん一家「再会」問題】日本政府がジェンキンス氏の身柄引渡しを合法的に拒絶し得るための法理
http://www.asyura2.com/0406/war57/msg/1226.html
投稿者 iraq_peace_maker 日時 2004 年 7 月 31 日 11:50:15:ukK/IM7rOz.KM
 

「北朝鮮・チベット・中国人権ウォッチ」http://humanrights.blogtribe.org/ より転載。


■ 【曽我さん一家「再会」問題】日本政府がジェンキンス氏の身柄引渡しを合法的に拒絶し得るための法理


日本政府がジェンキンス氏の身柄引渡しを合法的に拒絶し得るための法理を考えてみました。

(1)「ジェンキンス氏救出に秘策あり!政治犯罪人不引き渡しの原則を活用せよ」−松田光代氏

「クルディスタン日本語NEWS」より引用

松田光代「拉致被害者問題は解決する ジェンキンス氏救出に秘策あり」が『現代』8月号にのっていました。松田氏は菅直人氏の前の政策秘書です。
国際的に認められた「政治犯罪人不引き渡しの原則」を適用して,ジェンキンス氏を政治犯罪人としてみとめ,亡命の扱いにしろというもの。おお!なかなか名案ですね。
「ジェンキンス氏は,日本人の配偶者であり,日本人である2人の娘の父親である。わざわざ亡命や帰化などの手続きをとらなくても,現行法上は「長期定住者」として適法に日本に永住する権利を有している。したがって,日本に来れば,政治犯の非公開裁判を禁止した日本国憲法はじめ,地位協定でも尊重義務が規定されている日本の国内法の適用を受けると解釈すべきなのた。たとえ軍人であっても,その罪状を検討したうえで,日本政府独自の判断で身柄の引き渡しを拒否する予知は十分あるのである」

http://postx.blogtribe.org/

日米犯罪人引渡条約は引渡しの請求に係る犯罪が政治犯罪である場合は引渡しを行わなくてもよい旨を規定しています(同条約4条1項(1))。松田氏の論はこの規定に目を付け、ジェンキンス氏を「政治犯罪人」に仕立て上げることで米国への引渡し・訴追を回避しようぜ、という論ですね。

・日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約
http://homepage1.nifty.com/arai_kyo/intlaw/docs/jap-us-extradit.htm

というか、実はこの論、国会でも民主党の菅直人氏が小泉首相に迫っていたことがあるのですね。政策秘書たる松田氏が菅氏に知恵を与えたんでしょうね。

2003/11/25 158 衆院・予算委員会議事録より引用

○菅(直)委員  (略)もう一点、今、ジェンキンズさんがもし日本に来られたときの扱いをめぐっての議論がありますが、日米犯罪人引き渡し条約第四条の中に、政治犯については、不引き渡しに該当すると国、日本政府が宣言すれば引き渡す必要がないという規定がありますけれども、これを適用するという考え方を宣言するということはお考えになっておりませんか。

○小野国務大臣 お答えさせていただきます。
 国際刑事警察機構における手配の有無につきましては、手配を要請した国の捜査にかかわることでもございまして、回答を差し控えさせていただきたいと思います。

○菅(直)委員 官僚の答弁を読まれるだけなら、出てこなくて結構です。

 総理、これは政治判断ですよ。これは政治判断ですから、政治判断として、日本の拉致被害者で日本に帰られた方の御主人が元アメリカ国籍があって、アメリカからいわば刑事犯罪として逮捕状なり何が出ている、日本に帰られたときにそれを引き渡すのかどうかというのは一つの大きな政治判断です。

 こういう規定に基づいて引き渡さない、そういう考え方はありませんか、総理。総理の判断。

○小泉内閣総理大臣 この点については、アメリカとの問題もあります。アメリカともよく協議していきたいと思っております。

○菅(直)委員 自主的な外交と言う割には、こういう日本の法律に基づく適用ですら、はっきりしたことを言われないというのは残念です。(略)

http://www.eda-jp.com/pol/koizumi/031125-1.html

(2)「双罰性原則」による引渡し拒否

「ジェンキンスさん「訴追」、解決策見えず」(7/9 読売新聞)より引用

 (略)日本政府内には、自衛隊法に「脱走」を罰する明確な規定がないため、「犯罪人引き渡し条約の要件である『双罰性』がない」と主張することで、身柄引き渡しを拒否することは可能との見方もある。ただ、「同盟国間でこうした争いをするのは好ましくない」(政府筋)との意見も根強い。(略)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20040709ia26.htm

この双罰性原則に目を付けて引渡しを拒否しようという論、詳細は↓のサイトに掲載されている解法者さんの投稿をご覧ください。

・ジェンキンス氏の法律問題 (1)〜(6) 投稿者:解法者  投稿日: 5月26日(水)
http://www31.ocn.ne.jp/~matsuo2000/EM/BBS2F.htm

(3)ジェンキンス氏を米軍「政治迫害」を受ける恐れがある「難民」として扱う

あと、最後に。

これは私の意見ですが、ジェンキンス氏は反米映画に出演したことなどを理由に米軍から「反逆罪」の嫌疑を掛けられています。これを「政治犯罪」とみなし、日本も批准している国連難民条約に基づいて日本政府がジェンキンス氏を「難民」として認定することで、米国への引渡しを拒否する方策も考えられます。

国連難民条約33条は「政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない」と規定しています(「ノン・ルフールマンの原則」)。

・難民の地位に関する1951年の条約(1951年難民条約)
http://www.unhcr.or.jp/protect/1951_joyaku.html

米軍当局はジェンキンス氏は自身の自由意思によって軍部隊を脱走し、北朝鮮政府の反米宣伝活動などに関わったと主張し、彼は脱走罪の他にも「反逆罪」などの罪状にも問われていますが、ここから米軍当局は彼を「政治犯罪者」としてみているとの推定を導き出せます。

そして、「政治犯罪者」たる彼が日本国内に入国した際、米軍当局の「政治迫害」から彼の身を護るために日本政府は彼を「難民」として認定した上で日本国内で保護すべきであるとの論は難民条約33条によって正当化することが可能です。

ただ、この論に対しては一つの反論が考えられます。それは、現在ジェンキンス氏が北朝鮮で政治弾圧を受けている事実は確認されておらず、米軍当局の「政治迫害」から身を護るなら何も日本に入国せずとも北朝鮮に留まっていれば良いではないか、という反論です。

ただ、ここで考慮されるべきは妻である曽我ひとみさんの「特殊」な境遇です。
曽我さんは北朝鮮当局によって無理やり「拉致」され、本人の意思に反して北朝鮮での生活を強いられてきました。そして、ジェンキンス氏との結婚も、二人の娘の出産もその期間の間に起こったことです。ところが、曽我さんは2002年に「拉致」被害の現状回復の一環として日本に帰国し、その後日本で家族一緒に永住したい旨の意思表示を表明しています。この曽我さんの訴えは、「家族統合の原則」という国際人権法の概念に照らし合わせても正当なものです。

これら状況を考慮すれば、「家族統合の原則」を具現化するためジェンキンス氏(と二人の娘)が来日しても、彼を政治難民として日本政府が保護するという形を取れば、合法的な形で曽我さん一家の日本での永住は実現させることができます。

要するに、米国政府がジェンキンス氏の訴追免除を頑なに拒絶しても、日本政府が腹を固めさえすれば、ジェンキンス氏の引渡しを「合法的に」拒否することもできるということです。後は日本政府の対米外交力の問題です。


(追記)

『(ジェンキンス氏の問題)いっそ、確信犯的に日本に滞在しているという「既成事実」を作ってしまうのも一案だと思いますが』

もちろん、この話はジェンキンス氏に来日の意思があるというのが話の大前提です。ジェンキンス氏にその気が無いのに、それこそ日本政府が無理に日本に「拉致」してくるわけにはいきませんから。

また、アメリカ政府との外交交渉を通して司法取引による訴追免除、あるいは訴追手続きに掛けられても実刑(収監?)判決が下される可能性が無いという保証が得られるなら、いっそ米軍当局に出頭するようジェンキンス氏本人に促すというのも一案ではありますね。

ただ・・・、私はジェンキンス氏の身柄が米軍の手に渡ったら、当局は彼を粛々と訴追手続きに掛けて、彼にはかなり重い刑罰が下される可能性も捨てきれないと思っているんです。彼が犯したとされる罪は”脱走”、これは軍隊の秩序の根幹に関わる問題ですから。

それよりも、ジェンキンス氏本人にその気があるなら、彼に来日して貰って「日本に長期滞在」という既成事実を作ってしまった方が、却ってコトが上手く運ぶんじゃないかとも思っているんですね。

この問題、ブッシュ政権にとっても悩ましい問題なんじゃないですかね。法と軍の秩序を考えると脱走罪の容疑者にそうそう甘い態度を取ることはできない、かと言ってこんな問題で日本国民の対米感情を損ないたくはないだろうし、日米間の外交関係をこじらせる気も無いでしょうし。

そう考えると、日本側がもっともらしい理由をでっち上げて彼を引き渡さないことにしてしまえば、米国側も適当な所で鞘を収めるんじゃないかとも思うんですね。

上記の拙文で触れた論理は、いわば引渡し拒否の理由をでっち上げるための、まあ「言い訳」といったところですね。確かべトナム戦争の頃、「ベトナムには行きたくない」という理由で在日米軍基地から脱走した米兵をベ平連など日本のベトナム反戦運動が支援する運動を展開したことがありましたが、あの時もアメリカ軍は日本人の米兵に対しては逮捕等の強硬手段には出なかったと記憶しているのですが。米軍法に則れば日本人と言えども米兵である以上逮捕されても当然なんですが、まあ、日本の世論に配慮したのでしょう。

そういう前例も考慮に入れると、"引渡しを拒否するに足りるもっともらしい理由"をでっち上げることに成功さえすれば、日本政府側が引渡しを拒否しても、あんまり強硬な要求を突きつけることは米国政府側もしないんじゃないかなあと思うんですね。「日本政府の引渡し拒否は正義に反するが、日本国民の心情に鑑み人道的措置を取ることにした」とか何とかという話に落ち付くんじゃないかな、と。

これ、「楽観論」でしょうか?

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