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「世界シオニスト機構1980年代戦略」全文日本語訳は私物化せず
http://www.asyura2.com/0406/war57/msg/1299.html
投稿者 木村愛二 日時 2004 年 8 月 02 日 14:40:35:CjMHiEP28ibKM
 

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『亜空間通信』845号(2004/08/02)
【「世界シオニスト機構1980年代戦略」全文日本語訳は私物化せず広く警告を発する情報公開宣言】

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 転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 私は、半月前(2004/07/18)に、以下の通信を発し、阿修羅戦争57掲示板にも投稿した。
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/2003aku/aku828.html
http://www.asyura2.com/0406/war57/msg/774.html
『亜空間通信』828号(2004/07/18)
【イスラエル中東構想議論必読「世界シオニスト機構1980年代戦略」英訳全文で想い半ばに過ぎる】
[中略]
 以下、冒頭の部分だけを紹介する英訳の論文は、この8年間、私が探し求めていたものである。ヘブライ語の原文は、後述の拙訳のごとく、エルサレムで発行されている世界シオニスト機構の機関評論誌、『キヴーニム』(指針)[前出。14号、82・2]に掲載されていたのであるから、イスラエル人とその周辺では周知のことで、ここ20年の中東の紛争の底辺を成していたのである。
[中略]
これが現在の歴史見直し論の言論状況なのである。だからこそ、イスラエルの極右は勝手放題なのである。
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 この「世界シオニスト機構1980年代戦略」全文日本語訳は、私物化せずに、広く警告を発すべき性質のものと考えるので、ここに、この超貴重情報の公開の宣言を発する。
 
 この全文は、9月中頃には実際の発表、発売予定の季刊『真相の深層』3号に、千葉良昭(在アフリカ経験者)訳として掲載する予定である。同氏はすでに、季刊『真相の深層』2号に、「朝日新聞報道の欺瞞 サウジアラビア・テロを巡って」を寄稿している。
 
 以下の訳を、『亜空間通信』でも発表するに際して、私は、季刊『真相の深層』読者に感謝する。特に、多くの長期予約購読者の予約代金の送付により、私は、世界各国の事情に通ずる訳者を確保することができた。
 
 以下の論文の英語訳の存在に関する情報は、1999年の夏、ユーゴ空爆・侵略戦争の直後、猛暑のニューヨークで開かれた国際行動センター主催、NATOを裁く独立戦争犯罪法廷」に参加した際に知り合ったアメリカ人の歴史見直し論者から、もたらされたものである。
 
 原文は、「偽」イスラエルの公用語として事実上造語されたヘブライ語である。これは、一種の身内の暗号文として、理解すべきであろう。
  しかも、この論文の公開に当たって、筆者は、「結論」で「5.なぜ、この計画を公表することで外部から特に危険が生じないと考えられるのか?」と自問し、以下のように自答しているのである。
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そのようなリスクは、イスラエル内部の対抗勢力が弱い限り[中略]、2つのソースから現れる。パレスチナ人を含むアラブ世界とアメリカである。平均すれば、パレスチナ人を含めてアラブ世界は、イスラエル・ユダヤ社会の詳細で合理的な分析ができていない。そのような状況では、イスラエルの領土拡張主義(それは十分本当である)の危険を叫んでいる人々でさえ、現実的で詳細な知識に基づくのではなく、神話上の信仰のために行っている。
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 この筆者の自答の正しさ、恐ろしさは、アラブ贔屓の自称平和主義者の日本人に関しても、妥当するのである。平和主義も、「現実的で詳細な知識に基づく」ものではなく、一種の「神話上の信仰」にすぎないのである。以下は、長文であるが、その重要性に鑑み、全文の日本語訳を紹介する。
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 1980年代のイスラエルの戦略
A Strategy for Israel in the Nineteen Eighties

 この記事は1982年2月『Kivunim、A Journal for Judaism and Zionism』の第14号、冬季5742にヘブライ語で掲載されたものである。
編集者:Yoram Beck、編集委員:Eli Eyal, Yoram Beck, Amnon Hadari, Yohanan
Manor, Elieser Schweid、出版:エルサレム、世界シオニスト組織・出版部。

1.1980年代初頭にあたるこの現在、イスラエル国家は国内外において、その位置、目的、国家目標について新たな視点を必要としている。国家、宗教、世界は数々の集約過程を経て、こうした新たな視点を持つ必要性がいやがうえにも高まってい る。我々は今日、人類の歴史上、いかなる時代とも異なる新たな時代に突入した。そ の性格はこれまで我々が知っていたものとは全く異なる未曾有のものだ。それが、この歴史的な時代を予見する集約過程を理解する必要があるのと同時に、世界の大枠を把握し、新たな条件にそった工作戦略を持つ必要がある所以である。ユダヤ国家の存在、繁栄、そして安定は国内政治、外交の新たな枠組みに適応する能力いかんにかかっている。


2.この時代は、我々がすでに分析可能で、現在のライフスタイルにおいて純粋に革命的とされるいくつかの特性で特徴づけられる。支配過程は、生活を支える主たる基礎で、ルネッサンス以来の西洋文明の業績だとして合理主義者、人道主義者の外見でもって分析される。これに基づく政治的、社会的、経済的見解は、いくつかの隠れた「真実」に基づく。――例えば、人間個人が宇宙の中心にいるという見解や、すべては基本的な物質的要求をみたすために存在するという見方である。この立場は、全世界の資源の量が人間の要求に満たないという、経済的要求、人口分析の制約が明らかになったこの現在、無効なものになっている。40億の人類が存在し、経済とエネルギー資源が人類のニーズに比例して増えることのない世界では、西側社会の主たる要求、つまり際限のない消費という願望を満たすと期待するのは非現実的である。(1)人間が判断する際の根拠は、倫理ではなく、むしろ物質的な要求だという見地は、今日、我々は世界のあらゆる価値が消滅していると見ており、広く普及しているものだ。我々は、特に、何が良くて何が悪いのかという単純な問い関して、最も単純な物事を評価する能力を失いがちである。


3.我々を取り巻く世界秩序に目をやると、人間の夢や無限の能力など、人生の悲しい事実の前ではすくみあがってしまう。人類には自由が約束されているという見方は、人類の4分の3が全体主義政権下にあるという悲しい事実の前では不合理に見えてくる。平等や社会的公正に関する見解は、社会主義、特に共産主義によってお笑い草に変形されている。これら2つの考え方に関して議論はしないが、ただそれらが適切に実行されておらず、大多数の人類が自由や平等、公正の機会を喪失していることは明らかだ。我々が、この30年間(依然)過ごしている比較的平和なものの、核のある世界で、平和の概念、国家の共存は、マルクス主義にピリオドを打つ核戦争が起きる可能性やその必要性を持ち出すまでもなく、一方が勝利し、その後にどちらかが生存する可能性を持った軍事的、政治的政策を、ソビエト連邦のような超大国が保有していることを考えると、無意味になってしまう。(2)

4.人間社会における本質的な概念(特に西洋のもの)は、政治的、軍事的、経済的変遷を経ている。ソビエト連邦の核軍事力は、時代を、全面世界戦争が起きれば我々の世界の大部分を破壊するというところまで変えてしまった。それに比べれば、過去の世界大戦は単なる子どもの遊びにすぎない。通常兵器同様、核の力、それらの量、正 確性、品質は、我々の世界のほとんどを数年の内にひっくりかえしてしまうだろう。我々はこうした事態に、イスラエルで備えなくてはならないのだ。それが我々の存在、西側世界の存在に対する主たる脅威である。(3)世界資源戦争、つまり石油をアラブ人が独占し、西洋は第三世界から原料のほとんどを輸入する必要があるために、ソビエト連邦は、世界の鉱山資源の大部分が存在するペルシャ湾や南部アフリカの莫大な資源の支配権を獲得することで西洋を打ち負かすことを主たる目標の一つに掲げるようになっている。我々は、将来直面する対立の図式を想像することができる。

5.ゴルシュコフ(Gorshkov)・ドクトリンは、ソビエトが第三世界の豊かな海洋、地下資源のコントロールを要求している。それは、西側の軍隊が打ち負かされ、ソビエトが核戦争を勝ち残り、マルクス・レーニン主義への奉仕で住民が奴隷となる、現在のソビエトの核ドクトリンと共に、世界平和と我々の存在を脅かす主たる危険である。1967年以来、ソビエトはクラウゼヴィッツ(訳者註:『戦争論』の著者。「戦争とは他の手段をもってする政策の継続である」と述べ軍事に対する政策の優位性を説いた。)の金言を「戦争は核の手段をもってする政策の継続である」というように変えてしまい、あらゆる政策にそのモットーを適用している。既に彼らは、我々の地域や世界のいたるところでそうした目的を遂行するのに奮闘しており、それに対 応する必要性が、我が国と、当然、残る自由主義世界の安全保障政策上の急務となっている。それが、我々の主たる外交的挑戦となる。(4)

6.したがって、アラブ、イスラム教世界は、軍事的能力を増大させイスラエルに対して大きな脅威を与えるとしても、我々が80年代に直面する主たる戦略的問題ではない。レバノンやイラン、現在のシリアでも見られるように、アラブには少数民族がいて、党派があり、内部危機に瀕している。驚くほど自滅的なこの世界は、その根本問題にうまく対処することができず、長期的にイスラエル国家に対する現実的な脅威にはならず、ただ短期的に、その軍事力が重要な問題となるだけなのだ。この世界は、純粋な革命的変革なしに、我々を取り巻くこの地域で長期的に存在することはできないだろう。イスラム、アラブ世界は、住民の希望や願いを考慮に入れず、外国人(1920年代のフランスとイギリス)によって組み立てられた一時的なトランプの家のようである。あらゆるアラブ・イスラム国家は、任意に19州に分割され、お互い敵意を持っているマイノリティ、民族グループを組み合わせて作られた結果、内部からの民族的、社会的破壊という事態に直面し、既にいくつかの内戦が勃発している。(5)ほとんどのアラブ、つまり1億7000万人のうち1億1800万人はアフリカに住み、そのほとんどが(現在4500万人)エジプトに住んでいる。


7.エジプトとは別に、マグレブの国々は、アラブ人と非アラブのベルベル人が交じり合って形成されている。アルジェリアでは、既に内戦が国境のカビレ山脈で激化している。モロッコとアルジェリアは、各々の内部闘争に加えて、スペイン領サハラ上で交戦中である。イスラム戦士は、チュニジアの統治を危機にさらし、カダフィは、アラブの視点から戦争を引き起こし、貧弱な国家から強力な国家になることを妨げている。それが、彼が過去に、エジプトとシリアのような、より純粋な国家の統合を試みている理由である。スーダンは今日、アラブ、イスラム世界で最も分裂した国家で、互いに敵意を持った4つのグループで構築されている。少数派であるアラブ、イスラム教徒のスンニ派が大多数の非アラブ、アフリカ人、パガンおよびキリスト教徒を支配する。エジプトでは、スンニ派のイスラム教徒の大多数が、上部エジプトにおいて支配的な、大きなマイノリティ、約700万人のキリスト教徒に対峙している。その結果、サダトさえ、5月8日のスピーチで、彼らが、自身の国家、「もう一つの」キリスト教レバノンのような国家を望む恐れを表明している。


8.イスラエルの東方のアラブ諸国はすべて、分裂、破壊しており、マグレブ諸国以上に内部紛争にさいなまれている。シリアは、強力な軍事政権が支配している点を除けば、レバノンと基本的に違いはない。しかし、スンニ派の大多数と、それを支配する少数シーア派アラウィの内戦が最近起きていることが、こうした国内問題の厳しさを物語っている。


9.イラクもまた、大多数がシーア派でマイノリティであるスンニ派が支配しており、本質的に近隣諸国と相違はない。人口の65パーセントは、政治的発言力を持たず20パーセントのエリート層が権力を握る。加えて北部に少数派であるクルド人がいて、支配政権、軍隊、石油収入の強さがなければ、イラクの将来は、過去のレバノン、あるいは現在のシリアの状態と変わらない。内部紛争、内戦の種は、特にイランでホメイニが権力について、イラクのシーア派が彼らの自然なリーダーとして彼を見るようになった今日、明白になっている。

10.全ての湾岸諸国とサウジアラビアは、ただ石油があるだけの砂上の楼閣である。クウェートにおいては、クウェート人は、人口の4分の1だけしかいない。バーレーンは、シーア派が大多数であるが、権力を剥奪されている。UAEでは、シーア派が大多数だが、スンニ派が政権を握っている。同じことはオマーンや北イエメンにも当てはまる。マルクス主義の南イエメンでさえ、シーア派は大きな少数派である。サウジアラビアでは、人口の半分がエジプト人、イエメン人などの外国人で、少数派が権力を持っている。

11.ヨルダンは、パレスチナ人が、マイノリティであるベドウィン人によって支配されているが、ほとんどの軍人や官僚は今やパレスチナ人である。実は、アンマンはナブルスと同じくらいパレスチナなのである。これらの国々はすべて、比較的強力な軍隊を持ってる。しかし、問題がそこにある。シリア軍は、今日ほとんどがアラウィ兵士軍団を持つスンニ派であり、イラク軍はスンニ派指揮官下のシーア派である。これは長期的に大きな重要性がある。そのため、ただ1つの共通要素、イスラエルに対する敵意を除けば、長い間軍隊の忠誠心を保持することができなくなっているのだ。:今日、それさえ不十分である。


12.アラブはそのように分離しているが、他のイスラム国家も同様の窮境にある。イランの人口の半分はペルシアを話すグループ、その他半分は民族的にトルコのグループで構成される。トルコの人口はおよそ50%にあたるイスラム、トルコ・ス ニ派の大多数、と2つの大きな少数派、つまり1200万人のシーア派アラウィと600万人のスンニ派のクルド人から構成される。アフガニスタンでは、人口の3分の1をしめる500万のシーア派がいる。スンニ派のパキスタンでは、国家を危険にさらす1500万人のシーア派がいる。


13.モロッコからインドまで、そしてソマリアからトルコまでに及ぶこの国家少数民族の構図は、安定の欠如と全地域の迅速な退化を指し示す。この構図に経済問題が加わると、地域全体がいかにトランプの家のように、いかに厳しい問題に耐えること ができないか我々は目視することとなる。


14.この巨大な細切れの世界に、少数の裕福なグループと膨大な数の貧しい人々がいる。ほとんどのアラブ人の平均年収は300ドルである。リビアとイラクを除くエジプトやマグレブ諸国はその状況にある。レバノンは分裂し、経済は細切れである。全体をまとめる力はなく、ただ5つの事実上の統治権力があるだけである(シリア人の支援を受け、Franjieh一族の支配下のキリスト教が北部を、東部は、直接的にシリア人の征服を受けたエリアで、中央はファランジスト(訳者註:イスラエルと協力したキリスト教民兵組織)がキリスト教飛び地をコントロールし、南部及びリタニ川まではPLOにコントロールされているパレスチナ人地域と、キリスト教徒と50万人のシーア派のハダド少佐の州がある。)シリアはさらに重大な状況にあり、リビアとの 統合後の将来でさえ、獲得する援助をもってしても、大規模軍隊の存在と維持という基本的な問題をもてあますだろう。エジプトは最悪の状態にある。:数百万人が飢えており、労働力の半分は失業状態にあり、住宅は世界で最も人口密度の高いこの地域において不足している。軍隊を除いて、効率的に作動している部門はただの一つもなく、国家は永続的な破産状態にあり、平和になってから丸々アメリカの対外援助に頼っている。(6)


15.湾岸諸国、サウジアラビア、リビアおよびエジプトに、世界最大の金と石油が集まるのだが、それを甘受しているのは、広範な支持基盤も自信もない、軍が保証できないようなちっぽけなエリートたちである。(7)あらゆる設備を整えたサウジ軍は国内外の危険から政権を守ることができない。1980年にメッカで起きたことはその一例である。悲しい混乱した状況をイスラエルの周囲を取り囲み、イスラエルに対する危険を創生するだけではなく、1967年初めて訪れて以来チャンスを遠のかせている。しかし、1980年代にはある程度、我々が想像し得ない次元で、そうして失ったチャンスが達成可能となるだろう。

16.「平和」政策や領土の返還は、米国の依存を通じて我々のために作成された新たなオプションの実現を排除することになる。1967年以来、イスラエルの政府はみな、我々の国家目標を、国内外の両方で、片や狭い政治的ニーズに、片や国内で、自身の能力を中和した破壊的なオプションに結びつけてきた。6日戦争で獲得した領土で、アラブ人たちに次のステップを取らなかったことは、イスラエルの主要な戦略上の間違いである。もし、ヨルダン川西岸に生活するパレスチナ人にヨルダンを与えていたならば、我々を苦しめる危険な紛争の全てはその時以来なかっただろう。そうすることによって、我々が今日直面し、領土的な妥協、あるいは自治政府などと解決の方法を見出していないパレスチナ問題を今や現実に解決していただろう。(8)今日、我々に、突如、状況の徹底的な変化という大きな機会が訪れた。来る10年間我々はこれをやらねばならず、さもなくば我々は国家として生き残れない。


17.1980年代、イスラエルは、この時代の地球規模の、そして地域的な挑戦に立ち向かうべく、外交政策の急速な変化にしたがって、国内における政治的、経済的政体の改革を成し遂げなくてはならない。地形学的に地域に豊かな産油国を作ることがわかっている、膨大な石油、ガス、その他天然資源の眠るシナイ半島、スエズの油田を損失したために、近い将来エネルギーの枯渇をもたらし、国内経済の破壊に至るかもしれない:我が国のGNPの4分の1、予算の3分の1に当たる額が石油購入に費やされている。(9)ネゲブや海岸地帯の資源探索も、その穴埋めにはならないだろう。


18.キャンプ・デービッドや和平協定によって妨害されている、資源の眠るシナイ半島(の再獲得)は、それゆえ政治的な優先事項となる。1967年以来の各政府の遵守事項、現在のイスラエル政府や各政府が進める領土的妥協政策は誤魔化しで、間違いである。エジプト人たちはシナイ半島の返還後、平和条約を守らず、領土をアラブ世界に引き戻し、支援と軍事援助を獲得するために、ソビエト連邦に対してできることなら何でもするだろう。アメリカの援助は、平和名目で、ただ短期的に保証されており、内外双方におけるアメリカの弱体化が援助の削減をもたらすことになるだろう。石油やそれから得られる収入がなく、巨大な消費を抱えているこの現在、我々は、1982年でさえやりすごすことはできないだろう。我々はサダトの訪問に先立って、シナイに存在したステイタス・クオと1979年3月にサダトが署名した、誤った平和条約を元に戻すために行動に移らなくてはならない。(10)


19.イスラエルには、この目的を実現する、直接的な方法と間接的な方法の主たる2つの方法がある。直接的な方法は、サダトが権力を握ってから彼の最大の功績である1973年の戦争後の我々のシナイからの撤退と、それを実現したサダトの知恵や、イスラエル政府の性質を考えると実現性は乏しい。イスラエルは、経済的、政治的に強く抑圧され、エジプトが我々の短い歴史上4度目になるシナイ半島獲得の言い訳をイスラエルに与えない限り、1982年に一方的に条約を破ることはしないだろ う。したがって残るのは間接的なオプションとなる。エジプトの経済状況、政権およびその汎アラブ政策の性格からすると、エジプトは1982年4月以降、イスラエルが直接的、ないしは間接的に戦略、経済、そしてエネルギー備蓄上重要なシナイを再び獲得するために行動することを余儀なくさせられる状況に持ち込むことが推定できる。エジプトは内部紛争により軍事戦略問題を構築せず、高々1日で1967年戦争以降の状況に引き返すに違いない。(11)


20.アラブ世界の強いリーダーというエジプトの神話は、1956年に破壊され、1967年にすっかり消え去ったのだが、シナイの返還というような我々の政策が、その神話を「事実」に変える役目を果たした。しかしながら、実際には、エジプトの力は、イスラエルに対してだけでなく残りのアラブ世界に対しても、1967年から半分ほどに落ち込んでいる。エジプトはもはやアラブ世界の主要な政治権力ではなく、経済的危機の間際にある。外国の援助なしでは、危機が明日にでも訪れるだろう。(12)短期的には、シナイの返還により、エジプトは、いくつかの利益を得ることになるだろう。しかし、それは1982年までの短期間であり、その利益に対して、勢力バランスが変わることはなく、没落はまぬがれない。この現在国内政治において、既に死に体にあるエジプトが、我々が考慮に入れているイスラム、キリスト教の分裂の拡大という事態にもしあったとしたら、事態はなおさらひどいものとなるだろう。エジプトの領土を地政学的地域に分断することが、イスラエルの1980年代のイスラエルの政治的な目標である。


21.エジプトは、分断され、多くの政権に引き裂かれる。もしエジプトがばらばらになれば、リビア、スーダン、あるいはさらに離れた国も現在の形では存在し続けず、エジプトの崩壊と分裂に加わることになるだろう。地域限定的な権力の、集権的 な政府のない数ある弱い国家に対しては、北部エジプトのコプト・キリスト教区に対する視点が、平和条約で巻き戻された政策と、長期的に不可避の我々の歴史的発展の鍵になる。(13)


22.表面上はより問題があるように見える西側正面だが、実際には、そこで起きたほとんどの事件が最近、ニュースのヘッドラインを飾るようになった東側正面よりは 複雑ではない。レバノンが5つの地域に分断されたことは、エジプト、シリア、イラク、そしてアラビア半島を含むアラブ世界全体の崩壊のさきがけとして役立つ。それ らの国家は既にその轍を踏んでいる。シリアとイラクが、独特の地域であるレバノンのように宗教的に、あるいは民族的に分解することが、東側正面のイスラエルの長期的な政策となり、それらの国家の軍事力の分裂が短期的に初歩的な目標となる。シリアはその民族的、宗教的な構造に従って、今日のレバノンのようにいくつかの国家に分裂するだろう。海岸にはシーア派アラウィが、アレッポにはスンニ派が、その他スンニ派地域でダマスカスが北部に敵対心を燃やし、ドルーズが我々のゴラン高原、ホーラン、そして北部ヨルダンに国家を構えるだろう。国家政策は地域の平和と安全をもたらし、その目標は今日、我々の手の届くところに既にあるのである。(14)


23.一方で石油が豊富にあり、他方で内部が分裂しているイラクは、イスラエルのターゲット候補として保証されている。イラクの分裂はシリアのそれより我々にとってさらに重要である。イラクはシリアより強い。短期的にイラクはイスラエルに対し て最も大きな脅威を構築する。しかしイラク・イラン戦争はイラクを分裂させ、我々に対する広範な闘争を起こす前に、内部で没落を引き起こすだろう。あらゆる種類のアラブ内部の対立は短期的に我々を助けることになり、シリアやレバノンのようにイラクを分割するという、より重要な目標に近づくことになる。イラクを、オットーマン時代のシリアのように民族、宗教のラインで地域を分割することが可能だ。3つの国家が主要な3つの都市に存在することになる。:バスラ、バグダッド、モスル、そして南部のシーア派地域がスンニ派、北部クルドと分けられる。現在のイラン・イラクの対立でこうした分化を一層進めることが可能となる。(15)


24.アラビア半島全体は、内外のプレッシャーから自発的に分裂する候補となっており、サウジアラビアは特にそれを免れない。石油に支えられる経済は長期的には先細りになるということ以前に、現在の政治的な構造を見れば内部亀裂は明白で、自然に拡大するものだ。


25.ヨルダンは、短期的には即時的戦略目標になるが、それは長期的なものではない。分裂後、フセイン国王の長期支配が終了し、パレスチナ人への権限の委譲がなされ、実際の脅威を構築しないのである。


26.ヨルダンが現在の構造のまま長期間存在し続ける可能性はなく、戦時、平和時いずれにせよ、イスラエルの政策は、現政権下でのヨルダンの清算と大多数のパレスチナ人への権力の委譲に向けられるべきである。政権を東岸に変えることは、また、ヨルダン西部のアラブ人の密集という地域的な問題の解決をもたらすだろう。戦時、あるいは平和な状態で、移住、あるいは経済と人口統計的な封鎖を行うことが両岸の 変革を約束することになる。我々はできるだけすみやかに、このプロセスを加速しなくてはならない。PLOが出す計画、イスラエルのアラブ人らの計画、1980年9月のシェファームの計画、自治国家計画、つまりいかなる妥協や地域分割案も拒絶されるべきである。アラブ人にはヨルダン、ユダヤ人には西岸地区と2つの国家に分割することなしに暮らし続けることはできない。ユダヤ人がヨルダンから海まで支配せずに、その存在も、安全もないとアラブ人が認識して初めて純粋な共存と平和が訪れるだろう。彼ら自身の国家と安全はただヨルダン内部の彼らのものだ。(17)


27.イスラエル内部の67年のエリアとそれを越えた領域、48年のものとの区別はアラブ人には常に無意味で、最近は、もはや我々にとっても重要性を持っていない。この問題は67年時点のいかなる区分もなく見られるべきである。将来いかなる政治的体制になろうと、誰が軍事的指揮権をとろうと、アラブ固有の問題の解決は、ただ、彼らがヨルダン川までとそれを越えて保証された国境を持つイスラエルの存在を認めた時にだけ訪れるということを明確にすべきである。この困難な時代、ほどなく突入することになる核の時代、我々は存在していかなくてはならない。核の時代にユダヤ人の人口の4分の3が海岸線に集中して生活することはもはやできない。


28.したがって、人口分散は、最も高い順序の国内戦略目標である。;そうでなければ、我々は、いかなる国境内でも存在し得ない。ユダヤ、サマリアおよびガリラヤは我々の国家的存在の唯一保証するものであり、山岳地帯で大多数にならなければ、我々は国を支配することはなく、行き場を失い、初めは外国人だった十字軍のようになってしまう。国を人口統計学的に、戦略的に、経済的にあらためてバランスをとることは、今日最も重要で中心的な課題である。今日、ベールシェバから上部ガリラヤまで分水嶺を押さえるという国家政策は、ユダヤ人のいない山岳地帯を確保するという重要な戦略的計画から生じたものなのだ。(18)

29.東側正面の目標達成は、まずはこの内部戦略目標の実現にかかっている。政治的、経済的構造改革は、こうした戦略的目標を実現することになり、ひいては全体変革達成の鍵となる。我々は、政府が過剰に関与する統制経済から、開かれた、自由な経済に、そしてアメリカの納税者に依存する状態から脱却し、我々自身の手で、純粋に生産的な経済インフラを構築するよう変革しなくてはならない。もし我々がこの変革を自由に、そして自分の意思でできないなら、我々は特に経済、エネルギー、政治の分野で世界開発の枠組みに組み込まれ、孤立を深めることになる。(19)


30.軍事、戦略的な視点からすれば、アメリカ主導の西側は、世界のあちこちでソビエト連邦の地球規模の圧力に耐えられず、イスラエルに対する軍事、経済援助は期待できず、80年代は孤立しなくてはならない。これは今日我々の許容範囲にあるが、待ったなしの事態である。(20)世界の急速な変化は、世界のユダヤ人たちにとって、ただイスラエルだけが最後の休息地、存在オプションになるという事態をもたらす。アメリカのユダヤ人社会、ヨーロッパ・コミュニティ、ラテン・アメリカのいずれも現在の形のまま将来も存在するとは考えられない。(21)


31.この国に我々が存在することは確かで、強引な方法、裏切りをもってしても(サダトのやり方)我々をここから排除することはできなかった。誤った「平和」政策やイスラエルのアラブ人という問題や、領土問題の困難さはあるが、我々は近い将来、これらの問題にも効果的に対処できる。

結論

1.中東におけるこのシオニスト計画が実現するという大きな可能性と、なぜこうしたことを公開するかを理解できるように3つの重要なポイントを明確にしなくてはならない。

2.計画の軍事的背景

計画の軍事的条件は上では述べられていないが、多分にイスラエルのエリート層の会合などで「説明」されているように、多くの機会に、このポイントが明らかにされている。イスラエル軍は、全部門で、上に述べたような広範な占領という実際の仕事を行うには不十分である。実際、度重なるヨルダン川西岸地区のパレスチナの極度の「不安」に対してさえ、イスラエル軍があまりに引き込まれてしまっている。それに対する答えは、「ハダド軍」や「ビレッジ・アソシエーツ」(または「ビレッジ・リーグ」として知られている)が支配する方法である:人口から完全に分離し、いかなる封 地も派閥構造も持たない「リーダーたち」の下にいるローカル軍(例えばファランジストが持っているようなもの)である。イーノン(Yinon)が提案するのは「ハダド軍」や「ビレッジ・アソシエーツ」、それに疑いもなく類似しているものである。そのような状況では、イスラエルの軍事の優勢は今よりはるかに大きくなり、その結果、西岸やガザのような、いかなる反乱運動も、今日(1982年7月)のレバノン のように、大きな屈辱を味わうという「罰」、あるいは都市爆撃と消去、あるいはその両方が与えられるだろう。これを確実なものにするために、口頭で説明する計画では、焦点となる地域において、移動破壊兵器を装備したイスラエル機動隊を設立、配備することを要求している。実際、我々はハダドランドでこうしたものを見ており、ほどなくこのシステムの最初の1例を南レバノンか、すべてのレバノンで機能するのを見ることになるだろう。


3.右の軍事的仮説や、全体の計画は、アラブが今以上に分裂し続けて、彼らの内部に真の進歩的な大衆運動が起きないということが前提である。こうした2つの前提は、計画がうまく進行している場合にだけ、結果として、取り除かれるかもしれない。

4.なぜこれがイスラエルで公表される必要があるのか?

公表する理由は、イスラエル・ユダヤ社会が持っている両面にある。:自由と民主主義の大きな手段は、特にユダヤ人には、領土拡張主義と人種差別と結びつく。そのような状況で、イスラエルのユダヤ人のエリート(TVやベギンのスピーチに従う大衆に対して)が説得されなければならない。先に示したように、現在行われている説得の第一歩は口頭で行われているが、それが不便になる時が訪れる。より多くの愚かな「説得者」と「説明者」(例えば、著しく愚かな中間ランクの職員)のために筆記資料が作られる必要がある。それで彼らは多かれ少なかれ「学んで」、他の人に説教するのである。この方法はイスラエルと20年代からの居住地(Yishuv)で機能してきた。私自身、(以前は反対だった)1956年戦争の前年、戦争の必要性や「我々にチャンスが訪れた時、西パレスチナの残り」を征服する必要性を、1965年から67年に、私やその他の人たちにいかに説明されたかはっきりと思い出す。


5.なぜ、この計画を公表することで外部から特に危険が生じないと考えられるのか?

そのようなリスクは、イスラエル内部の対抗勢力が弱い限り(状況はレバノンとの戦争の結果、変わる可能性がある)2つのソースから現れる。パレスチナ人を含むアラブ世界とアメリカである。平均すれば、パレスチナ人を含めてアラブ世界は、イスラエル・ユダヤ社会の詳細で合理的な分析ができていない。そのような状況では、イスラエルの領土拡張主義(それは十分本当である)の危険を叫んでいる人々でさえ、現実的で詳細な知識に基づくのではなく、神話上の信仰のために行っている。ナイル川、ユーフラテス川についての聖書の言葉、クネセトの存在しない壁の信仰、固執がいい例である。別の例としては、アラブ指導者たちの完璧に誤った宣言、イスラエル国旗の2つの青い線は、実際はユダヤ人の祈るショール(Talit)の縞から来ているのだが、ナイル川とユーフラテス川の象徴だという言葉に対する固執があげられる。イスラエルの専門家は、概して、アラブ人は将来に関する重要な議論をすることに注意を払わないと考えており、レバノン戦争がそれが正しいことを証明している。そうすると、なぜ、他のイスラエル人を説得する古い方法を続けるべきだろうか?

6.アメリカにおいても、状況は類似している。

シリアスなコメンテーターがイスラエルについての情報や意見を収集するのは2つのソースである。第一はアメリカの「リベラル」の報道記事。しかしそれはほとんどイスラエルの忠実な賛美者が書いたもので、イスラエルのいくつかの局面に対して批判的だとしても、、それはスターリンが言っていた「建設的な批判」の類いで忠誠心を示したものである。(現に、反スターリンと主張する者の中には、スターリンよりもずっとスターリン主義の者がいる。イスラエルは神格化される。)こうした批判の枠組みでは、イスラエルは常に「善意」を持っており、ただ「間違う」だけということになり、ユダヤ人が犯した聖書の大量虐殺が述べらないように、このような計画は議題に上がることはない。もう1つの情報ソース、エルサレム・ポストも似たような政策である。イスラエルが残りの世 界に対して「閉じた社会」である限り、世界は目を開こうとしないので、こうして公表することや計画を現実に移し始めることが可能となるのである。

イスラエル・シャハク
1982年6月17日
エルサレム

翻訳者について

イスラエル・シャハクはエルサレムのヘブライ大学における有機化学の教授であり、イスラエル人権市民同盟(Israeli League for Human and Civil Rights)の議長を務める。彼はヘブライ・プレスから重要な記事を集めたシャハク・ペーパーズを出版し、数多くの記事、書籍を記した。最近の書籍では、『イスラエルの世界の役割:抑 圧兵器(Israel's Global Role: Weapons for Repression, published by the AAUG in 1982)』がある。(1933−2001)
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