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NTTの施設設置負担金(電話加入権)が2011年をめどに廃止される。情報通信審議会は19日、NTT東日本、西日本が料金戦略の中で廃止を検討する場合は容認する答申をまとめた。国民は長年、電話加入権を資産と認識してきたが、NTTは「一時金であり返金には応じない」との立場だ。国民の保有する加入権の総額は、現在の定価で計算すると、約4兆3200億円(税抜き)に達する。払ったお金はどうなったのか。一切返金に応じないというNTTの方針に反発が広がりつつある。(Mainichi Shimbun)
■■政府、「債権」の弁明に矛盾
麻生太郎総務相は19日の国会で、「電話加入権は債権にあたるが、株のようなもので、値段は市場で変わる」と答弁した。株式と同じように、いったんNTTの手を離れると、さまざまな外部要因で値段が上がりもすれば下がりもするという意味と見られる。実際、電話設置が困難だった時代には市場で数十万円の値をつけたこともあった。しかし、債権なら企業が倒産しない限り、企業側が勝手に無価値と宣言などできないはずで、答弁は矛盾をはらんでいる。
電話加入権は、電話を新たに設置する際に必要なものとされてきた。旧電電公社時代には「設備料」の名目で徴収し、民営化されNTTになった85年に「施設設置負担金」と名前を変え、7万2000円(税抜き)の定価が設定された。戦後、全国の電話網建設で多額の設備投資が必要だったため、電話局から利用者宅までの回線(加入者線)の一部は利用者に負担してもらおうという趣旨で、徴収してきた。
加入者は電話を使わなくなった場合、NTTで休止手続きを取れば転売も可能。新たな利用希望者が業者を通じて加入権を買うと、「負担金」を払わなくても電話が使える。また、「電話加入権質に関する臨時特例法」で質権も認めており、02年度末で39万件の質権が設定されている。
しかし、携帯電話の普及などで固定電話を新たに設置する人は減った。加入権を扱う業者の販売価格も1万円前後、平均買い取り価格は5000円を割り込む水準に落ち込んでいる。
NTTは将来、インターネットを活用した割安なIP網を使った電話に既存電話網を切り替えていく方針だ。当然、その段階で旧来の電話システムに絡む権利関係は見直されるはずだった。
だが、IP化が進まないうちに、KDDIや日本テレコムなどが、加入権不要の固定電話に参入を表明し、固定電話も基本料金を含めた本格的な競争時代に突入した。NTT東西は来年1月から基本料金を初めて値下げするが、加入権の存在が新規顧客獲得のじゃまになるのは確実だった。
KDDIや日本テレコムは今冬、加入権のいらない固定電話サービスをスタートさせる。基本料金や通話料金も割安なため、NTTから乗り換える客が増えると見られる。このため、既存加入者に不満を持たれながらも、NTTは、廃止せざるを得ない状況に追い込まれたというのが実情だ。
■■「財産」と宣伝したのに--売却も不可能
電話加入権廃止で個人がこうむる最大のデメリットは、電話を休止した後、加入権を売却できなくなることだ。廃止になれば、電話加入権の取扱業者は、買い取りをやめる。
答申では、かつてNTTが「財産になります」と宣伝して、加入権の必要性をアピールしていたことも明らかにされた。審議会には、60人もの個人から「一般国民が損をするのは納得できない」「NTTの都合を押し付けないでほしい」などと廃止反対の意見書が寄せられた。
加入権が廃止された場合、新規加入者と既存契約の加入者との間で不公平感が出るのも確実だ。加入権取引業者で作る「全日本電話取引業協会」の武田貢事務局長は「既存の加入者と何らかの差をつける必要がある」と指摘し、NTT東西に改善を求めていく方針だ。
NTTは実は、加入権が不要な「ライトプラン」を02年に導入している。加入権分を考慮して基本料を1カ月当たり672円高く設定しているため、長く使うと割高になるが、単身赴任などでの短期利用に適し、初期費用が安く済む点などから、現在は新規加入者の9割がライトプランを選択しているという。同プラン導入は、加入権廃止の布石だったとの見方も有力だ。
■■経済界「やむなし」--関連業者は「国家的詐欺」
NTT加入権が廃止されれば、資産性が失われて、企業業績にも影響を及ぼすことになる。ただ、廃止論が浮上してから時間が経過しており、この間に独自に損失処理に取り組んだ企業や、資産全体に占める加入権の割合が小さい企業もあり、経済界からは「やむを得ない」との声も聞かれる。一方で、大量の電話回線を使う企業やレンタル回線業者、電話加入権取扱業者などにはダメージが大きく、廃止に反発している。
企業にとって、電話加入権は会計上、価値が劣化しない「非減価償却資産」と扱われ、貸借対照表の「無形固定資産」に計上されていた。今後損失処理を迫られることになるため、この日の答申では、損失を無税償却できるよう税法上の措置が盛り込まれた。
経済同友会の北城恪太郎代表幹事は19日の会見で「加入権の経済的な価値はなくなっている。(保有者は)お金を返してほしいと思うだろうが難しい」と理解を示した。日本経団連も8月に「廃止は妥当」との見解を示している。「全体の資産規模からいえば加入権の割合は少ない。廃止の方針や会計処理の方法が決まったら、淡々と対応する予定」(日立製作所)と冷静に受け止める企業もある。
トヨタ自動車は「加入時に資産でなく費用として処理した」として影響は全くないという。ヤマト運輸は、04年3月期決算で加入権の資産価値を市場での取引価格に見直し、15億円の特別損失を計上した。
一方、無人遠隔監視システムなどで大量の回線を使用しているセコムは、04年3月期の単独決算で電話加入権を約21億3400万円(総資産の0.35%)計上。電話代節約のためIP電話などの導入を進めているが「通信速度が不安定なIP電話はセキュリティーシステムにはなじまず、固定電話回線に頼らざるを得ない」と困惑の表情。
電話加入権の売買をする業者には「加入権廃止のリスクを考え買い取りを中止したが、赤字に転落した。廃業に追い込まれてしまうのではないかと不安だ」と訴える声もある。電話レンタル業者、日本テレシス(福井市)の前波亨哉会長は「財産に見せかけて売れるだけ売ったらただにする国家的詐欺商法だ」と反発している。
2004年10月20日
http://www.mainichi-msn.co.jp/it/coverstory/news/20041020org00m300094000c.html