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悲しい歌(ルサンチマン)はきらいですか?/神聖ローマ帝国の滅亡からヒトラー、そして小泉現象の日本まで(概観)
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投稿者 鷹眼乃見物 日時 2005 年 5 月 14 日 05:34:49: YqqS.BdzuYk56

●統一国家を模索する中で萌芽した19世紀ドイツのナショナリズムはフランス革命の余波(厳密にはナポレオン戦争)とイギリスの産業革命に大きく規定されていたことは周知のとおりです。そして、そのドイツ(ドイツ人たち)が精神の拠り所としたのが、すでにウエストファリア条約(1648)で消滅していた『中世ドイツ(第一)帝国』(神聖ローマ帝国)の「栄光」でした。

<注>皇帝一人ひとりの本気度の程度はどうであったか確かめるよしもありませんが、建て前上、この場合の「栄光」は神聖なる栄光(グロリア/gloria、栄光の賛歌はthe Gloria)です。つまりイエス・キリストのグロリアを称えることで、地上で最高の権威として自らの皇帝権が神から授与されるという意味(神権政治の仕組み)です。

●また、この時代のドイツでは英仏より遅れて始まった産業革命(プロイセンが中心)によって中産階級意識を持つ国民層が大分育っていました。従って、ごく大雑把な話になりなすが、このころ成立したビスマルク体制による『ドイツ第二帝国(1871〜1918)』(皇帝ウイルヘルム1世〜皇帝ウイルヘルム2世)の成立は、これら中産階級意識を持つ国民層の支持によって成立していた訳です。

<注>「大日本帝国憲法」の発布(明治22/1889)は、この『ドイツ第二帝国』の時代に当たる。1890年には、ビスマルクを罷免した皇帝ウイルヘルム2世の親政が始まっていた。ウイルヘルム2世は、いわゆる「新航路政策」(ドイツの世界侵略政策/3B政策と相まって、これがドイツの孤立化、及び列強との対立を深めた)と「パン=ゲルマン主義」を宣言して軍備拡張に力を入れた。この頃がドイツ帝国主義の絶頂期。

●やがて、19世紀末になるとドイツのナショナリズムは過激さを増し、従来は利害対立関係にあった都市中間層と農民層を結集した、いわゆる『鉄と穀物の同盟』が成立して「帝国主義的な世界政策」の基盤を確保する時代に入ります。そして、間もなくドイツ自らが呼び起こす形で第一次世界大戦の時代(1914〜18)に入ります。捉え方次第ですが、この時、ドイツには既にナチズムの予兆があったと見なすことができるようです。

●終戦後の一時期、戦争の辛苦・悲惨と銃後の生活困窮の体験から労働者と兵士の一部が手を結び『労兵レーテ体制』(Raetesystem/直訳すれば赤色(共産主義)体制/労働者と兵士が手を結んだ組織で、資本主義に代わる新しい政治・経済体制の創造を目論む)を誕生させます。しかし、これに危機感を持った軍部の一部・財界・労組・社会民主党が結集することとなり、結局、この結集はドイツ極左集団(スパルタクス団)をも抑えることに成功し、更に都市と農村の中産階級層の支持の獲得にも成功して、世界の流れを先取りする形で近代民主主義的な「ワイマール共和国」(ワイマール憲法体制/1919-1933)を誕生させました。

<注>ワイマール憲法は、1919年、ワイマールで開催された国民議会で制定されたドイツ共和国憲法である。国民主権、男女平等の普通選挙の承認、生存権(社会権)の保障など時代を遥かに先取りする内容を規定した。この憲法は、その先進性から20世紀民主主義憲法の典型とされている。しかし、このように時代を先取りした民主主義憲法も、ナチス・ヒトラーの政権掌握によって、事実上、歴史から消滅したのである。現代の世界で、このワイマール憲法を超える存在として世界中から評価されているのが、平和主義を唄うモラル・ハイグラウンドな「日本国憲法」である。

●しかし、戦後賠償問題を始めとする「ヴェルサイユ条約」の重荷がドイツ国民の上に圧し掛か駆り始めると、次第にドイツ国民の間に共産主義者に対する『匕首(あいくち)伝説』(共産主義者の卑怯な背後からの匕首での一突きがドイツを不幸に陥れたというルサンチマン/一種の八つ当たりor人身御供を求める恨みの感情?)と呼ばれた怨念と復讐の感情が広がります。特に、このルサンチマン(ressentiment)を強く意識したのが、時代の先行きを悲観した都市部に住む中産市民層でした。慧眼にも、ここに目をつけたのがナチス党(国家社会主義ドイツ労働者党)の党首ヒトラーです。

●「ヴェルサイユ条約」の重荷は「ドーズ案体制」(アメリカ資本の導入でドイツ経済を復興させるプラン)によって切り抜けることになるのですが、今度は、発展モデルとなったアメリカ流の消費文明にうつつをぬかす新中間層の、いわゆる「ワイマール文化」の盛り上がりに対して、地方で取り残された農民層が強い反感を持つようになります。このような、国民感情のネジレがもたらす混乱が長く続くうちに1929年の「世界大恐慌」が追い討ちをかけます。この時、最も大きな没落への危機感と恐怖心を増大させたのは、やはり都市部の中産市民層でした。

●ここに至り、軍部・財界・ユンカー(東部ドイツの大地主層)を中心とするドイツの支配層は再軍備と恐慌からの脱出を求めて、大統領ヒンデンブルグの特別権限(ワイマール憲法48条の規定)の実行を強く要求して「大統領内閣」を組閣させました。しかし、当然ながら国民大衆の大きな支持が必要となり、そこへ付け入ったのが圧倒的な都市部中間層の支持を集めていたアドルフ・ヒトラーです。このようにして、ヒトラーは、ヒンデンブルグの指名を得る形で、つまりワイマール憲法の下で“きわめて合法的に”「ヒトラー内閣」を組閣することに成功したのです。これが、ナチス党の絶対的な指導の下で、ドイツの支配層と中間層が提携して創った『ドイツ第三帝国』です。やがて、大統領ヒンデンブルグが死ぬと、国民大多数の圧倒的な支持によって総統・ヒトラーの独裁体制が完成したことは周知のとおりです。

●なお、この時ヒトラーはマスメディアの支配についても抜け目無く目配りをしていたのです。・・・この点については、下記の資料を転載しておきます

『・・・(途中略)・・・私は、この数十年間、周囲の状況によって、やむなく殆ど平和のことばかりを口にしてきた。軍備をドイツ民族に取り戻すことができたのは、もっぱら私がドイツの平和への意志とその計画を何度も再確認してきたからに他ならない。この軍備は一歩一歩着実にドイツ国民のために自由を回復し、次の段階に進むための必要条件であることがますます明らかになってきた。・・・(途中略)・・・私が、ここ数年いつも平和を守ると言い続けたのは、強いられて不承不承そう言っていたに過ぎない。当時は未だドイツ国民の心理を段階的に変えていく必要があったのだ。また、平和的手段で獲得できない場合は力によって獲得すべきものがあることをドイツ国民に徐々に理解させ(教育し)ていく必要があったのだ。』

【ドルーシュ著:ヨーロッパの歴史(ギュンター・ファン・ノルデン「第三帝国講義」p39)p341より引用/これは、ヒトラーが1938年11月10日(ポーランド侵攻の1年前)にドイツ中のジャーナリストと出版業者を集めて行った演説。この時、ドイツのマスコミは、大政翼賛的な雰囲気の中でヒトラーに対する批判の言葉をもはや失っていた。】

(現代日本の状況とヒトラー時代の類似点)

●現代日本の都市部に住む中産階級の人々を模式図的に捉えてみると・・・4千万〜5千万円位の借金をして都内のマンションか郊外の戸建住宅を購入したが、不動産価格の引き続く値下がりによって、その価値は半分〜1/3に下がってしまいました。また、賃金の横ばい(実質低下)、リストラや出先・子会社等への出向などにより給与水準も甚だしく低落傾向です。ローンの残債(大きな借金)を返済するどころか、資産価値の値下がりによって逆ザヤとなってしまっています。老後はローン残(借金)が残るだけだし、年金も先細るという大きな不安を抱えています。

●元来、資本主義経済は将来の成長が約束されてこそ成り立つものですが、今の日本で起こっているのは全く反対の現象です。つまり、日本の中産階級層の多くの人々が未来への望みを殆ど見失ってしまっているのです。それは、未来に対する深刻な閉塞感です。そこで、彼らの心の中では、メラメラと“八つ当たりの的を探し回る不条理の情念が燃え上がり、あるいは適当な人身御供(弱者叩きのためのターゲット)を求めて巷を経めぐり、恨み辛みの感情”が煮えたぎり始めています。これは紛れもなく、第一次世界大戦後の大混乱期にドイツの中産階級層の心に巣食ったルサンチマンと同じ性質の感情です。

●これこそが、今の日本に漂っている鬱陶しく重苦しい、そして不自然に捩れたような鬱積した感情の震源地です。この暗鬱なルサンチマンは、何か切欠さえあれば“非国民、売国奴!”などの罵倒と罵りの声に変わり、その矛先を向けるべき負け組み(弱者)を探し回っています。これが、今の日本のポピュリズム(劇場型大衆政治)の苗床であり、過剰な“勝ち組み、負け組み!”呼ばわりの温床です。今、街中の若者や子どもたちの間にも、このルサンチマンの感情が伝染し広がりつつあり、例えば“勝ち組は高給ハムにされて食われるが、負け組みは精々のところ合い挽きひき肉かハンバーグだ!”というような、趣味の悪い、暗〜いジョークが流行っています。

●日本社会のルサンチマンは、もはや相当に重態のようです。そして、このようなやり場がない怨念と暗い情念の渦の中にとり込まれた都市部の中産層や若者たちが、唯一、希望を託せるのが、他でもないワンフレーズ・ポリティクス型の稀代のポピュリスト政治家たち、すなわち小泉純一郎、石原慎太郎、安部晋三なのです。そこで象徴的な社会操作概念(メコネサンス)として登場するのが靖国神社参拝であり、愛国心であり、軍事国体論なのです。ルサンチマンへの反動として、これらは都市部の中産層や若者たちの多くが受け入れ易い、未来への希望の代償となっているのです。かくして、日本の社会は、やり場がない怨念のルサンチマンに侵食されながら、右傾化への道を直走っているのです。

(新たなる展望のために)

●先進的な「ワイマール憲法」が存在したにもかかわらず、“きわめて合法的に”ヒトラーのナチス政権が誕生したことの意味を良く考えるべきだと思います。これは「憲法」の限界を示すとともに、原則としての憲法の「理念性の役割」の重要さを教えてくれています。喩えれば、目的の建物を作るのに都合が悪いからと言って、長さを測定する物差し(メジャー)の基準を変えて良いと言う訳にはゆかぬのと同義ではないかと思います。

●また、20世紀初頭のドイツ社会の状況が、あまりにも日本の現状に酷似していることが不気味です。動きつつある時代の流れという観点からすれば、尚更です。これは薄気味悪いほど符合しています。小泉、石原、安部がヒトラーに似ているというだけでなく、その先に来る真打登場を予告しているようにさえ思われて不気味です。

●「絶対平和主義」(平和原理主義)と「平和主義」は違うと思っています。日本国憲法は「平和主義」だと思います。問題は、民主的・論理的・歴史的・客観的に議論を尽くし、一人でも多くの国民が理解し、納得するように知恵を出し合い、十分過ぎるくらいに議論を尽くすことです。強権的・偏向的・恣意的な審議だけは絶対に許せないと思います。

●「憲法」と「軍事国体論」についての議論は、一部の学者・官僚・政治家たちの机上の空論にのみ任せてはならないと思います。特に、法学者・憲法学者・政治学者等の法曹界の専門家たちが、積極的に一般市民を巻き込む形で議論をすべきだと思います。いずれにせよ、日本のこれからの“軍人”たちに神憑りな死に方を再び強いるようなことがあってはならないと思います。普通の人々は、もし自分が戦って死ぬべき運命にあるとするなら、自分の最愛の人のためにこそ戦い抜きたいのではないでしょうか。

●新ローマ法皇、ベネディクト16世がコンクラーベで選ばれて間もないですが、およそ2000年を超えるローマン・カトリック・キリスト教の歴史は、やはり、今後も人類の未来に大きな影響を与え続けるだろうという意味で重要です。そこで見逃すことが出来ないのが、「ルサンチマンの感情」から絶対に逃れられない宿命を背負う「人間存在の弱さ」(不条理なルサンチマンの情念の暴発)に対する防波堤の役割を担っているということです。ローマ教会の中にも色々あるようですが、サン・フランチェス派に代表されるような、歴史体験の積み重ねから寛容の知恵を学びつつ、よき伝統として、それを継承する一派が特に重要な役割を担っているようです。

●同じ、宗教と言っても、今のアメリカ・ブッシュ政権を引っ張っぱる宗教原理主義キリスト教集団、ルサンチマンの無駄な消費(テロリズム)に明け暮れるイスラム系の原理主義諸派、日本の旧国家神道(靖国神社信仰の母胎/日本伝統の神道とは異なる!)、その他の雨後の筍の如く国内外で出没する新興・エセ宗教群は、端的に言ってしまえば、人間の理解に関する視野が非情に狭く、しかも寛容さに欠けるという意味でカルト教団(あるいは詐欺師・ペテン師集団)ではあっても、“人間の救済のための宗教”とは決して言えないのです。

●しかし、これらの新興・エセ宗教群こそ、いともたやすく、人間の弱さと、その人間に宿命的に付き纏う「ルサンチマンの情念」に苦しみ悶える人々への「いともたやすい救済」を装うので、絶えず注意しなければならないのです。国の内外を問わず、カルト教団などと談合・癒着・結託した第二、第三のヒトラー型政治権力の出現こそ、我われ普通の人間が最も警戒しなければならないことです。

(参考URL)
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/

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