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メディアなどの緊張感のなさ
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投稿者 外野 日時 2005 年 1 月 29 日 19:34:20: XZP4hFjFHTtWY

(回答先: 「クラウゼヴィッツの暗号文」広瀬隆 投稿者 外野 日時 2005 年 1 月 29 日 17:40:40)

内閣調査室の手先として、「月刊諸君」「週刊文春」「月刊文藝春秋」の編集長を経て文藝春秋の社長となった田中健五は、1995年の『マルコポーロ』(文藝春秋社)に載った「戦後世界史最大のタブー、ナチ『ガス室』はなかった」という記事によって辞任させられています。
その時の『マルコポーロ』の編集長だった花田紀凱は、田中健五の辞任の前に解任されていますが、その後朝日新聞の「uno!」や角川書店「メンズウォーカー」の編集長に迎えられたり、テレビや雑誌などにコメンテーターとしてよく登場するなど、メディアは緊張感のなさを露呈させていました。

この緊張感のなさはどこからくるのか。
たとえば、1996年のO157騒動の際、アメリカはそれが細菌テロの疑いがあるとして、アトランタのCDC(アメリカ連邦政府の一組織。感染症などに関する世界で最も権威のある研究機関)から日本に調査団を派遣しました。ちなみに、アトランタではオリンピックの開催で爆弾騒ぎも起こるなど奇妙にも騒然とした状況だった。
この調査団の調査結果は不可解なことに日本では何も報告されませんでした。少なくとも日本のメディアはまったく報じていません。報じたのは、その調査団の帰国をうけてアメリカ政府が太平洋戦争時代の日本の細菌部隊「731部隊」の関係者を入国禁止処分にした、ということでした。それも、詳しくなど報じていません。テロップだけですませニュース番組もあります。筑紫哲哉が「しかし、そもそも細菌部隊を取引で免罪したのはアメリカであります」とコメントしたのが僕の知っているニュースでのただ一つのコメントです。

しかし、ニュースでは報じられませんでしたが、アメリカが入国禁止処分にしたのは細菌部隊の「731部隊」関係者だけではありませんでした。従軍慰安婦動員に関与した関係者も同じく入国禁止処分にしているのです。理由はまったくわかりません。アトランタのCDCの専門家たちは何を調査から得たのか。謎のままです。O157で大きな被害をこうむっていた日本の市民には何一つ知らされないのです。

実は細菌部隊出身の医師たちは戦後医学界にあって出世し、また多くの生体実験を行っており、O-xxx型大腸菌についても幼児を使って実験し死亡させたりしているのですが、1946年に創設されたCDCの前身はたしかフォートデトリックの米陸軍研究所で、このフォートデトリックは日本の細菌部隊の免罪の取引材料とされた細菌部隊の各実験資料を受け取った組織です。(取引の際にアメリカが言った台詞は、人間としてとても出来ない実験であるので…、というようなものでした)
ちなみに、「731部隊」などの実験資料などをアメリカに移管する作業などをしたのは、CIC(アメリカの陸軍諜報部。CIAの前身)に対するおよそ一億ドルの支払いと引き換えに、A級戦犯で投獄されていた児玉誉士夫を刑務所から出したアメリカの高級軍人ウィロビーです。児玉誉士夫はその時の余った金で自民党を作り、投獄によって中断されていた、自分でコントロールできる新しい政党──暴力団と政治との関係の再構築──を組織するという作業をおこなったのです。

「731部隊」を追及していたアブラハム・クーパーが、1999年にロサンゼルス・タイムズ紙に次のような記事を書いています。
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「ナチス・ドイツの大量虐殺をおこなった犯罪者を追及したシモン・ヴィーゼンタールのようなナチ・ハンターがいなかったらどうだろう。もしアメリカがその恐ろしい実験結果と引き換えにアウシュヴィッツの虐殺医師ヨーゼフ・メンゲレを免責したらどうだろう。あるいは、戦後のドイツがナチスの息のかかった上層部の医師を国立医療センターに配属したり、主要な医学校の学部長にしたり、新しいドイツ防衛軍の軍医総監に任命したらどうだろう。

 そんなことはありえない、と皆さんは言われるだろうか。二流の作り話か三流小説だと思われるだろうか。しかし、そうではない。私が今申し上げたことはまさに戦後の日本の反省なき幹部の犯罪者たちの現実なのです。彼らの行為はその残虐性と堕落の程度においてナチス・ドイツに決して劣るものではない。そして、信じがたいことだが、私は最近日本の戦争犯罪者から誘われて彼の家を訪問し戦時中の役割を満足げに話すのを聞いてきた。

 私は神戸近くに住む76歳になる元気な溝渕俊美氏にお会いして2時間半のインタビューをした。彼は今も元気で数百人に上る日本軍731部隊の同窓会幹事をしている。731部隊といえば第二次世界大戦以前から戦時中にかけて満州において秘密裏に(その実態は今では明らかになっているが)生物化学兵器の生体実験をおこなった部隊である。

 ドイツはメンゲレらによる恐怖に正面から立ち向かっているが、日本が731部隊の石井中将や溝渕氏の犯罪を認めるには時間が経ちすぎている。反省して過去を悔いている一部の元兵士を含めた日本の活動家の努力にもかかわらず、若者に歴史の全体像を教えようとしない今の日本政府は半世紀に及ぶ虚像の壁をいまだに維持しつづけている。
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『にっぽんのアウシュウィッツを追って』高杉晋吾著(1984年刊)には次のように書かれています。

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 この名簿(細菌部隊の)をみても、兵士と幹部の間の戦後の足どりは画然と分かれている。そして幹部たちがいかに戦後の医学の世界で影響力の大きい地位を得ているかが判るだろう。副知事、大学学長、大学教授、病院長、研究所長、研究所教授等がズラリと並んでいる。ナチスの強制収容所における人体実験者がアルゼンチンのジャングル等に追いこまれ、現在もなお追及を受けつづけているのとくらべて何という違いだろうか?私は「日本の医学界は七三一部隊天国なのだ」と思った。
 これらの研究者たちが戦後の医療・医学の世界で何をしたのか。私はさらにこれらの人々が生きる現代医療の構造の中で、彼らの思想が、変革されるべきモメントを失ったまま行動する時、どのように医療の荒廃を発生させるものであるのかを、特に現在問題になっている新薬開発の中で発生した諸事件を、一人の人物を通じて描いてみよう。

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 日本の現代医療は、七三一部隊と変わりのない人と物を見る思想状況と、患者をマルタとして扱って、最後には殺してしまっても平然としていられる技術と環境状況が広く存在している。その原点に七三一部隊が存在しているのである。
 私たちは現在、医療や製薬メーカーの凄まじい荒廃を嘆いている。むしろ医療によって、薬によってわが子の命を奪われ、わが健康を奪われるという恐るべき状況に追いこまれている現実と、七三一部隊のマルタの現実を結びつけるイメージ力を、誰が持っていなくても不思議ではないのだが、しかし歴史的、状況的現実はゆくりなくもそのことをハッキリ示しているのである。つまり日本の医療も医学も、患者を見る基本的視線は七三一部隊の目なのである。
 ところで、日本医療の価値観の逆転の機会を失った最大のモメントは米占領軍と元七三一部隊との「免罪取引」にあったといわれている。
 私は、この「免罪取引」の経過をまとめながら、米軍は単に「七三一部隊員」の生存基盤を作っただけではない。米軍の責任の最大のものは、日本医療の腐敗の思想的根拠地を日本に作った事だ、と痛感している。それは前述の、「思想的影響力」による医療汚染と荒廃の恐ろしさを痛感するからだ。
 七三一部隊にとって本当の悲劇は、戦犯になって捕らえられることなのではない。むしろその姿を秘して日本に帰り、日本の暗部にひそんで、その思想を増殖したことにある。彼らには、その思想を変えるべきモメント=契機が存在しなかった。そこにこそ彼らの悲劇があり、日本医療の悲劇があった。その思想的変革を阻んだ元凶は米軍であった。米軍が、七三一部隊と「犯罪協定」を結んで、七三一部隊の免罪と糧道の確保と拠点作りを保証したのである。

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「他民族を抑圧する民族は、自らが自由ではありえない」ということばを私はしばしば繰り返した。他民族を侵略し、抑圧し、そのことに真の反省を加えない民族は、自分自身の首をしめる愚かさから永遠に解放されないだろうと私も思う。
 かつて異民族をマルタとして扱った七三一部隊の腐蝕した「医」の思想は、戦後は、差別され抑圧される民衆に向けられ、囚人や不幸な乳児がそのいけにえにされる。それは戦時にあっては異民族へ、植民地を失った段階では同胞へ、と果てしなく続く。
 それを実行する者はそれを実行する「特権」を誰から与えられたのであろうか。
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今回のメディアや政治家の緊張感のなさは戦後のこういう経緯からもきているものなのかもしれません。

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