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政府開発援助のまやかし   訳・富田愉美 【Le Monde diplomatique 】
http://www.asyura2.com/0505/hasan41/msg/924.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 8 月 19 日 21:17:15: ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: 叩かれた日本のG8発言  【Nevada経済速報8月19日】 投稿者 愚民党 日時 2005 年 8 月 19 日 21:09:16)

政府開発援助のまやかし

ダミアン・ミレ(Damien Millet)
第三世界債務帳消し委員会(CADTM)フランス代表
エリック・トゥーサン(Eric Toussaint)
同ベルギー代表
訳・富田愉美


http://www.diplo.jp/articles05/0507-2.html

 これからあげるいくつかの理由は、南側諸国に向けた2005年の政府開発援助(ODA)が大幅に増額するらしいことを示している。第一に、2005年2月に援助供与国(ドナー国)が世界銀行に対して、「その贈与および貸付総額を最低25%引き上げるために(1)」180億ドルを拠出すると決定したことが挙げられる。第二に、2004年12月にインド洋周辺諸国を襲った津波によって、甚大な被害を受けた沿岸地域の復興のため、多くの財政援助がアジアに流れ込んだことである(2)。第三に、2004年11月にパリクラブ(主要債権国会議)において、イラクの債務の80%を帳消しにするという合意が結ばれたことである。(そのうちの30%は2005年1月1日に実施する)。アメリカとその同盟国は、2004年度のODAの中にイラクでの支出22億ドルを含めているにもかかわらず、さらに「イラクと債権国との間の二国間協定の進展いかんでは、DAC(開発援助委員会)(3)の参加国は対イラク債務の削減分として最大150億ドルを2005年度のODAに組み入れることを通告しうる(4)」とされている。

 しかし、そうした報道向けの発言とは裏腹に、国民総所得(GNI、国内総生産に「海外からの収入」を加えたもの)の0.7%をODAに割くという、1970年に国連の場でたてた約束を、富裕国の政府の大半は反故にしているのである。たしかに、1990年代に見られたような、援助額の著しい減少は押しとどめられたようである。DAC参加国のODAがGNIに占める割合は3分の1(1990年の0.34%から2001年の0.22%へ)減少した後、2004年には0.25%へと上昇しており、それは786億ドルに相当する(5)。この逆転現象は、特筆すべきではあるが、それでもなお、目を見張るほどの、というにはあまりにも程遠い。

 この0.7%という数値目標は、ノルウェー、ルクセンブルク、デンマーク、スウェーデンやオランダといったヨーロッパ北部の一部の国でしか、達成されていない。イタリア、アメリカ、日本の三カ国は0.2%すら超えていないのだ。2005年5月24日、欧州連合(EU)諸国は今後2010年までに0.56%、2015年までに0.7%へと目標値を更新した。この約束は、1970年に結ばれた約束よりも守られる可能性が高いと言えるだろうか。

 実のところ、ODAの性質自体にも、またその内容にも問題がある。DACによって与えられた定義には限界があり、迷走はおのずと明らかであった。ODAは、「援助の受益国リストの第一部に記された国と地域を対象として、公的部門により、経済発展を促進して生活条件を向上させることを主要目的として与えられる贈与と貸付」からなっている。DACは、「第一部」と呼ばれるリストを適宜改訂しており、現在そこには、この援助の対象国として150の低・中所得国・地域が挙げられている。「第二部」を形成する他の国、いわゆる「移行国」には、旧ソ連の国々に加え、より進んだいくつかの国が含まれるが、彼らに供与される贈与と貸付は、ODAの中には入っていない。

 反対に、ODA有資格国に対して市場金利より低い金利で貸与され、贈与部分(6)が25%以上になれば、貸付であってもODAとして計上される。そして、その総額は、もはや無視し得ないものになっている。2002年末の段階でODA絡み(および公的援助絡み)の南側諸国の債務は1717億ドルに上っている(7)。元をたどれば、要はODAそれ自体が債務の発生源になっているのである。結局のところ、ODAが生み出す返済義務が、南側諸国に資本の多大な流出を生じさせているのだ。優遇金利の適用を受けた二国間ODAを見てみると、1996年末から2003年末の間に、発展途上国は新たに受け取った貸付額より310億ドルも多く返済している(8)。これらをすべて考え合わせると、ドナー国は、彼らが援助していると称する国々を食い物にして富を増やしていることになる。

債務帳消しという財源?

 こうした贈与と貸付の目標の定義があまりに不鮮明なために、様々な統計操作がなされるがままになっているのである。実際のところ、融資を受けて行われている主だった事業は、住民が優先的に欲しているものからは程遠くなっている。2003年の数字を見ると、ODAの12%は債務を減らすことに充てられており、結局のところ債務国の資金フローはまったくプラスになっていない。しかも、この数字は3年間で4倍になっている。放棄された債権の大部分は、古くなった不良債権であって、これがペテンの原因となっている。そうした債権の放棄は、援助国の側の会計を健全化するという操作にすぎず、彼らはマスコミ報道の面で二重に得をする。なぜかといえば、まず債務の軽減を声高に発表し、次いで財政上は同じ操作でありながら、翌年にはODAの増額を発表できるからである。

 2005年6月11日のロンドンにおいて、先進七カ国(G7)の蔵相が、18の重債務貧困国(HIPCs)の多国間債務の一部を帳消しにするとした発表も、このロジックによるものである。「歴史的な」優遇措置であるかのように示された、世界銀行およびアフリカ開発銀行と国際通貨基金(IMF)からの債務の帳消しは、HIPCイニシアティブを遂行した国々しか対象にならないものだった。HIPCイニシアティブとは、少なくとも4年以上の歳月にわたる、ネオリベラリズムの拘束(多国籍企業の利益のための市場開放、民営化、経済の自由化、付加価値税のような間接税の拡大、教育費や医療費負担の増加など、とりわけ貧しい層にとって厳しい措置の数々)を意味する。これら18カ国というのは、途上国全体の人口の5%にすぎない。この債務帳消しのコストはG7の国々にとっては年間12億ドルでしかない。つまり彼らの軍事支出の600分の1であって、しかも現在のODAに上乗せされることになるという保証は少しもない。

 フランスは30%の債務軽減をすることで、その分を除けばODAは減少しているにもかかわらず、2003年度のODAを増額すると発表できた(9)。同様に、ベルギーは、コンゴ民主共和国(旧ザイール)に対する債務軽減をすることによって、2003年度のODAの純増を発表することができた(GNI比では2002年の0.43%から0.60%へ)。しかし、2004年にはもう0.41%へと下落し、まやかしであったことが明らかになっている。2004年の記録は、対アンゴラ特別債務削減によって、ODAが187.5%増に跳ね上がったポルトガルが手にした。

 そのうえ、こうした債務帳消しは会計処理にも問題がある。経済協力開発機構(OECD)のルールにのっとれば、1990年度に供与され2005年度に放棄された商業融資は、2005年度のODA増額として処理されることになる。帳簿上では、まるで新しく資金が提供されたかのようになっているのだ。実態はまったくそうでないにもかかわらず。

 もっと悪いことに、そこで算入されるのは、放棄した債権の額面価値なのである。しかるに、関係債務国が抱える様々な問題を直視するならば、もしある債権者がその関係国に対する債権を売ろうとした場合に、買い手を見つけるには大幅な値引きに応じなくてはならないだろうという事実を踏まえ、債権の実際の評価額には大幅な割引を組み入れなくてはならない。HIPCsによれば、「アメリカ政府(貸付ポートフォリオの現在価値による評価を議会から任されている)は、92%の割引率を適用している(10)」。こうしたことからすれば、アメリカを含む先進国の政府がしているように、放棄した債権の分を額面価値で新たにODAに計上するというのは、あからさまな不正である。

影響圏の強化

 さらに、ODAの4分の1以上を占めている技術協力には、「被援助国の出身者で、自国あるいは国外で教育や研修を受けている者への無償援助」や、「現地に派遣されたコンサルタントや、アドバイザー、それに準ずる人々、ならびに教師や、行政官らの費用をまかなうための支払い」といったものまで含まれている。しかしながら、リッチな国から派遣された教師たちが授業をするのは、通っている生徒の大半が他の駐在員の子弟であるような学校がほとんどであることは、周知の事実である。

 フランス、カナダ、オーストリア、ドイツといった国々は、ODA有資格国の出身で、自国で大学の専門課程以上に在籍する学生にかかる教育コストも、学費としてODAの中に計上している。なにより、DACは一義的には、こうした学生が開発問題を研究対象とし、修了後は出身国で仕事に就くことを条件に、学費をODAに含むことを容認している。実際上の計算はDACの考えたようにはなっていない。というのも第一に、その学生が実際に帰国するか否か判明する前に総額が計上されており、第二に、それは、ドナー国で生まれ、大半はその国に残るだろう外国籍の学生も対象にしているからである。にもかかわらず総額は相当なものだ。2005年のフランスでは6億6000万ユーロに及んでいる。

 ODAにはまた、難民の「受け入れ」に関する費用も含まれている。それはつまり、抑圧から逃れるために北側諸国に難民認定を申請しようと試みた人々に対し、多くの場合は悲劇的な状況で行われた勾留や強制退去の費用を指す。南側諸国の開発との関連性など説明のつけようがない。ここでも同様に関連費用は相当なもので、フランスの場合2005年では3億7300万ユーロ、1996年の6倍にもなっている(11)。

 OECDによれば、二国間ODAの4分の3近くは、技術協力や、債務軽減、緊急援助や行政費用という「目的を特定した」資金からなっている。世銀はこう付け加える。「『目的を特定した』贈与は開発プロセスの本質的要素であり、ドナー国の財政に負担となっているが、ミレニアム開発目標達成のための追加的な財政資金を供給するものではない(12)」。たしかに、明らかになっている金額の相当部分は、「ドナーであるはずの」国々において使われている(食糧、医薬品、設備の購入や、運送料、専門家の派遣など)か、さもなくば、1968年から81年の世銀総裁であったロバート・マクナマラが指摘したように、ドナー国に還流している。

 しかも、こうした援助は、それを最も必要としている国々に優先的に集中投下されているわけではない。2002年から2003年の間に、後発開発途上国(LDCs)である50カ国に向けられたのはそのうちの41%のみである(13)。反対に、アフガニスタン、コロンビア、イラク、ヨルダン、パキスタンの二国間ODA全体における取り分は、2000年から2003年の間に3.5倍に増え、受益国に資金を割り当てる際に、戦略的要素がいまもなお中心的役割を果たしていることを裏付けている。援助を供与する側の主な目的は、南側の盟友である指導者を政治的に支援することを通じて影響圏を強化することにある。それはとりもなおさず、経済的決定を彼らに押し付け、国際的な首脳会議の場での彼らの立場決定をコントロールできるようになることを意味している。

(1) Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD), Official Development Assistance increases further - but 2006 targets still a challenge, 11 April 2005, http://www.oecd.org/dac/
(2) ダミアン・ミレ、エリック・トゥーサン「債務の津波」(CADTM/シレプス社、パリ、2005年)参照。
(3) OECDの機関。30カ国中23カ国で構成されている。DACは、ODAに関する情報を一括管理する任務を負っている。
(4) OECD, Official Development Assistance increases further ..., ibid.
(5) 比較すると、毎年、発展途上国は対外債務を返済するために、3700億ドル以上を支払っている。http://www.cadtm.org/ 参照。
(6) 正確には「グラントエレメント」すなわち援助条件の緩やかさを表示するための指標のことを言う。パーセンテージが大きくなればなるほど贈与に近い援助となる。[訳註]
(7) OECD, External Debt Statistics 1998-2002, 2003 Edition, Paris, 2003.
(8) Global Development Finance 2004, World Bank, Washington, 2004 に基づいて筆者が計算。
(9) 「債務と開発、2003-2004年度報告:民主主義に直面する債務」(2004年、www.dette2000.org)。
(10) United Nations Conference on Trade and Development (UNCTAD), Economic Development in Africa : Debt Sustainability, Oasis or Mirage ?, Geneva, 2004.
(11) フランス国際協力高等評議会『フランス政府開発援助の計画化:勧告』(2005年5月11日に全体会議にて採択)、http://www.hcci.gouv.fr/travail/avis/avisapd.html
(12) World Bank, Global Development Finance 2005, op.cit.
(13) See OECD, Development Co-operation Directorate (DAC), Statistical Annex of the 2004 Development Co-operation Report, Table 26, http://www.oecd.org/document/9/0,2340,en_2649_33721_1893129_1_1_1_1,00.html

(2005年7月号)
All rights reserved, 2005, Le Monde diplomatique + Tomita Yumi + Kamo Shozo + Saito Kagumi

http://www.diplo.jp/articles05/0507-2.html

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