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神族、物族、言葉のジャングルと抱腹。
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投稿者 猿渡哲也 日時 2006 年 4 月 11 日 00:05:06: 3cHrOjKvzb9Yk
 

(回答先: 貴方のおっしゃる意味は概ね了解しました。 投稿者 ワヤクチャ 日時 2006 年 4 月 08 日 14:42:24)

赤瀬川原平/新解さんの謎新解さんの謎
赤瀬川 原平

内容(「BOOK」データベースより)
辞書の中から立ち現われた謎の男。魚が好きで苦労人、女に厳しく、金はない―。「新解さん」とは、はたして何者か?三省堂「新明解国語辞典」の不思議な世界に踏み込んで、抱腹絶倒。でもちょっと真面目な言葉のジャングル探検記。紙をめぐる高邁深遠かつ不要不急の考察「紙がみの消息」を併録。


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この本は文庫になったのが1999年。
私はそれを本屋の新刊文庫の平台で見つけて購入したんだけど、その時点で「新明解国語辞典」のことを知っていて買ったわけではなかったので内容を読んであまりの面白さに笑い転げたことは記憶にハッキリ残っている。

今回、先日放送された「タモリのジャポニカロゴス」で新明解国語辞典が取り上げられているのを見て、 「そう言えば、こんな本があったな〜」と思い出して図書館で借りて再読してみた。
相変わらず面白かったけど、やっぱり二度目だったからか最初に読んだときのような爆発的な衝撃はなかったかな。

それよりも、「タモリ〜」の番組中で使用されていた用例の殆ど全部がこの本で使われたものだったというのが、ちょっと何だかな〜と思った。
この本で扱っている「新明解〜」の用例は初版〜第四版のものを使っているらしい。
一方現在の最新版は第六版とのこと。
もちろんこの本の中では数ある「新明解〜」の用例の中でもかなり特徴的な、面白いものを厳選して掲載してあるのだろうとは思うけど、何しろ辞典であるわけだからこれ以外にも探せばたくさんの言葉が載っているだろうし、この本の発行後に出た二つの版にも新しく掲載された、または書き換えられた秀逸な用例がたくさんあると思う。
せっかく「新明解〜」を紹介するなら、過去の面白いものと一緒に一番新しい版で見つけたものも合わせて紹介するくらいの手間は取って欲しかったなあ。
番組全体が結構面白く出来ていただけに残念に思った。

この本には「新明解〜」の内容について書かれた「新解さんの謎」と、切手、ティッシュ、コピー用紙、紙幣など生活の中のいろいろな"紙"を巡る考察である「紙がみの消息」が併録されている。
以前読んだときは「新解さんの謎」があまりに面白くて「全編この話ならいいのに〜!」とクヤシイ思いをした記憶ばかりがあってこの「紙がみの消息」については殆ど覚えなかったんだけど、今回読んでみたらこっちの方が「ああ、なるほど〜」と思うところが多くてすごく面白く読めた。

「余白」と「品位」と「環境」の関係の話とか、いくら電子文書が発達しても「つい」「念のため」プリントアウトしちゃう生理の話とか、普段はあまり具体的に言葉として考えたりはしないけど、実際に言葉にされると「なるほど、どういうことなのね」って納得できる話が盛りだくさん。

特に紙幣が何故紙で出来ているのかについての考察が面白かったなあ。

木の札(ふだ)の場合は物理的な物族の感じが強いけど、<お>が付いてお札(さつ)になると、物から舞い上がって神族になる。木の札と紙の札にはそういう違いがあるらしい。お札というのはただの通貨で、交換価値だけのもので、物のやり取りが済んだら用のないものなんだけど、日本ではその通貨の紙に<お>を付けて神族としている。物とか数字以上の付加価値を認めているのだ。(p179〜180より引用)
お札のことではお心付けというものがある。西洋風に言うと現金をチップとして渡すのだけど、現金むき出しではあまりにも何だからと言うので、懐紙にそっと包んで渡したりする。〜略〜だけど、翻訳すると、金だけであることを避けたい、ということだろう。渡すのは金ではなく気持ちなのだと。だからその現金をこそっと紙に包む。そうすると中にあるのは生臭いどろどろとした下品な現金だけど、紙一重隔てて気持ちになる。気持ちとは物でなく精神で、精神の中の一文字は神である。日本ではそういう紙一重の業を好む。(p180より引用)
「紙」と言う破れやすく、燃えやすい、扱いにくいものを大切にする日本人の心の中で「紙幣」というものが通貨以上の価値を持っている、と言う考え方がすごく腑に落ちる感じがした。
しかも、お札(紙幣)そのものが既に「神族」であるのに、「そのまま剥き出しでは下品」だから、更に紙に包む…と言う日本人の気持ちのありようというのは、「面倒くさいけど、判る。やっぱり私も日本人なのね〜」って感じ。
これは、最近よく聞く「お金があれば何でも出来る」と言った言葉を耳にするときに感じる(嫉妬とかとは別の次元で)どうにも納得が行かない苛立たしさを、かなり明確に表現してくれる考え方であると思う。
それを最も判りやすく書いてあったのは以下の部分。

〜略〜だけど日本には紙の戸、つまり障子、襖がある。これは物族の戸ではなくて神族の戸である。つまり精神的な戸。暴力と言わないまでも、手でちょっと押したら障子なんて簡単に破れる。指に唾をつけてプスッとやるだけで破れてしまう。でもそういうことをしてはいけない、という精神力で障子は戸として成り立っている。(p180より引用)
日本ってやっぱり実用よりも精神の国なんだなあ。
で、それってどんなに時が経ってもDNAに刷り込まれているように、日本人の中に受け継がれているんだと思う。

他にコピー用紙やプリンターの話にも最近私が考えていたこととリンクする内容が多くて納得したり、触発されたりする部分が多かった。
それは会社の話も交えてまた後日。

http://tacop.cocolog-nifty.com/second_message/2005/04/post_03e0.html

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