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(回答先: 暴走族の上納 自分を責めた。 (癒えぬ被害者) 投稿者 宵村和臣 日時 2005 年 10 月 02 日 15:16:56)
肌寒い深夜、二百メートルほど先に止まった警察のワンボックスカーが、赤色灯を鈍く放っていた。身を潜めるように暗がりにいたマサシ(15)たちの視線が、そこにくぎ付けになった。彼らが乗ってきたバイクが、次々と車内に積まれていく。
「またとらんにゃいけん、くそ」。だれかがはき捨てるように言った。その時、取材場所に乗り付けていたのが盗難バイクだったことを知った。彼らと世間話をし打ち解けた気分が、一度にさめた。
間もなく、盗難車を押収した警察の車が姿を消した。「乗りたければ、自分の金で」と彼らを戒めた。「なくなったらとりに行くのがボウソウよ」と、くぐもった声が返ってきた。没収された悔しさからの立ち直りは、早かった。
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マサシはこの春、高校に合格した。なのにまだ、一日しか登校してない。「教室でチラチラ見るやつがおったんです。そのままおったら殴ってしまいそうで」。二時間ほどで校門を後にした。
小学生の時から万引をした。髪を染めたいと母に頼んだら、「ちょっとだけ」と、手伝ってくれた。広島市周辺の暴走族グループに入ったのは中学一年の時だ。徒党を組んで走るのが「かっこええ」と思った。
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年上の仲間に、二輪車盗のほか、店での万引もやらされた。「落書き用のスプレー缶や靴、服とか…。断れんかった、と言うか、断ったこと無いし」。こうも言う。「進んでやれば、やる気があると、センパイにほめられる。それが一番うれしい」
傍らのコウイチ(16)が口を挟んだ。「おれはセットウ、ぶち嫌い。すごい緊張する」
ファミリーレストランで、パフェやケーキを前に話す。声を落とさないのが気になった。「原チャ(ミニバイク)、盗むの簡単っすよ」。二人は手口まで説明し始めた。逮捕されたコウジ(17)が漏らした、「マヒっとる(まひしている)」実態があった。
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「セットウやると人間が変わる。厳禁」。そんな「不文律」を掲げるグループが、広島市内にあった。メンバーはそれぞれ仕事を持つ。「単車は働いた金で買う」と口をそろえる。
たまり場の大型店の駐車場。「おれら悪いことせんもんね。道交法違反くらいよ」とニッカーボッカーをはいたショウタ(16)。仕事帰りで顔に白っぽい建材の粉が付いている。
マモル(17)は「犯罪者になりとうないです」と強調するので「集団暴走も違法行為、つまり犯罪だ」と告げた。「あ、そうか」。気の抜けた返事が返ってきた。
「十八歳で引退したら、落ち着く」。メンバーたちの思いだ。「だから今、やることをやっとかにゃあ。後悔したくない」とリーダーのサトシ(17)。「それまでは目をつむって」と言いたげである。