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軍需工業の利潤 民間会社の暴利を警む         【大阪朝日新聞 1933.11.21(昭和8) 】
http://www.asyura2.com/0601/hasan47/msg/481.html
投稿者 hou 日時 2006 年 8 月 13 日 09:34:20: HWYlsG4gs5FRk
 

(回答先: 皇国より見た満州事変の政治経済的効果 ―荒木陸相御進講要旨(対ソ主戦論者) 【東京朝日新聞 1933.8.6(昭和8)】 投稿者 hou 日時 2006 年 8 月 13 日 09:04:20)

http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00203316&TYPE=HTML_FILE&POS=1&TOP_METAID=00203316

新聞記事文庫 工業(07-138)
大阪朝日新聞 1933.11.21(昭和8)


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軍需工業の利潤
民間会社の暴利を警む

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なるほど国防第一主義である。明年度予算の主力が国防費に集中されている。さすがの時局匡救費も後に瞠若としている。新規要求軍事費の総額と、承認額との割合を見るに、平均四割四分六厘であるのに対して、時局匡救費は内務省関係三割五分一厘、農林省関係一割四分六厘、平均二割四分八厘に過ぎないところへもつてきて、軍事費は陸軍省六割一分三厘、海軍省三割九分五厘、平均五割五厘を占めている、これらの数字がもし、その内面的意義をも表明するものとせば、軍事費は時局匡救費の約二倍だけ価値づけられたわけである。その結果、時局匡救費は、ほんの申わけばかりの形をとどむるに過ぎないが、明年度軍事費の予算額はなお四億円以上に及んでいる。本年度の承認額四億二千万円余に比して大差はない。その軍需工業に及ぼす物的並に人的景況においても、本年と同程度の、もしくはそれ以上に著しいものがあるは必定である。軍需インフレの活況は、こうして相変らず躍りつづけるであろう。


明年度予算の新規要求額は、陸海軍合せて八億一千四百万円という尨大なものであつたが、いよいよふたをあけてみると、約半額の四億円余に査定せられている。しかし陸軍の作戦資材整備費だの、海軍の第二次補充計画だの、主力艦艤装費だの、主要の計画は全部容れられているのだから辻褄の合わない話しだが、大蔵省の方では、専門的な立場から、いわゆる精査主義により、日銀や商工省の杜撰な物価指数にたよらず、独自に、約二ケ月にわたつて、昨年度から最近までの軍需品納入値段、民間会社の注文値段、鉄道、逓信その他中央並に地方官庁、市町村等の注文値段、各軍需工業会社の考課状等の各種材料について詳細な調査を行つた結果、ここに合理的な単価を計算して、それを適用した。換言すれば、陸海軍事当局のたてた非常時の国防計画を、その要求経費の約半額でもつて、十分に経済的に実現できるように、その単価計算を合理化したのである。むやみ滅法に切り下げたのではないというのだから、軍事当局の方でも、それ以上の精査主義による単価切上げの根拠を提供しないかぎり、大蔵当局の査定を否定するだけの理由は立ち兼ねるのである。


この大蔵省の精査主義に対しては、今日の非常時に対して、忠君愛国の至情から、莫大な国防充実費を喜んで負担せんとする国民は、大いに多としていいと信ずる。国家の安全を期するために、国防第一主義に異存を抱くものはなく、これを実現するために必要とならば、三度の食事を二度にしても、入るだけの経費はりつぱに負担するに躊躇するものではないが、十分に切り下げ得る単価をも切り下げずに、国民□血の結晶を、でたらめに濫費されてはたまらないのである。これは、できるだけ、念には念を入れ、各方面から計算を密にして、一厘一毛の無駄費のないように、切詰めるだけ切詰め、できるだけ経済的にやつてもらわねばならぬ。何も軍事当局の単価計算が、大蔵省の精査主義によつて著るしく切り下げられたからといつて、軍事当局の過失とも故意ともいうわけではない。専門外の算盤とつての技術が拙いといつたところで少しも面目を傷けるものでない。結局国民の□血の結晶に頼らなければならないのであるから、なるべく経済的に仕上げるについて、軍事当局はむしろ大蔵当局以上に熱誠なることは、平素の言動に徴して疑いを容れざるところ、心気極めて明朗なるべきである。


なお理想の国防計画を、最も経済的に実現するについて、今一つ注意すべきは、民間において軍需工業に従事する指定工場、下請工場指定会社などが、決して暴利を貪ることなく、できるだけ利潤を少くして、この際非常時の危機にのぞみ、純誠なる国民的精神から、むしろ商売根性を離れても国家に奉仕して貰いたいことである。異常なる不況時において、国民がみな過重の負担に堪え、重大の危機を脱せんとして血みどろに奮闘しつつあるにかかわらず、非常時のどさくさまぎれに、恵まれた少数の軍需品工業者のみが、異常の利潤を収むるがごときは、共存共栄の社会的通念から見て最も慎むべきである。欧米では、時に軍備拡張熱や、主戦論が、造船会社や軍需工業会社の宣伝に過ぎないとの非難さえもちあがることがある。わが国では、断じてかかる疑惑を発生せしめてはならない。

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