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「教育基本法と愛国心のふぞろいな関係(1)」 [ビデオニュース・ドットコム]
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投稿者 white 日時 2006 年 12 月 26 日 18:08:59: QYBiAyr6jr5Ac
 

□「教育基本法と愛国心のふぞろいな関係(1)」 [ビデオニュース・ドットコム]

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061225-02-0901.html

2006年12月25日
「教育基本法と愛国心のふぞろいな関係(1)」
ゲスト:鈴木邦男氏(一水会顧問)

「愛国」のオーナーシップ
 
神保 今回の教育基本法の改正では、愛国心を法律で縛り、愛国心を持った子供を育てようとする意図が明確に出ているところが問題だと騒がれていますが、邦男さんはどのようにお考えですか。
 
鈴木 右翼、左翼みたいなアクティブな人はいなくなりましたが、代わりに政府やオピニオン雑誌の人たちが、かえって右翼、左翼的なスローガン政治をやっています。例えば、オピニオン雑誌の見出しを見ると「○○を打倒せよ」とか「○○を許さないぞ」といった威勢の良い見出しばかり並んでいます。どこかで見た光景だなと思ったら、学生運動の立て看板の世界と同じなんです。政府のほうも愛国心を教えればそのまま世の中が良くなる、教育基本法を改正すれば世の中が良くなると思っている。これは30年、40年前に僕らもやった「教育基本法は良くない」「憲法さえ変えれば日本は素晴らしくなる」と一つの敵を求めてそれに集中させるという、かつての左翼や右翼のやり方そのものです。だから、かえって政府の人たちが後追いをしているのではないかと思います。
 
宮台 本当にそうです。実際、論壇紙に書いている自称右翼、保守の方々には、転び左翼、転びアカデミシャンが多い。左翼転向組だったり、アカデミズムで干された人たちが、新しい縁(よすが)として右翼的な言説の場を見出したということが一つあります。あと、いま団塊ジュニアの世代にあたる方々が、小林よしのりさんの『ゴーマニズム宣言』で社会性に目覚めた方が多くて、「誰よりも社会のことを憂える自分」といった自己イメージを維持するためというのもその一つです。
 
神保 愛国をモットーとし右翼を標榜される邦男さんが、わざわざ「愛国心を持て」と政府が言ってきてくれることに対してあまり前向きではないということは、どう理解すればいいのでしょうか。
 
鈴木 僕は愛国心というのは一人一人が心の中で持っていればいいわけで、それを言葉にして出したらほとんど嘘になると思います。僕の体験から学んだところでいうと、「俺は愛国者だ」「俺は国のためにいつでも死んでやる」と大声で言っていた人たちは、大体運動をやめていますし、いい加減な人たちだなと思います。愛国心は人を排除する論理に使われますし、その人が生きている間は比較検証ができるようなものでもありません。また、愛国心を持てば良いと言いますが、持ったがゆえに暴走する人もいるし、言葉の問題でもないと思います。
 
宮台 戦後思想家たちの話に引き付けると、戦前、戦中世代に属する方々の中には戦後になって、竹内好だったら「優等生病」、鶴見俊輔なら「一番病」と呼んだような存在になった人々がいました。ファシズムの時代にはファシズム優等生になり、GHQの時代ではGHQ優等生になり、革命の時代になれば革命優等生になるというように、どの旗にでもなびいて自分を上昇させるような浅ましい連中が沢山いたわけです。あるいは、江藤淳の言葉でいえば、戦前から戦後への体制は変わっても人は変わっていないということです。
 邦男さんのおっしゃる通りで、旗が変わろうが服が変わろうが人間の行動原理はそんなには変わらない。右か左かなどというのはお題目に過ぎず、本当はある種の浅ましさだけが機能していた、といったところが戦後思想のひとつの出発点だったんです。この出発点が忘れられて、右や左といったような座布団や旗がまるで本当にあるかのように信じられるようになるわけですが、邦男さんが75年に書かれた『腹腹時計と<狼>』というデビュー作では、右か左かということは問題ではなく、本当に何かを志している人間はどう行動するのかという、ある種の本質が書かれています。右か左かというようなことではなくて、粋に感じるとか、行動を通じて示される輝きや波動、それに連なっていくような動きこそが本当の右だろうということが書かれてあり、本当にすばらしい本でした。
 
神保 ご本を拝読して確かにそうだなと思ったのは、もともと愛国というのは民権的な思想で、下からの愛国だったという話です。ところが、今回の法案でもそうですが、なぜか上から愛国を押し付けるとなっていて、愛国のオーナーシップを権力側が市民側から奪ってしまったように見えます。ここをぜひお伺いしたいのですが、愛国とは本来どういうもので、それが何を機に逆側のツールになってしまったのでしょうか。
 
鈴木 漢文の先生に聞くと、漢文で「愛国」というのはもともと皇帝や独裁者といった権力者の言葉だったそうです。下々の人間たちには自分の国という意識がないのだから愛国する権利がないわけです。日本で市民社会ができたのは明治維新後ですから、自由民権運動が愛国者を作ったと。それが今度再び権力者の言葉になろうとしているのでしょうね。
 ところで僕は、愛国心を誰が教えられるのかということが一番の疑問です。先生たちは今まで一度も愛国心を考えたことがないわけだから、急に教えろと言われても無理でしょう。一人が心の中で思っているのと、愛国心に基づいて行動するのと、人がいっぱい集まってきて運動するのとは全然違いますからね。では検定試験をやって愛国心の資格をとった先生が教えるのか。あるいは、外で愛国運動をしている人を呼んできて子供に教えるのかということです。また、子供に愛国心を教えるとかえって危ない面が多いと思います。「日本は正しい戦争をして間違ったことは何もしていない」「アジアの国々はすべて日本のおかげで独立してきた」といった教育を受けた子供たちが、アジアに行って「自分たちのおかげで独立したんでしょ」なんて言われたらたまらないですよね。だったらまだ自虐的で謙虚な子供のほうがいいじゃないですか。
 僕の知り合いに左翼の学校の先生がいるのですが、生徒が先生の話をテープに取り「こんなに反日的な教育をしている」と訴えて、その先生は首になったんです。また、右派同士の論壇などでかつての先生を糾弾したり、売国奴と決め付けたりしている人がいますが、たとえどういう考えを持っていたとしても、自分がお世話になった先生を批判するにはそれなりのエチケット、作法があるはずです。これが愛国者なのだったら、僕はそんな愛国者は要らないと思います。さらに、福岡市では愛国心をABCで評価するということがありましたが、それでは「自分は愛国心を持っているけれども、隣は自民党が嫌いだって言ったから愛国心がありません」というような密告社会になってしまう。人を排除するための言葉になってしまうくらいなら、愛国心などなくても人に優しい子供とかのほうがいいんじゃないでしょうか。
 
神保 かつては自由民権運動などでも愛国を柱としており、下からの愛国だったものが、知らない間に上に持っていかれていたということですが、これはどういうふうに持っていかれたのでしょうか。
 
宮台 それはこの本に限らす邦男さんが書かれていることです。つまり、自由民権運動の中で愛国公党や愛国社といった民権派が日本で最初に愛国という言葉を使い始めたわけですが、この民権派が国権派に変わるプロセスは単なる転向ではないということです。まず、列強からの理不尽な要求を跳ね除けることで日本が生き延びなければ、普通選挙も政治参加もありえないので、民権を実現するためのプロセスとして、ここはあえて国権でいかなければならないというところから始まったということがあります。明治維新の立役者、開明派といわれるような岩倉使節団系の連中は、確かに天皇主義を国民に流布させようとしたのですが、上のほうの連中は天皇主義など信じておらず、国民を治めるというある種のガバナビリティ(governability 統治しやすさ)の観点から道具としてこれを使ったということがあります。ところが、途中からその教えを受けてきた連中の中からこれをベタに信じる奴らが出てきて、「天皇が道具だとは何事か」といったことを言い出しました。この郷学派とか国政派といわれる連中が、明治20年以降に実権を握ってしまいます。
 要は、本当は民権、あるいは近代化が目的であるが、とりあえずここは天皇でいこうという話が途中から信じられなくなり、「とりあえず天皇とはなにごとか貴様」というような話になってきて、手段が目的化するという動きが起こります。これは明治22年の森有礼の暗殺や大日本帝国憲法の公布があるころですが、それを境に一挙に国権派に傾斜していくという、明治思想をみる上で最も重要な画期です。僕はそれを「ネタがベタになる」という言い方をしますけれども、あえてここは天皇が重要だということにしないと生き延びられないという話が、弱々しい自信のない奴が「俺は凄い国にいるんだ」といったヘタレ思想にすがることによって偉そうにするためのツールになっていく。それは新右翼以降の、最近のヘタレ右翼の特徴でしょうね。
 
鈴木 新しい国権派のようなものですね。国家と自分が直に一体になって「中国になめられるな」とか「日本も核武装しろ」とか言って、それで日本が強くなると自分が強くなったという錯覚を持つんですね。
 

愛郷と愛国
 
神保 家族を愛し、近隣を愛し、それが大きくなっていって最終的に国を愛するのであれば分かりますが、いきなり直接国を愛せという話になる。得てして愛国者だと言っている人は、今の部分が出来てない人が多く、家族や社会から嫌われていたり、家族を大事にしていないなどという人が多いと。これはなんなのでしょうか。そして、なぜいきなり真ん中を全部飛ばして個人から国になるのでしょうか。
 
鈴木 僕は東北出身だから東北に対して愛郷心がある。だから今でも東北の奴に悪い奴はいないとつい思ってしまう。口が重いけれども、関西人とも東京人とも違うのだと。これはやはり愛郷心だと思います。これはみんな持っていると思いますが、自分が生まれた土地であり、子供時代の思い出があり、実体験があります。だから教えられなくても確かなものです。しかし愛国心はもっと観念的なものでしょう。だからこそ、ぱっと結びつけられるのではないですか。愛郷心には良い思い出も悪い思い出も含めて色々な実体験がありますが、愛国心は実体験がないですから。
 
宮台 まさにそうで、山県有朋の戦略は、人々を愛郷から引き出して国に吸収させるというもので、僕らの業界では国民化と言いますが、村人を国民にするための戦略だったのです。分かりやすく言うと、自分の家族や故郷に対する関心やコミットメントを引き抜いて、国に向けさせるところがあった。これはわざとやったということです。
 
神保 それは成功したということですか。
 
宮台 成功したということです。これは日本だけじゃなくて旧枢軸国が戦略的に使ったやり方なのです。急速な近代化をすると、都市化が進んでパトリオティズム(patriotism 愛郷心)は空洞化をするわけです。路頭に迷った人間たちは、自分たちの受け皿として国という崇高なる精神共同体に糾合する。そうすると、当然国民化ができ、国民としての動機付けが与えられるので、この人間たちがますます近代化に邁進します。そうすると近代化が進んでますます都市化が進む。ますます空洞化したパトリから国に糾合される人間が出てくるというに、マッチポンプを回すという戦略がありました。
 
鈴木 郷土単位で軍隊を作り、パトリをそのまま観念に結びつけるでしょう。東北の人だったらかなり我慢強いから激戦区に送られたりしていたのでしょう。
 
宮台 東北、あるいは西日本では本当に文化が違います。西日本には、もともと村というより戦略的なゲームを行う、垢抜けてみえるような文化がありました。東北のほうは素朴で、戦略的というよりは帰属や信頼で前に進む人が多い、そういう文化だったのです。社会学からみても、東北的な素朴さこそが日本人の農村的な美意識なのだというふうに刷り込んでいくようなタイプの学問的研究が行われていくことになるわけです。戦略的で生き馬の目を抜くようなシャープさも一つの美徳なのだけれども、こういう部分が強調されると国をまとめようとしている人にとっては危機であると。
 
鈴木 それは世界中でそうなのですか。日本だけが特殊な例なのでしょうか。
 
宮台 いや、そんなことはないです。
 
鈴木 しかし、郷里ごとの軍隊を組むなどということは他の国ではあまりないのではないでしょうか。例えばイギリスでも階層や階級があるし、アメリカでも同郷の人が一緒になって軍隊を組むなんてないのではないでしょうか。
 
宮台 アメリカの場合はそんなに規制が強くないからですよね。パトリを直接愛国に結びつけて兵隊を作るところだけは日本的だけれども、自分たちだけを守ろうというパトリオット的な意識を愛国心に吸い上げていくようなメカニズムはだいだいどこでも使われます。
 
鈴木 本来は「国」でいいはずなのに、日本では「国家」と書いて「家」を付けますよね。他の国と違って、日本は天皇が親で一つの家であるというふうに。だから兵隊も愛郷心から、家族や地域のために俺は戦うというふうになります。観念的な日本全体を思い起さなくてもできるようにしているのではないでしょうか。
 
宮台 その通りですね。このプロセスを作ったのは開明派です。国家という概念は抽象的過ぎるので、国民を国民化するために学校教育を使うわけです。そこで、昔の寺子屋とは違って、学校の先生を国のメッセージを伝える人にしました。つまり、先生と生徒の関係を、お父さんと子供の関係ですというように。先生はお父さんが子供を愛するように生徒を愛し、生徒は子共がお父さんを敬うように先生を敬いますといった、この図式の延長戦上に天皇陛下がいるのです。最も大きいお父さんは天皇ですと。この図式を使って国という概念の抽象性を補おうとしたということです。
 
鈴木 大きな家として、目に見えるような形にしたのですね。
 
宮台 まさに邦男さんがおっしゃっている戦略がとられたというわけです。(PART2へ続く)

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