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「ワイルドバンチ」たちが見たアメリカの未来とジャパナイゼーション
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投稿者 暴論有理 日時 2011 年 10 月 04 日 04:19:20: Lhw6YrhSkkinE
 

久しぶりに「ワイルドバンチ」のラストだけ見る機会があった。というより、昨今の腐れハリウッド映画が溢れかえるケーブルチャンネルの中で反射的にチャンネルをとめたのだ。かつての黄金期のアメリカ映画はワンカットどころか、半秒で認識できるのはなぜか。

さて、この作品は「ベラクルス」から始まり「荒野の七人」に続く国境の南に最後のフロンティアを求めるアウトローたちの抒情詩だ。通の間では西部劇に引導を渡した作品だということらしい。
凄惨なラストでボーグナインとホールデンが叫びながら、機関銃架の下に息絶えるのだが、ここらは、ジョンウェインの「アラモ」よろしく硝煙の中で散華の美も漂っている。
しかし、上記の作品らとの違いは主人公側には勝者はいない完全な敗北に終わるってことと、ラストカットのロバートライアンの泣くような大笑いに象徴されるかつての自由な時代と自由な大地への郷愁だ。
ちなみに同じくペキンパーの「戦争のはらわた」でも最後は主役のドイツ下士官の大笑いの突撃で終わるが、ここまでくれば、自らをも含めた人間存在自体への嘲笑である。

そして、このワイルドバンチの製作年がベトナム戦撤退期の1969年だ。この頃は「俺たちに明日はない」、「北国の帝王」と生き遅れたフロンティアの男たちを描いた傑作があるが、まさに40年代後半から60年代前半に黄金期を迎えたハリウッドにとっても最後の消え行く輝きともいえる。

さて、ここらで政治社会論に転調するが、これらのいかにもアメリカ的な映画監督たちの時代的嗅覚は、今見ると驚くほど鋭かったというほかない。
1971年にはニクソンの金の兌換停止があったが、70年代はまさに制度にしめつけられ、いきずまった現在への過渡期だった。政府と軍は肥大化し、なによりアメリカ人が変質した。
60年代までのアメリカ人に比べたら、映画人も含む今のアメリカ人の腑抜けさときたら、魂が腐ったとしかいいようがない。というか、農民層や移民が減ったこともあり深く感じ考える力が、表面的な物質社会でなくなってしまったようだ。ピンとこないなら、昨今の日本のテレビで活躍する帰国子女を思い起こせばいい。態度は自由で寛容だが、アジア的な人情の機微、あるいはヨーロッパ人の深慮さといった人間の魂の奥底が全く分からないといった感じだ。

で、これは現在のアメリカ人一般にいえるのだが、この国民性の変化が緩やかな政治社会的制度の変化に伴うものだということだ。「ルースチェンジ」ってやつだ。911の大仕掛け?に素直に肩を抱き合って涙をながす国民になったのだ。

日本人は戦後何十年たっても性根は変わってないが、アメリカ人のこんな40年ぐらいでの大変化はやはり民族性を捨象した人口国家であるからだ。よきにつけ、悪しきにつけ、ブレーキとなる民族性・伝統性がない人工的制度によって成り立つ国家の恐ろしさだ。
人類の桎梏を超越することもできれば、自然から超越した悪への恣意性をも持つ。かつての功利的・現実的なアングロサクソン的な長所も精神性を失えば、浅薄浅学な猿知恵人間をスタンダードとして大量に生み出すようになる。

そして、ここにいたって常にアメリカの後塵を拝してきた日本が未来のアメリカ社会を移す鏡となっている。「ジャパナイゼーション(日本化)」という言葉が流行っているが、簡単に言えばかつての英国病よろしく、政府の肥大によって成長が止まった国の状態を言う。不動産バブル処理をあやまった米国はまさに90年代の日本の前輪の轍を踏んでいるのだ。あるいは米支配層はあえてその道を選んだのか。

ということはアメリカ人の十年後は今の日本人よろしく、羊のごとく従順で大人しい国民に成り下がっているのだろう。違うのは自らの自由さを露ともうたがわないアメリカ的な脳天気さだ。
戦前派や団塊世代が夢にも見なかったことだが、ようやくにして従属国家日本はアメリカの未来像のプロトタイプとなったのだ。ミッドウェーの復讐か。ちなみに中共の目指す経済発展下の社会モデルも欧米よりも自民が築いた日本社会を手本にできると見ている。

そして、現在の日本人同様、自分らを完全な自由とみなす国家奴隷たる新アメリカ人が覇権国家の世界の主人としてしばらくは世界を闊歩するんだろう。

まさに、ワイルドバンチの男たちはアメリカの未来を見つめて、斃れていったのだ。自分たちが変質していく未来を。

しかし、そのワイルドバンチたちはメキシコ軍に包囲殲滅され、そして、旺盛な戦意と裏腹にメキシコ軍への敵意は全くない。

結局、21世紀の勝者はアメリカでも中国でもましてや最後発帝国主義国家日本でもなく、制度に人間が馴致されていない最後のフロンティアである発展途上国なのだろう。

主人公に止めをさした少年兵の笑顔がそれを語っているのだろうか。  

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