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『ディアベッリの主題による33の変奏曲』    西岡昌紀
http://www.asyura2.com/09/bun2/msg/555.html
投稿者 西岡昌紀 日時 2011 年 12 月 16 日 17:15:17: of0poCGGoydL.
 

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http://blog.livedoor.jp/nishiokamasanori/archives/4980960.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1804699702&owner_id=6445842


−−公園から聞こえてくる音楽にオレークは耳を
  傾けていた。だがオレークが聴いていたのは
  その音楽ではなく、自分の内部で鳴り響いて
  いるチャイコフスキーの第四交響曲だった。
  不安な、重苦しい、その交響曲の冒頭の部分。
  その驚くべき旋律。こんな鑑賞の仕方はいけ
  ないのかもしれないが、オレークはその旋律
  を自己流に解釈していた。久しぶりにわが家
  に帰って来た主人公、あるいはとつぜん目が
  見えるようになった主人公、いろいろな品物
  や、愛する女の顔を、手で撫でまわしている。
  撫でまわしながら、いまだに自分の仕合せを
  信じられぬ気持でいる。それらの品物は本当
  に存在するのだろうか。自分の眼は本当に見
  えるようになったのだろうか。−−

(ソルジェニーツィン作・小笠原豊樹訳
 『ガン病棟・(上)』(新潮文庫・1974年
 第七刷・230ページより)

数日前、車を運転しながら、或る曲を聴きました。

ベートーヴェンの『ディアベッリの主題による33の変奏曲』(作品120)と言ふ作品です。

私の大好きな作品です。車の中で、久し振りにこの曲を全曲通し聴きましたが、何度聴いても素晴らしい作品です。

(この作品について(Wikipedia))
     ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%AA%E5%A4%89%E5%A5%8F%E6%9B%B2

この作品は、ベートーヴェンの作品中、交響曲第9番とほぼ同時期に書かれた晩年の作品です。年末の渋滞の中で、この曲を聴いて、色々な事が心に浮かびました。

この作品の題名に有るディアベッリと言ふのは、ベートーヴェンの同時代人で、ベートーヴェンが作曲家として活動して居た時代に、ウィーンで楽譜の出版を行なって居た人物の名です。


(ディアベッリについて)
     ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%AA


彼(ディアベッリ(1781−1858))は、自身も作曲家でした。しかし、、作曲家としては、大家と成る事無く、人生を終へた人物でした。その一方で、ディアベッリは、楽譜出版業者として、ウィーン在住の多くの音楽家と接点が有りました。そんなディアベッリが、或る時、自分の道楽からでしょう。自分が作ったワルツを主題にして、変奏曲を作曲する事をウィーンに住む作曲家たちに依頼する事を思ひ立ち、ベートーヴェンを含めた複数の作曲家たちに、自作のつまらないワルツを主題とした変奏曲を作曲する事を依頼したのでした。

伝えられるところでは、べートーヴェンは、ディアベッリのその主題(ワルツ)を見てこれをひどくバカにした様です。「俺をバカにするのか!」とベートーヴェンが言ったかどうかは知りませんが、多分、そんな気持ちになったのでしょう。ベートーヴェンは、ディアベッリからこの依頼を受けながら、暫くは放っておいたまま、その依頼に応える作曲には取り組まなかったと伝えられて居ます。

しかし、何が切っ掛けだったのかは分かりませんが、暫くして、ベートーヴェンは、この仕事に興味を持ちだしました。そして、ディアベッリが書いたそのつまらないワルツを主題にして、変奏曲を書き始めたのでした。

結局、ベートーヴェンは、最初はバカにして居たディアベッリのその短いワルツを主題にして、33曲もの変奏曲を書き上げる事と成りました。それが、この作品(『ディアベッリの主題による33の変奏曲』)なのです。

ピアノ独奏で、全曲の演奏には50分くらい掛かる大曲ですが、思へば、ディアベッリのつまらないワルツを主題にして、晩年のベートーヴェンが、こんな作品を書き上げた事は実に面白い事だと思はずには居られません。

私は、このピアノ曲(『ディアベッリの主題による33の変奏曲』)は、彼の交響曲第9番に並ぶ作品、もしくは、それ以上の作品だと思って居ます。それだけに、この作品が、彼の交響曲第9番ほどには知られておらず、演奏される機会も多くはない事が残念でなりません。


私が、この曲を意識して聴き始めたのがいつ頃だったのか、何故かはっきりとした記憶は有りません。1970年にリヒテルが初来日した際、彼が演奏した曲の中にこの曲が有りましたが、その演奏会に、当時中学生だった私は行って居ません。ただ、演奏会のプログラムに書かれた解説文を読んで、この曲が作曲されたいきさつを面白いと思った記憶が有ります。


私が、意識してこの曲を聴く様に成ったのは、30代に成ってからだったかも知れません。30代の後半には、この曲を非常に愛する様に成って居ました。以来、どれだけ聴いて来たか分からない、私の愛してやまない作品なのですが、その様に、永年、この曲を繰り返し聴く内に、思ふ様に成った事が有ります。

それは、この曲には、ベートーヴェンの遠い過去の思ひ出がこめられて居るのではないか?と言ふ事です。

こんな鑑賞の仕方はいけないのかも知れません。しかし、私は、この作品を構成する33の変奏曲には、ベートーヴェンの人生の色々な思ひ出が隠されて居る様に思へてならないのです。子供の頃の思ひ出、肉親の思ひ出、遠い日の恋の思ひ出、既にこの世を去った人々の思ひ出等・・・。彼の色々な思ひ出が、秘密の様に、これら33曲の変奏曲の一つ一つに隠されて居る様な気がしてならないのです。

本当に、こんな鑑賞の仕方はいけないのでしょう。しかし、永くこの曲を聴いて来て、私は、そんな気がせずに居られないのです。そして、それらの思ひ出の多くは、彼の子供の頃の思ひ出ではないか?と思ふのです。

ベートーヴェンの子供時代と言へば、厳格な父親の下、不幸な少年時代を送った、と言ふ様な事が言はれて居ます。それは実際、そうだったのかも知れません。しかし、子供の頃の思ひ出が、はたして、そんな物ばかりだろうか?と、私は思ひます。私の勝手な想像に過ぎない事を承知で言へば、この曲には、ベートーヴェンが子供の頃にやった愉快な悪戯(いたずら)の思ひ出なども隠されて居るのではないか?そんな気がするのです。(第23曲など)

そして、思ふ事は、そうして彼が回想して居る思ひ出の中には、クリスマスの思ひ出が有るのではないか?と言ふ事です。彼がこの作品の為に作曲した33の変奏曲の内、特に、第24番や第32番などは、私にそんな思ひを起こさせずに居ないのです。

もちろん、それは、私の想像です。しかし、この曲を聞く度に、私は、ベートーヴェンの子供時代の事を想像します。そして、彼は、子供時代、どんなクリスマスを迎えたのだろうか?と想像するのです。


こんな鑑賞の仕方はいけないのかも知れません。しかし、クリスマスが近く成ったこの季節に、この曲を聴いて、子供時代のべートーヴェンが、どんなクリスマスを過ごしたのだろう?と想像するのは、いい物です。ベートーヴェンの心の中の秘密を垣間見て居る様です。


今年、震災で不幸を体験した子供達が、いつの日か、この曲でベートーヴェンが回想した様に(???)、自分の子供時代を思ひ出してくれたら、等と思ふのも、私のそんな「いけない鑑賞の仕方」の一つなのでしょう。でも、この曲を聴くと、そんな気持ちに成るから、不思議です。

平成23年(西暦2011年)12月16日(金)


                    西岡昌紀


(もし、この曲(『ディアベッリの主題による33の変奏曲』)のCDをお求めになるのであれば、私は、このCDを推薦します)
        ↓
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%AA%E3%81%AE%E4%B8%BB%E9%A1%8C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B33%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%A5%8F%E6%9B%B2-%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%86%E3%83%AB-%E3%82%B9%E3%83%93%E3%83%A3%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%95/dp/B00005MVU5/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1324020995&sr=1-1


 

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