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木下昌明の映画批評〜「ゴミ」を扱つた3本のドキュメンタリー(レイバーネット日本)
http://www.asyura2.com/09/bun2/msg/674.html
投稿者 gataro 日時 2013 年 9 月 24 日 13:08:04: KbIx4LOvH6Ccw
 

●「ゴミ」を扱つた3本のドキュメンタリー
http://www.labornetjp.org/news/2013/0924eiga

(1)いずれ人間も「ゴミ」と化す――使い捨て社会が暗示する未来


「ゴミ」を扱つた2本のドキュメンタリーを観て、地球はゴミだらけなんだと実感した。

 トルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督の『トラブゾン狂騒曲――小さな村の大きなゴミ騒動』(公開中)は、監督の祖父母の故郷・トルコ黒海沿岸部の山村が舞台。茶畑の広がる緑豊かな別荘地を思わせる村だ。そこにゴミ処分場が造られ、村人はゴミの腐臭に悩まされる。底に張ったゴムシートが破れ、汚水が白い泡を噴き出しながら川となり、大雨がふると汚水があふれて畑地に流れ込む。映画は、市長を先頭にこの惨状に抗議する人々、故郷を捨てていく若者をとらえる。

 西山正啓監督の『水からの速達』(1993年)を、ふと思い出した。20年前、東京の西多摩・日の出町の山中にゴミ処分場が造られ、住民が反対したドキュメンタリーだった。水源池近くにゴミ捨て場を設ける行政の無神経さにあぜんとしたが、「トラブゾン」が描く構図もほぼ同じだ。

 もう1本は英国の女性監督、ギャンディダ・ブラディの『TRASHED――ゴミ地球の代償』(写真)。英国で起きているゴミ騒動を絡め、世界の凄まじいゴミの実態を追いながら、その解決法を探っている。

 トップシーンは、宇宙から眺めた青い地球。一転して、レバノンの海岸にうず高く積まれたゴミの山を映し出す。そこに俳優のジェレミー・アイアンズがやってきて、「ぞっとするね」とつぶやく。

 実は、彼はこの映画の製作者兼ガイドなのだ。彼は世界の国々を訪ね歩き、昔と違って「ゴミ全体が劇的に有毒化した」状況に光を当てる。

 特に焼却炉で生じるダイオキシンや、海洋でのプラスチック細片が、知らず知らずのうちに食物連鎖で人体を蝕んでいく恐ろしさを明らかにする。その一方で、「ゴミ・ゼロ社会」を目指す活動もとらえる。資本主義による「使い捨て社会」を根っこから変えていかないと、早晩、人間もゴミ化していく――と教えてくれる。(『サンデー毎日』2013年9月15日号)

*『TRASHED』は9月28日より東京・渋谷シネマライズほか全国順次公開。


(2)食料の3〜5割が廃棄処分に――地球上の「もったいない」お話


 かつて清掃組合の『東京ごみ物語』(ビデオプレス)という短編映画を見て、ぎょっとしたことがある。それは広大なゴミ処理場にダンボール箱が山と積まれ、その一つを開けると、新品のジャムの瓶がぎっしり入っていたからだ。その時から、資本主義社会では、ゴミとは商品のなれの果てのことであり、たとえ新品でも商品にならなければ、ただのゴミでしかなくなると思うようになった。

 ドイツ人の監督バレンティン・トゥルンのドキュメンタリー『もったいない!』は、私たちが日ごろスーパーなどで何気なく買い物をしているが、実は食品の多くは人々の口に入らないまま廃棄されているという問題を、さまざまな角度から追及している。世界で生産されている食料の実に3〜5割が、私たちの知らない所で廃棄されているのだ。「もったいない」とは、ケニアの環境保護活動家、ワンガリ・マータイが広めた言葉だが、この映画はこの言葉がぴったりくる。原題の「TASTE THE WASTE」は「廃棄物を召し上がれ」と訳されるようだが、邦題の方がずっといい。

 巨大スーパーでは「賞味期限が近いものは、客が買わないから処分した方が手っとり早い」と陳列棚からどんどん抜きとっていく。ジャガイモ農家は、大小さまざまな不ぞろいの物を畑で捨てながら、市場は「味や栄養価ではなく、見た目の美しさで選別する」と不満を訴える。その卸売市場では「熟れすぎ」と8トンのオレンジを惜しげもなく廃棄する。こうした廃棄食品は、EUでは年間9000万トン、日本では1800万トンとすごい量だ。

 映画は、先進国の食品市場を巡りながら「もったいない」光景をとらえている。TPP参加が実現した場合、食のあり方はもっと無残になるのではないかと考えさせられる。

 一方、ゴミになったパンの山などをパンを焼く燃料にしたり、加工して豚の餌にしたり、リサイクルでゴミを「資源」に変える試みもいくつか紹介していて輿味深い。 (『サンデー毎日』2013年9月29日号)

*9月21日より東京・恵比寿 都写真美術館ほか全国順次公開。

〔追 記〕 世界中のゴミ問題が未解決というのに、それに輪をかけて世界最悪のゴミである高線量放射能の汚染水を、東電福島第1原発がたれ流しつづけている。これは人類に対する恐るべき犯罪である。かつて公害問題が騒がれた時代、「ヘドラー」なる怪獣が現れ、海のヘドロと工場の煙突からはき出される煙をおいしそうに吸ってくれた――そんな映画があったが、いま汚染水をおいしそうにのみこんでくれる怪獣「ストロンガー」が、福島の海に現れないものか。


 

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