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安倍首相の指導力、評価は:「真のエース」へ正念場続く 塩野七生氏(作家)
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投稿者 あっしら 日時 2013 年 12 月 02 日 03:56:51: Mo7ApAlflbQ6s
 


[時論]安倍首相の指導力、評価は
「真のエース」へ正念場続く 塩野七生氏(作家)


 世界では経済政策や安全保障などを巡って先進国や新興国が激しくせめぎ合う場面が増えている。内政や外交の難しい課題に取り組むためには、国を率いる指導者の資質や手腕が重要な要素となる。ローマ帝国の興亡や十字軍などの歴史を通じて様々なリーダー像を描いてきた作家の塩野七生さんに、日本がおかれている現状や内外の政治家への評価を聞いた。

 ――イタリアに住んでいて日本はどう映りますか。

 「久しぶりに帰って来て感じたのは、日本がエースで勝つようになったということ。トヨタ自動車とか日立製作所とかがよくなってきた。安倍晋三首相はみんなと一緒に1度会っただけでよく知らないけどやはりエース。エースで勝つと一番いいし、座りがいい」

 ――安倍首相はエースと言えますか。

 「エースとはどういうものか。プロ野球、楽天の田中将大投手は(日本シリーズ最終戦の)前日にやられてしまった。チクショーと思ったに違いない。もし(再登板を)志願しなかったらエースはちょっと傷ついていた。それで最後に三振で打ち取る。この気合だ」
 「安倍さんがこれからそうなるかどうかは彼次第。エースを中心にして前進するのが、確実な『ジャパン・イズ・バック』。安倍さんはまだ三振で打ち取っていない。だから『帰ってきたエース』になってくださいと言いたい」

 ――経済政策「アベノミクス」の評価は。

 「ようやく日本が動き出した。イタリアの朝のテレビで日本のニュースというと福島の原発事故で(放射性物質が)漏れたとかそれくらいで、各国の株式市場が映っても香港とか上海が中心で日本はなかった。このごろ、ニッケイ(日経平均株価)が出てきた」

 ――日本が大きく右傾化したとか、一部には正確でない情報もあります。

 「ジャーナリストは基本的に左派だ。(海外メディアは)日本のことを本当に知って報道するのではなく、中国とか韓国の新聞を読みながら日本を見る。失礼ながら日本のメディアの発信力が全くない。有名な国際メディアだから必ずしも正しい報道をするとは限らない、と外国に住んでいて身にしみて感じている。社名では絶対に読まない」


絶対の友好はない

 ――異質な価値観をもった近隣の国と付き合っていくうえで、歴史に学ぶべきところはありますか。

 「近隣国と仲良くあるべきだというのは日本人だけだ。近隣とは常に問題があり、摩擦が起きないという方がおかしい。日本人はこれからも絶対の友好はないのだと思えばいい。しかし近隣国ゆえの突破口はある。それは経済関係がより密であるということだ」
 「『十字軍物語』の最後で十字軍の運動は西洋側、キリスト教側が負けた。しかし本当の勝者は誰か。イスラムの経済人たちは200年間で西洋の市場の有効性に目覚めた。経済的にくっついてやっていた方が得であったと。そしてベネチアとかジェノバとかの経済人が戻ってくる。決裂した関係が戻ってくる」
 「(中韓両国とは)政治的な関係改善を急がない方がいいと思う。イスラムとキリスト教の価値観の違いは、中国や日本に比べるとものすごく大きかったはずだ。それでもなお(関係修復が)できた」


熟睡に飽きた?

 ――政界を引退した小泉純一郎元首相が最近、脱原発で積極的に発言しています。

 「小泉さんはお辞めになった後に会ったことがある。どうして辞めたのか聞いたら『僕は疲れちゃった』と。もう時効だから言ってもいいと思うが、『首相の当時は時々、夜にがばっと起きるときがあった。今はそういうことがなくなって熟睡しているよ』と言っていらした」
 「私の無責任な見方から言えば、小泉さんは熟睡に飽きちゃったのだと思う。彼はこの間まで『イタリアでオペラを見たことがない』と言っていたから、いらしたらお連れする。熟睡するのに飽きちゃったようだから(笑)。もう一つ言いたい。粋な男は焼けぼっくいに火をつけないこと。やめると言ったらやめる」
 「(原発は)大変な問題だから科学者に徹底的に話させるべきだ。日本への不満は、我々は福島で絶対的な安全はないと学んだはずだ。それなのに原発再開にまた絶対安全を求めるのは論理的におかしい。ただ科学者に決める権利はない。意見を聞いてお勉強して、最後は投票で委託された政治家が決めるべきだ」


改革者は必ずぶつかる

 ――新作『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』で訴えたかったものは何ですか。

 「書いている時は、日本の役に立つとか、リーダー像なんかは考えない。中世にこういう男がいたということを知ってもらいたい。ヨーロッパの中世研究の傾向は、キリスト教会とケンカしない人がいいとなる。彼はその反対だ」

 ――歴史に名を残すリーダーはケンカしないといけないということですか。

 「改革をすれば必ずぶつかる。ぶつからない人はその時はいいかもしれないが、後世には何の影響もない。良い人の生涯を書くと時代が描けない。あちこちで周囲とぶつかる人を書くと、何で、誰とぶつかったのかで、その時代が描ける。どうしていま書くかは実に私の問題だ。ずっとルネサンスを書いて、古代ローマを書いて、その間に1000年あいている。それを埋める最後の作品。これで中世は終わりだ」

 ――当時のイスラム圏は西洋より科学技術的、文明的に進んだ面があったと。

 「実際にそうだ。イスラム圏の学者たちが『十字軍の後に西洋はルネサンスに入っていった。なのに自分たちはなぜ停滞したのか』という問題を提起している。イスラム世界は工業よりも商業。しかし商業はなかなか職をうまない。職を与える社会、政治が成功するのであって職を与えるのに失敗したら成功しない」
 「今のイスラム世界も同じ。原材料を輸出している。オイルもガスも技術者を呼んで、動かすのはその国の高学歴者じゃなくてもいい。職を保証する社会づくりを忘れたのがジャスミン革命の始まりで、宗教的でも何でもない。9・11の米同時テロを指揮したのは、みんな高学歴者だった」

 ――フリードリッヒ二世は反逆児ゆえに、イスラムとの和解を成し遂げたように思います。

 「彼は要するに自分の頭で『これっていいわけ?』と疑問を持つ。人間の発展はシンプルで疑問を持つことだ。疑問を持たない人はいかに大学の成績が良くても、それはただ学校の成績がいいということだけ」


男が試される時

 ――今の世界のリーダーでフリードリッヒ二世と似ている人はいますか。

 「アイルランド問題を解決したトニー・ブレア元英首相。パレスチナ問題も託されたが、あれは気の毒だった。(フリードリッヒ二世は)丸腰で交渉に臨んだのではない。いざとなったら軍事力で交渉したから成功した。ブレアはパレスチナ問題を託された時にいかなる経済的、軍事的、政治的権力もなかった」
 「私はリーダーを見るときに自分がよしとする型にはめない。絶対オーダーメードだと思っている。安倍さんはブレアのように敵をも味方にする説得力はない。なくても、ブレアが持っていなかったものを持っている。それは現在、(先進国の議会で)民主的に絶対多数を持っているということだ。オバマ米大統領やメルケル独首相を見ても、イタリアなどを見ても他の国に1人もいない」
 「安倍さんは民主的に権力を持っている。2度も(政権を率いる)チャンスをもらい、民主的な方法で絶対多数をもらった。そこでおじけ付いて何もしなかったら、政治家でないだけではない、男でもない」

 ――フリードリッヒ二世は女性関係もなかなか面白い。安倍首相には「家庭内野党」を自称する妻の昭恵さんがいます。

 「彼女のインタビューを見ていて、この人はなかなか頭のいい人だなと。そして安倍晋三さんにとっては、とても適した奥さんじゃないかなと思う。非常に率直な方であると同時に、旦那様のことを笑いながら話しているが、これが決して人格を低めることにつながっていない」
 「今までとは違うが、なかなかいい奥さんじゃないかと思う。あんまりベタベタとあちこちの外遊について来ないし。首脳が深刻なことを話すのに、奥さんがちょろちょろくっついてくるのは状況にふさわしくない。あの方は頭のいい、賢い女の子ではないか」

 歴史小説に新境地

 しおの・ななみ 1937年東京生まれ。学習院大学卒。イタリア滞在の経験を踏まえ、68年に執筆活動を始めた。長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』で70年度の毎日出版文化賞。『海の都の物語』でサントリー学芸賞、菊池寛賞を受けた。
 92年から長編『ローマ人の物語』に着手し、1年に1作のペースで刊行。司馬遼太郎賞に輝き、歴史研究と歴史小説の中間に位置する新分野を切り開いた。2006年に15巻でシリーズが完結した。
 その後『ローマ亡き後の地中海世界』『十字軍物語』を発表。このほど13世紀の神聖ローマ帝国の君主を描いた『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』を書き上げた。76歳。


[日経新聞12月1日朝刊P.9]


 

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