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枯渇に瀕する華北平原の地下水|経済観察報
http://www.asyura2.com/09/china02/msg/430.html
投稿者 上葉 日時 2010 年 5 月 13 日 23:54:21: CclMy.VRtIjPk
 

枯渇に瀕する華北平原の地下水:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100506/214259/


枯渇に瀕する華北平原の地下水
長年の汲み上げ過剰で地下水位が急低下
Author 経済観察報

打井

経済観察報記者 陳勇

4月28日の午後は風が強く、太陽が燦々と照りつけていた。李成軍は門前のアオギリの根本にあぐらをかいて座り、煙草をふかしながら、物思いにふけるような目で畑の方を眺めていた。

 この時彼は、井戸をもう1本掘るべきかどうか、心の中で迷っていた。

 「前に掘った井戸は涸れかかっていて、畑に水をやれない。だが、新しい井戸を掘るには数万元かかる」

 そう打ち明ける李成軍は、河北省ケイ台市柏郷県寨里西村の村民である。彼の話によれば、村では地下水の水位がここ数年急速に下がっており、井戸が深くなる一方だという。齢50過ぎの李成軍は、10ムー(約66.7アール)余りの畑で小麦とトウモロコシを輪作している。1年間の現金収入は6000〜7000元(約8万1000円〜9万5000円)ほど。井戸掘りにかかる費用は大変な負担だ。


2000人の村に1000本の井戸

 李成軍は、地下水位の急低下に悩む華北平原*の幾多の農民の1人に過ぎない。華北東部の京津冀(北京市、天津市、河北省)一帯は、世界で最も地下水位の低下がひどい地域の1つなのである。

*華北地方の黄河流域に広がる大平野。中国有数の穀倉地帯だが、降水量が少なく、農業、工業、生活用水の多くを地下水に頼っている。

 政府の公式発表によれば、華北地方では地下水の汲み上げ過剰が年間1200億立方メートルに達する。河北省水利庁の調査では、同省内には地下水位の低下が著しい地区が2009年時点で20あり、その総面積は4万平方キロメートルに及ぶ。

 中でも柏郷県の状況は深刻だ。李成軍が住む寨里西村の人口は2000人弱だが、村内には1000本近い井戸があり、平均2人に1本という多さである。

 結局、李成軍は隣近所の6世帯と共同で井戸を掘り、費用を分担することに決めた。だが、彼らをいかに説得して資金を集めるかが、目下最大の頭痛の種になっている。

 説得に何度か失敗した挙げ句、李成軍は村の長老である村長の高玉柱に仲立ちを頼んだ。高玉柱によれば、畑の面積が農家ごとに違うため、意見をまとめるのはとても難しいという。畑が狭い農家は(井戸を掘らずに)他から水を買った方がいいと考え、畑が広い農家は新たに井戸を掘る方が割に合うと考えるからだ。

 「前回は400メートル掘って4万元(約54万円)もかかった。今度は500〜600メートル掘らなければならないかもしれない。掘った後に20〜30年間使えるならともかく、最近は数年で涸れてしまうので、また掘らなければならない。そんなお金はとても出せないさ」。村民の1人で、畑が3ムー(約20アール)しかない馬三は不満を漏らす。

 李成軍の土地にある井戸は深さ400メートルで、以前は30ムー(約2ヘクタール)の畑を灌漑できる水量があった。ところが、掘って10年も経たないうちに水量が減り始めた。

 「4万元もかけて掘ったのに、もうすぐただの洞穴になってしまう」。李成軍は悲痛な表情でため息をつく。

 一方、井戸掘りを生業とする専門業者にとって、地下水位の急低下はまたとない商機になっている。





 柏郷県や隣の隆堯県では、井戸が深いために機械式のポンプに頼らざるを得ない。20年の経験を持つというベテラン業者によると、「最初に掘る時に設備代が3〜4万元(約40万〜54万円)かかる。地下水位が下がると取水パイプの長さが足りなくなるため、設備を取り替えなければならない」という。

 おかげで、この一帯の井戸掘り業者は濡れ手に粟の大繁盛だ。ろくな専門知識も経験もなく、いわゆる“井戸掘り名人”について3カ月ほど修行しただけで独立開業するにわか業者まで出現している。

 「この地方は貧しいし、外地に出稼ぎに行っても手元にはいくらも残らない。しかし井戸掘りを学べば、地元にいながら年10万元(約135万円)稼ぐのも夢じゃない」と、修行中のある若者は話す。

 「以前は井戸を1本掘るのに1週間かかったが、今は2週間はかかる。しかも、掘り当てるのがだんだん難しくなっている。また、以前は井戸掘りの繁忙期は春だったが、今は真夏を除いて年中忙しい。こちらの家で1本掘ったら、あちらの家ですぐまた1本。おかげで半年家に帰れないことも珍しくない」

 そう語るのは、地元で井戸掘り名人として知られる宋学家だ。村人の話によれば、宋学家は井戸掘りで稼いだカネで2階建ての家を新築したほか、ケイ台市の市街地にマンションを買ったという。


“子孫の水”に手をつける日

 李成軍の記憶では、子供の頃は2〜3メートルも掘れば水が出て、水質も悪くなかった。ところが、自分が歳を重ねるのと軌を一にするように、井戸はどんどん深くなった。「1988年頃は深くても16〜17メートルだったが、99年に100メートルを超えてしまった」。

 現在、河北省の利用可能な水資源量は年間170億立方メートルに満たない。ところが、実際の水使用量は205億〜215億立方メートルに達している。持続可能なバランスを大幅に超えているのは明らかだ。

 柏郷県水務局のある職員の説明によると、長年にわたる地下水の過剰な汲み上げが原因で、地下にすり鉢状の“盆地”が形成された。これが地下水位の急低下をもたらしたという。柏郷県はこのすり鉢の中心に位置し、地上にも利用可能な水資源がほとんどない。

 河北省のある著名な水利専門家は、次のように警鐘を鳴らしている。

 「人と家畜の飲み水以外の目的で、深い井戸を掘ってはならない。さもなければ“子孫の水”まで使い尽くしてしまう」

 今のところ、寨里西村の井戸はまだ“子孫の水”の深度には達していない。だがこのままでは、それに手をつける日はそう遠くなさそうだ。

=敬称略

打井 2010年5月3日 (c)経済観察報)

「中国発 経済観察報」
中国の「経済観察報」は2001年創刊の週刊経済情報紙。発行部数は約68万部。政府系の機関紙ではなく、民間資本によって創刊・運営されている新興経済メディアの草分けの1つ。経済政策から金融、産業まで幅広くカバーするとともに、「理性、建設性」という編集方針を掲げ、センセーショナリズムを排した客観的な報道や冷静な分析に定評がある。北京を中心に、若手インテリ層の支持を集めている。





 近代国家になるとは、こういうこと。中国だけの問題ではない。
 大連在住のTalkiyan_Honin_Jai氏は「この記事のような話は極々あたりまえ。華北では深さ100m以上の井戸はざらにある。中国農業の足元が崩れかかっている。」とコメントしている。

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地下水が枯渇――米国灌漑農業「危機」の深刻度 feel
http://www.asyura2.com/0502/social1/msg/657.html  

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