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「安替:ネットメディア外交のスゝメ」/ふるまいよしこ[JMM 596Th]
http://www.asyura2.com/09/china02/msg/459.html
投稿者 ohta 日時 2010 年 8 月 13 日 19:42:33: 8XHaI2INC3MIE
 

下記にアーカイブされるはずです。
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/title4_1.html

「安替:ネットメディア外交のスゝメ」

 先日、知り合いの庄司昌彦・国際大学グローバルコミュニケーションセンター主任研究員と猪狩典子・同研究員が北京にデジタル情報事業のリサーチにおいでになった際、ふと思いついて、中国のネットオピニオンリーダーの安替(アンティ)に引き合わせた。
 
 1975年生まれの安替は、ブロガーから米紙「ワシントンポスト」や「ニューヨークタイムス」の中国総局でのニュースリサーチャーを経て、ハーバード大に留学した。今は中国メディアでコラムニストとして米国、台湾を中心とした論評活動を行うと同時に、ツイッターを使った情報伝達を熱心に進める超人気ツイッターユーザーである。もともと理工系大学出身でプログラマーだったという彼による中国ネットメディア事情は生々しく、あまりにも面白かったので、JMM読者でもある庄司氏らの了承をいただいた上で皆さんにもご覧いただくことにした。
 
 ただ、さすがに2時間にわたる安替の独壇場をすべて収録するわけにはいかず、長くなったけれどもかなり内容を整理したものであることをご理解いただきたい。近いうちに、皆さんにも安替の声を直接聞いていただくチャンスがあることを祈りつつ…

************

安替:中国はネット検閲があるから、一般のサイトには政治的なものは出現しない。だから、わざわざ政府のアクセスブロックをいろいろ苦労して乗り越えてツイッターにアクセスして、一般のポータルサイトが提供しているような娯楽なんかを求めるわけがない。だから、中国人が集まるツイッターは世界で最も政治的な集まり。ほとんどの人たちが政治について話してる。蒼井そらさんはそんなぼくらのインターネットヒロインなんですよ。

ぼくらがなぜここまで蒼井そらさんが好きなのか、日本の人たちはたぶん、お分かりにならないでしょうが(笑)……以前はぼくのフォロワーは1万人くらいだったんですが、そらさんの出現後2万を超えた。

というのも、彼女の言葉が読めるのはツイッターだけだった。国産のマイクロブログやウェブサイトじゃ読めなかったわけです。だから若者たちがツイッターに押しかけ、中国人ユーザー総数が倍になった。

中国語のツイッターでは「政治」が語られていますが、ぼくは時々英語でもツイートしています。それはツイッターがインターナショナルなプラットホームで、国内の活動がダイレクトに海外のメディアに伝わる、それもとても速く。だから、中国国内でなにかの動きが伝われば、多くの人たちがそれを英語に直して即座に外国のメディアに知らせるんです。

庄司:なぜ政府が目をつけないんですか? 政府はあなたを逮捕することができるでしょ?

安替:目をつけてますよ、だからツイッターへのアクセスをブロックしている。でも政府はすでにブロックしてあるサイトを再びブロックすることはできない。ツイッターは幽霊なんです。

実際にはユーザーも捕まっている。でも、数百、数千という人たちが集まっているわけで、多すぎて皆を逮捕するわけにはいかない。

猪狩:だいたいどれくらいの人たちがツイッターを利用しているんですか?

安替:たぶん、20万人くらいはいますね。ヘビーユーザーは少なくとも数万人。多くが政府に対して不満を持っているオピニオンリーダーなので、彼らを逮捕するとその影響は大きい。彼らは海外のメディアとも直接つながっていますし。
 
アモイに郭宝峰「amoiist」というツイーターがいるんですが、汚職を訴えるビデオをネットに流して逮捕された彼が、警察署から英語で「SOS! I was arrested by police」(助けて!警察に捕まった)と英語でツイートしたところ、それが多くの人にリツイートされた。海外メディアにも即座に伝わり、報道がなされ、同時に多くの人たちが(彼を捕まえた)現地の警察署に抗議のハガキを送ったんです。500枚ものハガキが一挙に届いて、警察はものすごいプレッシャーにさらされた。すると、郭は7日後に釈放されたんです。あれは、ツイッターを使って行われた初めての「集団行動」でした。

ふるまい:彼はただのツイーターの一人でしかなかったのに、あの事件で超有名ツイーターになった。

安替:そう、つまりこの事件が証明したのは、中国の中心から遠く離れた地方都市で一人のネットユーザーの放ったツイートが、世界的なメディアの注目を引き、世界中で報道される、そういうことが簡単に起こってしまうということ。田舎と「ニューヨークタイムス」紙なんかをつなげたのが、ツイッターだったんですよ。

庄司:日本のメディアはそれ見てないですよね、たぶん。

安替:たぶん言葉の壁もあるんでしょう。ぼくもね、中国と日本の関係に興味があるんですよ。というのも、日本のメディアは一般に、「人民日報」だとか「光明日報」だとか、あと「環球時報(グローバルタイムズ)」なんかを読んで中国を報道している。どれもひどい新聞なのに。日本のメディアはもっとインターネットに注目すべきですよ。一番鋭いジャーナリストたちは新聞じゃなくて、ネット上にいるんです。

日本政府が毎年、そんな新聞社の関係者を日本に招いていますが、連中は中国に戻ると結局もとのもくあみ。共同通信の記者が「環球時報」の連中に、「ニュースを転載するときに内容とタイトルを変えてしまうのはやめてくれ」と伝えたそうです。すると「環球時報」側は「帰ってから担当者に伝えます」と答えたという。でもぼくからすれば、連中はそのやり方を変えたりしない。日本人を責め立てるのが彼らの仕事なんです。彼らはナショナリズムのかたまりなんですから。つまり、日本が毎年のように中国の国営メディアを招いたところで何の役にも立たない。

でも、ドイツのメルケル首相は訪中して胡錦濤と会談を持ったあとに、ぼくや他の3人の大学教授と面談した。ぼくはヒラリー・クリントンがインターネットの自由に関するスピーチをやった時も現場に招かれました。西洋諸国の政府は、市民社会に関心を払っている。彼らは少なくとも、市民社会を「中国の半分」だと考えている。なのに、日本はそんな「本当の半分」には語りかけない。

たとえば、韓寒。彼は(中国での出世の道筋である)大学進学を放棄して、小説を書くようになり、今はカーレーサーになっている。彼は市民社会のヒーローですが、日本のメディアが彼のことを紹介している例をほとんど目にしたことがない。でも、アメリカの「タイム」誌が行った「世界で最も重要な人々100人」では、1位がイランの大統領候補だったムサビ元首相、そして世界的な投票によって2位に選ばれたのが韓寒でした。つまり、世界では西洋メディアを通じて韓寒はよく知られている。でも、日本人は今だに知らない。

彼こそが中国の未来なんですよ? なのになぜ、日本人は古臭い中国の話ばかりしたがるのか? あなたがたは「環球時報」(のナショナリズム)の話だとか、以前の日本に対するおセンチな気分ばかりを取り上げる。もちろん、それらは存在する。でも、それは過去の話。我われは未来を見つめるべきです。未来について報道しないならば、中国の若者や市民社会の心なんて捉えられないし、中国政府が再び中国のナショナリズムを日本に向けさせるようなことがあれば、たぶん日本の肩を持つ若者はいなくなりますよ。

庄司:蒼井そらさんは中国語で書くことによって中国とつながったわけですよね。ツイッターは幸い短いので、たとえば安替さんのツイートでも翻訳器使えばすぐ分かるわけで、国境を超えられますよね。

安替:中国と日本がお互いを知ることはとても大事だと思います。というのも、中国は今、台頭している。軍隊が拡張されている。人々はそれを不安に感じている。そうでしょ? だからこそ、中国でなにが起こっているかを知る必要がある。でなければ、とても危険です。1920年代のように中国と日本がお互いを読み誤ってしまう。そして戦争が起こり、結局何をも得られなくなる。だからこそ、お互いを知ることは大事だと思うんです。

中国には自由を求めて政府に抗議するリベラル派がいて、彼らはアメリカ政府を支持している。さらに多くが台湾を支持し、香港を支持している。アメリカがイラク戦争のように間違ったことをしても中国のリベラル派のアメリカ政府への支持は変わりません。それでもリベラルで日本を支持する人はほとんどいない。

ぼくはそれが民族主義だとは思わない。中国と日本はもともといがみ合っているというわけではない。たとえば、蒼井そらさん。ぼくらの彼女への愛はとても純粋です。あと、卓球の福原愛ちゃん。彼女たちの話をしているときに南京大虐殺の話を持ち出すやつなんていない。みんな、とても純粋に彼女たちが好きなんです。そこには憎しみはひとかけらもない。

歴史はときに争点でしかない。別に根本憎いというわけではないんだと思います。ほかにもAVスターはいるけれど、そこでは逆に南京大虐殺を持ち出して論争を吹っかける人がいる。なのに、そらさんの時にはそれがない。なぜなんでしょう?

それは、そらさんが中国のためにものすごく多くのことをしてくれたからです。大地震の被災者への募金を呼び掛けてくれたり、ツイッターユーザーの数を倍に増やしてくれたり(笑)……相手がきちんとした心を持ってれば、ぼくらだって何が良いことか悪いことかが区別できるのです。

ふるまい:そらさんはとても大事な民間大使になっている。

安替:ええ、彼女はネット上の翻訳サイトを使って自分のツイートを中国語に翻訳した。それが時々間違ってたんですよね。たとえば、「ファン」が「球迷」(ボールゲームのファン)という言葉に翻訳されてしまった。でも、ぼくらは本当に彼女の「ボール」が好きなんで(笑)……彼女が中国語でコミュニケーションを図ろうと本当に努力していることが良く分かった。ぼくらも「球迷」と自称したり(笑)。

あと、青海地震のチベット族被災者たちへの募金を呼び掛けてくれたりしたことにも、ぼくらは感動しました。中国向けメディアのインタビューを受けたり、と彼女の優しさを感じることができた。だからこそ、そらさんの気持ちにぼくらは本当に揺り動かされたんです。

ぼくらは彼女をとても尊敬するようになった。その結果、ぼくは彼女のビデオを観なくなった。同じように、もう観ない、裸の写真も観たくないって言っている人は多い……というのも、ぼくらは彼女をすごく親しい友人のように感じ始めたから。

ふるまい:つまり、彼女はツイッターを始めたことで中国での「市場」を失った?(笑)

安替:そう! 市場を失いつつある……といっても、中国の「市場」は海賊版による市場で、きちんと正規版にお金を払っていた人はいなかったんですけどね。でも、それって「産業」としてはあんまり良いニュースじゃない(笑)。

日本人と言えば、もう一人要なのが、加藤嘉一くん。北京大学の若い学者で、すでに中国語で日中関係や中国政治についての本を出版しています。中国人は彼のコラムを通じて、初めて日本人が中国や中国メディアのことをどう考えているのかを知った。

もしもっともっと多くの人たちが中国語のコラムを翻訳して日本で紹介したり、日本人が中国語で中国メディアにコラムを書けば、相手が実際に何を考えているかを知ることができる。ぼくらはもっとよくお互いを理解できる。ぼくらは、あなた方が何を考えているかを知りたい。でも、新聞を開いて翻訳されたニュースを見ても、そこで何を伝えようとしているのかを感じることができない。ぼくにはそれが非常に腹立たしい。日本の新聞はほとんどオピニオンを中国語に翻訳してくれないし。

韓国はすべての記事を中国語に翻訳していますよ。「朝鮮日報」や「東亜日報」は中国や東南アジアに関するすべての評論を自分たちで中国語にしている。ぼくらは以前は多くの情報を北朝鮮から得ていましたが、今はほとんどが韓国メディア発になった。そんな年月を経て、ますます多くの中国人ネチズンは北朝鮮より韓国を支持するようになった。

つまり、韓国メディアは中国国内の朝鮮半島問題に対する視点をコントロールしているわけです。しかし、日本メディアは中国における何をもコントロールできておらず、中国メディアにおける制御権を放棄している。共同通信の中国語版は我われがお金を出さなければ読めないようになっている。なぜそこまでして影響力を失う方法を選ぶのか? 日本は国連の常任理事国になりたいんでしょう? アジアでは中国だけがそれに反対しているじゃないですか。中国がそれほど日本にとって大事な立場にあるのに、なぜ日本は中国の若者の考え方を変えていこうとしないんですか? 

あなた方も日本と中国の政治環境に関するぼくらの視点作りのプロセスに関与することが出来るはずなんです。加藤くんはそれをとてもうまくやっている。彼は少しずつ中国政府が握っていたコントロール力を変えつつある。もし、有名な日本人コラムニストが中国メディアで20人活躍すれば、日本は中国を変えられますよ。

やり方だって簡単。国際関係学部、ジャーナリズム学部、政治学部を持つ学校が市民社会団体、NGOと手を組んで、日本の若く、優秀な政治研究者たちが書いた、アジア政治に関する最良のコラムを中国語に翻訳するグループを作って、中国メディアの良質な編集者にメールで送りつければいい。毎週のように送りつければ、あっという間に状況は変わっていきます。

英語の場合、多くの中国人ネチズンがボランティアで英語の記事を翻訳してネット上で公開している。韓国語の世界ではもう韓国側が自分たちで始めている。彼らはそうやって餌をばら撒いて、ぼくらにそれを食べるように仕向けている。さらに(韓国の通信社)「聯合ニュース」にはiTouchアプリがあって、中国語バージョンに登録すれば中国語番組が毎日10本配信される。そうやって彼らは韓国関連の事件における輿論の形成に成功しています。日本との間にももっともっとそういうことをやる人たちが必要なわけ。

たとえば環境保護の面では日本は素晴らしい仕事をしている。でも、それを中国人はまったく知らない。だから、中国で「日本」と言うとすぐに「南京大虐殺」が出てくる。

ぼくは南京出身です。ぼくがそこで受けた教育は、完璧な反日教育でした。でも、情報がぼくの日本に対する考え方を変えた。インターネットを通じて、そして歴史的文書を読み重ねて来て、「なぜ戦争が起こったか?」とか、満洲や台湾、さらには日清戦争についての文書を読んで、この二つの国はすべてをきちんと処理しなければ、再び悲劇が起こるだろうと感じるに至りました。もっともっと(情報が)必要なんです。

庄司:日本人は日本のアニメが観られているとかいうことで安心してますよね。

安替:でもそこには政治は出現しない。日本のアニメが大好きな人でも、政治的には反日の人もいる。つまり、国と国との関係を改善するために効果的な方法ではないと思います。我われはもっともっと政治的にやらなければ。

加藤くんはその点、とても政治的に日本と中国について語っています。ぼくらが彼の文章を読み続けるのは、日本人が中国をどう考えているのかを本当に知りたいから、そしてそれを知ることがぼくらにとってもとても重要だからなのです。そうすることで、ぼくらはそこに「日本鬼子」だけではなくて、「加藤」という人物がいることを知ることができる。

ぼくらにはマスメディアは必要ない。ぼくらに必要なのは数人のコラムニストたち、幾人かの人手なんです。それは新しいやり方です。ペーパーメディアではできない。ツイッターのそらさん、「FT中国語版」の加藤くんといった人たちが、中国人の心を引っ張って日本人を理解させることができる「ニューメディア」なわけです。

ふるまい:わたしは日本で講演した時にこう言ったんです。「中国が政治や経済が主導だった時代は終わった。今は社会が政治と経済を引っ張る時代に入った」と。でも、日本の主要メディアや重鎮研究者で、そんな庶民に代表される、新しい時代に入ったと気付いている人はまだいません。

安替:ぼくは個人的にそれを証明していきますよ。日本のメディアにもっと中国国内でなにが起こっているのかを知らせたいし、ぼくは「FT.com」(英「フィナンシャルタイムズ」オンライン)と「ニューヨークタイムス」に持っているコラムで、そらさんについても2本書くつもりです。たった一人のそらさんが、中国語ツイッター空間の全貌を変えてしまった。そして、加藤くんは初めて中国でコラムを持った日本人として、中国で本を出版した。

庄司:一方で、日本に中国のことをちゃんと伝えている人も本当に少ないんですよねぇ。

安替:両国のコミュニケーションに関わっている人は非常に少ないですね。アメリカと中国の間には、ボランティアでコミュニケーションの橋渡しをしている人がたくさんいる。そして、韓国はそれを自分たちでやっている。

以前は中国と日本の関係を語る時、政府間のことでしかなかった。でもこれからは、もっと違う中国を、市民社会について語るべき。政府間では意見の齟齬が起こることがありますが、市民社会同士の間にはそれほど大きな差はないはず。というのも、ぼくらは同じ価値観を共有しているから。民主、自由、人権、市民社会の民主化、民主への期待、といったものをシェアしている。だから、市民社会こそがぼくらがよいコミュニケーションをとるためのベースなのです。それを、ぼくは今後数年にわたって伝えていこうと思っています。これこそが、過去とは大きく違う点でしょう、そしてとても重要な点。

庄司:中国をよりリベラルにしていくとアメリカ化する可能性もあるわけですよね? 

安替:もちろん社会的な変化も重要ですが、それだけでは抜本的な変化じゃない。ぼくのいう抜本的な変化とは、ぼくらは民主化を目指しているけれど、それが起こるのかどうか、そしていつぼくらが民主化に直面できるのか、です。

中国は台頭している。これは現実です。しかし、中国の台頭が何を意味するのか? それは脅威なのか? それは全体主義か、それとも民主主義なのか? もし中国が今のような全体主義のままで台頭すれば、アジアだけではなく世界全体の「敵」になってしまうでしょう。

でも、ぼくは中国人ですし、ぼくらの未来を楽観しています。ぼくらは民主化を迎えるはずですよ、10年から15年のうちにね。中国が民主化に向かえば、すべてが劇的に変わり、米国との関係も、アジアの地政学的な政治関係も変わる。そうなれば、アメリカ、日本、中国を巡る話題もがらりと変わるでしょう。
 
とはいえ、それは今後のこと。いまぼくらが話題にすべきなのは、民主化が起こるのか、そしてそれはいつなのか、ということです。

猪狩:政府がインターネットを規制することによって民主化が早まる可能性は?

安替:特に関連性はないと思います。民主化という動きは、中国政府が経済を、国全体をコントロールできるかどうかに関わっている。

というのも、中国はとても大きくて、32の省を抱えています。なので(中央政府は)地方政府をコントロールしつつ、経済をコントロールしなければならない。一旦、中国経済が崩壊すれば、それが体制の終焉となる。だからこそ、彼らは「維隠」、社会の安定に努めているんです。中央政府にとって、インターネットよりも経済、そして地方政府との関係の方が重要でしょう。

インターネットはチャンネルであって、決定的な要素ではない。もちろん、チャンネルですから、ときにいろんなことができますが。そらさんがやっているようにね(笑)。

庄司:オピニオンリーダーの世界とQQを使っている膨大な数の人たちの世界とは、つながっているですか?

安替:ぼくが考えるに、どこの国でも政治のことを考えているのはほんの少数です。日本だってアメリカだって、そうです。中国のツイッターユーザーのように毎日政治を語っているのは、ほんの少数のはず。しかし、国を変えるのはこの少数の人たちなんです。ぼくらも、QQユーザーたちにたくさん政治について語ってほしいとは思っていない。

中国におけるオピニオンリーダーは、ただの「オピニオン」リーダーではないのです。ぼくらは時に、動員力を発揮することができる。ツイッターは新手の政治組織ともいえるでしょう。政治組織は中国では違法ですが、ツイッター上では100%発言の自由が守られているし、(政府は)それを規制できないために、政党という形を取らずに政治組織化できる。中国人にとって初めてのプラットホームとなっているんです。1979年の台湾に「美麗島」という雑誌が出現したのと同じように。

「美麗島」も政党名のない政党でした。彼らは、その後台湾の独立を主張する民進党の前身となった。彼らがなぜまず雑誌を立ち上げなければならなかったのか? なぜ政党をつくらずに雑誌だったのか? それは当時の台湾では政党の結成が入獄や死を意味するものだったからです。だから彼らは形のない政党として雑誌を設立した。中国でも政党の結成は違法ですから、他の方法をとるしかない。それがぼくらがツイッターという空間を非常に重視する理由です。

ツイッターも今、ただのツイッターじゃないんです。外国のメディアはそれをとても単純化して眺めている。日本とかアメリカのような普通のツイッター空間ではそれは起こり得なくて、中国語の空間でだけ起こっている。それは100%、中国人にとってツイッターが初めての自由な発言が許される公共空間だからです。そんな空間は今までまったくなかった。ぼくらはいつも管理や規制にさらされてきた。

たとえばダライ・ラマはすでに2回も、中国大陸のツイッターユーザーから集めた質問に答えるという形で対話を実現しました。質問のうち、トップ10に対してダライ・ラマが英語で答えたのを、誰かが中国語にしてすぐにツイートした。真剣な質問のほかにもかなり失礼な質問もありました。でも、彼はそれにも答えた。それは初めて、中国大陸の人々がダライ・ラマの言葉を聞くことができたチャンスでした。それがツイッターを通じてだけ行われたのです。あと、1989年の天安門事件の学生リーダー王丹もツイッター上で、中国の人たちと対話できるようになった。

以前は中国当局が勝手にファイアウォールを作っていた。彼らだけがその権利を持っていて、言葉の壁、国境の壁、媒介の壁……彼らはそれらを存分に使って、日本やダライ・ラマ、台湾、天安門事件の学生たちのイメージを悪魔のように語っていた。そんな壁を、ツイッターが今、平にしてしまった。もし、本人がそれを望めば、直接相手に尋ね、それに直接的な返事をもらうことができる、これは素晴らしいことです。

なのに、なぜ、日本の政府関係者、そして評論家たちはそらさんのように、直接中国人に語りかけないんでしょうか? それをやれば、きっと良い結果がでるはずなのに。

庄司:ぼくは日本で、政治家は軽視されて発言力を失っているんだから、見えるところで堂々と話しかければいいんじゃないか、と言っているんですが。

安替:鳩山さんがツイッターに現れた時、中国からも多くの人たちが彼をフォローした。でも、彼は一度も英語でつぶやかなかった。大臣たちが中国だけじゃなくて、外国に向けて英語で言葉を発するという習慣をつければ、世界中が日本の政府関係者が何を考えているかを知ることができる。それはとても大事なことでしょう? ぼくらだって中国語でつぶやいてくれなんて、重すぎる注文はしませんよ。でも、英語は基本でしょう。つぶやきまくる必要はありません、1日に1、2回つぶやけばいい。

たとえば、その日首相が何をするのか? どこかの国、どこかの町を訪問するとか、どこかの会議で演説するとか、なんでもいいんです。何かのイメージを伝える。そうすれば、中国のツイーターたちはそんなアカウントをきっとフォローしたがると思います。そうすることで日本の首相は中国人ツイーターにとってただの外国の首相というだけでなく、中国語のツイーターになるんです。そらさんみたいにね(笑)。

ぼくらは時々、そらさんが日本人だとかいう前に、ただの「網友」(ネット仲間)だと感じています。だから、日本政府のトップが中国人の「網友」になればとてもよいこと。というのも中国語で1日1ツイートで、ぼくらに、そして両国の関係に大きなインパクトを与えることができるはずです。それは良いことですし、簡単にできること。別に予算が必要になるわけでもない。

中国には中国語ツイーターランキングというのがあって、蒼井そらさんはそのトップ10に入っているんです。トップが連岳(アモイ在住のコラムニスト)、2位が機械ツイーターの@rtmeme、3番目が芸術家の艾未未で、ぼくが4位。そこには重要なツイーターたちが皆ランキング入りしている。日本の首相がツイートを始めれば、そのトップ20位には入るはず。それくらいみんな待ち望んでいる。

日本の首相が中国語ツイータートップ20位に入れば、彼がつぶやく一言一言がその翌朝には中国メディアに報道されるでしょう。ツイッターを使えばすべての媒介のブロックを突破できる。たとえば、日本の政府が中国の政府に聞かせたい演説をする際に、東京にいる中国メディアに伝えますよね。でも、彼らは内容やタイトルを変えてしまうので、本当に伝えたい情報を伝えるのがとても難しい。

だから、ツイッターでそれをつぶやいて、中国メディアをうまく握る。日本側がそこに直接、提案を投げるわけです。相手がこっちを罵ろうと批判しようと、提案を残しておく。相手がやれることは、その(メモに書かれた)内容に対して話し合いに応じるかどうかだけ。そしてそれによって多くの人たちの注目を引くことになる。メディアは「こんな提案が出た」と伝える。そういう意味で備忘録作りができる。もちろん、もし中国語でつぶやけばもっと効果は高い。

アメリカはこれをうまく使っている。万博のアメリカ館は、パビリオンの中で唯一中国語のツイッターアカウントを持っている。そしてアメリカ大使館も、唯一中国語でつぶやいていて、ぼくらはアメリカ大使館を「ぼくらの大使館」と呼んだり、アメリカ大使はぼくら中国人ネチズンの大使みたいだし(笑)。

米大使館は毎月、中国ブロガーを館内に招いてミーティングを行っています。そして、大統領が訪中する前にクリントン長官が訪中した際にも、大使館は2回のミーティングを開きました。一つは伝統なメディア向け、もうひとつはブロガーを集めたミーティング。そしてブロガーたちはミーティングの最中にその様子をツイッター上に生中継した。そんなふうにこれまで数年間、アメリカはインターネットを公共外交にうまく利用してきた。
 
ヒラリー・クリントンやドイツのメルケル首相には会ったことがあるぼくは、中国の外交部長(大臣)には会ったことない(笑)。だからこそ、ぼくは彼らに親近感を感じている。

ぼくだけじゃない。他のツイッターユーザーも、アメリカが、オバマが何をしているのか、どんなスピーチをしているのか、いつそれをやるのか、を知ることができる。(英語で発表されたそれを、)中国語に翻訳して流すような習慣が出来上がっているんです。だから、中国のネットユーザーはいつでもオバマの演説を観ることができる。でも、胡錦濤は? 1か月に一回くらい新華社が彼の動向を伝える程度。

インターネットは簡単に距離を乗り越えることができるんです。インターネット上の所謂「距離」は、実際の「距離」や「境界」とは違うんですね。ツイッターを使っているとワシントンの方を近くに感じられる。

なのに、なぜ日本の政府はブログやツイッターで、アジア政治について何を考えているかを伝えないのでしょう? あなたがたは「未来」を失いつつあるんですよ、中国の未来を。一方でアメリカの政府は未来の中国の心の半分をつかもうと努力している。アメリカは賢い。

インターネット、特にツイッターは公共外交というまったく新しいチャンスを生んでいると思います。それは国と国の距離を狭め、ギャップを埋め、外国政府を身近にすら感じさせ、自分の政府が変てこだ、と気づかせてくれるもの。

ぼくらの間には歴史的な問題がある。処理しなければならない問題がある。だからこそ、我々にはもっともっとコミュニケーションを図る必要がある。その必要性はアメリカ以上ですよ。アメリカとの間にはそんな問題はない。ぼくらにとって、日本は最もそういったコミュニケーションをとるべき相手で、もっと社会が緊密な関係をとるべきなんです。それがまだ足りない。

ぼくらが、情報伝達の窓口にならなければなりません。ぼくらは個人ですが、日本人がつぶやく中国語のツイッターを通じて日本のニュースを以前よりもチェックするようになりました。ぼくはこれを有難いと思っていますよ。ぼくらは彼らの力を借りてるわけで、そんな彼らは「網友」なんです。

つまり、今は個人が情報の流れ全体を変えることができる時代なんです。日本の外務大臣は毎年何億というお金を使って、日本の戦時中のイメージを変えようとしているでしょうが、でもそれだけのお金を使っても効果はない。でも、個人は中国の日本に対する理解を強化できるんです。
 

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