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劉暁波のノーベル平和賞をめぐるネット上の攻防(前編)(日経ビジネス)「劉暁波は獄中に居ながら、アメリカから高給をもらって
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投稿者 tk 日時 2010 年 12 月 25 日 06:26:30: fNs.vR2niMp1.
 

劉暁波のノーベル平和賞をめぐるネット上の攻防(前編)
2010年12月21日 火曜日 遠藤 誉


 12月10日、ノルウェーの首都オスロでノーベル平和賞の授賞式が開かれた。今年の受賞者である中国の民主活動家で服役中の劉暁波の席は空席のままだった。彼が座るはずだった椅子の上に置かれた賞状とメダルの映像が世界各国のテレビに映し出されていたとき、中国の中央テレビ局(CCTV)は一切この話題に触れなかった。完璧に無視したのである。

 受賞者の家族さえ出席を許されないため受取人が居なかった授賞式は、1935年以来、75年ぶりであるという。このときは、ナチス時代の平和運動家オシエツキーが同じく獄中に居た。この事実こそが逆に、中国の「言論の自由」に関する現状を象徴しているとも言えよう。

ノーベル平和賞授賞の発表後、ネット上で始まった激しい劉暁波批判

 2008年12月9日に、劉暁波が中心となって起草した「08憲章」がインターネットに出現してからというもの、中国のネット空間では奇妙な攻防が起きている。

 「08憲章」とは一党独裁を糾弾し、人民解放軍の国軍化(現行は、人民解放軍は中国政府の軍隊ではなく中国共産党の軍隊)と言論の自由をはじめとした基本的人権を認めるよう中国政府に要求した民主化のための憲章だ。

 すぐに削除されると思われた「08憲章」はしばらく削除されずに泳がされていたが、禁句と決定した瞬間から徹底した検閲が実行されて劉暁波の名前も消えた。だが、2010年10月8日にノーベル平和賞が発表されると、今度は別の現象が現れ始めた。

 「08憲章」という言葉は相変わらず削除が徹底されているが、「劉暁波」に関しては最初のうちは削除されていたものの、途中から逆に増え始めた。しかも激しい悪口が書き連ねられるようになったのである。

 以前日経ビジネスオンラインで連載した記事「ネットは“中国式民主主義”を生むか」で解説したように、中国大陸においてインターネットからアクセスする海外情報は、「防火長城(Great Fire Wall)」によってフィルタリングされている。しかし網民(ネット市民)たちは、その「壁」を乗り越えて海外情報にアクセスし、「劉暁波」という名前と「ノーベル平和賞受賞」という事実を少しずつ知るようになった。

 網民の60%は10代や20代の若者によって占められている。前回も触れたように、若者たちの多くは「08憲章」という言葉さえ知らず無関心だったのだが、さすがに「ノーベル賞」という言葉が中国大陸在住者と結びついていることに驚き、少なからぬ関心を持ち始めた。それがなぜ中国国内では報道されないのかに関して疑念を挟む余地を与えないようにするためには、中国政府は劉暁波がいかに極悪非道であるかという情報をまず植え付けなければならない。

 そのため「08憲章」という言葉と情報は遮断されたまま、突然激しい劉暁波批判が始まったと考えていいだろう。批判の中には虚実織り交ぜて報道されているものもあり、必ずしもまったくの虚偽ではないことが若い網民を誘導するに十分な力を持っていたということも言える。

「劉暁波は獄中に居ながら、アメリカから高給をもらっている」

 例えば10月15日付のウェブサイト「中国新聞網」は、劉暁波が獄中にありながらアメリカから高給をもらっていると批判した。そこには“貴族犯人”劉暁波が年収2.3万米ドルをもらっている証拠として、全米民主主義基金(National Endowment for Democracy, NED)が雑誌『民主中国』に資金援助している金額が載っている。

 全米民主主義基金とは、他国の民主化を支援することを目的として、1983年にレーガン元大統領のときに設立された基金である。民間の非営利組織とされているが、実際にはアメリカ議会が出資しているため、基金の年次報告書に掲載される会計報告を閲覧することができるようになっている。

 『民主中国』はDemocratic China Inc.という会社が毎週ネットで刊行している雑誌で、その社長は劉暁波だ。劉暁波が投獄された後は、中国大陸に在住する張祖樺が管理しているという。その運営資金としてNEDが2008年10月1日から2009年9月30日までに劉暁波に送った金額がNEDの会計報告のコピーという形で中国新聞網に載っているのである。

 タイトルは「劉暁波は中国で監獄に居ながら、アメリカの給料をもらっている(刘晓波在中国坐牢,领美国的工资)」。このページの英文コピーにある“Liu Xiaobo”は、「劉暁波」の中国語ピンインである。

 中国新聞網は、この事実をもって「劉暁波はアメリカの手先」という趣旨の酷評をしている。一文字も書かず、一文字も公開しなくとも、ただ牢屋に居るだけで高給をもらっている「貴族犯人」というわけである。

 中国の民主化運動に対するNEDの資金援助に関しては、興味深い情報がある。例えばこのホームページは2007年までの支援資金の累計を披露している。それによれば、中国全体に対して2007年までに611億0531万米ドルが支払われており、それは全アジアに対する総額の27.75%を占めているという。中国に限定した内訳は、大陸が477億4733万米ドルで、香港が36億9983万米ドル、チベット44億4710万米ドル、ウィグル52億1105万米ドルとなっている。

 また10月26日付の網易新聞中心(ニュースセンター)は、中国網の記事として「劉暁波 其人其事」という記事を転載しており、そこにも劉暁波に対する酷評が披露されている。例えば、劉暁波は「中国人のレベルがこんなに低く、こんなに創造力に欠けているのは、(中国という)人種と関係がある」と豪語し、「こういう中国と関係なくなれないのは恥さらしだ」と言ったという。また「台湾独立」や「チベットの独立」を擁護し中国を分裂させてしまえと主張している、ともしている。

 さらにここでも劉暁波の給料が話題となっており、NEDから年俸23,004米ドルもらっていることが挙げられている。中国政府をののしる文章を書いてはアメリカから金をもらい、牢屋に入ってもなお「俺はお前たちとは違うんだ。俺は金には困ってない。何と言ったって、こんなところに服役してても外国人が送金してくれるんだからな」と同じ牢獄の囚人たちにうそぶいているというのである。

 政府の通信社である新華社の電子版である新華網は、11月3日、南アフリカの中文新聞『郵衛報』に載っていた「 劉暁波は戦争を代表しているのであって、平和を代表しているのではない(劉暁波代表戦争而非和平)」というタイトルの記事を報道している。そこでは劉暁波が戦争を賛美し、(アメリカによる)アフガニスタンとイラクの侵略・占領を支持し、朝鮮戦争とベトナム戦争(アメリカによる朝鮮とベトナムでの軍事介入)さえ支持していたとしている。ノーベル平和賞は平和を愛する者に授けるべきであって、決してこのような好戦的な人物に与えるべきではないと批判している。

 どの記事も、劉暁波がいかに極悪非道の悪党であるかを浸透させようという意図がうかがえる。

北京で劉暁波を知っている人は10%?

 そんな中、『人民日報』傘下にある『環球時報』の「環球世情調査センター」が「ノーベル平和賞事件に対する国民感情に関する調査報告」というアンケートの結果を公表した。調査したのは10月15日から17日で、手段は電話とのこと。そのデータは数多く転載されているが、筆者が見たのは『新浪網ニュース』である。

 それによれば、回答者の75%が「ノーベル平和賞委員会は中国に対して圧力をかけ中国に西側式の政治体制を受け入れさせようとしている」あるいは「中国に西側の価値観を浸透させようとしている」と答えている。

 調査にバイアスがかかっていることは先刻承知の上で、それでも興味深い調査結果とコメントがあるので、少し詳細に見てみよう。

1. 70%以上の回答者が、「今年のノーベル平和賞の受賞者が誰であるかを知らなかった」。誰であるかを知っていた人の割合は、北京23.5%、上海27.2%、広東14.1%。

 そのうち、今年のノーベル平和賞受賞者が決定する前から「劉暁波」という名前を知っていた人の割合は46.8%で、ノーベル賞平和賞が決まってから初めて「劉暁波」という名前を知った人の割合は53.2%であった。ということは、例えば北京なら、23.5×0.468=10.9%の人しか、劉暁波の名前を受賞前に知らなかったということになる。

 興味深いのは、これに関して中国社会科学院アメリカ研究所の倪峰副所長が言ったコメントだ。彼は「これはすなわち、中国の一般国民はノーベル平和賞などに強い興味を持っていないということの証しだ。もしこれが住宅価格とか就職問題などであったとしたら、関心の度合いは90%以上に達するだろう。従って、西側諸国が劉暁波にノーベル平和賞を授与することによって中国の民衆を触発することは、そもそも不可能なことなのだ」とコメントしている。

 倪峰副所長のこの見解は、奇しくも前回、本連載でご紹介した政府高官のコメントと一致する。その意味で、ここにはそれなりの真実というか、中国の現実があるのだろうと解釈せざるを得ない。

劉暁波「すぐに釈放すべき」との意見も存在する

2. 回答者の41.1%が「中国政府はノーベル平和賞事件をあまり気にかけず、効果を薄めるように処理すべき」と答え、33.1%が「中国はノーベル賞委員会の行動を厳しく批判し、西側の陰謀を暴露すべきだ」と答えた。一方、12.2%が「ノーベル委員会の決定を受け入れるべきだ」と回答している。

 これに対し、前出の倪峰副所長は「ここ2年間ほど、人権問題に対する西側の考え方には新しい傾向が見られるようになった。それも社会矛盾に対して焦点を合わせるようになっている。そのため西側は人権問題を草の根(庶民)から政府に向かわせるようにしている。なぜなら中国の中産階級の成長は、決して西側が希望するような方向には向かっておらず、中国の民は自分の生活しか考えてないことを知ったからだ。だから西側は何とかして草の根に影響を与えようとしている。しかし、この調査結果でも明らかなように、中国の民衆の多くはノーベル平和賞に対して拒絶する態度を取っている(ので、これは成功しないだろう)」と語っている。

 中産階級に関する彼のコメントは、筆者が『拝金社会主義 中国』(ちくま新書)で描いた中国の庶民像と、ほぼ一致する。非常に興味深い指摘だ。

3. 「ノーベル賞委員会に何を期待しますか?」という問いに関しては、59.3%が「ノーベル委員会は劉暁波に対するノーベル平和賞授与を撤回して、中国に謝罪すべきだ」と答えた。

4. 「中国政府は劉暁波に対してどのように対処すべきか」という問いに対しては、57.2%が「中国政府は刑期を終えるまで劉暁波を引き続き服役させるべきだ」と回答し、16.4%が「然るべき時期に劉暁波を釈放し中国を離れさせるべきだ」と回答している。「劉暁波を直ちに釈放し、授賞式に出席するためノルウェーに行かせるべきだ」と答えたのは、わずかに7.9%しかいない。

 バイアスの掛かった調査報告であることは分かっていても、「すぐに釈放すべき」と回答した人が居ることを明らかにしたのは注目に値すべきだろう(信憑性を出すための演出であったかもしれないが…)。

『南方都市報』が示したリベラルの真骨頂

 授賞式が過ぎると、そろそろ「民」からの抵抗が顔を出すようになった。勇気ある記事を公開したのは、『南方都市報』だ。いつもリベラルな報道をすることで知られているメディアである。

 12月12日から8日間の会期で開催されるアジア・パラリンピックに関する記事にかこつけて、トップページに以下の写真を載せたのである。

 「鶴」が「平らな」地面を椅子に向かってゆっくり歩いている。それを阻止するような「掌」が右端にあり、阻止された行き先には「空席の椅子」が並んでいる。そしてその椅子は「警戒線のロープ」で結ばれている。

 

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