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電力の財界支配と九電暴走
http://www.asyura2.com/09/dispute30/msg/532.html
投稿者 taked4700 日時 2012 年 1 月 15 日 17:26:24: 9XFNe/BiX575U
 

以下の文章があまりに的確です。

>省エネや再生可能エネルギー分野で日本の製造業が世界最先端の技術やコスト競争力を持っているにもかかわらず、硬直的な電力事業体制に成長の芽を摘まれているケース(例えば、太陽電池や地熱発電、風力発電など)は少なくないように見える。

> 九電の現経営陣に公益事業者としての自覚が欠如していることは容易に想像できる。だが、問題はそれを指摘するだけでは片付かない。原発のような周辺地域や住民に多大なリスクをもたらす可能性のある事業を担う企業のトップが、今回のように民間企業であることを盾に所管大臣に叛旗を翻した場合、政府はいかに対処するのか。

> 「電力会社の財界支配」とそれが生んだ「九電の暴走」をアンチテーゼとし、抜本的な電力改革に結びつけるべきだろう。

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電力の財界支配と九電暴走
安西 巧  2011年11月28日(月)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111124/224215/

 「物言わぬ財界では存在価値はない」と題した日本経済新聞社説が掲載されたのは1994年8月。冷戦終結から5年、「自由主義を守る」という大義を失った財界が緊張感をなくし、「日本経済がかかえる構造問題や将来の見取り図について財界トップからなんの提案も出て来ない」と経済団体首脳らの姿勢を痛烈に批判した。単に口数が多い少ないの問題ではない。当時財界に中身がなく言い放しの議論があまりに目立つことへの警鐘だった。

 17年後の現在、存在価値を問われていた「財界」はいまだ健在。ただ、経済団体のリーダーたちの発言は頻繁に報じられているものの、相変わらず目立つのは政策要望など目の前の利益に結びつくものばかり。半面、未曾有の原発事故を起こした東京電力の経営責任などへの言及はなく、「やらせメール」問題で暴走する九州電力首脳を諌める様子もない。“我田引水”のロビー活動が目的ならば業界団体で十分のはず。都合の悪い世論に背を向けたままでは「財界」と国民の距離は乖離するばかりだ。

 米倉弘昌・経団連会長はこのところ機嫌がよい。念願だった環太平洋経済連携協定(TPP)参加の道が開けた直後の11月15日、自民党幹部との懇談後に記者団に囲まれた米倉会長は「カナダ、メキシコに先駆けて日本が(TPPに)参加表明できたのは良かった」「(協議の過程で)ちゃんとした情報が発信されるにつれ、(反対論は)なくなるのではないか」などと満面の笑みを浮かべて語った。

 3月11日の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故発生後、渋面に加えて時折怒気を含んだ表情が多かった「財界総理」だが、9月2日に野田佳彦首相が就任してから、周辺に漂うムードは180度変わった。民主党の新代表に野田氏が選出された8月29日にコメントを求められた米倉会長は「政策に通じた、非常に安定した行動力のあるリーダー。民主党の議員は非常に良い結論を引き出した」と絶賛。勢い余ってか、前任者と比べて「首から上の質が違う」とまで言い切った。

 野党の陣笠議員だった当時から「自民党と考え方がほとんど同じ」と見て関係を築いてきた経団連と米倉会長にとって、野田政権の誕生は歓迎すべきことだったのだろうが、それにしても「首から上の質」で比べられた前首相の菅直人氏こそ好い面の皮である。退陣後とはいえ、一国の総理を務めた人物をここまでコケにした財界人は筆者の記憶にない。

 米倉会長の物言いは良くも悪くも直截。聞く方にとっては分かりやすいが、単刀直入であるがゆえに言葉足らずで誤解も生みやすい。辞意表明後も退陣時期をなかなか明確にしなかった菅氏に対して「国民にちゃんと言わないと教育上具合が悪い」(6月20日、定例記者会見で)と非難したほか、菅氏が「脱原発」を独断で進めていることについて「日本に政治はないのか」(7月5日、ベルリンで記者団に)と苛立ちをあらわにしたこともあった。

 菅政権末期(7月末)の内閣支持率は19%(日本経済新聞社世論調査)。8割の支持を失い、政府を事実上機能不全の状況に陥れても権力の座に固執した首相へのフラストレーションは国民も同じように感じていたに違いないが、米倉会長の表現が論理よりも感情を前面に出すために「こどものケンカのようにしか聞こえず、首相退陣を唱えても説得力に欠ける」(大手ゼネコン幹部)などと産業界で評判は芳しくなかった。

相次いだ東電“擁護”の発言

 もうひとつ。米倉会長に対してクビをひねる向きが多かったのが過剰なまでの東京電力擁護である。福島第1原発事故の発生直後から、その姿勢は一貫している。事故勃発から5日後の3月16日、米倉会長は東京都内で記者団に福島第1原発の事故について「1000年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と政府と東電を称賛。さらに、事故は徐々に収束の方向に向かっているとし、「原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない」と語っている(北海道新聞3月17日付朝刊より)。

 当時の実際の状況はどうだったのか。震災翌日の12日に福島第1原発1号機が水素爆発を起こし、14日に3号機、15日に2号機、4号機と立て続けに爆発や火災に見舞われていた。爆発の前後から炉心溶融(メルトダウン)が始まり、その後一部は溶融燃料が圧力容器の底を突き抜けるメルトスルーに至っている可能性を政府は6月になって認めている。16日時点で事故が収束に向かっているとはとても言えない状況であったことは明らかなのだが、ならばなぜ米倉会長はこんな発言をしたのか。正確な情報がない中で、根拠のない楽観論を述べたとすれば、不見識との批判を免れない。

 事故発生から1カ月後の4月11日の記者会見では、「東電には頭が下がる。甘かったのは東電ではなく、国が設定した安全基準の方だ」「東電の技術力の高さ、モラルの高さは世界最高であると認識されるはずだ」と歯が浮くような礼賛論を展開している。また同日の会見で、事故直後の3月16日から4月7日まで“雲隠れ”していた清水正孝・東電社長(当時)が謝罪のために訪れた佐藤雄平・福島県知事に面会を拒否されたことについて感想を求められた米倉会長は「苦境にある者にああいう対応をするのはリーダーとしての資質を疑う」と清水氏ではなく佐藤知事を批判(産経新聞4月12日付朝刊より)。「苦境にある」のは被災地の福島ではなく、事故を起こした東電の方だという、通常の感覚では理解し難い発言を繰り返していた。

 そして、この頃から米倉会長は原発事故の賠償に対する東電の免責を盛んに唱え始める。1961年に成立した原子力損害賠償法(原賠法)では「損害が異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたものである」場合は原子力事業者(東電)の賠償責任を免じると定められている(第3条1項)。法律制定時に国会で「“異常に巨大な天災地変”とは関東大震災の3倍規模」という政府答弁があったことを引き合いに出して、米倉会長は「今回の東日本大震災は関東大震災の30倍の規模」と指摘。政府が賠償責任を負い、東電の負担を軽減すべきだと記者会見などの場で自説を繰り返した。

 結局、この「免責論争」は東電自身が決着をつけた。8月3日に「原子力損害賠償支援機構法」が参院本会議で可決・成立。同法に基づいて9月12日に発足した原子力損害賠償支援機構から東電は賠償のための資金支援を受けることになった。東電があくまで原賠法第3条の「巨大な天災地変」の条項を盾に免責を主張するならば、機構からの資金支援を拒否するのが筋だが、東電は支援受け入れを決め、11月15日に機構から5587億円の資金交付を受けたと発表した。

 要するに、米倉会長が懸命に説いた「免責論」を当の東電が受け入れなかったことになる。11年3月期末で9兆304億円の有利子負債を抱える東電は、10兆円規模ともいわれる損害賠償請求額を前に資金ショートの悪夢に日々苛まれている。国民感情からみても「免責論」は現実的でないとの判断だったのだろう。だが、米倉会長は「世論をそう動かしたのは誰なのか」と、菅政権の官房長官在任当時から大手銀行による東電向け債権放棄に言及する枝野幸男経済産業相らを批判する。

 「財界総理」がなぜそうまでして東電を守ろうとするのか。周知のことだが、電力会社を頂点にした資・機材調達や発電施設建設を網羅する産業のピラミッド構造が背景にある。例えば、発電所建設ならば各種機器を供給する重電メーカー、制御システムを構築する情報システム会社、送電設備に関係する電線メーカーや鉄鋼メーカー、建屋を建設するゼネコンなど多種多様な取引先企業が関与する。現行の電気料金は発電・送電・電力販売などに要する費用を積み上げ、そこに一定の利潤を上乗せする総括原価方式によって決まる。そのため、総じて電力会社のコスト意識は甘く、その甘さが取引先企業の利潤を厚くするわけだ。

 米倉会長は東電への同情や個人的な感情でこうした擁護論を唱えているのではなく、「気前の好い発注者を守りたい」という産業界の総意を代弁しているつもりなのだろう。だが、果たしてそれが日本企業の競争力強化に結びつくのか。省エネや再生可能エネルギー分野で日本の製造業が世界最先端の技術やコスト競争力を持っているにもかかわらず、硬直的な電力事業体制に成長の芽を摘まれているケース(例えば、太陽電池や地熱発電、風力発電など)は少なくないように見える。

問われる政府の対応

 「気前の好い発注者」を頂点にしたこのピラミッド構造は東電管内だけではない。地域独占で抜群の存在感を誇示する電力会社を頂点に全国に広がっている。その象徴が各地域の経済団体。北海道から九州まで8つの経済連合会の会長すべてを地元電力会社の会長または社長が兼務している。「電力会社の財界支配」と言われる所以である。

 権力者が暴走を始めると、それを押しとどめるのは容易ではない。格好の例が、現在の九州電力だ。玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働をめぐって経産省が6月に開いた県民向け説明会で、一般市民を装って再稼働支持の意見メールを送ることを九電が社員や子会社関係者らに依頼していた問題が7月に発覚。調査のために九電が設置した第三者委員会は10月14日に「やらせメール」問題は古川康・佐賀県知事が九電側に「説明会に発電再開容認の立場からネットを通じて意見や質問を出してほしい」と要請したことが発端だったとする最終報告書を提出したが、真部利応・九電社長は知事に「濡れ衣を着せることになる」として第三者委の調査結果を無視する意向を表明、7月の衆院予算委員会の場で一度は口にした辞意も撤回して現在に至っている。

 こうした九電の対応について、所管大臣である枝野経産相は10月14日に出張先の中国・広州で「どういう神経なのか、理解不能だ」と厳しく批判、11月17日の参院予算委員会では「第三者委とトラブルになっている現状では(原発の)再稼働を認められる会社とは言えない」と断言した。

 九電は福島原発事故のあおりで管内の原発が相次ぎ停止、代替の火力発電用の燃料費負担増加によって11年4〜9月期の純損益が133億円の赤字に転落した。枝野経産相との対立の余波で日本政策投資銀行からの1000億円の融資が一時凍結されるなど(11月21日に融資契約締結)、資金繰りにも影響が出ており、正常化のためには真部社長の辞任は不可避である。

 ただ、今回の九電の暴走を看過できないのは、真部社長と松尾新吾会長(九州経済連合会会長を兼務)が異様なまでの留任工作を繰り広げている点だ。10月22日には鎌田迪貞相談役が取締役の間に真部社長の辞任を求める声が浮上している現状を説明したが、松尾会長と真部社長は長老格の鎌田相談役の説得に応じなかった。また、同社は第三者委の報告書を無視するだけでなく、その第三者委の委員長を務めた弁護士(元検事)の郷原信郎氏や枝野経産相を誹謗中傷する内容を掲載しているネット上のブログを、社内の情報セキュリティー制限を緩和することによって勤務中の閲覧を可能にしているという。

 九電の現経営陣に公益事業者としての自覚が欠如していることは容易に想像できる。だが、問題はそれを指摘するだけでは片付かない。原発のような周辺地域や住民に多大なリスクをもたらす可能性のある事業を担う企業のトップが、今回のように民間企業であることを盾に所管大臣に叛旗を翻した場合、政府はいかに対処するのか。

 11月2日、九電は補修作業のトラブルで10月4日から停止中だった玄海原発4号機を再稼働させた。原子力安全・保安院の「原因が特定され対策が取られている。おおむね妥当」との評価をゴーサインとしたようだが、「やらせメール」問題で枝野経産相との軋轢がクローズアップされていた時期だけに、地元関係者の間ではクビをひねる向きや抗議の声も上がった。玄海4号機は12月に検査で稼働が停止する予定。原発周辺の地元住民との信頼を根底から覆す「やらせ」問題が紛糾している最中に、再稼働してもまもなく停止する4号機をなぜ動かしたのか。それほど代替燃料費の上昇が業績を圧迫しているとも解釈できるが、一方で九電のトップは「経産相の圧力に負けない」という姿勢を示すために、敢えてこのタイミングで原発再稼働をぶつけてきた印象さえあった。現行の電力事業体制の欠陥や曖昧さを九電のトップは保身に利用しているように見える。

 「電力会社の財界支配」とそれが生んだ「九電の暴走」をアンチテーゼとし、抜本的な電力改革に結びつけるべきだろう。  

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