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葛城政明は、「物々交換は貨幣なしには実現し得ない」という驚くべき定理を見出した/安富歩
http://www.asyura2.com/09/dispute30/msg/691.html
投稿者 仁王像 日時 2012 年 8 月 19 日 16:49:18: jdZgmZ21Prm8E
 

 経済学は参加者すべてに情報がまんべんなく均一に行き渡っているという前提に立っている、ということを小室直樹が言っていたと記憶する。だが、この前提が非現実的であることはちょっと考えればすぐ分かる。世に情報は溢れかえっているが、それさえも部分的である。さらに溢れかえった情報の中からわれわれが取り入れるのも部分的であり、また人によって偏っている。こんな現実を前提にしない経済学が現実に役立たないのは当然と考える。
 下は情報が不均一不均等としても成り立つ理論の若き研究者たちの現時点の成果だと思う。マルクスの貨幣論が弁証法的に三段跳びして隠れてしまっている部分も解明した新解釈ともとれる(第一章だけでも原書を一読されたい)/仁王像

『経済学の船出〜創発の海へ』安富歩/NTT出版‘10年の第一章の抜粋(要旨)
第一章 貨幣の存在構造とその正しい使い方
<貨幣の自成と自壊>
 イリア・プリコジンの『混沌からの秩序』と『散逸構造』とを読み、「非平衡開放系」という概念を知って、大きな衝撃を受けた。非平衡系とは、物質やエネルギーの流入と流出とが常時生じているような系である。物理学の観点から見れば、我々が日頃目にするすべての系は非平衡開放系であり、平衡状態は生命が出現する余地などない。経済現象は言うまでもなく、人間という非平衡開放系に生成する構造の活動として生じているのである。
 ところが経済理論の大半は「均衡」概念に基づいている。現代経済学の均衡概念は最適化を基礎に作られているが、これは明らかに平衡統計学を参考にして構成されている。それゆえ均衡経済学が、非平衡開放系に生じる経済現象を扱うことは原理的に不可能だ、ということになる。経済理論全体に深い疑問を抱いていた私は、ここにその根本的理由があると感じて、目が覚める思いであった。
 (あるとき)に、「貨幣とは、非平衡開放系の中に出現する散逸構造だ」という考えが湧き上がってきた。この構造は、次々と現れては消える人々の需要行為を要素として形成され、その中心に位置することで貨幣には大きな市場性が与えられ続ける。
私はこの考えを練り上げて、…コンピュータ・シミュレーションで、メンガーの主張したように、画面上に貨幣が自律的に生成するのを目撃したのである。さらに念のために、長時間のシミュレーションを行ったところ、思いもかけないことに、貨幣が突然、崩壊したのである。そしてまたしばらくすると、貨幣が生成した。私のコンピュータ・シミュレーション・モデルの世界では、貨幣の生成と崩壊とが繰り返された。
 貨幣というものが、このようなダイナミックスを持つ構造である以上、その不安定性はいわば必然であり、それが景気循環や大恐慌やハイパーインフレーションといった現象の一因だ、と私は理解する。

<知識の遷移と貨幣の必然性>
 私の共同研究者である葛城政明は右の研究と並行して、「物々交換は貨幣なしには実現し得ない」という驚くべき定理を予想した。葛城が考える対象としたのは、「ヴィクセルの三角形」と呼ばれる三すくみである(三人がそれぞれA、B、Cの商品をもっているが、AはBと、BはCと、CはAと交換したがっている状態)。
 ここで葛城は「知識状態の遷移」という独創的なアイディアを持ち込んだ。普通の経済学では、この三すくみの問題を考える場合でも、三人とも同じ知識を持っている、という想定をするが、これは(現実の社会生活に照らし合わせて)不自然である。
 「知識状態の遷移」という動的な知識形成の(概念を持ち込むと)、三すくみは、誰かが打診行動を起こすだけで、自然に解消される。しかもよく見ると、三つの商品の中の一つは、全体の交換の媒介の役割(「貨幣」)を果たしていたのである。
 これは実に驚くべき発見であった。清滝信宏をはじめとする多数の理論経済学者が(成し得なかったことである)。この発見に私は仰天し、葛城と共同で、N人が存在する経済について考察し、どんなにたくさんの人がいても、物々交換経済は不可避的に貨幣を生み出してしまうことを示した。

 以上の理論的研究と並行して、中国近代の貨幣史についても研究を進め、…近代中国がでは多種多様な貨幣が混然一体となって流通していることを知った(1000〜2000年にわたり)。また、中国という社会が「共同体」などの強固な集団を欠いており、ヨーロッパや日本とはまったく異なるネットワーク性を持っていること知った。
 私は、黒田明伸の一連の研究を知って強い影響を受けた。黒田は、中国の集団性が低くネットワーク性の高い社会関係が、複雑な貨幣と相互依存関係にある、と主張した。
 このような歴史学の知見は、私が到達した貨幣理論を大きく揺るがすものであった。…私の貨幣のシミュレーション・モデルは、現時点から振り返って考えると、適当な拡張を行うなら、ネットワーク的状況に対応できるようになっていることに気づいた。残念ながら、このような拡張の仕事には着手できないでいる。

<おわりに>
 貨幣とは、人間が取り結ぶ縁の作り出す、一つの構造である。それは、人々を即席でつなぐ機能を帯びており、その機能によって人々に需要されるが、この存在の本質的な虚構性が、貨幣の不安定性の根源的理由である。…
 以上が現時点での私の貨幣研究の成果のエッセンスである(が)、こんなことは少なくとも2000年前からわかっていたことであり、何も私が四十年も悩む必要はなかったのではあるが。

 (関連)
・経済学は、速度限界(相対性理論)・熱力学第二法則・因果律という三つの物理法則を否定した上に打ち立てられている/安富歩
 http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/316.html
 投稿者 仁王像 日時 2012 年 8 月 11 日 14:17:48: jdZgmZ21Prm8E
 

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コメント
 
01. 大阪都民N 2012年8月20日 23:49:17 : Bgxu4vtAPr0EY : VTPSRvVXXw
仁王像さま

安冨歩先生の『経済学の船出〜創発の海へ』についての投稿、ありがとうございました。非常に興味深く拝読しました。

安冨歩先生については、IWJの岩上安身さんがインタビューされたのをたまたま視聴し、面白かったので、「原発危機と東大話法」、「幻影からの脱出」の2冊を続けて購入し、とても面白く読んだのですが、この本については知りませんでした。

安冨先生は、岩上氏のインタビューでは「特別会計」をはじめとする「シロアリの構造」について話しておられましたが、実に幅の広い、ユニークな研究者・実践哲学者であると感じてファンになり、twitterでもフォローし始めておりました。

ですから、この投稿から私は、実にタイムリーに新たな知見を提供戴きました。

投稿戴いた仁王像さまに、取り急ぎ御礼申し上げます。
ありがとうございました。


02. 仁王像 2012年8月21日 07:49:36 : jdZgmZ21Prm8E : od1zmC6l4Q
大阪都民N様、ご感想有難うございます。
 安富氏の「経済理論全体に深い疑問を抱いていた」というのは、まさにわが意を得たりでした。実は第二章以下はほとんど読んでいませんが、第五章では、刺殺された民主党の石井鉱基の業績を高く評価し、「現代日本の最強の関所(ピンハネ)は、国家資本主義で」あり、ロシアと同じ構造だとし、「社会主義は、国家資本主義の極限形態」としています。
 石井鉱基の業績を高く評価するというのは、一学者の範囲を超えたスケールの大きな研究者だと思います。命を長らえながら、ひたむきな研究活動をし続けてほしいと思います。

 ところで第二章以下を消化するのは私では、困難だと思っています。大阪都民N様にこの部分を解題し紹介していただければ幸いです(一部だけでも)。


03. 2012年9月01日 19:03:21 : mHY843J0vA

>。ヨ物々交換は貨幣なしには実現し得ない」という驚くべき定理

そもそも定理とは、数理論理学および数学において、証明された真なる命題です


>。ヨ貨幣とは、非平衡開放系の中に出現する散逸構造だ」

全く物理を理解していない
ただの疑似科学ですね


04. 2012年9月01日 19:19:20 : mHY843J0vA

ああ、あの有名な、自分で東大の権威を破壊した人でしたか
納得

http://togetter.com/li/247123


05. 仁王像 2012年9月02日 09:10:21 : jdZgmZ21Prm8E : tdbVP5JraY
>>03
 本文は「定理を予想した」とあるのを私が「定理を発見した」見出しで脚色したのは勇み足でした。
 それにしてもここで「定理」という用語を使用するのが適切かどうかの問題はあると思う。「原理を予想した」ぐらいが、現時点では適切かもしれません。
 安富氏は物理学者ではないので、専門家から見ればやや不適切な表現も飛び出すことがあるかもしれないが、氏の熱力学等への理解度は並みものではないと思っている。

 氏らの作業は西洋伝来の経済学の根底にある虚構を原理的に暴き出している段階で、まだまだ流動的・発展途上にあると思っている。今後の展開が、新しい経済学の構築の契機になるのか、経済学が終焉し、歴史学あるいは歴史物理学などというものに籍を譲ってゆくことになるのか、私は後者の方向ではないかと思っている。

 >>04
 安富氏は、東大村や大学村などという利権の構造のなかでぬくぬくと生きていくような人物ではない。東大などからいつでも飛び出せる覚悟はできていると思う。それくらいの野人である。氏はいずれ欧米社会にでも飛び出していって、欧米経済学の権威をなで斬りにしていってもらいたい。


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