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政府もようやく気づき始めた資源大国ニッポン日本には知恵も資源もある〜セルロースナノファイバー
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投稿者 taked4700 日時 2014 年 9 月 01 日 15:35:36: 9XFNe/BiX575U
 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41462

政府もようやく気づき始めた資源大国ニッポン日本には知恵も資源もある〜セルロースナノファイバー
矢野 浩之
2014.08.20(水)

6月22日から25日の4日間にわたって、カナダ西部の都市、バンクーバーで北米紙パルプ技術協会の主催による国際学会が開催された。テーマは、再生可能資源のためのナノテクノロジー。主役はセルロースナノクリスタル。セルロースナノファイバーは、北米、特にカナダでは主役の座にはない。

圧倒的な価格競争力を持つセルロースナノファイバー

 セルロースナノファイバーについては前稿で紹介した。木材からリグニンなどのマトリックス物質を除去した化学パルプを機械的に解繊して得る幅4〜20nm(ナノメートル)の軽量、高強度のナノ繊維である。

 これに対して、セルロースナノクリスタルは、化学パルプやコットンを60%濃度以上の硫酸や塩酸で処理して結晶部分だけを残したもの。幅は4〜10nm程度。形状は爪楊枝のような長さ/幅比で、強度的性質はセルロースナノファイバーと同程度と推測される(図1)。

図1 セルロースナノファイバー(左)とセルロースナノクリスタル(右)。倍率の違いに注意(立教大学、上谷博士提供)
 新しい素材のため、国際標準化に向けた検討の中で命名法に向けた議論が進んでいる最中であるが、最近は、セルロースナノファイバー(CNF)とセルロースナノクリスタル(CNC)を合わせてナノセルロースと呼ぶようになっている。

 CNCの研究開発は、大型製造テストプラントの建設と用途開発の両輪で60億円近い資金を投入しているカナダがリードしている。

 60%を超える高濃度の硫酸で処理し、中和し、洗浄して純度を上げるというプロセスを経るため、CNCはどうしてもコスト高になってしまう。このため、カナダの研究者は、それ以上のお金をかけない、水系で未修飾での使用を目指している。

 これに対して、筆者は、セルロースナノファイバーの最大のアドバンテージは、その集合体であるパルプが1kg50円で製造されるという圧倒的価格競争力であり、そのメリットを生かし化学修飾することで様々な樹脂や溶媒との組み合わせが可能になると考えている。

 水系となるとニッチな領域しかない。一方、セルロースは、この地球上に1兆トンは存在する持続型資源で、大気中の二酸化炭素を固定してくれている。自然と折り合いをつけながら、できる限りの量のセルロースを使い、化石資源の消費を減らしていきたい。

動き出した資源大国への道、課題は国際標準化での出遅れ

 さて、カナダで開催された国際会議に出席しているうちに、日本のセルロースナノファイバーの状況が急速に動き出した。

 6月24日、成長戦略「日本再興戦略」改訂2014に“セルロースナノファイバー(超微細植物結晶繊維)の研究開発等によるマテリアル利用の促進に向けた取組を推進する。”と明記されたからである。経産省、農水省などが関係省庁連絡会議を立ち上げ、各省庁の担当施策について連携し、議論している。

 8月5日には、筆者は参議院の自民党政策審議会に呼ばれ、山谷えり子会長以下、30人ほどの先生方を前にナノセルロース研究開発の現状について説明、質疑応答をする機会を得た。

 日本は国土の7割を森林が覆っているが、そのうち持続的生産が可能な人工林において、毎年、鋼鉄の5分の1の軽さで鋼鉄の7〜8倍も強いセルロースナノファイバーが1500万トンも増え続けている。

 これは、日本で消費されている石油由来のプラスチック1000万トンの1.5倍の量に匹敵する。緑豊かな日本は、将来、木質バイオマスにより資源大国になる可能性がある。さらに、国内外の研究開発状況や欧米の主導で進んでいる国際標準化の現状についても説明した。

 日本の資源で、高機能の材料、製品を製造し海外に売っていくという将来性(図2)が議員の皆さんの琴線に触れたのか、審議会では1時間近く質疑が続いた。当然のことながら、ナノ材料の安全性は重要な関心事である。

 我々は、ナタデココ(バクテリアが作るセルロースナノファイバー)の食経験がある。あるいは、木材や紙の加工現場では、粉じんのなかにセルロースナノファイバーも含まれていると思われるが、作業者についてこれまでアスベストのような被害は聞かない。

 先行するカナダ、フィンランドでの研究でも人体への有害性は報告されていない、といった説明をしたが、グレーは黒である。

 今後、しっかりとした安全性評価を進めていかなければならない。その安全性を含む、国際標準化の議論について日本が大きく出遅れていることに対して、技術で勝っても戦略で負けることが交渉術のへたな日本ではよくあることなので、しっかりとやってほしいという意見もあった。

 話を聞いていると、今すぐにでも商品になりそうだが、実用化に向けた課題は何か、といった質問もあった。

これまでに培った産業力が新素材開発の優位性になる

 確かに、セルロースナノファイバーは何億年も前から地球上に存在している。一部、セルロースナノファイバーのサンプルワークや販売も始まった。しかし、産業資材とするには、まだまだ多くの高いハードルがある。それを思うと、麓にいて富士山の山頂を眺める心境である。

 ナノ材料としての一番難しい、高性能ナノ繊維を作るという部分はすでに植物がしてくれているとはいえ、そのポテンシャルを最終製品で発現させるためには、ナノファイバーの抽出、修飾、構造化、複合化において、まだまだ多くの技術開発が必要である。

 様々な分野の研究者が、新しい素材を世の中に送り出すという強い思いで連携し、研究を進めていかなければならない。また、それを促進する体制の構築が不可欠である。

 これまでは0から1を生み出す努力、セルロースナノファイバーのポテンシャルを示す努力がなされてきたが、これからは様々な専門性を幅広く集めて、1を100にする努力が必要である。

 幸い、我が国には製紙産業、化学産業、自動車産業、電子機器産業の分野で世界をリードする企業が連携しやすい地理的環境に集まっている。

 繊維産業やレーヨンを扱うセルロース産業は、かつての我が国の花形産業であり、多くの知恵が蓄積している。セルロースナノファイバーの大型産業資材化を目指す上で、我が国は世界で最も優位な状況にあると言える。

 そのアドバンテージを生かして、持続型資源に基づく産業、世界から尊敬される未来型産業を日本に興したい。日本には資源も知恵もある。  

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