★阿修羅♪ > エネルギー2 > 494.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
中東で育つか、再生可能エネルギー事業 (techon)
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/494.html
投稿者 蓄電 日時 2011 年 9 月 26 日 21:15:35: TR/B2VKXCoTU6
 


techon
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110831/197857/?ST=energytech


アラブ首長国連邦(UAE)で、太陽光発電、太陽熱発電、太陽熱冷房、風力発電といった再生可能エネルギー関連のプロジェクトが一斉に立ち上がっている。同国は潤沢な化石資源を持つものの、それは外貨獲得手段として温存する戦略をとっている。そして将来、化石資源が枯渇した時代に備え、豊富な資金を投下することで再生可能エネルギーなどの新分野でも主導権を握ろうとしている。

 日本でも現政権が再生可能エネルギーの国内への導入スピードを上げる方針を打ち出しており、さらには中東などの海外市場でインフラ事業の拡大を狙うという面でも、UAEの取り組みは参考になるだろう。

 UAEが再生可能エネルギー事業に大きく舵(かじ)を切ったのは、2006年。ムハンマド皇太子の主導で「マスダール・イニシアティブ」と呼ばれる再生可能エネルギーなどの新しい資源開発の方針が打ち出され、その実施主体として、政府系投資ファンドのムバダラ開発を母体とし、アブダビ・フューチャー・エネルギー・カンパニー(ADFEC)が設立された。

 ADFECでは、(1)究極の環境未来都市を目指した「マスダール・シティ」の建設、(2)再生可能エネルギー研究の世界拠点の創設、(3)世界の再生可能エネルギー事業に投資――という三つの事業を主に進めている。このいずれの事業でも、中核になるのは再生可能エネルギーだ。

再生可能エネルギー100%の環境未来都市


図1●マスダール・シティで建設された10MWメガソーラー。5MW分は米First Solar社、残りの5MW分が中国Suntec Power社製である。研究所の各施設に電力を供給しているほか、アブダビの系統電力網にも電力を流している(写真:日経BPクリーンテック研究所)
[画像のクリックで拡大表示]
 このうち第1のマスダール・シティは、2006年から建設が進められているが、ドバイショックに端を発する資金不足などの影響で、2010年10月に事業費の縮小などの計画変更が行われた。それでも、想像を絶するような巨大プロジェクトであることには変わりはない。187億〜198億米ドルの総事業費をかけて、面積約6.5km2(平方キロメートル)の土地に人口約5万人の人工都市を2020〜2025年にかけて完成させる。その最も重要なポイントが、同シティ内で使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄う構想である。

 現在、同シティ内には、出力10MW(メガワット)の太陽光発電所(メガソーラー)が建設され、2009年に稼働を開始した(図1)。2011年6月にはほぼフル稼働状態になり、これまでに3万6000MWhの電力を供給した。クリーン開発メカニズム(CDM)に基づいたカーボンクレジットに参加し、これまでに2万4000トンの二酸化炭素(CO2)排出量削減に貢献した。

 当初の計画では、マスダール・シティ内にメガソーラーなどの再生可能エネルギープラントを増設して、同シティ内の電力需要を賄う予定だったが、2010年10月の方針変更でシティ外から電力供給する方式に変えた。その候補の一つが、現在アブダビ近郊で建設を進めている世界最大級の100MW太陽熱発電所「Shams-1」である。ADFECは順調に資金調達も進んでいるとしており、2012年には完成する予定だ。

太陽熱冷房システムの検証進む


図2●マスダール・シティに建設された、太陽熱冷房システムの集光型集熱器(写真:日経BPクリーンテック研究所)
[画像のクリックで拡大表示]
 またマスダール・シティでは、メガソーラーのほか、太陽熱をエネルギー源とする冷房システムの検討も進んでいる。灼熱(しゃくねつ)の中東地域では、冷房需要が大きく、今後太陽熱を使った冷房システムへのニーズは高いものがあるからだ。実際、米Sopogy社の集光型集熱器、独Schneider Electric社の吸収式冷凍機を使った冷房システムが建設され、2010年夏から実証実験が行われている(図2)。同設備では、1700m2(平方メートル)のオフィススペースの冷房が可能になっており、実証期間は2年間の予定だ。

 この冷房システムの事業には、日本企業も参入しつつある。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、マスダール・シティにおける太陽熱冷房システムの実証事業の公募を行い、2011年7月27日に、同事業の実施可能性調査を日立プラントテクノロジーらのグループに委託すると発表した。今後、日立プラントテクノロジーが開発した吸収式冷凍機を用いた冷房システムを提供し、2012年12月までに実証プラントを建設し、その後1年間実証運転を行う予定である。

 日本勢は後発ながら、技術面で巻き返しを狙う。既に実証実験が行われている欧米勢のシステムは二重効用吸収式冷凍機である。これに対し、日立プラントテクノロジーのものは三重効用吸収式冷凍機なので、より高性能な点をアピールしている。

再生可能エネルギーとパッシブ型設計を「融合」


図3●マスダール・シティに建設されたマスダール科学技術研究所(MIST)の外観 (写真:日経BPクリーンテック研究所)
[画像のクリックで拡大表示]
 前述のADFECの三つの事業のうち、第2の研究拠点の創設については、2010年9月に完成したマスダール科学技術研究所(MIST)を中核にした動きが進んでいる(図3)。

 同研究所はクリーン・エネルギーに特化した研究を行う機関として、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の協力の下で設立された。実際、筆者が2011年1月に訪問した際には、MIT出身の研究者が排水をバクテリアで分解して電気を取り出す「微生物燃料電池」の研究を紹介していた。また、同シティ内に日本企業の協力で設立したビームダウン方式の太陽熱発電設備を基に、光学設計面での検討も同研究所が進めている(関連記事、『日本を救うか、太陽熱発電の「アジア・デザーテック計画」』。


図4●マスダール・シティに建設された学生向け居住ビル。建物は6棟で150人の学生が入居している(2011年1月時点)。エアコンの温度は24±2℃で設定されており、部屋を出ると28℃になる (写真:日経BPクリーンテック研究所)
[画像のクリックで拡大表示]

図5●マスダール・シティに建設されたウインドタワー。冷却効果のほか、電力の「見える化」のシンボルになっている。キャンパス全体で省エネ目標を達成すると、四隅に配置されたLED(発光ダイオード)が緑色に光り、未達成の場合は赤色の点灯になる (写真:日経BPクリーンテック研究所)
[画像のクリックで拡大表示]
 MISTと共に、学生向けの居住ビルも完成した(図4)。屋根には建物から大きく張り出すようにして太陽光発電パネルと太陽熱温水器が設置され、施設内で使用するほとんどの温水と30〜35%の電力を供給している。加えて、前述したシティ内のメガソーラーからも電力が供給されている。

 ユニークなのは、風の活用である。中庭に風を取り込むウインドタワーが設置され(図5)、上から風を取り込むことによってキャンパス内の温度を平均6℃下げ、ビルの外壁にも風を取り込んだり、太陽光を遮断するなどパッシブ型の工夫をふんだんに取り入れている。再生可能エネルギーの導入と、より自然の風を取り入れるパッシブ型の設計を街単位で進める考え方は日本でも参考になるだろう。

世界最大規模の風力、太陽熱発電プロジェクトを推進

 ADFECの三つの事業の第3に挙げた投資事業についても、計画が着々と進んでいる。2011年7月には、ADFECがドイツの電力大手E.ON社と共同で投資した「ロンドン・アレー洋上風力発電プロジェクト」について、第1フェーズの630MW分が2012年末にも完成する予定だと発表した。出力3.6MWの風力発電機(独Siemens製)を175基設置すると共に、送電網の建設が進められている。同プロジェクトの第2フェーズが終了した時点で、1000MWの世界最大の風力発電所となる予定だ。

 同じく7月には、ADFECがスペインSenerグループと合弁で進めている太陽熱発電プロジェクト「ゲマソーラー」が初めて24時間稼働することに成功したと発表している。同プロジェクトでは、発電時に太陽熱を吸収する媒体として、水の代わりに蓄熱性能の高い溶融塩を使う。こうすることで、条件のよいときに蓄積した熱を用いて夜間や曇の際にも発電できる。発電タービンの出力は19.9MWで、2万5000軒分の家庭に電力を供給できるという。

 前述の「Shams-1」は、ADFECが6割、スペインAbengoa Solar社と仏Total社の合弁会社が4割を出資した事業である。さらにADFECは、2008年4月に太陽電池メーカーである独Masdar PV社を設立し、ドイツなどで薄膜シリコン太陽電池の生産を開始するなど、さまざまな再生可能エネルギー事業に積極的に投資している。

 ここまでUAEにおける再生可能エネルギー事業の概要を俯瞰(ふかん)してきたが、残念なのは日本企業の存在感が薄いことだ。地理的な優位性もあって、現在のところUAEにおけるプロジェクトは欧州企業の独壇場と言ってよい。しかし今後、UAEをはじめとする中東地域は再生可能エネルギービジネスの“ハブ”になる可能性もある。再生可能エネルギー分野で高い技術を誇る日本企業がグローバルで存在感を示すためにも、中東戦略の強化は大きな課題になりそうだ。  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > エネルギー2掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > エネルギー2掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧