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ドイツのエネルギー転換  (安全なエネルギー供給に関する倫理委員会)
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/596.html
投稿者 蓄電 日時 2011 年 11 月 19 日 00:43:01: TR/B2VKXCoTU6
 

ドイツのエネルギー転換未来のための共同事業
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/3rd/3-82.pdf

提出:安全なエネルギー供給に関する倫理委員会

2011 年5 月30 日、ベルリン

松本大理・吉田文和暫定訳

【資料8−2】
安全なエネルギー供給に関する倫理委員会

連邦首相アンゲラ・メルケルによる委託により2011 年4 月4 日から5 月28 日まで設置

委員長
Prof. Dr. クラウス・テプファー(CDU,元連邦環境大臣、元UNEP 事務局長)
Prof. Dr. (工学) マティアス・クライナー(ドイツ研究者連盟会長、ドルトムント技術大
学教授、金属工学)
委員
Prof. Dr. ウルリヒ・ベック(元ミュンヘン大学社会学教授、リスク社会学)
Dr. クラウス・フォン・ドナニュイ(SPD,元連邦教育大臣)
司教Dr. ウルリヒ・フィッシャー(バーデン地方、プロテスタント教会監督)
アロイス・グリュック(ドイツカトリック中央委員会委員長)
Prof. Dr. イェルグ・ハッカー(ドイツ自然科学アカデミー会長)
Dr. ユルゲン・ハンブレヒト(ドイツ化学メーカーBASF 会長)
Dr. フォルカー・ハウフ(SPD,元ドイツ連邦科学技術大臣)
ヴァルター・ヒルヒェ(FDP,ドイツユネスコ協会会長)
Prof. Dr. ラインハルト・ヒュットル(ドイツ技術科学アカデミー会長、ドイツ地学研究
センター所長)
Prof. Dr. ヴァイマ・リュッベ(哲学者、ドイツ倫理審査会。会員)
大司教Dr. ラインハルト・マルクス(ミュンヘン、フライジンク教会大司教)
Prof. Dr. ルチア・ライシュ(経済学者、コペンハーゲンビジネススクール教授、持続可
能な成長に関する審議会委員)
Prof. Dr. オルトヴィン・レン(社会学者、リスク研究、バーデン・ヴィルテンベルク州
持続可能な発展審議会会長)
Prof. Dr. ミランダ・シュローズ(ベルリン自由大学環境政策研究所所長)
ミヒャエル・ヴァシリアディス(SPD,産業別労組議長)
補佐
Dr. ギュンター・バッハマン(文章) Dr. イーナ・ザオアー(組織)
委員会の連邦首相官邸内事務局
MR Dr. ルドルフ・トイフセンRR ゲルト・ティール

目次

ドイツのエネルギー転換未来のための共同事業............................................................................. 1
目次................................................................................................................................................................................. 4
1 「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」からの提言............................................................ 6
2 発端と委託............................................................................................................................................................. 11
3 共同事業「ドイツのエネルギーの未来」............................................................................................... 12
4 倫理的立場............................................................................................................................................................ 14
4.1 リスクとリスクの受けとめ................................................................................................................... 14
4.2 リスクを統合的に判断すること......................................................................................................... 15
4.3 基本的な対立:絶対的な撤廃VS 比較衡量.................................................................................... 16
4.4 倫理委員会における共通の判断......................................................................................................... 19
5 共同事業「ドイツのエネルギーの未来」に関する基本方針......................................................... 20
5. 1 共同事業........................................................................................................................................................ 20
5.2 目標に関する衝突を真剣に受けとめること.................................................................................. 22
5.3 消費者需要と市民参加............................................................................................................................ 23
5.4 検討規準......................................................................................................................................................... 25
5.4.1 気候保護................................................................................................................................................ 25
5.4.2 安定供給................................................................................................................................................ 27
5.4.3 経済性と資金的可能性.................................................................................................................... 29
5.4.4 コスト配分の社会的諸側面........................................................................................................... 31
5.4.5 競争力..................................................................................................................................................... 32
5.4.6 研究と教育と技術革新.................................................................................................................... 33
5.4.7 輸入への依存....................................................................................................................................... 33
6 エネルギー転換のための制度...................................................................................................................... 34
7 エネルギー転換への提言................................................................................................................................ 36
7.1 効率的なエネルギー利用........................................................................................................................ 36
7.1.1 参加効果と支持されるモデル...................................................................................................... 36
7.1.2 スマートグリッドの大規模な応用を可能にしていく....................................................... 38
7.1.3 建造物改築から省エネ都市改造まで........................................................................................ 39
7.1.4 新築は新たな方向づけである...................................................................................................... 40
7.2 再生可能エネルギー................................................................................................................................. 41
7.3 電力容量市場:ベースロードの安定化とシステム安定性と市場への公示について.. 43
7.4 化石燃料発電............................................................................................................................................... 44
7.5 コジェネレーション(熱電併給)..................................................................................................... 46
7.6 インフラと電力貯蔵................................................................................................................................. 47
8 その他の枠組み条件......................................................................................................................................... 49
9 科学知識に基づいた決定のための研究................................................................................................... 50
10 核拡散................................................................................................................................................................... 54
11 核廃棄物の最終処分....................................................................................................................................... 55
12 メイド・イン・ジャーマニーの国際的な側面................................................................................... 55
12.1 気候保護...................................................................................................................................................... 55
12.2 クリーン・コール・ハイテクと化石燃料の二酸化炭素の利用.......................................... 56
12.3 原子力施設の安全性についての国際的な観点........................................................................... 57  

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コメント
 
01. 2011年11月19日 00:44:42: 2sAQKQFScM
1 「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」からの提言
本倫理委員会は、ここに提示したエネルギー転換への対策によって、十年以内に原子力
エネルギーの利用からの離脱を果たすことができると強く確信している。社会には、この
目標とそれに必要な対策に取り組む義務があるだろう。明確な目標と期限を設定すること
は、必要な計画策定や投資の決断を下すための必須の前提である。
「ドイツのエネルギーの未来」へ向けた共同事業は、難しい決断と負担を伴うものであ
るが、しかし特別なチャンスも伴うものである。とはいえこれを十年以内に実現すること
は、政治にとっても社会にとっても大きな挑戦である。
この目標のためには、一貫性をもって、目標に即しつつ、政治的に効果のあるモニタリ
ング(分析、評価、運営上の勧告)が行われる必要がある。そのやり方や機関については、
本稿で詳述している。
本倫理委員会は、エネルギー転換担当の連邦議会議員という独立したポストを連邦議会
内に速やかに設置し、「エネルギー転換全国フォーラム」を形成することを提案する。そ
の進捗に関しては、その担当連邦議会議員によって、モニタリング・プロセスにもとづい
て毎年チェックされなければならない。
この提案を行うにあたり、倫理委員会は、エネルギー転換を可能な限り目標に即して効
果的に行うための行動や各州との効率的な連携については、最終的には連邦政府が決定を
下すものと理解している。エネルギー転換は、それを組織していく上で非常に大きな要求
を課すものであり、そのために必要とされる包括的なプロジェクト管理は、政府にとって
特に大きな課題である。
ドイツ国内の原子力からのリスクを将来的に取り除くためには、脱原発が必要であり、
また推奨される。脱原発は、リスクのより少ない代替手段があるので、可能である。また
脱原発は、産業や経済レベルの競争力を損なうことのないように行わなければならない。
学術研究や技術発展や、また持続可能な経済のための新しいビジネスモデル展開へ向けて
企業がイニシアチブをとることにより、ドイツでは、風力や太陽光熱、水力や地熱、バイ
オマス、またエネルギーの効率的利用や生産性の向上、気候保全に配慮した化石燃料の使
用といったように、さまざまな代替手段が利用可能である。また人々が自然を尊重し、万
物の基盤をなすものとして保護し、ライフスタイルを変えていくことよっても、エネルギ
ーの節約を手助けすることができる。
「脱原発」とは、まずは、原子力発電を電力網から取り外すことを意味している。とは
いえ承知済みのことだが、これを達成した後も、解体に至るまで長期にわたって安全性の
ために集中的な作業が必要とされる。

共同事業
エネルギー転換は、政界と産業界と市民社会のあらゆるレベルにおいて共同的に努力す
ることによってのみ果たされるということを本倫理委員会は強調しておく。そのために
「ドイツのエネルギーの未来」という共同事業を提案する。この共同事業は、一つの大き
なチャンスであるが、また同時に挑戦でもある。国際社会は、ドイツが原子力利用からの
離脱に成功するのかどうかを、大きな関心をもって見守っている。もしこれが成功すれば、
他の国々に大きな影響を及ぼすであろう。もし失敗するならば、その結果はドイツにおい
ても深刻なものとなろうし、またこれまでの再生可能エネルギーの成果にも疑問が付され
ることとなろう。
ここ数年の経験から言えることは、共同事業というものを語ることは、決して自明なも
のではないということである。エネルギー転換の実現の際に躊躇が生じることが懸念され
るであろうが、その懸念は全く正しい。しかし、ドイツが創造性と学習力を携えながら、
現在想定しているよりもはるかに速やかに脱原発を実現するかもれしない、と期待するこ
とも、それと同じくらい根拠のあることである。
ドイツは脱原発の道を、新たな試みへの勇気と強さへの自信をもって歩み、必須の検査
とコントロールの手続きを経ながら進まなければならない。多くの企業や市民団体や住民
運動といったローカルなレベルに眼を向けたとき、ドイツでは社会全体にわたって、長ら
く、原子力エネルギーの利用を放棄する未来像を描いて進んでいることを倫理委員会は理
解している。この歩みを支持していく必要があろう。ドイツ経済は、最高水準の品質の製
品を生産する創造性と能力を持つところに、その強みを持つ。そしてますます多くの企業
が、そのビジネス分野を持続可能な経済へと合わせつつある。原子力エネルギー利用から
の離脱は、こうした企業にさらに多くのチャンスを与えるだろう。ドイツの経済は、エネ
ルギー転換という課題に対して抜本的な技術開発による、成果の高い解決が得られること
を考慮できるような、優れた地位にある。
それゆえ学術研究には、この共同事業において特別な役割が与えられることとなる。そ
れは自然科学研究や技術研究に対しても、また社会科学研究に対しても言える。したがっ
て本委員会は、ドイツ国立学術アカデミー・レオポルディーナが、エネルギー政策と包括
的なエネルギー研究への提言を改めて行ったことを、極めて好意的に迎えたい。原子力エ
ネルギーからの離脱していく際にも、原子力技術施設の安全性や核廃棄物の取り扱いにつ
いてさらに研究していく必要がある。このことは、私たちの住んでいる世界が一つであり、
多くの国々が原子力技術施設を稼動し、さらに原子力発電所を増設している世界だという
ことを視野に入れる場合にも必要なことである。
倫理委員会が提案する「エネルギー転換全国フォーラム」は、社会における対話を刺激
し、活発にしていくべきものである。脱原発の時期の短縮を果たせるかどうか、脱原発と
エネルギー転換をうまく進めることができるかどうかといった事柄に関しては、諸都市や
自治体や企業において自ら決定していくことが重要である。市民対話やフォーラムは、エ
ネルギー転換へ向けた諸決断をあらゆるレベルにおいて進めていくための、適切な方法で
ある。


モニタリング、付随プロセス
原子力エネルギー利用からできる限り迅速に離脱することは、倫理的に善いと判断され
ることであり、倫理委員会の観点からは要求されることである。そしてまた、それは対策
転換の程度に応じて実現可能である。最善の場合には、ここに掲げた十年という撤退期限
を短縮することもできる。
本倫理委員会が提言するモニタリング・プロセスとエネルギー転換担当の連邦議会議員
は、どの原子力発電所をいつ停止できるかを決定するための根拠を、毎年提出すべきであ
る。
モニタリングは、撤退の遅滞が生じるような場合にそれを早い時期に指摘し、補助的な
対策を提示することによって、脱原発が十年以内に完了できるようにすべきである。モニ
タリング・プロセスでは、科学技術の進歩を考慮しなければならない。


脱原発の段階
倫理的な理由により、原子力発電の稼動は、その供給電力がより安全なエネルギー供給
によって代替されるまで、と限定すべきである。
原子力発電からの供給電力のうち、現時点ですでになくても済んでいる8.5 ギガワット
分の電力は、永続的に電力網から取り外すべきである。最も古い7 基の原子炉とクリュン
メル発電所は一時停止中だが、その出力である8.5 ギガワット分の電力は、より安全なエ
ネルギー供給によって代替できることがわかる。夏と冬における電力需要のピークは、他
の発電容量によって守られなければならない。
どのような段階で原子力発電を電力網から取り外していくかは、それぞれの付随してい
るリスクと地域の電力網事情に即して立てられるべきであろう。もちろんそれは、原子炉
の安全性分析を進めることによって原子力発電のリスクがさらに他に示されることがない
場合にである。
計画策定の信頼性は、経済や社会にとって高い価値を持つ。それは、競争力に大いに関
わってくるものであるし、投資の経済性を算定する際にも中心的な役割を果たす。世界の
中でドイツは、原子力エネルギー利用からの離脱に関して重要な先導者的役割を持ってお
り、また責任を有している。エネルギー供給システムやエネルギー効率への投資を方向づ
けし、インフラ整備することは、重要な指標である。


最終処分と核の安全性
核廃棄物の最終処分は、最高レベルの安全要求のもとで、取り出し可能な仕方で果たさ
れなければならない。なぜなら未来世代に対して、適切な技術が使用できるようになった
ときに、核廃棄物の危険と量を減らしていく選択が残されなければならないからである。
原子力発電施設の安全性と未来のエネルギー供給の構築は、欧州ならびに世界における
政治協力にとって非常に重要なテーマである。倫理委員会は連邦政府に対して、原子力エ
ネルギー供給に関する安全性の観点をグローバルに取り上げ、国際原子力機関(IAEA) の
活動の展開と調整を後押しするべく、欧州ならびに国際社会の中で率先して行動すること
を提言する。
倫理委員会は、原子力発電所から放射性物質が流出して悪用されることは、とりわけ深
刻な危険であると考える。本委員会は、この点に関しても、連邦政府がさらに率先して行
動していくことを促すものである。


結論
エネルギー転換に必要な手続きや対策や制度についての提案は多種多様で複合的であり、
したがって、共同事業が事実として非常に重要だということは明らかである。
本倫理委員会は、原子力エネルギー利用からの段階的な離脱が、すべの関係者にとって
の極めて大きな挑戦であると同時に、各地域での決断に市民が参加していくチャンスを新
しく与えてくれる源泉であると理解している。


2 発端と委託
ドイツは長年、エネルギー供給について、そしてとりわけ原子力エネルギーの使用につ
いて、議論を重ねてきた。2000 年に、当時の連邦政府と経済界は、原子力発電の安全性
要求と稼動期間の確定ならびにその変化可能な取り扱いに関して合意に達した。昨2010
年、連邦政府は、稼動期間をいっそう長く確定した。日本の福島の原子力発電所事故は、
原子力エネルギーの利用が責任を負い得るものかどうかという問いを、政治ならびに社会
における議論の中心に、改めて提起した。必要なのは、包括的な情報に基づきながら、責
任を持って、ドイツの持続可能な発展に向けてエネルギー供給を新たに整備すべく決断し
ていくことである。ドイツが必要とし、また望んでいるエネルギー供給のかたちは、エネ
ルギーが信頼できるものであり、環境に優しく、競争力のある価格で利用可能であること
である。エネルギーが未来においても豊かな生活を保障するためにも、そのように形づけ
られなければならない。
連邦政府は、責任倫理的な決断の根拠とその帰結を全体的に考察するために、「安全な
エネルギー供給に関する倫理委員会」を設けた。ドイツの安全な未来は、環境が損なわれ
ていないこと、社会において正義が成り立っていること、経済が健全であること、という
持続可能性の三つの柱の上に成り立つ。これらの原理の上に整備されたエネルギー供給は、
国際的競争力を持った経済や、また国内の雇用や生活水準や社会平和にとっての、長期的
な基盤である。
倫理委員会は、時間に追われつつ、エネルギー政策に関する数多くの専門家の鑑定を参
考にしながら作業を進めた。とりわけ、2011 年4 月28 日に行われた公聴会では、可能な
限り多くの関連領域からの立場と議論を受け入れることが目指されたが、そこでは多様な
観点が示された。本倫理委員会は、それに参加したすべての関係者に感謝している。その
参加者は、電力生産業界や消費者業界から、再生可能エネルギーや送電網事業の分野から、
そしてまた自然科学・工学・社会科学の専門家、自治体からの意見代表者、また労働者連
合、賃借人協会、非政府組織から、また環境保護運動の関係者などであった。また、この
数週間の間に、文書によって意見を送ってくださった人たちや団体にも、感謝している。
本倫理委員会は、公聴会を行うことによって、中毒症状の社会的雰囲気から生じてきてい
た、原子力エネルギーに対する独断的な態度からの誹謗中傷に対して、反対する姿勢を示
した。原子力エネルギーに関する評価は、それぞれの別の考えを持った人に対する価値評
価であってはならない。その姿勢は、倫理委員会内部で行われた討論においてもまた刻み
こまれていたものである。
本倫理委員会のメンバーは、リスク判断やエネルギー供給といった重要な問題に対して
異なった立場を代表する人物であり、これらの問題について率直に、そして互いに敬意を
払いながら討論が行われた。委員会メンバーは、自分の基本的な立場を放棄することなし
に、本報告書に記しているような行為実践的な結論へと合意に至った。この報告書と共に、
本倫理委員会は、情報提供された、反省的な討議の文化に貢献したい。


3 共同事業「ドイツのエネルギーの未来」
ドイツにおける未来の安全なエネルギー供給のためには、その内容的、資金的、時間的
な面で射程の広い結果を伴うように、社会と経済と政治によって共同作業がなされる必要
がある。
未来のための共同事業として、エネルギー転換は、安全で、環境と社会に配慮した、価
格競争力のあるエネルギーが供給できるように行わなければならない。工業は、手工業と
サービス業と共に、ドイツにおける雇用の基礎であり、現在と未来の世代の豊かな暮らし
を保障するものである。エネルギー効率を徹底的に改善して再生可能エネルギーの利用の
時代へと移行していくプロセスにおいては、社会全体による協力が必要とされる。それは
議会、政府、都市、町村、さらには大学、学校、企業、研究所などにおける、多くの人々
の参加、信念、決定を求め、それによって可能となる。このプロセスは人々に大きなチャ
ンスを提供するものであり、人々は専門教育や職業を選択しつつ、未来のある仕事や豊か
な生活の基礎を作り上げていく。それはまた社会において団結を強めるチャンスでもある
し、さらには企業に対しても、競争力や技術開発を高めるチャンスを提供する。とりわけ、
原子力エネルギーからの離脱に関して社会で議論が行われることは、原子力エネルギーを
めぐる対立によってわれわれの社会に広がっていた有害な雰囲気を除去するチャンスであ
る。
原子力発電所の停止は、それ自体はまだ原子力エネルギーからの離脱ではない。停止が、
むしろ技術的・法的な経過であるのに対して、脱原発は、もっと奥深いプロセスを必要と
する。脱原発のためには、明確な目標と、持続可能性に関する指標が必要である。つまり、
脱原発を行う際には、永続的な利用可能性、経済性、環境への配慮、そして社会への配慮
といった諸側面が相互に結びつけられねばならない。チェック可能な中間目標(マイルス
トーン)と指標を立てることが必要とされる!!そしてこれは、最大限の透明性を持つも
のでなければならない。脱原発に際しては、国際的な、特に欧州内におけるドイツの結び
つきについても顧慮しなければならない。
このようなプロセスによってのみ、豊かな生活の基盤や未来についての合意や、進歩の
理念やリスク管理や安全性に関する合意を、さらに達成することができる。この合意は、
エネルギー供給の構造を変換するための基本前提である。民主主義社会においては、高い
要求を伴った社会的変革に際しては、その種の合意が必要である。形成されるべき合意は、
長期にわたって存続するようなものでなければならず、また、できる限り速やかに原子力
エネルギーを断念して、持続可能な発展と新しい豊かさのモデルへとドイツを導いていく
ようなエネルギー供給を見据えているものでなければならない。
「ドイツのエネルギーの未来」という共同事業は、その際に生じてくる目標の衝突を解
決し、あらゆる関係者から当然なされる直接的また間接的な協力を取り入れるものでなけ
ればならない。その関係者は、エネルギー供給者や、エネルギー受給者、送電事業者、政
治家、環境保護団体、労働組合、またその他に、新しい製品開発に携わる人などもそうで
ある。責任は、そのつど他人に対して求めるばかりであってはならず、自分の行為や決断
の結果に対しても引き受けなければならない。
福島の事故は、原子力発電の「安全性」に関する専門家の判断に対する信頼を揺るがし
た。このことは、これまで専門家の判断を信頼してきた人々にも、そしてまさにそうした
人々にこそ当てはまる。問われているのは、制御不可能な大被害が根本的に発生し得ると
すれば、どのようにその可能性を扱っていくべきなのか、ということであるが、この問題
に関しては、今や、絶対的な原子力反対派のグループに属していない人々も、もはやその
答えを専門家委員会に任せたくないのである。
提案している共同事業は、こうした包括的な試みによって、信頼を回復し、それを透明
性によって保証していくのに必要な空間を作り出すものである。倫理委員会は、この点に
関するモニタリング・プロセスを提案し、そのプロセスがどうあるべきかの提案を行う。
倫理委員会の知るところでは、民意の大部分にとっては、もはや「原子力に賛成か否
か?」といった問いではなく、脱原発の具体化についての問いが、したがって、「脱原発
は早期にか、それとも徐々にか?」という問いが重要になっている。しかしそれと同様に、
エネルギー供給の構造転換が、経済発展や雇用に、また低所得層に負の影響を与えるので
はないか、という懸念の声も見出される。
複雑なプロセスによる脱原発がどの程度確実に果たせるかという点に関する専門家の回
答は、一般に経験や想定や期待に基づいているが、これらは不確実性を伴うものであり、
その要素として未来への配慮が主題とされなければならない。それゆえ倫理委員会は、倫
理的な立場と脱原発への決断とモニタリング・プロセス!!モニタリング・プロセスでは、
エネルギー転換が段階ごとに監視され、必要とあれば追加的にコントロールが行われる
!!の関連づけを強調する。本委員会は共同事業としてこうした課題を理解しており、そ
れは大きな努力を要する事業であるものの、しかし持続可能な経済や社会への本質的な一
歩を意味するものである。


02. 2011年11月19日 00:46:29: 2sAQKQFScM

4 倫理的立場
原子力エネルギーの利用やその終結、他のエネルギー生産の形態への切り替え等に関す
る決定は、すべて、社会による価値決定に基づくものであって、これは技術的あるいは経
済的な観点よりも先行しているものである。未来のエネルギー供給と原子力エネルギーに
関する倫理的な価値評価において鍵となる概念は、「持続可能性」と「責任」である。持
続可能性を理念としたとき、未来を見据えた社会を共同して作り上げるために、社会的均
衡と経済的効率だけではなく、生態学的な配慮という目標も出てくる。
進行中の環境破壊によって、生態学的な責任への呼びかけが声高に行われたが、これは
原子力事故に始まることではないし、また、そうした事故をめぐる環境だけが問題とされ
ているのではない。問われているのは、人間の自然との付き合い、すなわち社会と自然の
関係に関する問いである。キリスト教の伝統とヨーロッパ文化からは、自然に対する一つ
の特別な、人間の義務が導き出される。自然に対する人間の生態学的責任は、環境を保
存・保護し、環境を自分たちの目的のために破壊することなく、有用性を高め、未来にお
ける生活条件の保障の見通しを保持することを目指すものである。したがって後の世代に
対する責任は、とりわけエネルギーの保障や、長期的もしくは全く無制限なリスクと負担
の公平な分配や、これらと結びついた行為の諸結果にまで及ぶものである。


4.1 リスクとリスクの受けとめ
日本の原子力災害の規模は、現在の時点では、まだ全体を見通すことはできない。われ
われは、自然災害の犠牲者と、原子力事故のために生命や健康や未来に不安をつのらせて
いる人々に対し、心から同情をしている。この事故の結果が今のところ、もっと大きな規
模にならなかったことは、従事した人々のおかげであり、われわれはその人々に大いなる
尊敬を払う。
原子力エネルギーのリスクは、福島の事故によって変化したわけではない。しかし、リ
スクの受けとめは、言うまでもなく変化した。大事故が生じるリスクが、単に仮説的に存
在していたのではなく、そのような大事故は実際にも起こり得るのだということを、より
多くの人が自覚するようになった。このようにして、社会の多くの人々のリスク受けとめ
が、リスクの現実に適合したものになった。リスクの受けとめの変化において重要な点は、
以下の通りである。
第一に、原子力事故が、日本のようなハイテク国家において生じたという事実
である。これにより、ドイツではそのようなことは起こり得ないという確信は消
失した。このことは事故そのものについても言えるし、また、事故収拾の試みが
長期にわたって手の出しようがないことについても言える。
第二に、災害の収束を見通すことや、最終的な損害の算出や、被害地域エリア
の最終的な境界づけが、事故発生から何週間の後にもまだ不可能なままだという
ことである。もっと大きな事故の場合にも、その損害規模は十分に決定可能であ
り、限界のあるものなので、科学的な情報をもとにして他のエネルギー源の欠点
と比較衡量することができるはずだという、広く行き渡っていた見解は、説得力
を大きく失った。
第三に、今回の事故は、一つの過程を経て引き起こされたわけだが、しかしそ
のような過程がそのまま起こるということに対して、原子炉は「想定」されてこ
なかったという事実である。こうした事情から、技術的なリスク評価の限界が明
るみに出てくる。福島の事故によって明らかになったのは、そのような判断が、
地震に対する安全性や津波の最大の高さといった特定の想定に基づいていたが、
しかし現実は、そのような想定を覆し得る、ということである。


4.2 リスクを統合的に判断すること
安全なエネルギー供給を考えていくことは、社会発展の基本的な問いと結びついている。
人間は技術的に可能なことを何でもやってよいわけではない[だから、倫理的判断が必要
‐訳注]、という基本命題は、原子力エネルギーを評価する場合にも考慮されなければな
らない。とりわけ、技術の結果が「永続的な負荷」という性格を持つならば、批判的な評
価は特に重要である。短期的な利益を優先して未来の何世代にも負担を強いるような決定
に対しては、社会が責任を負わなければならず、何が受け入れ可能で、何が受け入れ不可
能と判断されるべきかを決定していかなければならない。
可能な限りすべての視点から責任を負い得るようなエネルギー供給を展開していくため
には、全体的な考察を必要とする。文化的、社会的、経済的、個人的、制度的な内容と共
に、生態系や健康に関わる諸結果が考慮されなければならない。リスクの問題を単に技術
的な側面へと狭めてしまうことは、全体的な考察や包括的な考量という要求からすれば正
しくないであろう。ここにはまた次の基本命題も成り立っている。すなわち、負担は、た
とえ気候変動の例に見られるように非常に頻繁に行われるとしても、それは決して一般公
衆に押し付けられてはならない、ということである。果たすべき課題について畏敬し、自
分の考えと行動について謙虚であることは、非常に重要である。問題の中心となるのは、
イメージできるものではなく、むしろイメージできないようなものである。原子力エネル
ギーのリスクや気候変動による人間と自然への影響と関連して、「世界リスク社会」とい
う概念によって強く注意を喚起されたように、リスクは国境を越えて作用していくのであ
る。この概念は、世界が、世界規模での内政政治を必要とする運命共同体へと転換したこ
とを特徴づけている。多くの人にとって原子力エネルギーの平和的利用は、これまでのと
ころ、またその成立時期においては特に、進歩と豊かな生活を約束し、リスク制御可能な
ほぼ無限のエネルギーを約束するものであった。しかし今日から見れば、そのような利用
は、大それた未来のユートピアであり、当時の知識水準に従って倫理的な議論によっても
根拠づけられていたユートピアであった。今日では、少なくともドイツにとっては、それ
はもはや妥当しない。


4.3 基本的な対立:絶対的な撤廃VS 比較衡量
原子力エネルギーをめぐる対立の中心に横たわっているのは、どのようにして、根本的
に発生し得る大被害の可能性を扱っていくか!!放射性廃棄物による現在また未来におけ
る被害も含めて!!という点に関する見解の不一致である。そこでは、絶対的に拒否する
立場と、相対的に比較衡量を行う立場とが対立している。
どちらの立場においても、リスクの評価は、単に健康のリスクや環境のリスクに限定さ
れるものではない。リスクは、文化的、社会的、心理的な結果を含んだ幅広い領域に及ぶ。
また倫理的判断においては、原子力エネルギーに関して国内で当然問題となってくる、中
毒症状の社会的雰囲気から生じた結果についても、考察の対象とされなければならない。
同じく、エネルギーの安定供給や経済的安定性や気候保護といった次元も、包括的な意味
でのリスクや安全性に含まれるものである。加えて、生態学的、経済的、社会的、技術的
リスクは、相互に密接に噛み合っている。一側面のみを考慮しているだけでは、全体への
眼差しを失うこととなる。
倫理的な立場からの議論が行われるとき、選び得る代替案があることが前提されている。
選択肢がそもそもない、という発言は、いまや民意に受け入れられるものではない。それ
は、原子力利用についても言える。「選択肢がない」という主張は、開かれた議会制民主
主義への信頼を危うくするものである。事態はむしろ、選択肢が決断の余地を生み出すと
いうことである。それにまた、エネルギー供給が分散化し、多様化して設備されるにつれ
て、いっそう多くの選択肢が選べるようになるだろう。これによって、市民には、決断に
関与するチャンスが高まり、協同組合や自分の責任が組織されるような参加モデルなどに
関与していくチャンスが高まる。市民社会は、これによって強化されるだろう。


絶対的な判断
福島の原発事故は、安全性やリスクや危険といった概念を再考し、内容的に新たに規定
しなければならないことを、見せつけた。原発事故の規模を発生率によって判定するとい
う技術的なリスクの定義は、原子力エネルギーに関する評価に対しては十分ではないし、
またそれは、システム上、リスクを相対化するという、受け入れがたい結果を導くことに
なる。一つに、確率は、事故の成り行きに関しては想定という枠内で、そして解釈の限界
内という文脈においてのみ、有意味に計算され得る。とりわけ高い災害可能性を持った原
子力エネルギーに対しては、福島によって実証されたように、事故や事故連鎖から、この
ような(設定された)限界を超えるような出来事が発生してくるのであって、その経過を
「残余リスク」として片付けることは、倫理的に受け入れることはできない。福島の原発
事故は、日本のような高度に組織されたハイテク国家において、真に緊急の事態に際して
は、人々の災害準備や対策に限度があることを示している。生じてくる結果は、あらゆる
種類に及び、ほぼ際限のないものであり、自然や食料生産に、また事故現場近くの人々や、
世界経済に及ぶものである。
原子力エネルギーの絶対的な拒否という立場によれば、災害可能性や後の世代への負担
や放射線による遺伝子損傷の可能性は、そのリスクを相対的に比較衡量してはならないほ
ど大きなものだと評価される。この観点によれば、原子力事故による損害は、利益の比較
衡量という枠組みから潜在的に衡量し得るようなものではなく、それを超えたものである。
扱われているのは、計画不可能で算出不可能な事故から生じる行動結果である。その理由
は、システマティックである:
例えば交通や建築における安全性のような、限度のあるリスクを扱う際の標準的な戦略
では、損害が実際に生じ、そこから徐々にリスクへの備えをさらに学ぶことが前提されて
いる。これに対して、原子力施設の場合には、このような学習段階というものが除外され
ている。深刻な事態の前例というものが考察から除外されている限り、安全計画は、それ
を吟味し得る合理性を失っている。原発のリスクは、実際に起こった事故の経験から導き
出すことはできない。なぜなら、原子力事故は、それが最悪のケース(worst case)の場合
にどんな結果になるかは未知であり、また、評価がもはやできないからである。その結果
は、空間的にも時間的にも社会的にも限界づけることができない。ここから当然の帰結と
して、被害事例を除去するために、原子力技術をもはや使用すべきではない、ということ
になろう。
絶対的な判断の場合、比較衡量可能なものも、徹底して慎重に衡量される。しかし比較
衡量ができない場合には、絶対的な決断することが倫理的な責任である。リスクには、相
対的な、比較によって衡量可能なリスク(またはチャンスとリスク)以外に、絶対的で、
比較衡量できないリスクというものがある。あり得ないと見なされていたことが実際に起
こったとき、誰も望まないような、また誰も他の人に要求できないようなことが発生する。
そのような事態を取り除くことが、予防的な準備の本質なのである。


リスクの相対的な比較衡量
リスク比較衡量という考え方は、次のような認識から出発している。すなわち、巨大技
術施設の場合、リスクがゼロということはあり得ないし、石炭やバイオマスや水力、風力、
太陽光熱ならびに原子力エネルギーの利用の際のリスクは、確かにそれぞれ異なっている
が、しかし比較可能だ、ということである。リスクのないような代替エネルギーなぞない
のであるから、受容可能かどうかの判断は、あらゆる利用可能な選択肢から、それぞれ期
待され得る効果を、科学的な事実に基づいて、また同意され基礎づけられた倫理的な衡量
規準に基づいて、比較衡量するところに成り立つ。その場合に、すべてのリスクとチャン
スが、可能な限り科学的に見積もられ、そして生態圏全体にわたる直接的また間接的な影
響が算入されなければならない。その際、影響の規模だけではなく、それが生じる確率も
考慮すべきである。それらの影響を見積もった後で、リスクとチャンスが、相互に比較衡
量されなければならない。倫理的な考察は、可能な限り合理的で公平な比較衡量を行って
いく手助けをする。しかし最終的には、政治的な意志形成のプロセスが決定的であり、そ
れによって、どの比較衡量の規準が、より高く、またより低く判定されるかが確定される。
比較衡量は、つねに初期条件と文脈条件に依存している。その限りにおいて、ある国に
おいて、あるいは別の時代においては、原子力エネルギーについて肯定的な総合評価が下
され、別の国や別の時代においては、否定的に評価される、ということも正当化され得る。
したがって、原子力エネルギーのリスクとチャンスと、代替エネルギー生産のリスクやチ
ャンスとを、そのつどの時点に即して比較衡量することが必要である。
ドイツにおける現時点での状況という文脈からこうした比較衡量を行うならば、原子力
発電は、もっとリスクの少ないエネルギー生産の方法によって代替することができるし、
そうすることは筋も通っているはずだ、という仕方で論拠を辿ることができる。というの
も、ほぼすべての学術的な研究が、原子力エネルギーと比べて、再生可能エネルギーとエ
ネルギー効率の改善(省エネ)の方が、健康リスクや環境リスクを低くするという結論に
至っているからである。これに加えて、この代替エネルギーの経済的なリスクは、今日の
視点から見渡すことができるし、限界つきのものであるように思われるからである。この
ことは、気候保護という一致した目標を考慮に入れるならば、化石燃料の利用に対しても、
弱められた形で当てはまる。


4.4 倫理委員会における共通の判断
本倫理委員会は、その審議において、根底にあるリスク理解に特別な意義を認めた。倫
理委員会は、二つの立場の衝突を根本的に解消することを要求するものではない。どちら
のアプローチ!!絶対的なアプローチと相対的なアプローチ!!にも良い論点と真剣に受
け取るべき論点がある。倫理委員会においては、どちらの見解も断固として主張されてい
る。とはいえ、討論においては、歩み寄りも行われた。絶対的な立場から学び得ることは、
原子力問題において支持し得る決定では、単純にエネルギー政策上の選択肢の損害規模や
損害率の見積もりや誤算が問題になっているのではない、ということである。特に、利用
可能な選択肢を選ぶ際に、考察者を、そのいわゆる期待値(損害規模×損害率)に立脚す
るように強いるような、合理的な行動指令なぞない。また、技術的なリスク公式に従って
大損害をその小さな発生率と掛け合わし、こうして相対化した大損害を、より小さな損害
事例とより高い発生率の積と比較して、より深刻であると評価することは、理に反したこ
とではない。
比較衡量の立場から導かれることは、社会には、原子力エネルギーを拒否した場合の結
果も視野に入れる義務があるということである。その際、国際的な義務や他の国々のさま
ざまなリスク文化が考慮に入れられなければならない。さらに、リスク評価に際して、発
生率と損害規模の積(Produkt)(注1)の公式にこだわることなく、損害率を考慮していく
ことは、合理的である。
(注1)「Produkt(積)」ということで、ここでは、与えらたれ二つの量の掛け合わせ
(損害規模×損害率)を計算した結果を理解している。
実際的な観点から見るならば、原子力エネルギーに関するどちらの基本的立場も、同じ
結論に達する。すなわち、原子力発電からの電力が、生態学的、経済的、社会的な配慮の
規準に即してリスクのいっそう少ないエネルギーによって代替される得る限りで速やかに、
原子力発電の利用を終わらせる、ということである。
こうした議論によって、原発反対側と賛成側の間の相互理解を仲介する道が開かれる。
倫理委員会の判断に同意するために、原子力エネルギーに対して原則的な反対派であると
いう必要はない。ドイツにおいては原子力エネルギーを、リスクのより少ない技術によっ
て、生態学的、経済的、社会的に配慮した仕方で代替できるのだという、倫理委員会の統
一見解を分かち合えれば、それで十分である。


03. 2011年11月19日 00:55:20: 2sAQKQFScM

5 共同事業「ドイツのエネルギーの未来」に関する基本方針

5. 1 共同事業
倫理委員会はその審議の成果を基本方針として定式化する。人々はエネルギー転換へと
決断しなければならない責任を持っており、倫理委員会の審議の成果はこの責任のうちに
置かれる。焦点になってくるのは、連邦や各州や自治体の議会と政府である。そしてまた、
工業や貿易、金融サービス業、手工業関係の企業や、財団法人や公共施設も、多くの点で
重要な役割を果たす。しかしエネルギー転換の成功は、とりわけ個々の市民の決断にも依
存している。
脱原発のプロセスは、基本的な決定から始めなければならない。その後、何年間にわた
り、継続的に、そのつど達成した脱原発の段階に応じて、さらなる決定を行っていく必要
がある。この脱原発に際して重要なのは、経済と社会の発展の見通しであり、そしてまた、
資源の問題がますます大きくなりつつあるこの世界において、われわれの豊かな生活を保
障していくという基本的問題である。脱原発には、エネルギーの生産と供給、インフラの
役割、気候保護、価格やコストや収益に及ぼす国民経済的影響、研究のレベル、市民の参
入といったことがかかわってくる。このプロセスは、持続可能性の原理を、社会と人々の
生活スタイルをさらに発展させていくための基礎としてさらに定着させていくことでもあ
る。
このときに、目標の衝突が発生するだろう。それは、オープンに語られ、提案したモニ
タリング・プロセスにおいて透明性をもって交渉されなければならない。
大きな共同事業は、現在のドイツ経済とって、重要な発展の刺激となり得る。倫理委員
会が確信するところでは、エネルギーの安定供給は、気候保護という目標を損なうことな
く、また産業界や手工業の領域で雇用を拡大しつつ、電力不足にも陥らず、また原子力エ
ネルギーからの電力を輸入することなしに、成し遂げることができる。エネルギー転換を
進めていく中で、数多くの企業が新たに設立され、そしてすでにある企業は、その生産能
力を拡大し、新たな雇用を生み出すであろう。企業は、社会的協力関係という実り豊かな
原理を義務としなければならない。労働者の権利とその利益代表者を尊重することは、持
続可能なエネルギー転換を進めていく際の倫理的な前提である。
電力網とその拡充は、共同事業にとって重要な試金石である。果たされた合意を持続的
に維持することは、市民や経済界が投資計画を策定するにあたって、長期的に信頼ある枠
組みが生み出されていくためにも、非常に重要なことである。このことはグローバル市場
の競争において非常に有利になることが示されるだろう。脱原発は、もしそれが一気に高
まり、「ドイツのエネルギーの未来」という共同事業がどの政党からも広く支持されるな
らば、いっそううまく果たされるだろう。
連邦政府は、2010 年10 月に立てたエネルギー・気候保護プログラムでは、2050 年に照
準を合わせている。連邦政府の温室効果ガス削減目標は、原子力エネルギーからの離脱に
よっても、変更されることはない。もちろん、野心的な削減目標を今世紀の半ばに達成し
ていくためには、脱原発を遂行していく十年という期間中に、すてに、重要な基礎を築い
ておかなければならない。


5.2 目標に関する衝突を真剣に受けとめること
エネルギーの安定供給への道は、それぞれに根拠ある目標と利害をめぐる論争によって
特徴づけられる。電力価格の経済性や気候保護、負担やチャンスの社会的に正当な分配、
再生可能エネルギーへの転換といった目標は、それを足し合わせれば自動的に最善の状態
になるわけではない。
問題となるのは、脱原発によって失われる電力量をめぐって立てられる目標が、互いに
衝突を起こすことである。目標とされるのは、脱原発によって失われる電力量を、

・近隣諸国の原子力発電所から生産された電力を購入することによって簡単に埋
め合わせないことである。なぜならそのようことは、責任ある脱原発という原則
と矛盾するからである。

・簡単に二酸化炭素を排出する化石燃料によって代替しないこと。なぜなら、温
暖化政策の制約があるからである。

・再生可能エネルギーをまたもや急激に、加速度的に拡充して代替しないこと。
というのも、自然の生命圏への負担には限界があり、技術力は性急に過大評価さ
れるからである。

・簡単に電力の強制的合理化によって節電をしない。というのも、これは人々の
生活の要求と、ハイテク国家の経済に矛盾するからである。

・簡単に価格の引き上げによっては補わない。というのも、企業は、国際的な経
済競争をしており、また国内には社会的な不均衡があるからである。

・簡単に国の基準で放棄できるようにしない。というのも、これは、民主主義の
規則と社会的市場経済に適合しないからである。

このような目標の衝突に関する適切な比較衡量は、持続可能な発展という観点に立って
全国的な共同事業という責任を引き受ける場合にのみ成し遂げられる。利点は過大評価さ
れてはならないし、欠点は軽視されてはならない。このことは、原子力エネルギーの利用
から引き出されうる教えでもある。すなわち、原子力施設や貯水ダムといった大型技術を
民間事業によってではなく社会によって保険をかけることが実際的に必要となるが、その
ときに、その利益は過大評価されてはならないはずであるのに、しかし非常に簡単に過大
評価され得るのである。それゆえ保険対象と損害補償義務の範囲は、間違った価格シグナ
ルを導きうる。社会的リスクの過小評価と利益の過大評価が認められるところでは、リス
クへの補償責任と実際のリスクの引き受けとが乖離してしまっている。ノーベル賞受賞者
の経済学者ジョセフ・スティグリッツは、最近、金融産業と原子力産業におけるリスク・
マネージメントの比較において、次のように述べた。「ミスをしたときのコストを他人が
負担する場合、自己欺瞞が助長される。損失は社会に支払わせ、利益は私有化されるよう
なシステムは、誤ったリスク管理だと非難せねばならない。」(注2)
(注2)「ガーディアン」(The Guardian)の2011 年4 月6 日の記事より。


5.3 消費者需要と市民参加
共同事業として、新エネルギー政策と気候保護政策は、これまで以上に集中的に、個人
の需要を考慮しなければならない。エネルギー政策が市民の分散的な参加と自己決断に任
せられるに応じて、エネルギー転換についての合意も、早く達せられる。
消費者が望んでいるのは、エネルギー「そのもの」ではなく、エネルギーサービスであ
り、交通機関や自動車を利用し、旅行し、住み、豊かに生きる、といったことである。魅
力的な都市のインフラ整備や、非効率的な家庭用機器や暖房器具の交換といったエネルギ
ー効率を高める行動を促す資金的、法的整備は、「省エネ」という、エネルギー節約の生
活スタイルへの変化を引き起こすための重要な刺激である。賢明な政策案は、人口の変化
と共に現われる変化を基にして行われるものである。人口の変化や国民の高齢化、新しい
住居様式が必要な年齢において健康で仕事を続けることのできる生活、しかしまた介護負
担を軽減するための改築、社会サービスの「身近さ」など、これらは、すでに多くの市町
村において、都市改造の規準として取り上げられてきた。いずれにせよ、世代に合った住
居へと改築が行われる際には、それを省エネ対策の改造と結び付けることができる。
消費者は、いろいろな役割を持つ。すなわち、エネルギーシステムにおいて市場参加者
(需要者)であり、「消費者市民」であり、「共同生産者」である。消費者は、エネルギー
効率の高い製品やサービスをより多く需要し、節約して利用することによって、市場参加
者としてエネルギー転換に貢献することができる。また消費者は、自分の住居を改築し、
自ら分散的エネルギーを生産し、可変的に供給すること(スマートホーム、スマートグリ
ッド、「自家発電設備」)によって、「共同生産者」としてエネルギー転換に貢献すること
ができる。そしてまた、例えば自治体における電力網拡充参加の手続きに加わって、目標
の衝突を適切に公共の福利という義務のもとで処理する試みを行うことによって、政治的
市民としてエネルギー転換に貢献することができる。
アンケートによれば、多くの消費者は、すでに、原子力エネルギーなしの、安定エネル
ギー供給のためには、いくらか多く支払う用意がある。そしてまた、建築物の改築や、効
率的な暖房器具や、分散型エネルギー供給への投資を意義のあることだと考えている。こ
れと結びついた対策や、後の世代へのポジティヴな効果といった利点に関しては、適切で
明確な啓蒙が欠けていることが多い。だがしばしば!!賃貸法にあるように!!利点や利
益やコストが、投資家と受益者の間で不利益な仕方で分配されており、採算のあるエネル
ギー開発を経済的に阻害している。個人世帯は、潜在的に!!個人の大世帯や施設等の大
世帯も!!スマートグリッド方式によるエネルギー供給とピーク時の負荷の分散化に多く
貢献することができる(コジェネレーション・システムによる仮想的な大型発電所)。む
ろん、このためには、資金的な刺激が魅力的でなければならず、かつ/あるいは、法律上
の行動条件が適切な規準を出さなければならない。
市民が国の計画策定へと参加することは、脱原子力エネルギーへと速やかに転換し、ま
た再生可能な供給システムを建設していくために非常に重要である。このためには、例え
ば電力網や揚水発電所の拡充や、効率的な化石燃料発電所の建設といった、インフラ対策
が前提となる。このようなインフラの拡充は、上からは指令されることはできず、公衆参
加という建設的で新しい形式で導かれなければならない。大事なのは、受け入れを「うま
く手に入れる」ことではなく、大多数の人に支持されているエネルギー転換に、公衆が参
加することであり、負担と利益に公平なバランスを与えることである。
倫理委員会は、市民の参加を実効的に算入していくことはつねに望ましいと原則的に考
えている。計画策定権が、成果のある公平な計画策定を可能にするものであるとき、その
特徴としては、そこに必ず市民の参加の権利という要素が含まれている。もっとも、今日
合法的に企てられる参加形式は、しばしば、あまりに時間のかかるように見えるので、場
合によっては必要なパイプやネットワークが求められている程度まで築かれないことがあ
る。
協同組合のような新しい経営モデルや、収益に対して所有権を持つ可能性などは、市民
フォーラム、グループ、会合、未来ワークショップなどといった、直接的な参加形式と同
様に、導入されていくべきである。また自治体の参加に関しては、電力網を拡充したとき
の営業税の加算を変更することによっても、改善していくべきだろう。
加えて、エネルギー転換に関する社会全体の議論もさらに進められるべきであり、福島
の事故の記憶が色褪せたときにも市民の動機が維持されるようにすべきだろう。また、後
で詳しく提言する「エネルギー転換全国フォーラム」の設立についてもここですでに指摘
してよいであろう。
エネルギー効率のよい消費や再生可能エネルギーへの投資やエネルギー・インフラスト
ラクチャーの受け入れといった、大きなテーマは、自ずと進んでいくものではない。むし
ろ、ここでは政治が、消費者のために活発な促進政策や情報政策や参加政策が構想してい
くべきであろう。そうした政策では、省エネのための建築物改築や、コジェネレーショ
ン・システムの拡充、省エネ開発、電力網拡充、発電所の新規建設といった要素の交差す
る場が適切な仕方で共同参加的に取り扱われるべきである。


5.4 検討規準
衝突する目標を比較衡量する際に、次の規準が注意深く考慮されなければならない。
・気候保護
・安定供給
・経済性と資金的な可能性
・コストの分配の社会的アスペクト
・競争力
・研究と技術開発
・ドイツの一方的な輸入依存を避けること
これらは、エネルギー供給の転換中に行うモニタリングのための基本的な指標である。


5.4.1 気候保護
気候変動は、社会、政治、経済、科学のあらゆる領域に対する大きな挑戦である。それ
は長期にわたって続くであろうし、今世紀の半ばまでに温室効果ガス排出のさらなる削減
を達成するということを射程に入れて、倫理的に、経済的に決断していくことを要求する
ものである。
気候問題が、果たして、原子力技術の事故から生じる問題よりも大きなものなのか、そ
れとも小さなものなのか、という問いは、さまざまな仕方で答えられる。しかし、基本的
には、有効な比較基準なぞない。安定したエネルギー供給を守ることと同じくらい真剣に、
気候温暖化の問題に対応すべき倫理的義務がある。脱原発を遂行中の期間も、気候保護政
策の目標は維持される。この目標が脱原発によって妥協させられるかもしれない、という
推測には、裏づけがない。
ドイツは世界的に見ても、また欧州の中でも、野心的な気候保護目標を自らに義務づけ
た。最新の見積もりによれば、2010 年のドイツの二酸化炭素排出量は、金融・経済危機
後の景気上昇に連関して、前年比で4,8%増加した(注3)。その結果、排出量の削減は
!!脱原発をしない場合であっても!!今後加速されなければならないだろう。「欧州
2020」に掲げられた欧州における2020 年´へ向けての削減目標を達成すためには、毎年、
はるかに多くの温室効果ガス排出を制限していかなければならないだろう。これまで目標
とされていた1500 万炭素換算トンではなく、2000 万トン削減になる(なお、2000 年から
2010 年までは、毎年840 万トンしか削減できていない)。エネルギーの生産性の向上は、
2020 年までに、年平均二倍以上にしなければならないだろう。これまで毎年平均1.6%で
あったエネルギー生産性の上昇は、4%弱にまで高めなければならない。その他の条件が
同じままだとすれば、二酸化炭素の排出は、脱原発によっても上昇することになるだろう。
もちろん、欧州連合(EU)の気候保護政策は有効であり、これと反作用することになる
だろう。気候保護政策の努力は、熱供給や建築物改築や、とりわけモビリティー(交通移
動)市場の領域において、強化されなければならない(注4)。エネルギー変換は、それ
ゆえ、単に電力分野に限られるものではなく、システム上、熱供給や冷暖房の領域やモビ
リティーにも関わるのである。
(注3)Vgl. Hans Joachim Ziesing: .Kraftiger Anstieg der CO2-Emissionen in Deutschland“, in
Energiewirtschaftliche Tagesfragen, 2011, Heft 4. 理由としては、GDP の増大と寒冬が挙げ
られている。
(注4)全国電気自動車プラットフォーム(Nationale Plattform Elektromobilitat)のサイ
トを参照:
http://www.bmu.de/verkehr/elektromobilitaet/nationale_plattform_elektromobilitaet/doc/45970.php
2013 年に、欧州排出取引システム(EUETS)の第二の約束期間がスタートする。2008 年か
ら2012 年までの平均的な排出量に基づいて、また2020 年に達成すべき気候保護目標の見
地から、20 億3915 万2882 炭素換算トンという排出許可証が確定されている。これは、年
間あたり1,74%減らすことを意味している。排出許可証は、競売にかけられる。エネルギ
ー集約型産業に対しては特別規定が与えられており、そのような産業が競売しなければな
らない排出許可証は少しだけであり、排出許可証の大部分の割り当てを受ける。脱原発は、
そうでなくても上昇傾向にある二酸化炭素価格をさらに高くすると予想される。
2020 年へ向けた気候保護目標は、新しい設備投資サイクルが作り出され、未来技術が
人々の日常経験と密着したかたち結び付けられ、それによって人々に新たな、大きな決断
の選択肢が与えられるならば、安定エネルギー供給の共同事業の枠組みのもとで達成する
ことができる。


5.4.2 安定供給
現在、従来の化石燃料による国内の発電所全体から潜在的に引き出すことのできる電力
量(総設備容量)は、エネルギー需要をはるかに越えている(注5)。
(注5)全供給量とは、エネルギーを生産しうるすべての設備から生産された電力
の総容量である。この量は、どの時点においても安定的に(したがって電力網か
ら確実に)引き出すことのできる電気の量とは区別される。
エネルギー供給の安定性を確保するためには、安定的な電力が、需要をはるかに上回っ
ていなければならない。しかも、平均値ではなく、ピークの負荷(需要)をはるかに上回
っていなければならない。さらに、安全性のための準備や、システムサービス事業による
変動幅も指摘されねばならない。
電力供給の安定性は、連邦ネットワーク庁の発表によれば(注6)、計8(7+1)基の原
子炉を停止した場合にも、十分保たれる。もちろんその場合には、さらなる発電能力が準
備されない限りは、長期的に追加的に原子炉を停止していく際の数値上の安定緩衝材がも
はや存在しなくなる。現在行っている原子炉の一時停止によって送電網と供給安定性にど
んな影響が出ているか、目下、集中的に追跡せねばならない。連邦ネットワーク庁は、夏
期の電力網の供給リスクは、まだ制御可能な状態であると、改めて確認している。そして、
電力準備のための追加対策が必要かどうかについての決定は、オープンにしておくよう勧
めている(注7)。
(注6)連邦経済技術省に対して連邦ネットワーク庁が2011 年4 月11 日に行った、
原子力発電所の一時停止によって生じる送電網と供給の安定性への影響に関する
報告を参照:http://www.bmwi.de/BMWi/Navigation/energie,did=386714.html
(注7)連邦ネットワーク庁による2011 年5 月27 日の、「原子力発電所の一時停止
によって生じる送電網と供給の安定性への影響の更新報告」参照。
現在ドイツでは、90 ギガワットの安定的な電力が利用可能である(注8)。このうち原子
力発電による電力は、約20 ギガワットをなしている。この安定電力は、80 ギガワットの
ピーク需要と比較される。一時停止というかたちで停止中の原子力発電と、すでに電力網
から外されている原子力発電によって8,5 ギガワットがなくなっているが、それでも十分
に81,5 ギガワット分が、安定的な発電能力として残されている。
(注8)この安定電力では、従来の発電所設備からの発電量のうち、修理や故障や
整備の理由によって10 ギガワット分が差し引かれることを考慮してある。また水
力発電からは、その設備容量のうち50%が、バイオマスの発電能力からは100%が、
風力発電の電力からは7%、揚水発電からは100%の出力が含められている。これ
に対して、太陽光発電からは、その利用可能性が非常に変動するために、安定電
力としては含めることはできない。
2013 年までに、化石燃料発電は、約3 ギガワットの電力が、老朽化の理由により、電力
網から外されるが、これに対して約11 ギガワットの電力が電力網に追加される(注9)。
この追加された発電量は、現在停止中の原子力発電所からの8,5 ギガワットの電力に相応
する。すべての原子力発電を停止した場合の原子力エネルギーの電力は、計20 ギガワッ
ト程度である。
(注9)この箇所と以下の箇所に掲げている発電量のデータは、フェリックス・マ
テスとハンス=ヨアヒム・ツィージングによって、連邦ネットワーク庁と、連邦エ
ネルギー・水道事業連合会(BDEW)と自治体系企業連盟(VKU)からのデータと個人
的な算出によってまとめられたものである。Felix Matthes und Hans-Joachim Ziesing:
.Beschleunigter Verzicht auf die Kernenergie in Deutschland: Elemente eines flankierenden
Einstiegsprogramms. Kurzanalyse fur die EthikKommission .Sichere Energieversorgung“ “,
Berlin 2011 参照。高い安全性のもとで、2013 年までに操業が開始されると期待され
ているのは、ボックスベルクR号機、ノイラートF 号機とG号機、デュイスブル
ク・ヴァルズムG号機、カールスルーエRDK 8 号機、リューネン4 号機、マンハ
イムGKM 9 号機、モーアブルク1 号機と2 号機、ヴェストファーレンD号機とE
号機、ヴィルヘムスハーフェン、アイゼンヒュッテンシュタット、ヘヒスト、ボ
ンHKW 北号機、ハノーファー・リンデン、イルシング4 号機、カールスルーエ
RDK 6 号機、ザールブリュッケンGuD 南号機である。近年中に!!エネルギー経
済の理由に基づき!!古い化石燃料発電所は停止され、2012 年までに、約3 ギガ
ワットがなくなる(フリンマースドルフE 号機からO 号機、ニーダーアオセムA
号機からD号機、シュタオディンガー3 号機、マンハイムGKM 3 号機と4 号機、
プラインティング、ミッテルスビューレン3 号機)。2020 年までに、化石燃料発電
からは、8 ギガワット分の発電所が停止されると予定されている。
再生可能エネルギーについては、近年中に、かなりの増設がなされる必要がある。この
増設は、環境に配慮した電力生産という目標を達成するために、重要である。風力や太陽
熱や太陽光(PV)、地熱、その他の新しい技術による試みは、それを補助する電力貯蔵対
策と一緒になって、ベースロード電力需要を賄うことに貢献しつつある。今日ではすでに、
バイオマス発電が、安定電力を供給できる状態にある。
脱原発によって失われる電力量は再生可能エネルギーの増設によって代替されなければ
ならいなが、それは10 ギガワット分が、また安定性をもっと大きく確保するという目標
からは、約20 ギガワット分が代替されなければならない。可能性としては何年か早まる
こともあろうが、2020 年までには、提案されているコジェネレーション対策によって12
ギガワットを、バイオマス発電の対策によって2,5 ギガワットまで(このうち2 ギガワッ
ト分はいずれにしても拡大が予定されている)、また従来型の発電設備新設に対して設備
容量選択を市場で与える対策からは、7 ギガワットまでを生み出すことができる。また、
ピーク負荷の2,5 ギガワット分と、低負荷時の4 ギガワットを、エネルギー効率の対策に
よって生み出すことができる。効率の高い新設備に投資することは、「環境配当金」をも
たらす。すなわち、欧州連合排出取引制度(EUETS)という手段によって、排出された
二酸化炭素の最大量の抑制が、技術開発の原動力として働く。
それどころか連邦エネルギー・水道事業連合会は、発電容量の増設について、さらに上
回る数値を出している。それによれば、2019 年までに、約50 の発電所(風力、ガス、石
炭、褐炭、バイオマス、ゴミ、水力、揚水、圧縮空気を利用した発電所)で、約30 ギガ
ワットの発電が達成されるだろうと言われている(注10)。
(注10)http://www.bdew.de を参照。


5.4.3 経済性と資金的可能性
原子力エネルギーからの電力転換には、財源と投資に関して多額の経費が必要である。
電力価格はいずれにしてもエネルギーと二酸化炭素排出許可証のために上昇すると見られ
ているが、エネルギー転換はこの価格上昇をさらに進めるだろう。これについては、専門
家の間で、意見が一致している(注11)。とはいえ、価格上昇の程度については、一致し
ていない。したがってモニタリング・プロセスは、必要とあれば適切な対策を施すために
も、価格の変化とそのコスト面への影響に対して、特に注意を払わなければならない。
(注11)例えば以下の論述を参照:Enervis energy advisors GmbH (2011): .Atomausstieg
bis zum Jahr 2020: Auswirkungen auf Investitionen und Wettbewerb in der Stromerzeugung,
Kurzgutachten fur den VKU“, Berlin, 9.5.2011; r2b (research to business energy consulting):
.Energieokonomische Analyse eines Ausstiegs aus der Kernenergie in Deutschland bis zum Jahr
2017“, Koln, 20.4.2011, http://www.r2b-energy.com/pdf/Kurzfassung_Ausstieg2017.pdf; Sascha
Samadi / Manfred Fischedick / Stefan Lechtenbohmer / Stefan Thomas: .Kurzstudie zu moglichen
Strompreiseffekten eines beschleunigten Ausstiegs aus der Nutzung der Kernenergie, im Auftrag
des Ministeriums fur Klimaschutz, Umwelt, Landwirtschaft, Natur und Verbraucherschutz des
Landes NRW“, Wuppertal Institut, Wuppertal, 18.5.2011,
http://www.wupperinst.org/uploads/tx_wiprojekt/Strompreiseffekte_Endbericht.pdf; Claudia
Kemfert: .Wie teuer wird die Energiewende?“, in: DIW, Wochenbericht Nr. 20 / 2011,
http://www.diw.de/documents/publikationen/73/diw_01.c.372712.de/11-20-1.pdf および
http://www.claudiakemfert.de/no_cache/todaysclimate/detailansicht/period/1305629712///article/10/
wie_teuer_wird_die_energiewende.html; Ottmar Edenhofer: .Die Strompreise steigen nicht
wesentlich“, in: Handelsblatt, 16.03.2011 (vgl. auch http://www.pik-potsdam.de/aktuelles/pik-inden-
medien/die-strompreise-steigen-nicht-wesentlich/view).
原子力エネルギーからの撤退は、エネルギー供給とそのインフラへの投資が国民経済
を後押しするので、経済成長の原動力となりうる。これらのコストには、それに応じた収
益がある。同じように、公的財源!!市場を刺激する公的資金調達や融資!!は、雇用や
技術開発の市場に大きな生産的な効果を与えることができる(注12)。原則的には、国
の財源の準備は、財政規律と負債限度を考慮しなければならない。特に排出許可証の競売
による国庫への収入状況も算入されなければならない(注13)。民間事業による投資も、
同じように、重要な役割を果たす。この場合には、新しい投資手段が考慮に値する。それ
は、特に、新しいファンド・ソリューションや、持続可能な経済において投資対象となる
金融商品の供給を含む(注14)。
(注12)復興金融公庫(KfW)による建造物改築の支援策の経常収支が示すように、
1 ユーロの支援額は手工業や産業部門に7 ユーロから8 ユーロの投資を生み出す。
(注13)国は二酸化炭素排出許可証の競売からの収入を得るであろう。欧州の排
出許可証は、2013 年から競売にかけられる。現在の1 炭素換算トンあたりの価格
は15 ユーロであるが、この価格が欧州委員会が2020 年について試算したとおりに
コンスタントに上昇したとすれば、2020 年までに1500 億から1900 億ユーロの売上
金が見込まれる。ドイツは、370 億から460 億ユーロの収益を見込めるはずである。
欧州連合が2020 年への排出量削減目標を現在合意されている20%から30%へと引
き上げたならば、売上金は総額2000 億から3100 億ユーロに増加するだろう。二酸
化炭素の上昇価格は、欧州連合によれば、2020 年に1 炭素換算トンあたり25 ユー
ロと見積もられている。欧州連合が2020 年への削減目標を30%と定めた場合には、
その価格は上昇する。この場合、2020 年には、1 炭素換算トンあたり55 ユーロ、
もしくは30 ユーロ(クリーン開発メカニズムの補完的手段が購入される場合)と
試算される。Vgl. Simone Cooper / Michael Grubb: “Revenue Dimensions of the EU ETS
Phase III”, Entwurf, 10.04.2011.
(注14)この報告書の、省エネ対策の都市改造に関する論述[7.1.3] を参照。


5.4.4 コスト配分の社会的諸側面
モニタリング・プロセスの枠組みで検討しなければならないのは、市場への刺激の効果
や投資効果や他の経済的効果による、相乗効果をどのように利用できるか、ということで
ある。
加えてここで着目しておくべきことは、コストの社会的な配分の判断である。ドイツ経
済研究所(DW)は、[現在の8 基の原子炉の]一時停止は、家計に対して電気料金を少
しだけ高くするだけであり、最大で1,4%だろう、という結果を導き出している。ドイツ
経済研究所によれば、価格上昇の主たる原因は、キロワット時の取引価格が約0,4 セント
(6%)上昇することに帰せられる。さらなる原子炉の停止のためには、ドイツ経済研究
所の評価するところによれば、発電能力の増設と代替が必要である(注15)。現在のとこ
ろ見通し得る期間内においては、消費者価格の上昇は、価格を上昇させる作用と低下させ
る作用がほぼ等しい大きさなので、予測としては、総じて小さいものにとどまる。追加的
排出による排出許可証取引価格の上昇は、電力の消費者価格の上昇へと作用する。必要な
発電所の増設と電力網の拡充は、その拡充が比較的小さな要素と評価され、またそれによ
って追加される電力容量が価格低下作用を引き起こす傾向があるとしても、潜在的には価
格上昇を引き起こす。
( 注15 ) Vgl. DIW Wochenbericht 20/2011,
http://www.diw.de/documents/publikationen/73/diw_01.c.372712.de/11-20-1.pdf
倫理委員会が提言する対策は、この考察と一致するものである。本委員会からは、次
のように指摘しておく。すなわち、原子力エネルギー利用からの離脱にかかるコストを問
題にするとき、そのコストは、現在日本で進行しているような原子力事故の後始末のコス
トとの比較も行わなければならない。そして、原発事故の収拾にかかるコストは、ドイツ
がエネルギー転換をする場合に予想されるコストのすべてを上回るものであろう。


5.4.5 競争力
ドイツはほぼ隅々にまでわたる付加価値連鎖(バリューチェイン)を手にしている。そ
こでは電力を投入して原料が生産され、これが製造業と加工業、売買とサービス業部門に
結びついている。このネットワークは、ドイツ経済が成果をあげている本質的な理由であ
る。それは、雇用を確保し、また生み出す。社会的安定も、現在および未来から受ける大
きな挑戦の解決策も、本質的にこうした付加価値連鎖に負っている。
競争力という観点からは、電力価格だけではなく、安定した電力供給の確保もまた重要
である。このことは、特に、産業部門、人命に関わる医療、また情報テクノロジーやコン
ピューターによる制御システムに当てはまる。
こうしたものが、エネルギー転換のプロセスにおいても維持されるためには、付加価値
連鎖のどの部分においても、競争力のある枠組みが必要である。
エネルギー転換は、エネルギーや電気やガスや二酸化炭素の価格が上昇傾向にある世界
の中で行われていくものである。脱原発によってどの要素の価格変動が引き起こされるの
か、またどの部分が、グローバルな規模での変化に、あるいは現在の条件に、あるいは他
の理由に起因するのか、こうしたことをあらかじめ決めることはできない。それゆえ、こ
こでは、チェクしていくプロセスが、特に重要である。


5.4.6 研究と教育と技術革新
共同事業にとって、科学の寄与は非常に大きな意味を持っている。ドイツの経済と社会
は、その開発力と創造性を、新たな領域への参加と協力と勇気から得ているが、しかしま
た、とりわけ科学研究からも得ている。
ドイツにおける科学研究は優れた水準にあり、エネルギー転換に対してますます革新的
で成果の高い解決を期待できる水準にある。しかしこれは、さらに高める必要がある。共
同事業が形成されることによって、それも後押しされるはずである。モニタリング・プロ
セスは、研究成果への需要を目的に合った仕方で示し、その成果を算入しなければならな
い。発展研究を行なう場所が作り出されなければならないし、また、学術と社会との対話
が強められなければならない。こうすることで、研究政策上の優先順位は決めやすくなる
だろう。
重要となるのは、新しい解決策を発展させて適用していく社会的な能力を、研究開発に
よって強化し、そしてまたその際に、教育や職業専門教育や継続教育への刺激を与えてい
くことである。


5.4.7 輸入への依存
電力の輸入と輸出は、欧州域内市場に属するが、これは2015 年から、すべての欧州連
合加盟国による単一の電力市場としても統合される。物資や電力のやりとりは、それ相応
の有益と不利益がある。輸入能力に十分な余裕があるとしても、電気の完全な自給自足へ
の努力という方向性は、ドイツにとっては悪いものであろう。原油やガスやウランに目を
向けるならば、エネルギー消費者としてドイツは、非常に輸入依存的である。このことは、
他の多くの原料についても同様に当てはまる。原則的には、輸入によって偏った依存に陥
らないようにし、エネルギーミックスを可能な限り多様に保つように努めなければならな
い。
欧州のインフラ網(連結点)が改善されることにより、電力のやりとりは増加する。輸
入と輸出は、電力負荷をマネージメントするために必要である。輸入と輸出は、ドイツの
北と南では、典型的な仕方で、異なっている。電力輸入が批判されるとすれば、それは国
内の改革目標と反対の作用を起こす場合だけであろう。


6 エネルギー転換のための制度
エネルギー供給について高いレベルでの公共の支持を得るためには、議会と政府の決定
が透明性を持ち、社会の諸団体が決定に参加することが、前提となる。このためには、脱
原発のチャンスを全面的に利用するために、創造力と新しい考え方が必要である。
倫理委員会は、脱原発のプロセスを、制度的な改革によって支えることを勧める。提案
としては、互いに独立な専門委員組織を設置することである。一つは、エネルギー転換担
当の連邦議会議員であり、もう一つは、「エネルギー転換全国フォーラム」である。
倫理委員会は、この提案を行うとき、次のように理解している。すなわち、「ドイツの
エネルギーの未来」という共同事業を組織することは、連邦と各州のあらゆるレベルとっ
て、総じて極めて大変な課題だということである。また倫理委員会は、エネルギー転換を
目標どおりに可能な限り効果的に進めていくために、連邦政府もまた組織上の成果をチェ
ックするものと見なしている。


04. 2011年11月19日 01:00:54: 2sAQKQFScM
7 エネルギー転換への提言

7.1 効率的なエネルギー利用
かつてのエネルギー政策は、主としてエネルギー供給に重点を置いていた。現在は、需
要サイドも、同じく優先的に取り扱うことが重要である。原子力エネルギー利用からの離
脱は、まずは直接、電力の生産と消費に影響する。しかし、例えば建物の断熱は。エネル
ギー消費を減らすことができるし、二酸化炭素排出はシステム上エネルギー供給と結びつ
いているので、エネルギー供給は、システムとの関係から要求されなければならない。交
通移動や、例えばガス供給などの他の要因も、重要な意味を持つ。とはいえ、それはここ
での主題ではない。
効率的なエネルギー利用は、これまでさまざまに努力されてきたとはいえ、いま始まっ
たばかりである。個人世帯においては、これまでと変わらず、60 パーセントまでエネル
ギー効率を高める潜在力がある。産業部門においても、手工業においても、明らかな潜在
力がある。生産ラインや生産部門に関するエネルギー効率の指数は、今後重要な比較規準
をなし、ベストの解決策をめぐる競争を刺激するであろう。エネルギー効率の潜在力は、
未来の資源であることは、すでに長らく知られている。しかし実際には、エネルギー生産
性は、これまで本質的には高められなかった。そこには大きな潜在的資源があるのであっ
て、それを早急に利用していくことは、倫理的な観点からも至上命題である。


7.1.1 参加効果と支持されるモデル
今日までのエネルギー効率の戦力は、大部分は、技術的によい例とモデルを奨励してい
くことに向けられてきた。しかし未来において重要となるのは、資金調達戦略の展開(奨
励の論理から資金調達の論理へ)や品質に法的基準を結びつけることや、技術的効率を消
費者行動(生活スタイル)と結びつけることである。エネルギー効率は、日常的に実効性
を持つような原理とならねばならない。言い換えれば、今こそ、エネルギー効率のための
ビジネスモデルが、いっそう展開されるべきである。したがって、連邦政府は、市場に対
する補助的対策を、法律によっても支援すべきである。その対策は、広く効果のあるもの
となり、参加効果を生み出し、それによって還元される資金が生み出されるはずである。
国は手堅く透明性のある仕方で例を示していかなければならない。エネルギーシステム
契約[Energiecontracting](注16)は、エネルギー効率のための重要な手段である。国有の不
動産では、この手段の適用を先導していくべきであろう。この契約は、大きな効果を持つ
ものであり、例えば、学校や病院において参加を呼びかけ、多くの領域に広がっていくも
のである。エネルギーシステム契約は、金融政策の実情に適合したものである。つまり、
そこでは、出発点での支払い能力は必要ではなく、資金的な節約は、不動産所有者の会計
の利益となる。
(注16)エネルギーシステム契約においては、不動産所有者は、冷暖房や電気や
圧縮空気、あるいは他の形態のエネルギーの供給を、第三者に請け負わせる。第
三者(Contractor)を経由したエネルギー購入は、しばしば、効率やコストの上で有利
である。
産業部門における電気利用においても、依然として高い効率の得ることが可能である。
例えば、電動モーターを見てもそうである。国有の不動産は、なぜエネルギーシステム契
約からの利益を放棄するのか、その理由を定期的に考え直さなければならないはずである。
エネルギー転換には、一人一人が参加協力できるのでなければならない。これは個々人
の自己決定を増やし、自分の電力消費をもっとうまくコントロールできるようにする。ス
マートメーターによって、個人世帯は、電気を節約することができる。また、スマートメ
ーターによって、つまり比較のできるわかりやすい情報手段によって、多くの人は、これ
までよりもはるかに素早く、自宅の主要な電力消費源!!たいていは冷蔵庫と暖房器具
!!を、もっと効率のよい機器に交換しようと決断するはずである。
リバウンド効果(注17)を避けること、つまりエネルギー効率の向上にもかかわらず
電気消費が増大することを避けることは、大きな課題である。倫理委員会は、こうしたリ
バウンド効果に対して有効な手段が必要であることを、承知している。その選択肢として
は、いわゆるスマートメーターや、技術的機器にエネルギー効率の高いデフォルト値を設
定することや、利用者にエネルギー消費量を知らせる供給構造や機器表示などがある。製
品のデザインや研究開発も、この点を強く考慮すべきであろう。2009 年のエコ・デザイ
ン指令(2009/125/EG) は、この点で重要なアプローチを与えている。
(注17)リバウンド効果とは、確かに機器ごとのエネルギーの節約が明らかであ
るとしても、全体としては、いっそう多くの、そしてますます大きな機器が利用
されるような場合に言われる。あるいはまた、機器が例えばコンピューターやテ
レビの待機状態によって連続的に電力を消費する場合に言われる。その場合、結
果としてエネルギーは、より少なくではなく、むしろいっそう多く消費される。
イギリス政府は、機器や機器利用や建築技術のエネルギー効率に関して、手本となるプ
ログラムを示しているが、本倫理委員会は、この手本に従って、個人世帯においてエネル
ギー効率のよい機器へと更新していくプログラムを導入し、それをスマートメーターの導
入と法律的に連結させていくことを、提言する。そうした機器の導入は、その機器の効率
利得によって報いられるはずである。その一例は、イギリスにおいて目下行われている、
エネルギー効率に関する政策が提供しているものである。
(注18)h ttp://www.greatbritishrefurb.co.uk/ を参照せよ。


7.1.2 スマートグリッドの大規模な応用を可能にしていく
より効果的な電力利用を日常的なものにしていくためには、技術的、経済的な問題が
人々の生活スタイルや生活状態と結びつけられなければならない。最も重要な例は、電力
利用に関する新しいコンセプトの導入することである。スマートメーターやスマートグリ
ッドは、その市場を切り開くためにも、支援される必要がある。このスマートグリッドに
よって、負荷に応じて消費者がコントロールできるような電力利用が技術的に可能になる。
共同事業は、さまざまな参加者による連合作用が新しい創造的な成果を達成するような、
スケールの大きな、かつ範例となるような応用とプロジェクトを先導すべきである。参加
が求められるのは、企業や電力網事業者、生産業界、流通部門である。事業者と顧客と消
費者も、協働作業をすることができる。財団法人は、ここでは特別な役割を果たすことが
できる。
例えば、大型空港のような、大口電力需要者においては、全体を見渡せる構造なので、
多数の電気利用について決定できるであろうから、インテリジェントな電気・負荷マネー
ジメント(スマートグリッド)を試すことができるだろう。それは、新しい技術製品や、
冷凍倉庫や冷暖房設備による電気の貯蔵、そして電気自動車群を、相互に組み合わせるこ
とである。その革新的な点は、システム的なアプローチに、すなわち、機器開発とエネル
ギー・マネージメントを、分散的な決断力という利点と結びつけるところにある。
7.1.3 建造物改築から省エネ都市改造まで
建造物の改築は、持続可能なエネルギー供給を、世代を超えて広がる社会全体のプロジ
ェクトにするものである。復興金融公庫(KfW) から与えらたれ資金的刺激は、建築物の省
エネ改築に貢献する。それは、防音や暖房技術や再生可能エネルギーといったテクノロジ
ーによる省エネとは独立したかたちで、省エネに貢献するものである。すなわちそれは、
経済上の効率的な解決であり、新築や改築の方向性や透明性を生み出すための重要な基準
を提供する。2010 年には、約100 万戸で省エネ改築がなされた。その際(一年間で)30
万件を超える雇用が確保され、機器や資材へ210 億ユーロの投資を引き出した。毎年、
100 万炭素換算トンが削減された。これに対して財政資金から刺激として出資されたのは、
13 億ユーロである。もし省エネされた100 万炭素換算トンがまだ決して、個人世帯からの
直接の二酸化炭素排出量の1 パーセントにもならないことを見据えるならば、省エネ都市
改造がいかに大きな潜在力を持つかは、明らかである。
この成果がさらに進められるように、保障されなければならない。そのためには持続的
に資金調達をする手段が必要である。毎年改築される住居の数は、2400 万戸以上の改築
必要な住居のうち、目下のところ最大100 万戸という数は、さらに増大できるし、またそ
うしなければならない。今や建造物改築は新しい段階を始めなければならず、省エネ都市
改造として、とりわけ大住宅や集合住宅の改築を手がけなければならない。このためには、
都市の建築助成と類似した仕方で、独立した準拠枠が作り出されなければならない。その
準拠枠によって、建築物の改築は、自治体の持続可能性戦略の枠組みにおける省エネ都市
改造へと導かれるべきある。省エネ都市改造は、人口的変化を利用することができる。高
齢化している社会は、異なった住居形式や生活様式を必要とする。住宅事業者や個人家主
が、いろいろなところで行動を起こすだろう。このような社会的な改造は、省エネの要求
と結びつけることができる。またそれゆえに、建造物改築を、省エネ都市改造へと発展さ
せることが、差し迫って必要なのである。
投資の資金は、大きく増加されなければならない。これには、欧州連合排出量取引制度
(EUETS)による排出許可証の競売からの収益を利用することも可能である。特に省エ
ネ建造物改築や都市改造に対して、倫理委員会は、追加的な資金調達の手段を提案する。
まず非効率的な家庭暖房や電気使用メーターが取り替えられるべきだろう。この資金は、
節約対策が成果をあげ、そして/あるいは、新しい機器への投資が課税対象から控除され
ることによって、再融資され得る。資金は、還元して積み立てていくべきである。その意
味は、節約されたエネルギーとエネルギー効率の増大によって生じた金銭的利益が、再び
資金に流れ込み、さらなる対策を融資する、という意味である。還元される資金は、世代
間の公平や負担の衡平という原則を満たすものである。民間の投資家にとっては、それは、
安全な投資対象を意味しよう。
資金調達は、もし法規的な条件が適切であれば、さらに効果的に導くことができる。そ
の例として、不動産所有者はエネルギーシステム契約へのオプションを吟味する義務を持
つこと、また、賃貸法は、すべての所有者の一致が必要だという(現在も残っている)点
に関して、節電対策の改築の場合には、多数決の規則を優先するよう変更されること、そ
して、賃借人は、省エネ改築が無視されている場合に、法的な手段を得ること、また、省
エネ「家賃水準(Mietspiegel)」を導入することなどが挙げられる。そのガイドラインとし
ては、倫理委員会が公聴会において述べた考えがよいであろう。すなわち、省エネ改築の
ための資金的な責任は、賃貸人、賃借人、国の手当に、それぞれ三分の一ずつ組み込むと
いうことである。
必要な法的枠組みを、作り出す必要がある。最初の融資は、財政資金から準備されなけ
ればならない。


7.1.4 新築は新たな方向づけである
新築の分野において徹底してエネルギー効率の高い技術開発を方向づけることは、市場
と建築主に重要な刺激を与える。例を挙げるならば、ゼロエネルギーハウスは、こんにち、
すでに実現可能なものであるし、プラスエネルギーハウスの実現も、今やユートピアでは
ない。新しい断熱材や、太陽光発電の外壁への利用、照明工学や他の技術も、主要な効果
をなす。これらの技術分野は、ドイツの企業が、世界市場を先導している分野である。こ
れらはすべて、同時にソーラー建築への挑戦であり、かつ、大きなチャンスである。
ドイツ耐久建築協会(DGNW) の効率基準と復興金融公庫(KfW)支援の効率的建築の基
準は、よい尺度である。この基準により、新築計画の際には、再生可能なエネルギーとの
結びつきが潜在的に必要になってくる。もしこれが、すべての新築に対して効力がないよ
うであれば、その法律的な結びつきや利用の規則を吟味しなければならない。それはちょ
うど、給水整備という例において、ドイツにおける都市の発展が知られているような仕方
である。新築のための効率基準値は、法律的に与えられるべきだろう。
不動産のコスト計算には、基本的に、建築コスト以外に、建造物の耐用年数に関するコ
ストも、算入されるべきである。そうしたときに初めて、エネルギーコストが、実際に効
力を発するようになる。


7.2 再生可能エネルギー
再生可能エネルギー、すなわちドイツでは特に、風力エネルギーや太陽エネルギーの活
用、そして増加しつつある地熱とバイオマスエネルギーは、著しい成長が得られた。世界
中で再生可能エネルギーは、成功物語として見なされる。過去20 年間の再生可能エネル
ギーからの電源整備の成長は、注目に値する。その成長は、主として技術革新と国からの
支援によって促進されてきた。その他に、非常に多くの人々がこの種のエネルギーを利用
しようと自ら決断し、そしてそれを試し、参加し、共同してエネルギー問題の解決を見つ
けようという強い動機が生じていることも、刺激となっていた。
とはいえ、特に風力エネルギーの拡張は、とりわけ洋上風力発電の領域において、これ
までのところ期待されていたよりもいくらか少ないものにとどまっている。同様に、古い
陸上風力発電機をエネルギー効率の高い新しい設備へと取替える作業(いわゆるリパワリ
ング)は、当初期待されていたほどには進んでいない。どちらの場合も、技術上、経済上、
計画策定法上の諸理由の全体的な結びつきが問題だった可能性がある。場合によっては、
拡張への期待も高すぎたのかもしれない。とはいえ、特に風力発電をさらに野心的に拡張
していくことは、依然、必要であるし、特に注視し続けるべきであろう。その拡張の努力
は、さらに強化されなければならないし、必要な場合には、法的な条件整備が果たされな
ければならない。
野心的な研究構想によって、将来、他の再生可能エネルギー源(例えば地熱、潮力、波
力)を開拓し、社会的・生態学的革新を社会において利用可能なものにできるだろう。中
期的・長期的展望からは、太陽熱も、南ヨーロッパとアフリカとのエネルギー事業上の共
同作業に対して大きなチャンスを開くものである。アフリカとの共同作業に関して言えば、
これには開発援助の可能性も伴っている。「デザーテック」のイニシアチブは、最初の重
要な試みである。
太陽光発電がグリッドパリティ(太陽光発電設備からの電力が、末端消費者の電力価格
と同じ価格で提供できるときの市場状況)を達成したときには、新しい拡張段階が算入で
きるようになる。「愚鈍な」太陽光発電設備(これは天候状態に依存して電力が生産され
る)は、スマートグリッドの適用と組み合わされることによって、インテリジェントにな
る(電気は、負荷に応じて自ら使用され、貯蔵され、また電力網において利用可能にされ
る)。これは、消費者主導という新しい文化を作り上げ、社会に効率的な新エネルギー技
術をいっそう速く浸透させる刺激となる。太陽光発電は、多くの人々によって求められ、
稼動される。太陽光発電が経済性という限界を超えたならば、すぐさまそれは、効率的な
電力利用へのさらなるチャンスを提供するだろう。それは例えば、分散的に充電可能な電
気自動車を、電力の貯蔵装置として利用することなどである。
再生可能エネルギーのさらなる拡大は、長期的には、電力を貯蔵し、必要な時にはじめ
て利用できる可能性に依拠している。電気自動車は、いっそう長く大きな電力を貯蔵して
いく可能性うちの、一つの領域にすぎない。全般的に確かに言えることは、電力貯蔵装置
の技術は、全体的に大規模に拡張を急がなければならないということである。技術的な可
能性は与えられているし、さらなる可能性が、先端研究の対象である。加えて、技術的、
化学的、自然的な電力貯蔵装置を、もっと研究し試さなければならない。電力貯蔵の未解
決の問題については、その解決を強く推し進め、モニタリング・プロセスによって蓄電技
術の進歩を注視しなければならない。
分散性という観点から言えば、太陽光発電や地熱やバイオマスのエネルギー利用の技術
は、集中型設備に比べて利点がある。というのも、この分散型設備は、エネルギー網を緻
密に(網膜状に)していくことを可能にするし、このエネルギー網は集中型の巨大設備に
比べて、はるかに欠陥に対して柔軟性があるし、調整可能だからである。テクノロジーの
網状化によって、修正しながら干渉し、不可逆性を回避したるすることが新しくできるよ
うになる。
エネルギー供給と世界食糧問題の影響や相互影響については、特に注目が必要である。
世界の食糧の確保は、非常に深刻な問題であり、世界各地での飢餓や貧困、人口増加と食
料需要の増加によって、世界のすべての国々が直面する重要な挑戦の一つである。農業用
の土地利用とエネルギー生産のための土地利用との間の争いはますます重要になりつつあ
る問題である。小麦やトウモロコシや大豆といった、食糧でもある農作物が、エネルギー
供給のために作られるとなると、「燃料か食料か」という争いが燃え上がる。しかし未来
は、食糧生産に優位を与え、バイオマス(バイオエネルギー)は持続可能性という基準に
即して達成するところにのみ存在することができる。バイオマス生産の認可は、土地利用
の持続可能性と耕作方法と生産物の使用を保証するものでなければならない。原則的には、
バイオエネルギーの使用は、コジェネレーション利用に制限されなければならない。国際
的にもこうした努力を行っていく必要である。
未来において再生可能エネルギーが受け入れられ、電力供給における割合がますます増
加していくためには、補助金の割合は早く減らされていかなければならない。ドイツの生
産者には、再生可能エネルギーを、相乗的な利益をもたらす仕方でシステム的に製品応用
する技術を革新発展させていく能力があるが、この能力は保持され、また高められなけれ
ばならない。このための有意義な手段は、市場導入についての研究と支援のうちにある。


7.3 電力容量市場:ベースロードの安定化とシステム安定性と市場への公示
について
どの時点の電力需要に対しても十分な量の電気を生産することは、ドイツにとって重要
な意味を持っている。人々の生活にとってだけではなく、とりわけ工業生産にとっても、
あらゆる負荷状況において安定したエネルギーを供給することは、極めて重要である。
現在、市場は売買された電力量を指標にしており、生産された電力量は指標にしていな
い。また市場は、電力網のシステム安定性に対しては、十分に評価していない。こうした
市場設計は、条件の変化に応じて適合させられなければならない。
エネルギー供給の経済性の計算においては、これからは、電力量だけではなく、電力網
のシステム安定性の能力と、電力容量の整備もまた算入されなければならない。市場設計
を適切なものにすることは、いわゆる電力容量市場の利用を必要とする。電力容量市場は、
市場経済的な道具であるが、これについては他の国々の経験が与えられており、それをド
イツの固有の条件に適合させることができる。エネルギー転換へ向けた容量市場は、一歩
一歩発展させられ、可能な限り欧州レベルで進められるべきである。そしてそこでは、ド
イツが、先導的な役割を担うべきであろう。
電力容量市場においては、特別に必要な発電施設の電力は、連邦の機関を通して、技術
的に中立に、差別することなしに、入札されなければならない。これは、すでに現在、特
定のケースにおいて可能であり、連邦ネットワーク庁の権原によって可能であろう。供給
の安定性が必要である場合には、それに従って、新規の発電容量や、エネルギー効率や需
要コントロールの対策が、入札できる。電力容量は、電力量(kWh)の価格のみを含む仕
方ではなく、電力網のシステム安定性や余剰電力容量へのサービスも含んだ上で、公示さ
れるべきである。公示において、送電の効果を最大効率化するために、発電所容量の場所
的な限定の基準をつけることも、意味のあることだろう。
電力容量市場は、個々人の発電経営者の視点を、エネルギー転換のために必要なインフ
ラの全体像と結びつけるものである。それは、共同事業の中核をなす。電力容量からは、
最善の場合には、価格の安定がもたらされうる。より多くの容量を作り出すことは、電力
価格を落ち着かせる効果を持つことができる。その際に投資の効率的な配分に注意しなけ
ればならないことは、言うまでもない。原則的には、他の手段を試すことも考えられる。
再生可能エネルギー法(EEG)は、さらに発展させられなければならない。この法律は、目
下のところ、単に量に関してのみ方向づけられており、再生可能な仕方で生産された電力
量を支援するときに、他の枠組み条件を切り離している。再生可能エネルギー法において
は、価格指標は、システムサービスや容量の整備に対して効果を持つように、近い内に拡
張されなければならない。一般的にすべての試みについて、!!原子力エネルギー利用か
らの離脱という時間的側面を顧慮しつつ!!再生可能エネルギーの変動的な供給を補うた
めに十分な電力貯蔵装置の準備ができ、そして再生可能エネルギーによる完全供給への道
のりが確保されるまでという、期限を設けるべきであろう。


7.4 化石燃料発電
原子力エネルギーからの撤退は、気候保護に負担をかけるものであってはならない。化
石燃料による発電所に関しては、気候保護目標は、欧州連合排出取引制度(EUETS)とその
二酸化炭素排出量の上限によって守られなければならない。排出量の上限は、欧州連合域
という範囲で義務づけられている。この制限は、脱原発を行う場合にも、成り立つもので
ある。
脱原発によって生じる供給不足は、特に再生可能エネルギーとエネルギー効率化によっ
て、また化石燃料、特にガスの投入によって、補うべきである。これらは、長期間にわた
って利用可能で安定的なエネルギー供給を与える。こうした不足の埋め合わせは、野心的
な気候保護目標を損なうことなく、欧州連合で法的に確定された温室効果ガス排出の上限
内で行われるべきである。このときに天然ガスは、重要な機能を果たす。原子力発電の稼
動期間の延長について連邦政府が昨年立てたエネルギー計画では、ガスエネルギーについ
ては、言及されていなかった。これは今、変えられなければならない。天然ガスは、二酸
化炭素排出の少ない化石燃料であり、移行期間の間、安定的に利用可能な燃料である。ド
イツのガス供給への依存に対しては、多彩な購入源への通路をインフラ整備することによ
って、防がなければならない。
その技術はテストされ、高効率化が進められている。ガスは高い割合で分散化可能であ
る。ガスの供給ネットワークはすでにあり、また拡張することができる。天然ガス発電所
の計画策定と認可は約三年かかり、建築期間はさらに約三年と見積もられる。気候保護と
ガス依存という観点からのロックイン効果(変更が望ましいと評価されていても、その変
更が非経済的であったり不可能であったりすること)は、施設の減価償却期間が限られて
いるために、懸念する必要はない。投資のコストは石炭火力発電所のコストと比較すると、
半額にとどまる。このことは、電力価格への影響を抑え、投資が採算がとれなくなる危険
を回避してくれる。注目すべきは、20 メガワット未満の発電量にとどまる分散的な天然
ガス発電所は、欧州連合排出取引制度(EUETS)から取引が免除されているということ
である。したがって小規模の発電設備からは、二酸化炭素排出の増加があってもよい。
天然ガスと、割合が増加中のバイオガスは、これが食糧生産との競争状態にない限りで、
設備と供給網の効率を最大化することができる。(ガスタービンと蒸気タービンの)コンバ
インドサイクル発電は、今日すでに世界でも唯一約60 パーセントの効率を有している。
この発電様式は、もしそれが分散的な電力利用を可能にすれば、その効率をさらに高める
ことができる。こうした効率を持つのは、この発電様式が省エネ都市改造に寄与し、特に、
それが送電網上での送電の効率を最大化にするように、場所を選んで設置された場合であ
る。
他には、近年中に!!集中的にテスト研究が進められた場合に!!応用が強化される選
択肢がある。それは、ガス供給網を電気エネルギーの貯蔵装置として利用することである。
風力発電からの電力が供給過剰に生産されたとき、この電力は水素やメタンの生産に利用
できる。ただし、将来的に、その電気分解システムにおいて、電気との交換の性能も高め
られ、利用可能となる限りにおいてである。メタンは、ガスと共に供給に適している。メ
タンや水素は、エネルギー貯蔵の媒体として利用できる。バイオマスの生産が持続可能で
ある限りにおいて、バイオガスもまた、同じように、変換することができる。モデル施設
はすでに稼動しており、性能のよい試験的施設へと拡充されている。風力発電のピーク電
力は市場では活用されていないが、この風力発電から期待されうる供給電力は、上記の設
備によって経済的なものになることができる。
新しい効率の高い石炭火力発電所は、送電網上で約30 パーセントの発電効率しか持た
ない古い発電所に対して、効率の上で明らかな利点を持つ。その取替えは、気候保護政策
とエネルギー経済にとって必要である。この方向は、徹底して進められなければならない。
現在建設中の、また計画策定法によって認可された、天然ガス発電所と石炭火力発電所は、
電力網に入れられるべきである。


7.5 コジェネレーション(熱電併給)
コジェネレーション(KWK)は、エネルギー効率を上げ、二酸化炭素排出量の減少に重
要な寄与を果たすことができる。電力生産への寄与は、現在のところ15 パーセントの規
模にある。コジェネレーション支援には、2009 年1 月1 日以来、条項を追加されたコジェ
ネレーション法が適用される。それは、コジェネレーション電力の割合を、ドイツにおけ
る全体の電力生産において、2020 年までに25 パーセントまで高めることを目標としてい
る。
今日の視点から、また建設中また計画策定中の施設から知るところでは、この目標は、
制限条件を変えることなしには、達成が難しいだろう。
(注19)コジェネレーションに関する以下の論述については、倫理委員会は、委
員会に提出されたマテスとツィージングの鑑定書(2011 年)に依拠している(注5
[9] 参照)。
これまでは、法律はその支援を、多かれ少なかれ特に熱利用として位置付けられた稼動
に限ってきた。
将来的には、コジェネレーション設備は、明らかにもっと強く電力市場に位置づけて稼
動されなければならない。そしてもっと大きな熱貯蔵装置が備えつけられ、またコジェネ
レーションの産業上の潜在能力がもっと強く開発されなければならない。天然ガスによる
コジェネレーションは、一般世帯にとっては高い効率があり、それはとりわけミニ・コジ
ェネレーション設備(コジェネレーション発電機)のコントロールのしやすさから、天候
よって変動する風力発電や太陽光発電の電力生産を可変的に補完する技術として現れつつ
ある。
コジェネレーション法を次の点に関して修正することは、有益であろうし、短期間で転
換できるだろう。
・[補助金を要求できる]設備の稼動開始期間は、[現在の2016 年という設定から]2022
まで延長されるべきである。これは、投資の刺激を生み出すし、現在必要な計画策定の手
続きを考慮している。コジェネレーション設備は、ステム安定性を確保するという目的で
も、適応させて投入することができる。また、補助金の条件として最大30000 時間の稼動
期間という設定を維持する場合には、6 年間もしくは4 年間という二重の補助期間の制限
を廃棄すべきである。
・コジェネレーション発電の追加は、卸売業市場における電力価格を和らげ、これによっ
て少なくとも、ドイツの原子力発電の停止によって引き起こされる電力価格への影響を部
分的に補うことができる。またそれに加えて、電力価格を長期的に安定化するのに役立つ。
これは、そのための補助金を適度に高めることによって支えることができるだろう。欧州
排出取引制度(EUETS)の枠組みから得られる収益を、これに対して利用することも考
えに入れておくことができる。
・産業界でコジェネレーション施設を自家発電のために投入することは、大口電力需要企
業にとっては、電力価格の変動から身を守ることとなる。
・コジェネレーション法は、約10 から12 ギガワットの追加的な電力を生み出すことがで
きるだろう。熱供給能力の側面への制限は、このような設備増築の規模を、少なくとも中
期的には!!また近年中になされるコジェネレーションへの投資の経済的な耐用期間中は
!!妨げるものではない。


7.6 インフラと電力貯蔵
未来のエネルギー供給においては、インフラが、今まで以上に大きな意味を持つだろう。
インフラは、送電網だけではなく、ガス網や、電力貯蔵設備としての水設備や、エネルギ
ー生産設備としての水設備、また負荷マネージメントのための流通や、インテリジェント
な電力使用のコントロール、といった設備を含むし、また電力貯蔵のための媒体や貯蔵装
置自身も含む。インテリジェントな電力分配システム(スマートグリッド)は、特に再生
可能エネルギーの分散的な設備という点に関して、ドイツ科学技術アカデミー(acatech) の
側から現在推奨されている。インフラは、ハイテク経済の中核部分となる。人々の日常生
活において、インフラは、生活の不可欠な部分である。インフラ網は、もはや単に市場の
自由化や民間事業の参入という視点から見られるべきではなく、公共サービスとしての機
能という観点から見られなければならない。インフラ網(電力網、通信網、接続網、ガス
ラインなど)は安定に保たれなければならない。
エネルギー転換への重要な寄与は、インフラ網経営者、公営企業、エネルギー供給者に
よってなされる。企業の信頼性やエネルギー事業対策の信頼性をはっきり示すためにも、
企業が持続可能な発展への方向を目指し、それを表明して明らかにすることを提案する。
企業の責任と透明性と信頼性は、特にインフラ設備の許可や建設に際して不可欠である。
これまでのところ、供給電力貯蔵施設の建設は、すでに技術的な理由からも不可能であ
った。なぜなら、電気は電力網上に保存できないからである。それゆえエネルギー事業法
第五十条における貯蔵基準は、もっぱら石油や石炭やガスの量に関するものであり、それ
は設備経営者が30 日間電気を生み出すのに必要な量とされている。
貯蔵基準は、将来的には、電力市場に対しても重要になってくるであろう。電力貯蔵の
可能性を生み出すことは、ますます大きな意味を持つだろう。電力網の統合と研究水準に
よって、将来的には、水素やメタンを用いた解決や、例えば揚水式貯蔵による解決が実行
できるようになる。電気のシステム的な貯蔵は、従来とは異なった新しいインフラサービ
スとして考慮されなければならない。電力貯蔵は、電力価格を和らげる働きをする。大き
な貯蔵容量が生み出すことは、それは確かに脱原発の前提ではない。とはいえ極めて多様
な効果を持つ貯蔵装置は、未来において重要であるには違いない。それゆえ、すでに今か
ら、一貫してそのさらなる研究、発展、試験が強化されなければならない。
そのような解決策が経済性を持つようになったならば、ドイツは、欧州という観点から、
例えば年間の発電量の半分程度を貯蔵できるような国立のまたは欧州内の供給電力貯蔵施
設を建設するために尽くすべきだろう。
インフラ網の法規は新しく整備されていかなければならない。現在の法規は、インフラ
網経営者を、コストの観点にのみ立つことを強いるものである。経営者は、利回り損失な
しには、エネルギー供給の転換へ向けたインフラ準備のチャンスはない。法規的な基準を、
未来に適したインフラ網拡張ができるように変更することによって、エネルギー転換を明
らかに加速させることができるだろう。
新しい参入モデルが作り出されなければならない。現在のところ自治体は、インフラ網
への投資の経済的利益に、不十分な仕方でしか参入できていない。このことは、必要なイ
ンフラ網建設を承諾することを妨げている。風力エネルギーの拡張の際の経験から言えば、
例えば候補地の自治体の交渉者としての地位を、法律によって、そして特に営業税を別の
仕方で割り当てることによって、明確に規定しなければならない。これは、インフラ網の
拡張を、コストと関係なしに、高めていくであろう。その場合、インフラ網経営者の営業
税は、もはや単にその経営者が事業施設を建てた自治体にだけではなく、予定ルートの通
る自治体にも入る。


05. 2011年11月19日 01:08:01: 2sAQKQFScM

8 その他の枠組み条件

エネルギー法と気候保護法
吟味すべきは、エネルギー法と気候保護法を立てることである。これは、上に述べたさ
まざまな対策を、連邦法の権限による対策と関わる限りで、組み合わせることができるだ
ろう。


融資と規制
共同事業「ドイツのエネルギーの未来」のためには、かなりの額の資金が必要になる。
もっともそれは種類によって、多様であり、さまざまな目的に照準が合わせられている。
例えば建造物の改築するためであり、あるいは民間のエネルギー使用や電力網の拡張や他
の対策を効率化するためである。
原則的には、法規的対策によって国庫からの資金調達を減らすことができると指摘でき
る。例えば特に、一般世帯におけるエネルギー効率の改善においては、資金的な刺激によ
って法的な要求がどのように最適化され、また社会的に支えられるか、綿密に吟味されな
ければならない。これが特に該当するのは、世代間や異なった地域間での公平が、刺激や
補助金による場合よりも、一般的な規則の枠組み作りによる方がうまく達成できる場合で
ある。


教育と専門教育
共同事業は、多くの人に多くのチャンスを約束する。新しい雇用が数多く生み出され、
若者は新しい専門教育の段階において見通し豊かな職業教育を積むだろう。そして新しい
ビジネスモデルは経済的チャンスを利用するだろう。
「ドイツのエネルギーの未来」という共同事業にとっての大きな障害は、教育を受けた
専門家や職人や技術者や学者が、申し分なく十分に揃うかどうか、という問題である。専
門家不足は、工業的な製造能力の構築や、建築産業や手工業における能力を、著しく減じ
るだろう。
共同事業「ドイツのエネルギーの未来」は、教育と専門教育の促進を同時に行っていか
なければならない。そのための刷新的なよいアプローチは、例えば持続可能性という理念
が、学校やそれ以外の教育機関において、大学に至るまで広められたように、この共同事
業の理念もさらに広めていくことである。また例えば、「国連持続可能な開発のための教
育の10 年」のプロジェクトや、財団法人などによって幅広くさまざまな仕方で行われて
いる支援活動も挙げることができる。これらの試みは拡大され、エネルギー転換のテーマ
が取り上げられていくべきである。


9 科学知識に基づいた決定のための研究
倫理委員会は、再生可能エネルギーや電力網と負荷マネージメント、また効率化に関す
る領域において、エネルギー技術やエネルギー事業の選択肢を徹底して発展的に研究し、
試験していくことを勧める。社会と経済は、新しい参加形式によって、エネルギー転換の
チャンスに誘い込まれなければならない。エネルギー供給のさらなる選択肢の可能性を保
証するために、倫理委員会は、技術や研究や国の支援に対して、いっそうの柔軟性と公開
性を求める。
エネルギーならびに気候科学研究には、一方で開発や試験があり、他方で知識の適用と
実践的な刺激に基づいた革新的発展があるが、この両者の間に成り立つシステム的な連関
を、もっと強く注目していかなければならない。そこで新しい道を探って、研究をエネル
ギー転換の挑戦へと結びつけ、モニタリング・プロセスへと結びつけなければならい。研
究の優先順位は、基本的には、持続可能な発展という体系的な観点から導かれなければな
らない。
プログラムに従った研究開発と並んで、安定的エネルギー生産や効率的エネルギー利用
の専門領域全体に関わる科学的基礎研究もまた必要である。研究努力は、未来の発展のた
めに、可能な限り多くの選択肢を開けておき、安定的エネルギー供給への新しい可能性を
開くものでなければならない。利用可能な財源や人的資源の一部は、現在は主流に属して
いない研究方向に対して明確にあてがわれなければならない。エネルギーシステムそのも
のの発展がそうであったように、研究もまた、欧州レベルの視点や国際的な視点を統合す
るものでなければならない。
以下の要求は、ドイツの学術界のアクチュアルな考察と一致している。特に教育研究省
によって召集された、ドイツ国立学術アカデミー・レオポルディーナを代表とする、国内
の諸学術アカデミーからの研究グループの考察と一致している。この研究グループは、原
子力エネルギーの利用からの離脱が加速されたときに生じる帰結を学術的に検討した。研
究上重要な問題に関しては、他にも、別の学術組織や専門家グループや、連邦政府学術諮
問委員会「グローバル環境変化」、ドイツ連邦議会のアンケート委員会「成長、豊かさ、
生活の質」によって、重要な考察が行われている。最後のアンケート委員会は、新しい豊
かさのモデルと成長の価値についての問題を扱う研究に着手している。
短期的には、特に次のような研究提言が有効である。

・再生可能エネルギー
すべての再生可能エネルギーについては、迅速にコスト低減に導くような研究
活動が特に進められなければならない。送電網に関する追加的システムサービス
をとりこんだ風力発電設備の開発の研究活動は、強く変動する電力を、システム
に即して使用できるようにするだろう。コジェネレーションの役割は、すでに述
べたように、より大きな電力と分散的な試みと他の対策の組合せという前提のも
とで分析されなければならない。このことは、電力市場におけるシステム効率の
新しい構造を背景とした、仮想的な発電所の役割についても当てはまる。太陽熱
発電に関しては、すでに達成されている技術水準をシステム的に適用することを、
研究によって支えなければならない。地熱の潜在力をもっとよく、目的に合うよ
うに開拓するためには、科学技術の諸前提を展開していかなければならない。こ
れは、建物の暖房に利用できる地表近くの地熱に関して、特に当てはまる。再生
可能エネルギーや地熱は、開発政策上の重要な潜在力である。


・分散性
自治体や協同組合がエネルギー準備の分散的解決に参加するという新しい参加
形式や、市民参加や経営モデルの新しい形式、また、住民の関心や好みを取りま
とめる新しいフォーマットが、発展させられ、試されなければならない。
エネルギー転換においては、自治体には重要な意味が帰属する。というのも、
省エネ都市改造や、諸設備やインフラ網の計画策定や建設についての決定の多く
は、地方自治体や地域において分散して行われなければならないからである。分
散可能なエネルギー供給システムとその相乗効果や相乗作用、そしてまた人々の
社会的相互作用に関して、新しい取り扱い方が重要である。


・システム的な性格
エネルギー研究は、システム的な性格を持たなければならない。研究活動は、
技術発展、開発の浸透、法的・倫理的評価、国による規制、社会政策上の刺激や
障害といった要素の間に成り立つ相互作用に、特に向けられなければならない。
研究は、絶えず効率性を開発するように方向づけられなければならない。電気エ
ネルギー節約の可能性として、科学技術開発の範囲を超えるような大きな可能性
があるが、それは消費者行動の変化のうちにある。需要調査や、刺激効果の調査
研究は、相対的に少ない経費でありながら、電力消費の減少を約束するものであ
る。
コジェネレーションシステムの発電を広く適用していくことは、高効率を得る
ための物質科学の問題や電気エネルギーを物質として貯蔵するための水素電気分
解などと同じように、一つの重要な研究分野である。より長期的な観点から言え
ば、研究の必要な科学技術は、石炭をもはや発電に用いずに、むしろ石炭とバイ
オマスを化学原料として用い、それによって石油に取り替えていく科学技術であ
る。これはまた、燃やすという技術からガス転化という技術へ、そして二酸化炭
素を排出せずに生産される水素の利用へ、という科学技術転換の要求である。
・地方自治体の戦略
ドイツのとりたてての強みの一つは、決定権と政策形成が地域的で分散的に根
づいていることである。エネルギー転換のための技術や手続き、内容、手段に関
する研究は、自治体のレベルで展開していくよう努力しなければならない。これ
は、例えば、コストの透明性やインフラの公共サービス、また設備工学などに対
して当てはまる。
発展研究の結果は、脱原発の後の時代にとって重要である。それゆえ、今、始められな
ければならない。
化石燃料は、世界中で重要なものであり続けるので、化石燃料からの二酸化炭素排出を
避けるための手段について、炭素回収と隔離(CCS) や、炭素回収リサイクル(CCU) を含め、
あらゆる手段を比較しながら研究されなければならない。そしてそれが経済や環境や社会
に及ぼす影響が査定されなければならない。
もしドイツが長期的に、電力エネルギーのうち、電気としての総使用量の80 パーセン
トを、そしてエネルギーとしての総使用量の60 パーセントを再生エネルギーによって供
給準備したいのならば、そのための技術革新の研究作業が、今、強化されなければならな
い。風力発電や太陽光発電、集光型太陽熱発電(南ヨーロッパや北アフリカで発電し、中
央ヨーロッパへと送電する)、地熱発電は、ドイツのエネルギー供給にとっての、大きな
潜在力を持っている。風力発電設備とそれに付随する電力網のシステムサービスの開発研
究は、変動的な電気エネルギーを、システムに適合させて供給することに寄与をなす。エ
ネルギー効率を上げることと並んで、コストの低減は、とりわけ重要な目標でなければな
らない。核融合研究は、エネルギー供給に非常に大きく寄与する可能性を持っており、国
際社会の共通の課題として注目し続けるべきだろう。核の安全性についての研究と、放射
性物質の取り扱いについても、同様にさらに進められなければならない。
さまざまな種類のバイオマスのエネルギー利用としての適性は、新たに吟味されなけれ
ばならない。そしてシステム的な観点を考慮した研究が、促進されなければならない。二
酸化炭素をさらに多く削減し、エネルギーを削減していく可能性は、バイオマスを原料と
して利用することにある。
電力損失が少なく可変的な、国境横断的な電力網は、もっと研究されなければならない。
その際、特に、電力網計画と参加国の相互作用についても研究されなければならない。交
流送電網と直流送電網をすべての電圧において接続することは、大きな意義のある研究テ
ーマである。電力貯蔵装置は、未来のエネルギー網における鍵となる要素である。研究は、
電気エネルギーや熱エネルギー、動力エネルギーや化学エネルギーを効率的に蓄える貯蔵
装置の技術の研究が、進められなければならない。長期的には、水素やメタンを利用した、
時期に応じたエネルギー貯蔵装置が重要になるだろう。そのような物質による貯蔵装置の
利用のための技術開発がなされなければならない。
持続可能な交通移動の構想については、電気交通移動がさらに発展されなければならな
い。リチウムを使用したバッテリーと同時に、それを超えるバッテリーのアイデアが研究
されなければならない。交通移動分野にとっては、技術的なモビリティーと社会のモビリ
ティーの概念をいっそう強く統合する枠組みの研究も重要である。より効率的な供給準備
技術のためには、高性能材料が必要となってくる。それは例えば、可変的に投入可能な高
熱火力発電設備や、風力タービンや、太陽熱発電における熱媒体に対して、必要とされる
材料である。材料研究や素材研究の拡張を強化していくことは、エネルギーシステムのた
めに差し迫って必要な、革新的な材料を開発する準備となり得る。
分子レベルのエネルギー輸送について、その基礎の理解を深めることも必要である。こ
の領域における基礎研究は、現存の方法を最適化する基盤を形成し、また全く新しい技術
を発見し開発するための、基盤を形成する。
エネルギー需要の研究は、持続可能なエネルギーシステムを創設する際の鍵となる要素
である。研究すべきは、経済的、法的、政治的な制御機構のうち、どれがエネルギー政策
や気候保護政策の目標を、効果的、効率的、合法的、社会に適したかたちで果たすことに
役立つのか、ということである。そしてまた、これらは、どのようにして効果的にグロー
バルな法組織や政府組織へと組み入れることができるか、ということである。受容という
ことに関する研究には、それが共同事業において中心的な意味をなす限りで、特別な重要
さが与えられる。


06. 2011年11月19日 01:09:58: 2sAQKQFScM
10 核拡散
原子力エネルギーの民生利用は核兵器の軍事的製造からは確かに区別できるという、最
初にあった希望は、現実のものにはならなかった。核エネルギーの技術的、社会的リスク
は、相互に切り離して考察することはできない。
国際原子力機関の最新のデータによれば、現在、世界中で435 の原子力発電があり、世
界の電力供給の約15%を生産している。この比率は、2030 年までに二倍になると予想さ
れている。しかしこの倍増は、古い評価だと見られる。というのも、製品や消費や交通移
動の電気エネルギー依存は、上昇しているからである。もし原子力エネルギーの相対的割
合が2030 年も現在と同程度であるならば、2030 年には、現在よりも二倍の原子炉が、設
置されていなければならなくなる。
しかしこの見通しは、多くの人々を不安にさせるものである。テロ行為や国家全体の秩
序崩壊という可能性が除去できない限り、人々は不安定な世界の印象をつのらせる。核拡
散、つまり核分裂性物質や大量破壊兵器や、またその移送システムや建造計画の拡散や流
出は、原子力エネルギー利用における、ほとんど何も解決されていない問題である。原子
炉の多さや核分裂性物質の量に応じて、犯罪的な、そしてまたテロリストによる悪用の危
険も、何倍にも増えた。
核拡散を阻止し、コントロールをするという国際法の試みは、今までのところ、限定的
にしか作用しなかった。これまでのところ、核拡散の規制には効果がなかったことが、明
らかになった。前提されるべきは、次のことであろう、すなわち、核分裂性物質の拡散を
避けることを完全に達成することは、その源泉を最終的に閉じ、他のエネルギー源と取り
替える場合にのみ果たしうる、ということである。


11 核廃棄物の最終処分
核廃棄物の最終処分場の問題は解決されなければならない。しかも、脱原発のシナリオ
とその期日とは関係なしに、解決されなければならない。そしてここにも同じように、核
技術施設の運転に由来する、大きな倫理的な義務がある。最終処分についての社会的合意
を達成することは、原子力発電からの離脱の時期決定と、本質的に結びついている。
何千年にも渡って高レベル放射性廃棄物を安全に守らなければならないという見通しは、
後続の世代にとって重い負担である。アッセ研究鉱山におけるような問題や、犯罪組織や
テロリストの手に渡る核拡散やその悪用、そしてまた予測不可能な自然事象は、さらなる
危険として付け加わる。したがって、現在と未来に孕んでいる危険を減少させ得る可能性
を、それがどんなに小さな可能性であれ、追求しなければならないし、その可能性を後続
世代に受け継ぎ続けなければならない。これまでのところ、高レベル放射性廃棄物を無害
にしたり、高い安全性を保つべき処分期間を大きく減少させたりすることは、確かに、技
術的な規準では遂行できない。したがって、新しい技術によって大量の核廃棄物を減らし
たり安全な廃棄処分期間を短縮したりするといった、あまりに楽観的な見方は、目下、適
切ではない。これに関しては、基礎研究レベルでのさらなる成果が、まだ必要である。
したがって倫理委員会は、放射性廃棄物を、取り戻し可能な仕方で、最高度の安全性要
求のもとで貯蔵管理することを提言する。これは、ゴルレーベン以外に、ドイツにおける
放射性廃棄物の最終処分場のための試験場にまで及ぶものである。ドイツ国内で生じた廃
棄物は、貯蔵管理もドイツ国内で行われることは、議論するまでもない。


12 メイド・イン・ジャーマニーの国際的な側面
12.1 気候保護
エネルギー転換は、国際的な協力や開発援助や、とりわけ国際的気候保護交渉における
ドイツの立場にとって、大きな意味を持つ。
ドイツの例は、気候保護の理由にから原子力エネルギー利用を不可欠だという、国際的
に支配的な意見に対して、反対の作用を与えることができる。気候に中立的なエネルギー
技術は、推し進められている。ドイツは再生可能エネルギーをより迅速に拡張し、これに
伴って引き起こされた技術の開発を行っているが、これは多くの国から!!雇用や研究戦
略に対する効果とならんで!!大きな関心を呼んでいる。再生可能エネルギー源の拡張と
効率性の利用は、目立って、より大きな国際的な広がりを見せている。ドイツの再生可能
エネルギーのコンセプトはしばしば受け入れられ、中国やアメリカなどでは、エネルギー
戦略を補うものとなっている。再生可能エネルギーの国際的な展開と、送電網のシステマ
ティックな統合と、エネルギー効率の高い製品やサービスの利用によって、ドイツの機械
設備製造業者は利益を得ている。
エネルギー転換は、もし経済的リスクを最小限に抑えることができれば、耐久的な製品
やサービスという観点から見たとき、ドイツが輸出国として利益をさらに得るチャンスで
ある。それは技術的にも経済的にも社会的にも、大きなチャンスである。ドイツは、国際
社会において、脱原発が高い経済成果をもたらすチャンスであることを示すことができる
だろう。ドイツは、欧州連合のエネルギー効率の目標が義務となるように転換を促すべき
であろう。欧州理事会は、2020 年までに20%のエネルギー効率の増大という目標を確定
したが、義務づけはしなかった。欧州において、また世界において、製品や製造設備の工
業規格やマークはますます重要になってきている。これは、エネルギー効率にも及ぶもの
であり、規格化へ向けて努力が強められなければならない。

12.2 クリーン・コール・ハイテクと化石燃料の二酸化炭素の利用
強い産業基盤を持ったハイテク国家の中で、1986 年以降にドイツほどエネルギー供給
のための選択肢を多様化して新しいエネルギー供給システムを構築した国は他にはない。
多くの国は、今日、たとえ望んだとしても、同じような仕方では、効率的なエネルギー利
用や再生可能エネルギー源を頼ることはできない。というのも、他の国々のエネルギー供
給は、別の技術の方向へと固定されているからである。たいていの場合、石炭や他の化石
燃料、また、原子力エネルギーが主要なものとなっている。気候保護と世界のエネルギー
システムの安定のためには、これは、深刻な問題である。
石炭は、世界中で、21 世紀において最も多く利用されているエネルギー源である。そ
の利用は、世界的に、「低炭素」経済への移行を妨げている。そこで、ここに行動の必要
性がある。ドイツは過去において、技術開発や発明を進めて、石炭利用と石炭化学の水準
を何倍にも、そして根本的に高めた。したがって、石炭燃焼をクリーンな技術にすること
は、とりわけドイツの責任のうちにある。
ドイツは近い内に、もしかすると、石炭をエネルギー源とすることをやめることができ
るかもれしない。世界は、石炭をまださらにエネルギー生産のために利用し続けるだろう。
クリーンな石炭(クリーン・コール)は、実現可能な技術的選択肢である。むろん、発電
所において分離された後の二酸化炭素の行き先は、まだ解決されていない。地下深くの貯
蔵場所へ貯留することは、長期的には、袋小路に入る。二酸化炭素が利用価値のある物質
と見なされる(そして購入される)ようになったときに初めて、解決に近づく。二酸化炭
素を経済的に大規模に利用することは、まだ未来の課題であり、最大限の研究努力を必要
とする。ドイツの研究プログラムは、二酸化炭素の利用価値を見出すというアイデアは、
拒絶されるべきではないことを示している。このアイデアは、目的に合わせて拡大されて
いかねばらない。石炭化学や石炭燃焼に関するドイツの包括的な技術的知識は、ここに、
追加的なチャンスを与えることができる。
国際社会は、化石燃料からエネルギーを取り出すことによって生じた二酸化炭素を有効
に利用し、最終的に循環させることを成し遂げるか、そうでなければ、気候目標が世界的
なレベルで実現困難となるか、どちらかしかない。
全く新しい規模の国際的な研究プログラムが必要である。そのためには、ドイツはリー
ダーシップをとり、国際的な研究団体のイニシアチブをとることができるし、そうせねば
ならないだろう。

12.3 原子力施設の安全性についての国際的な観点
原子力施設の安全性は、未来のエネルギー供給全般の安定性と同様に、欧州の、そして
国際的なテーマである。ドイツは技術大国として、原子力エネルギーからの撤退後も、引
き続いて世界の安全性に貢献することを保障しなければならない。そのために、ドイツは、
原子力施設の安全基準とリスク評価の定義について引き続き交わされる国際的な論議に、
影響を保ち続けなければならない。欧州レベルでは、原子力施設の損害補償の法整備がさ
らに進められなければならない。
原子力施設の設置に関する決断が国民国家の主権だというのは、事故の結果が国境を越
えうるものだということと、矛盾する。ドイツは、現在の国際情勢から離れて孤立するよ
うなことがあってはならないし、他の国々の原子力推進の決断によって直接的であれ間接
的であれ、コントロールされてもならない。福島の事故の後の現在は、原子力の安全性に
ついてのドイツの方針を、欧州に広げ、国際的に広げていく最適の時機である。
欧州連合域内では、欧州原子力共同体(EURATOM) の1957 年の条約は、すべての加盟
国に妥当する。この条約は、欧州共同体の条約とは異なって、大きな修正もなく維持され、
それゆえ50 年代の言葉で、原子力エネルギーを、経済の発展と活性化や平和関係を進め
るための不可欠な資源だと記している。すでに十年前に、欧州司法裁判所は、欧州連合が
核技術施設の安全性に対しても権限を持つことを、指摘した。欧州原子力共同体条約は住
民や労働者を放射線の危険からも守ることを目的として立てているが、これはようやく
2009 年なって、第二次法として、欧州原子力共同体の指令(2009/71/EURATOM)におい
て考慮がなされた。2011 年7 月22 日までとされている、欧州連合のそれぞれの加盟国内
での法制化は、注目して追求されなければならない。倫理委員会は、これに加えて、連邦
政府に、国際原子力機関の活動の発展や調整を促進するよう努力することを提言する。
核の安全と原子力発電のリスクの吟味の義務は、欧州の政策に属す部分とならなければ
ならない。というのも、原子力事故によって起こりうる結果を考えるならば、リスクへの
事前配慮を欧州内で規制し、原子力施設の欠陥のある設計や欠陥ある運転管理を制裁する
メカニズムを確定することは、不可欠だからである。欧州委員会は、その点に関して、法
的権限を得るべきであろう。単一域内市場において製品の詳細を規制している一つの欧州
が、未だにこのことを果たしていない。
欧州ストレステストには合格したものの、しかしドイツの原子炉委員会の規準には十分
ではない原子力発電所が、他の欧州内の国にあるかもしれない。こうした発電所が運転さ
れ続けないこと(そして場合によってはこうした原子力発電所からの電力がドイツへの輸
出が試みられないこと)を確定するために、ドイツの原子炉安全委員会の規準が全欧州の
ストレステストの規準に採用されることは、非常に重要である。


07. 2011年11月19日 07:57:59: 9p2tnI39XQ
記事が途中までしかなく、記事の投稿から時間をおかずに
続きが無記名のコメントで投稿されてるようにみえますが、
2sAQKQFScM さんは、記事を投稿した蓄電さんですか?
なぜ記事に全部書かないのですか?
なぜコメントに記名しないのですか?

  拍手はせず、拍手一覧を見る

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