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再エネ普及の隠し玉、バイナリー発電 電力と熱をつなぐシステム
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投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 21 日 06:37:25: cT5Wxjlo3Xe3.
 


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再エネ普及の隠し玉、バイナリー発電

電力と熱をつなぐシステム

2012年6月21日 木曜日 山家 公雄

 電力供給力不足、原発再稼働問題などにより、エネルギーの話題の主役は、現状もっぱら電力である。しかし、エネルギーに占める熱の割合は高く、電力以外のエネルギー源でより多くの熱を賄えば、節電にもなる。熱は、長距離輸送が難しいので、近距離での利用が原則となる。

 日本では、電力とガスが分離されていることもあり、電気か熱(ガス)かという議論がなされてきた。電力は、高品質なエネルギーで魅力があるが、エネルギー効率に課題がある。熱は、エネルギー効率は高いが使いきれないという課題がある。

 熱と電気をつなぐ技術がバイナリー発電である。沸点の低い媒体を利用することで、低温でも発電できる。技術の発達と政策支援により、バイナリー発電は注目されてきている。未利用の熱であれば、地熱、バイオマス、太陽光、焼却炉、工場内熱など多様な広がりがある。もちろん再生可能エネルギー普及の切り札にもなる。

 2回にわたりバイナリー発電について解説する。今回は、先行して普及してきた地熱を取り上げる。地熱発電一般については、前々回までの本連載を参照されたい。

FITで普及の芽が出てきた地熱バイナリー

 再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)で地熱発電の買い取り価格は、1万5000キロワット以上でキロワット時当たり27.30円(税込み、以下同様)、1万5000キロワット未満で42円となった。事業者が要望した水準以上ともいわれる。

 事業者側は、規模の経済性が認められることを理由に、リニア数式に基づいたきめ細かい数値を要望した。対する政府の価格案は、中間点を刻みとする2段階であり、1.5万キロワット未満の水準についても配慮されている。

 ここで注目を集めることになるのがバイナリー発電である。バイナリー発電とは、加熱源により、沸点の低い媒体を加熱・蒸発させ、その蒸気でタービンを回す発電方式である。加熱源系統と媒体系統の2つの熱サイクルを利用して発電することから、バイナリーサイクル(Binary-Cycle)発電と呼ばれている。地熱発電などで利用されている。媒体としては、ペンタン・イソブタンといった有機物質、代替フロン、アンモニア・水混合液などが用いられる(資料1)。

資料1.地熱バイナリー発電の仕組み

 地熱発電は大きく3つに分類される。地中から噴出する蒸気だけで発電するドライ型、熱水・蒸気混合から蒸気を分離して利用するフラッシャー型、そして温水を沸点の低い媒体が流れる別系統(ループ)に熱交換するバイナリー型である。ドライ、フラッシャー、バイナリーの順に高温・高圧から低温・低圧になる。世界の地熱発電の3割を占める米国での構成比をみると5割、3割、2割となっており、結構バイナリーが稼働している(資料2)。小規模であることから数は多くなる。

資料2.米国の地熱開発の推移(方式別、2012/3時点)

 最近、米国などで注目されているのが高温岩体発電(HDR:Hot Dry Rock geothermal powerあるいはEGS:Enhanced Geothermal Systems)である。これは、天然の熱水や蒸気が乏しくても、高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し、水を注入し人工的に蒸気や熱水を生成し噴出させ、それを利用する。実例は少ないが、ポテンシャルは膨大といわれる。

 これはバイナリー発電が適しているとされる。頁岩層を利用するシェールガス・オイルの普及を髣髴とさせる。日本で商業運転している地熱バイナリーは、九州電力の八丁原地熱発電所(2000キロワット)と鹿児島県の霧島国際ホテルの自家発電(220キロワット)の2例だけであり、なじみは薄い。

 タービン生産は、ドライ、フラッシャーの大規模なものは日本メーカーが7割程度を占めているが、比較的小規模なバイナリーは、ほぼすべて海外産である。特に、米国のオーマット社は約9割のシェアを持ち八丁原も同社製である。

 東芝、三菱重工業、富士電機の御三家は、バイナリーにも注目しつつある。富士電機は、2010年5月に出力2000キロワットのバイナリー設備の販売を開始している。そのとき、バイナリー発電の市場規模は当面年間16万キロワット、高温岩体が普及するとさらに数倍になる、と説明している。FITの導入により、3社は、国内向けも意識していると考えられる。

 なお、オーマット社は、自ら開発・発電事業も行う垂直統合モデルを確立しており、強固な経営基盤をもっている。

低温でも発電できるバイナリー地熱

 バイナリー発電のメリットは、低温でも発電できることである。浅い熱源を利用することから、探査をやりやすく、当たる確率も高くなり、初期投資も少なくて済む。一度発電や熱供給に使った熱を2次利用する。熱供給で使い切れない熱水を利用することもできる。2次利用・ついで利用の場合は、開発リスクはフリーになり、地元の理解も得やすい。

 日本でこれまで普及しなかったのは、資源の8割が賦存する国立・国定公園内での開発が厳しく制約されており、例外的に認められた少ない地域を有効開発するため、深部の熱を利用した大規模発電に特化したからと考えられる。リスクは大きいが、開発が成功した場合の発電量当たりコストは低くなる。

 電力会社が蒸気を買って発電するモデルでは、総括原価とはいえ一定水準以下の原価に収まる必要があった。開発リスクがすべて原価に算定されることにはならず、その意味でも購入しやすかった。また、バイナリーを想定していなかったためか、事業にかかる規制は規模を問わず同一であり、小規模事業へのインセンティブが沸かない状況であった。

ポテンシャル800万キロワットの温泉発電

 地熱発電の1万5000キロワット未満で買い取り価格40円という数値は、バイナリー発電を含む小規模事業に光を当てるものである。さらに環境省は今回の規制緩和で、バイナリー発電に関しては第2種・第3種特別地域での開発を認めた。経済産業省は、ボイラー・タービンの主任技術者を置く規定を、300キロワット未満について一部の媒体を対象に不要とした。

 日本の地熱発電の潜在量は、産業技術総合研究所(産総研)が試算するところでは2400万キロワットに上る(150度以上)。バイナリー利用を前提とする低温(53〜120度)は、それ以外に833万キロワット存在する。また、日本地熱学会と日本地熱開発企業協議会は、833万キロワットのうち、2020年で12万キロワット、2030年で33万キロワットは現実的に開発可能としている。

 以下、日本の地熱バイナリー発電に関して、実証中、検討中のものも含めて紹介する。

八丁原発電所:本邦初の本格的バイナリー発電

 大分県で九州電力が開発・運営する八丁原発電所は、1・2号機合わせた合計出力11万キロワットを誇る国内最大の地熱発電所である。同所内には、国内第1号となる地熱バイナリー発電所があり、容量も2000キロワットと比較的大規模である。温泉源は2000メートルとバイナリーとしては深いが、これは既存発電用の生産井を活用しているからである。長年使用しているうちに熱水の温度が160度から130度に低下し、通常用としては使用不能となったが、バイナリーでは十分活用できる。

 一般にバイナリー地熱発電といった場合は、そのための探査・掘削を伴うグリーンフィールド(新規開発)事業を意味する。日本では、まだ当初からバイナリー発電を目的とした地熱開発はほとんど行われておらず、既存の小規模な温泉源や地熱発電所内の未利用エネルギーを活用(ボトム利用)することから始めている。その中で、再利用とはいえ、専用の生産井からの熱水を利用するバイナリー発電は、今後本格化する可能性のあるグリーンフィールド開発の参考となろう。

 技術は、地熱バイナリーの巨人であるオーマット社のものを使用している。蒸気・熱水を用いた加熱源系統と低沸点であるペンタンを用いた媒体系統で構成されている。有機性物質のペンタン(C5H12)の沸点は36度である。生産井から噴出す低圧・低温の蒸気・熱水は、汽水分離機(セパレーター)にて水蒸気と熱水に分離されて媒体サイクルに投入される。水蒸気は蒸発器に、熱水はプレヒーターに投入される。熱交換後の温水は、還元井で地中に戻るが、一部は地元の筋湯温泉に提供されている。媒体サイクルの冷却は空冷にて行っている。

 2003年8月着工、2004年2月実証試験を開始し(バイナリーに転用)、2005年2月には、地熱発電としては初のRPS設備認定を受けた。2年間の試運転を経て、2006年4月営業運転に入っている。

山川発電所:ボトム利用を実証、離島用・温泉利用を狙う

 九州電力が鹿児島県指宿市で所有・運転する山川地熱発電所(出力3万キロワット)にて、九電と川崎重工業が、小規模バイナリー発電(出力250キロワット)の実証事業を行う。

 山川発電所では、熱水・蒸気から蒸気を分離してタービンを回すが、加えて還元している熱水を利用してバイナリー発電を行う。還元熱水を再度フラッシュ(汽水分離)させ、気化した蒸気を蒸発器で、熱水を予熱器で媒体である代替フロンと熱交換することで、媒体を気化させて発電する。

 既存システム・設備を利用できるので、少ないリスクにて短時間で設置できることになる。川崎重工は、工場の排熱などの有効活用を目的に小型設備を開発した。小規模ではあるが、全国の地熱発電所などに設置すると、まとまった量になる。

 また、九電は、八丁原にて2000キロワットのバイナリー発電の実績を積んでいる。これに加えて小型を実証する目的は、地熱資源が賦存する離島への適用や温泉水などの有効活用である。スケジュールは、2013年まで実証を行い、熱回収技術、スケール(坑井内に形成される炭酸カルシウムなどの沈殿物)対策、腐食対策、設備性能、経済性などの検証を行う。

福島県土湯温泉:未利用温泉の発電事業で地域再生

 福島県福島市土湯温泉町において、温泉バイナリー発電の事業化へ向けた調査・調整が始まった。湯遊つちゆ温泉協同組合は、約150度の温泉が噴出する源泉を所有している。この温泉資源の未利用分を利用して発電事業を行い、エネルギー地産地消の地域づくりを目指す。地元温泉組合や地熱開発、プラントメーカーが共同で環境省の「2011年度再生可能エネルギー事業のための緊急検討委託業務」を受託した。

 土湯温泉町は、東日本大震災や福島原子力発電事故の影響もあり、観光客が激減し温泉町の将来が大きく揺らいでいる。宿泊施設は16軒から10軒に、温泉街の総収容人員数は2500人から1200人に減少した。こうした中、地域復興と安心して住み続けられるまちづくりのために、土湯温泉町復興再生協議会が設立され、「土湯温泉町復興再生計画」が策定されている。豊富な温泉水をどう利用するかに着目した。委託業務では、宝輪プラント工業が坑井利用計画や資源量調査を主導し、JFEエンジニアリングが温泉発電設備の設計・検討を行い、温泉組合が全体とりまとめと地域調整を行う。

 大手プラントメーカーであるJFEエンジニアリングは、地熱発電事業でも実績を有する。発電事業は、2010年6月に、地熱開発・発電・設備開発を一貫して手がける業界最大手のオーマット社と提携しており、川上から川下まで一貫した事業を展開できる体制を整えている。オーマット製は、前術の八丁原でも採用されているが、JFEとの提携により、メンテナンスを含めてより国内で扱いやすくなったといえる。

 温泉町で発電事業を行うアドバンテージは、既に噴出している熱源があり、温泉旅館などの熱利用設備も存在することである。電熱併給(コジェネレーション)により有効利用が可能となるとともに、採算面でも優位に立てる。まず発電用に熱を供給して、使用後の熱を温泉旅館などに供給できる。資源量によっては、地域の電気・熱需要をすべて賄うことも可能となる。

 共同実施3者は、本実証事業の成果を基に、2年後に500キロワット級発電事業の開始を目指している。将来的には、土湯温泉の全電力需要を賄える1000キロワット級への拡大を目標とする。当初は、出力500キロワット、買い取り価格25円の前提で、投資回収期間約8年と概算していた。買い取り価格が40円となり、大いに勇気づけられていると推察する。

広がる温泉発電への期待

 こうした、地熱資源を利用した温泉町活性化の動きは、着実に広がっている。新潟県十日町市松之山温泉では、環境省の委託にて、昨年12月16日より試験運転を行っている。97度の温泉水とアンモニア・水混合媒体を利用し、定格出力87キロワットの設備で運転している。

 大分県の九重町は、九電の協力の下に、既設の実験用地熱井戸が実用化できるかどうかの確認を行う。5月29日に蒸気噴出の試験を開始している。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がかつて調査に使用した生産井戸2本(870、811メートル)と還元井戸(550メートル)の3本を改修して、3カ月間の噴出試験を行う。811メートルは24年ぶりに噴出した。噴出の状況を確認した上で、バイナリー発電を含む地域振興策を取りまとめる方針である。

 山形県大蔵村肘折(ひじおり)温泉は、日本で唯一「高温岩体発電」の実証試験が行われた場所である。地下1800メートルにある250度以上の岩盤付近に水を注入し、1988年7月には蒸気が噴き出した。NEDOが1985年から2002年にかけて実施し、一定の成果を上げたものの、実用化には至らなかった。山形県は、この3月末に「エネルギー戦略」をまとめたが、大規模電源としての地熱発電や分散システムとしての温泉発電の推進を明記している。肘折の復活もあり得る。

大分県由布市湯布院町:小型バイナリーで分散発電

 温泉旅館が自家発として地熱発電を設置する事例は少なくない。杉乃井ホテル(1900キロワット)、九重観光ホテル(990キロワット)、霧島国際ホテル(220キロワット)は、地熱発電として歴史があり関係者には馴染みの名前である。霧島国際ホテルは、2006年6月にバイナリーに転換した。富士電機の協力で、イソペンタンを媒体に利用した国産機第1号のテスト機を使用している。

 長い空白を経て、温泉旅館への設置が再開する。大分県由布市の温泉旅館「ゆふいん庄屋の館」は、神戸製鋼の小型バイナリー発電を導入し、発電事業を始める。自墳泉をまず発電用に利用し、熱交換後の温水をそのまま温泉として利用する。観光資源としても売り出すものと考えられる(資料3)。

資料3.庄屋の館、バイナリー発電設置イメージ

(出所)神戸製鋼所
 システムは、まず深さ700メートルからの自噴泉を蒸気と熱水に分離する。その110〜130度の蒸気を熱交換器に通すことで95度の温水をつくり、それをマイクロバイナリーに供給する。マイクロバイナリーの内部では、温水から作動媒体に熱交換され、低沸点の作動媒体が沸騰してスクリュタービンを回し、最大約70キロワットの発電を行う。

 3月27日に報道されたが、2012年10月に設置され、12月に稼働する予定。出力70キロワットと小型であるが、オールインワンでコンパクトな仕様で設置が容易である。出力100キロワット以下の地熱発電は国内初である。20キロワットは周辺機器の稼働用に自家消費し、残りの50キロワットを九州電力に売電する。事業費はは6000万円。販売価格20円なら15年で回収を想定していたが、40円ならば回収はより短くなる。

 マイクロバイナリーは神戸製鋼所の製品名である。2011年10月発売以来、多くの引き合いがある、3月末時点で350件にものぼる。圧倒的に九州が多くついで北海道である。発電コストはキロワット当たり20円程度としている。湯布院の例は、実証試験ではなく商業運転である。コンパクトで高効率な技術と普及施策が生んだ成果と言える。

 このように再生エネ、未利用エネルギー活用、分散型、地域再生にマッチする地熱バイナリー発電への期待が急速に高まっている。次回は、バイマス、工場排熱をはじめとした多様な利用について、取り上げる。


再生可能エネルギーの真実

今年7月1日から固定価格買い取り制度(日本版FIT:Feed In Tariff)が導入されるのをはじめ、日本が再生可能エネルギーの普及に本腰を入れ始めている。この連載では、風力や太陽光などの発電の種類ごとに、その実力と課題を解説する。

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山家 公雄(やまか・きみお)

1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行入行、新規事業部環境対策支援室課長、日本政策投資銀行環境エネルギー部課長、ロサンゼルス事務所長、環境・エネルギー部次長、調査部審議役を経て現在、日本政策投資銀行参事役、エネルギー戦略研究所取締役研究所長。近著に『今こそ、風力』

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120618/233453/?ST=print  

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