★阿修羅♪ > エネルギー2 > 808.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
風力発電拡大へ動き出す日本型インフラ整備 官民共同で送電線網を拡充
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/808.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 15 日 07:30:04: cT5Wxjlo3Xe3.
 

風力発電拡大へ動き出す日本型インフラ整備

官民共同で送電線網を拡充

2012年11月15日(木)  山家 公雄

 風力発電開発を進めるために不可欠な送電線整備を、国・事業者が特別目的会社(SPC)を作って進めるという政策が動き出そうとしている。電力インフラに国が直接資金を出すのは画期的といえるが、推進するには多くの課題がある。本来は、電力会社が送電線を建設して、投資回収を工夫する方が確実で望ましい。今回はこの問題を取り上げる。

高まる風力発電への期待

 9月に政府が発表した「革新的エネルギ−・環境戦略」は、閣議決定が見送られ、電力供給に関して、原子力・火力を含めてあいまいな点が残った。しかし、節電・再エネについては、2030年時点の具体的な数値目標が示されるとともに、12月末までに具体的な「グリーン政策大綱」をまとめることとなった。

 再エネ発電は、2010年時点の1060億kWhから3000億kWhへと発電量(アワー)ベースで3倍増を明示している。内訳は、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスを含むその他−−であり、特に太陽光、風力、地熱が大きく増加する(資料1)。


 20年足らずの期間でこのボリュームはかなり野心的であり、想定しうる目一杯の数値を掲げたとされている。その中で潜在的に余裕・伸び代があるのが風力である。目標値の665億kWhは、約16倍の伸びだ(ドイツは2011年で約500億kWh)。設備利用率2割を前提とすると3600万kWの新規開発が必要になる。風力発電協会は、長期的に5000万kWの開発も目指している。

 風力発電はコスト、1事業当たりのボリューム、開発速度などの面で優位にあり、目標の実現が日本の再生可能エネルギ−普及のカギを握っている。最近の世界の動向を見ても、再エネ開発の主役は風力であり、これと符合する。2011年末で既に2億4000万kWと原発240基分の容量に達している。

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)での風力の買い取り価格は1kWh当たり22円である。従来からの開発事業者に加えて、多くの事業者が新規参入を表明している。各電力会社の募集枠をはるかに超える応募が常態化している。昨年度の東北電力の募集枠30万kWに対して324万kWと10倍超の応募があった。

風力ゾーン形成とインフラ整備

 風力発電は、風況のいい場所であっても、近くに送電線が通っていないと開発できない。日本は、現状では電源専用のインフラ(これを電源線あるいは接続線という)は、風力発電の開発事業者が負担することになっており(起因者負担の原則)、電源線の距離が長くなると、採算が取れなくなるからだ。FITで想定するコストにこの電源線建設が含まれている。

始まった日本型インフラ整備の検討

 送電インフラの整備には、巨額の初期投資がかかるため、投資効率を最大限に高めることが求められる。すなわち、特に風況のいい地域を確認・選定して、「重点整備地域」とし(ゾーニング)、そこに既存送電網(系統)から電線を延伸することになる。風力発電開発で先行する海外でも、こうした専用線の計画があり、実際に建設されている。ドイツでは送電会社が負担する。

 日本でも、経済産業省が進めようとしており、来年度予算の概算要求に250億円を盛り込んだ。政府内や事業者を含めて水面下で検討している段階で、情報が限られており、以下の説明には筆者の推測も入っている。

 概算要求では、「風力発電特別整備地域」(以下ゾーンという)でSPCが電線を整備する際、政府はSPCに対して2分の1の補助金を出す。これは資本金(エクイティ)に当てられると考えられる。残りの2分の1は民間から集めるが、地元電力会社、風力発電開発事業者、金融機関などが想定される。このSPCは銀行などから外部資金を調達して、電線の建設に充てる。投資は、電線を利用するゾーン内の風力発電事業者からの使用料で回収する。

 資源エネルギ−庁の資料によれば、ゾーンは北海道北部、青森県下北半島、青森県津軽半島、秋田沿岸地域となっている(資料2)。


 最近は、秋田沿岸地域が南進する形で山形県酒田地域も対象と考えられているようである。8月22日付けの日経新聞によれば、苫小牧東部も入っている。いずれにしても北海道、東北地方が念頭に置かれている。

 風力発電のポテンシャルの2分の1は北海道で、4分の1は東北であるうえ、電力需要が大きく、不安定電源に対する調整力がある東京電力が同じ周波数エリアにあるため連携が期待できるからである。北海道の場合は本州との連系線増強が前提になる。

電源線として計画されるインフラ

 SPCが建設する「電線」は、風力発電開発事業者による資金負担を前提にした「電源線」のようである。詳しく言えば、「基幹的な共同電源線」であり(以下SPC線という)、ゾーン内の個々の風力発電所はSPC線に接続する。その接続線は通常の電源線であり、事業者負担で建設する。風力発電開発事業者は、通常の電源線整備の負担に加えてSPC線に使用料を支払うことになる。これに対し、政府は、ゾーン内の風況はFITが想定する平均値よりもいいはずであり、使用料を支払う余裕があるはずだ、と説明している。

 仄聞するところでは、電力会社や風力発電開発事業者は、概して戸惑っている模様である。電源線である限り、起因者負担原則があるので、電力会社は出資しにくいだろう(制度変革で送電会社が出来ればこの問題は解決する)。地元と地道に立地交渉をしている開発事業者は、送電容量を確認しながら地点を選定しなければならず、SPC線のルートと使用料が見えない中では判断しにくいだろう。

不透明なインフラ整備の事業性

 政府の構想は、確かに漠としている。変数が多いので、風力発電開発事業者には判断が難しい。インフラを整備するSPCの送電線投資の回収資金は、風力発電の収益が基礎となる。一方で風力発電事業は、送電線計画の実現とその際の使用料を前提に事業計画を決める。相手の出方を予想しながらの意思決定は、容易ではない。発電事業の立地は、住民の反対で頓挫するかもしれないし、スケジュールが延びてFITの条件が変わってしまうかもしれない。

 こうした中で金融機関が送電事業や風力発電事業に融資するのかも不透明である。金融機関は、事業者以上に保守的な判断をするのが常である。状況がかなり固まらないと判断できないだろう。現時点で判断を求められたら、少なくとも政府保証を求めるのではないか。融資が実現したとしても金利は高く設定されるだろう。

 風力発電開発事業者も、SPCも、後出しじゃんけんをしたいだろうが、やはりインフラが先行する必要があろう。資金調達に対する資本金の割合や政府負担を高くする、外部資金に長期固定低利資金を入れるなどの工夫が必要になる。それでも送電投資を事業者負担だけで賄うことは厳しいのではないか。設備の法定耐用年数は風力発電が17年(実質20年超)、送電線が36年(実質50年程度)と2〜3倍のミスマッチがある。FITの期間は20年である。20年で送電線投資を回収するためにはかなりの使用料負担が発生することになる。逆に、送電線の耐用年数に見合う使用料を提示できれば、かなりのコストダウンとなる。

 また、SPCはいくつできて、それぞれのゾーンはどこなのかも問題になる。小規模多数のSPCによるミニゾーン開発はフィージブルかもしれないが、開発総量は知れたものになる。系統と連結するに十分な送電容量確保にはならず、国が資金を投入する意味が不明になるし、個々のSPCを作る手間もかかる。あるいは、資金力のある民間事業者に一定範囲のエリア開発権限を与えて、投資判断を任せることもありうる。しかし、専門性を持つ事業者のやる気がそがれ、地元調整が雑になる懸念がある。制度変革により独立系統運用者(ISO)ができれば、そこが広域での規模の経済性を考えて企画・立案することになる。

地域電力会社が整備しコストは全国で負担

 電源線と割り切れるだろうかも疑問だ。例えば、ゾーン内外に風力関連産業が立地したとする。1基当たり2万点の部品点数を要する風力発電は、関連工場などが多数立地することは十分ありうるし、最大の地元対策にもなる。いわゆるグリーンニューディールである。その場合、SPC線に接続して電力を調達したいとの要求が出るだろう。こうなると送電線(系統)である。

 このように、SPC線は、送電線であるような電源線であるような曖昧な性格を持つ。いずれにしても通常の(狭義)の電源線は、事業者負担であるし、加えてSPC線のコストも負担することになる。共同利用の個別負担分はいつ誰がどうやって特定するのだろうか。

 送電線となると、電力会社(制度変革によっては送電会社)が整備することが自然であろう。その場合、通常は、地域の電力会社のコストとなり、その地域の電力需要家が負担することになる。これは、電力会社が納得しない。たまたま風力のポテンシャルがあるため国策による普及に協力してインフラを整備した結果、立地を提供する地域の電力料金が上がるのは、確かにおかしい。からくりが分かれば地域も黙っていないだろう。

 再生エネの発電コストを全国の電力使用者が負担するのがFIT制度の眼目である。インフラ整備のコストも同じに考えるべきだと私は思う。送電線として取り扱ったうえで、全国で広く浅く負担すべきである。電力料金へのしわ寄せが懸念されるのであれば、補助金の投入などで分担する手もあるだろう。もちろん発電と受電が計測されるので、それに応じて地域と全国の負担割合を調整してもいい。制度変革後はISOが日常業務として担うことになろう。

 インフラを特定の事業者が負担するのか、全国の不特定多数で負担するのかで、どちらが投資しやすいかは明らかである。後者のスキームで計画を考えると、インフラ整備の実現可能性は高まり、風力事業者は意志決定が容易になり、開発が進む。

欠かせない総合インフラ整備という視点

 何よりも重要なのは、ゾーニングをしっかりと行うことである。今回は供給設備の立地想定である。政府内に部会や委員会を設置し、地元を含む関係者を集め、ある程度時間をかけて検討すべき性格である。その結果として規模やルートを確定する。併せて事業主体や資金負担の在り方も検討する。料金収入の見込めるインフラ整備であり、補助金と政策金融で超長期低利資金の導入が有効であろう。

 以上、風力ゾーンを支援する送電線建設について、考察してきた。もちろん、風力のインフラ整備・立地対策はこれだけではない。北海道だけ、東北だけでクロ−ズドで開発しようとしても、多くを期待できない。需要量に限界があり、不安定電源を吸収する火力・水力などの調整力のある電源が限られるからだ。東日本の50サイクルエリア全体で調整・吸収することが最も合理的になる。東電管内は北海道の10倍以上の規模がある一方で風況のいい場所が少ない。その実証事業も始まっている(資料3)。


 また、電力会社間の連系線の整備や共同監視・制御も不可欠になる。本来、風力ゾーン連系線と電力会社間連系線はセットで計画すべきであるし、当然政府もそこは認識しているはずだ。しかし、SPC線建設は北海道から始まる(ようである)なかで、本州と繋がる北本連系線拡張の話は聞こえてこない。現在の60万kWから90万kWまで増強することになっているが、これは泊原発3号機の稼働に伴う北海道内の安定供給対策であり、311災害以前から決まっていたことである。

 東北地方と首都圏の連携は、実効性・即効性があり、これを優先して取り組むべきだという意見は多い。あるいは、インフラ整備には時間がかかるので、移動可能な大規模蓄電池を系統側に投入することで時間を稼ぐことも非常に有効である。

 風力など偏在する再生エネ普及を実現するために、送電線などのインフラ整備が不可欠である。できるだけ早く最大限の開発を目指す必要があるが、最初の一歩は重要である。ある程度時間をかけて合意形成を図り、民間事業者が安心して投資できるような準備と仕組みを考える必要がある。


山家 公雄(やまか・きみお)

1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行入行、新規事業部環境対策支援室課長、日本政策投資銀行環境エネルギー部課長、ロサンゼルス事務所長、環境・エネルギー部次長、調査部審議役を経て現在、日本政策投資銀行参事役、エネルギー戦略研究所取締役研究所長。近著に『今こそ、風力』


再生可能エネルギーの真実

今年7月1日から固定価格買い取り制度(日本版FIT:Feed In Tariff)が導入されるのをはじめ、日本が再生可能エネルギーの普及に本腰を入れ始めている。この連載では、風力や太陽光などの発電の種類ごとに、その実力と課題を解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121109/239261/?ST=print  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2012年11月26日 20:23:51 : YxpFguEt7k
国民の生活が第一のプラン
http://www.seikatsu1.jp/images/user_files/kentouan_2.pdf

「ドイツ等の事例を見ても、技術開発、法の整備もしくは規制緩和、財政支援を強化する等の適切な誘導策を講じれば、新エネルギー全体で年毎に1%程度の増進が可能である。」

日本全体の1年間の発電電力量は、約1兆kW
http://www.enecho.meti.go.jp/faq/electric/q1.htm

1兆kWの1%は100億kW
上記のグラフも20年で2000億kW増加ですから、年100億kWでピッタリ一致しますね。
新エネ全体で、「年1%ずつ増加」は可能ですね。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > エネルギー2掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > エネルギー2掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧