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「シェールガス革命」はエネルギー危機日本の救世主か?
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/843.html
投稿者 taked4700 日時 2013 年 1 月 18 日 19:42:19: 9XFNe/BiX575U
 

非常に優れた記事だと思います。リンク元には図版が多く使われています。できればリンク元を読んでください。ともかく、シェールガス革命は作られたものであり、とても長続きしません。高温岩体発電の準備だと思います。

http://www.nexyzbb.ne.jp/~omnika/shale_gas1.html

「シェールガス革命」はエネルギー危機日本の救世主か? 01.18.2012, latest update 01.09.2013
Will shale gas revolution help Japan in energy crisis?

日本の天然ガス輸入量は年間974億立方メートル

アメリカの天然ガス輸入量は年間748億立方メートル

「シェールガス革命」でアメリカの天然ガスが余っている訳ではない

「革命」ではなくてアメリカの安い天然ガスの終わりを意味している

アメリカやカナダのシェールガスを当てにして日本は原子力を放棄する?

エネルギー自給率77%(内原子力10%)のアメリカが日本にエネルギーを輸出してくれると本気で思っているの?


お知らせ
テレ朝NEWS(動画) 蛇口から火?地震誘発?シェールガス革命の影 (2012.12.16)
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/221216021.html

速報「アメリカが石油輸出国になる? World Energy Outlook 2012」 (本ホームページ記事) 11.13.2012
「シェール革命」のために北米だけで360兆円の巨大投資が必要、原油価格は1.8倍以上になる

速報 「水説:シェールガス革命=潮田道夫」 毎日新聞2012年09月05日 東京朝刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20120905ddm003070083000c.html
<引用>ニューヨーク・タイムズがシェールガス業界の内部文書や電子メールを入手して、業界の内情を暴露し続けている。面白い。「本質的にもうからないビジネスだ」「ネズミ講みたいなもの」など将来性を疑わせる内輪の話満載。<引用終わり>
ここで言及されているニューヨークタイムズの記事は"Drilling Down series"の連載記事で、代表的な記事は
"Insiders Sound an Alarm Amid a Natural Gas Rush" (天然ガスブームの真っ盛りに警告の内部告発)
http://www.nytimes.com/2011/06/26/us/26gas.html
暴露された内部情報 "Documents: Leaked Industry E-Mails and Reports"はこちら
http://www.nytimes.com/interactive/us/natural-gas-drilling-down-documents-4.html

速報 「シェールガスは魔法の杖か 天然ガスシフト、冷静に戦略を」 2012年6月4日 7:00
日経産業新聞編集委員 松尾博文
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD3003Q_R30C12A5000000/

速報 「天然ガス購入計画推進の見合わせを=米政府が日本などに要請」
ウォール・ストリートジャーナル日本版2012年5月31日(木)8時37分
http://jp.wsj.com/US/node_451985 (リンク切れ)

原文 "U.S. Gas Exports Put on Back Burner" by TENNIlLLE TRACY
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304821304577436470209675022.html


最近「シェールガス革命」の記事を新聞やインターネットで目にします。シェールガスは「非在来型天然ガス」の一つです。非在来型のシェールガスがどうしてもてはやされるのでしょう。本当に革命なのでしょうか。今回は「シェールガス革命」について考えて見ます。この記事を読むとシェールガスの全容が判ると思います。画面をマウスでスクロールして、図表だけでもご覧になって下さい。「シェールガス革命」でアメリカの天然ガスが余っている訳ではないことを論証するために、十数枚の図表を引用しなければなりませんでした。

アメリカは、現在南米から天然ガスを輸入していますので、東部海岸やメキシコ湾にLNG受入設備があります。メディアはこれを輸出用の積出設備に転用すれば、今すぐにでも輸入ができると思い込んでいるようです。LNG受入設備にはタンクと気化設備はついていますが、液化設備はついていません。気化設備は熱交換機でLNGを海水などで暖めて気化させる設備です。一方、液化設備は圧縮機と冷凍機です。気化設備とはまったく別物です。そしてものすごく高価です。プラント建設の常識では、設備を転用しようとすると、スペースや電源容量などいろいろと制約を受けてしまい、新設した方が早くて安いことが多いです。そう簡単には転用できないのです。また、アメリカ東部海岸やメキシコ湾からLNGを輸入する場合に、LNGタンカーはパナマ運河を通ることになります。大型のLNGタンカーを通すためには、パナマ運河の拡幅が必要との指摘もあります。

一番下に、つい最近三菱商事がカナダ・エンカナ社のカットバンク・リッジ シェールガス田の権益を取得した件について、コメントを追加しました。メディアは、今すぐにでも日本に輸出できるような報道をしていますが、まだ、日本への輸出が決まった訳ではありません。また、アメリカの東海岸から天然ガスを輸入する話もありますが、こちらもアメリカ政府の許可が下りるかどうかが問題です。仮に許可がすぐ下りたとしても、日本への輸出は2016年以降とのことです。これから天然ガスの液化設備と積出設備を建設しないといけません。

さらに、三井物産と三菱商事が、センプラ・エナージー(カリフォルニア州)から液化天然ガスを最大800万トン調達することで基本合意に達したとのことです(2012年4月17日)。アメリカ政府はFTA非締結国以外の国には天然ガスの輸出を許可していませんでした。センプラ・エナージーは、FTA非締結国の日本へのLNG輸出許可を申請しており、許可が下りれば2013年中に液化設備建設に着手し、2016年末に完成したら日本へ輸出したいとの計画です。

アメリカ政府は、雇用の確保と国内エネルギーの有効利用のために、多額の補助金をシェールガス開発事業に出しています。そのため、中小の採掘業者などを中心にして新規参入が増え過当競争になっており、加えて暖冬であったことで消費が伸びなかったため、この記事を書いた2012年1月現在の天然ガスのスポット価格が、シェールガスの生産原価を割って2.295$/MMBtuになっています(ヘンリーハブのスポット価格は楽天ネット証券のホームページで見ることができます。2013年1月で3.5$/MMBtuです)。このため、天然ガスおよびシェールガス生産業者の経営が非常に苦しくなっており、採掘権益を外国企業に売りはじめています。気体状の天然ガスは貯蔵できないため、アメリカでは一時的に天然ガス余り状態になっています。天然ガス生産会社は経営安定のために、液化天然ガス(LNG)にして日本へ輸出したいことが背景にあります。しかし、いずれのプロジェクトも高額の設備投資が必要になるのと、採算に乗せるためには長期契約が必要です。天然ガスは重要な戦略物資であり、シェールガスブームがそんなに長くは続かない可能性もあるので、メディアが過剰に期待を煽ることに対して冷静に見ている必要があります。

また、日本が輸入しているLNG価格は原油価格にリンクしています。このリンクを外すためには、大量の天然ガスを何十年という長期契約で北米から輸入する必要があります。しかし、アメリカもカナダもエネルギー大量消費国です。メディアが吹聴しているほど実現性のある話ではありません。仮に「革命は本もの」であっても、よその国の天然ガスです。勝手に持ち出す訳にはいきません。何が目的でメディアがそんなに「シェールガス革命」を執拗に吹聴するのかよく判りません。

なお、Annual Energy Outlook 2011(USエネルギー省エネルギー情報局 (DOE/EIA)のエネルギー見通し年鑑2011年版)に目を通してみましたが、 “shale gas revolution”(シェールガス革命)という言葉は、"executive summary"にも、本文の"Prospects for shale gas"にも、一度も登場しません。本文には“uncertainty”(あてにならないこと、不確実)という単語が6箇所はありました。

日本、EU、アメリカが輸入しているLNGの価格推移

シェールガスについて述べる前に、天然ガスの価格がどうなっているかを先に見てみましょう。天然ガスは陸続きの場合はパイプラインで、海を渡る場合は液化天然ガス(LNG)にして低温タンカー(マイナス162℃以下)で運びます。2009年の世界の天然ガス貿易に占めるLNGの割合は28%です(参考文献1)。世界の天然ガス貿易の主流はパイプラインによるものです。

天然ガスを液化して輸送するには、パイプライン、液化装置(冷凍機、圧縮機)、貯蔵タンク、低温タンカー、受け入れタンク、気化設備などの大規模な設備投資が必要です。したがって、LNGはパイプライン輸送の天然ガスよりもコストが高くなります。さらに、日本が輸入している天然ガスは原油価格に連動して価格が決められているため割高になっています。

一方、アメリカはLNGとして輸入している天然ガスは消費量の1.8%に過ぎません。ほとんどをパイプラインでカナダから輸入しています。そのため、アメリカの輸入LNG価格はアメリカ国内のパイプラインの天然ガス価格とリンクしています。このことを頭に入れて下の図−1を見て下さい。日本(黒)、EU(緑)、アメリカ(青)のLNG価格です。JCC(赤)はJapan Crude Cocktail(全日本輸入原油平均CIF価格)のことで、日本が輸入している原油価格です。

図−1 日米欧の液化天然ガス(LNG)の価格推移
出典:(参考文献1) エネルギー白書2011

図−1から、日本の輸入LNGは、アメリカやEUよりもより強く原油価格にリンクしていることが判ります(JCCを基準にして価格が決められている)。また、日本が輸入しているLNGの価格は、アメリカが輸入しているLNGの2〜4倍だということが判ります。天然ガスの価格形成メカニズムが日本とアメリカでは異なるからです。

なお、縦軸の輸入価格の単位は$/MMBtuになっています。これは百万ブリティッシュ・サーマル・ユニットの熱量相当の天然ガスは何ドルかという尺度です。1Btu=252cal=0.252kcalです。アメリカでは天然ガス価格を$/MMBtuまたは$/mcfで表示します(1mcf=1000立方フィート=28.317立方メートル)。天然ガス1mcfの発熱量が1,028,000Btuに相当するので、天然ガスについては$/MMBtuと$/mcfはほとんど同じ数値になります。エネルギーの世界は桁数がやたらと大きく、Btuや立方フィートが出てきますから計算間違いします。このホームページにも計算間違いがあるかも知れません。

また、図−1から、熱量当たりのコストで見ると天然ガスの方が原油よりも安いことが判ります。天然ガスは燃やした後の排ガスもクリーンです。CO2の発生も石炭や石油に較べて少ないです。したがって、石油を天然ガスに転換した方が安く済みます。それで、世界的に石油から天然ガスへのシフトが起こっているのです。

図−1のように、アメリカの輸入LNG価格の変動もかなり大きく、2009年以降、3〜5$/MMBtu=9〜15円/立方メートルで推移しています。LNGの日本でのCIF価格は上の図で12$/MMBtuです。為替レートによりますが約35円/立方メートルになります。ちなみに、東京ガスの一般家庭用都市ガス価格は使用量にもよりますが、130〜155円/立方メートルです(高いですね!)。それはともかく、アメリカの天然ガス価格は日本に較べて非常に安いのです。

日米の天然ガスの価格差がこのように大きいので、「シェールガス革命が起こったのだからアメリカから天然ガスを輸入すれば良いじゃないか」ということになります。それで、日本のメディアなどが「シェールガス革命」などと囃したてているのでしょう。

「シェールガス革命」の説明の前に、まず「シェールとは何か」から説明します。

シェールとは

シェールとは堆積岩の一種で頁岩(けつがん、ウィキペディアにリンク)のことです。太古の湖底や海底に泥が層状に堆積され、加圧されてできた板状の岩のことです。層に沿って割れやすい性質があります。下の図−2はカナダ・ケベック州Uticaのシェールが地上に現れているところ(露頭)の写真です。ここでは黒い層がシェール(頁岩)、白い層は石灰岩で、お菓子のミルフィーユのように重なっています。シェールの黒い部分には有機物が含まれています。その有機物が地下深いところで熱熟成を受けるとガスシェールになります。


図−2 シェールの一例(カナダ・ケベック州Uticaのシェール)
出典:(参考文献2) 井原賢 「シェールガスのインパクト」

このUtica のシェールは、もろい石灰石の層を含むためにあとで述べる「水圧破砕」には適していないとのことです(参考文献2)。

シェールガスとは

シェールガスは、上の図−2のような頁岩中に閉じ込められている非在来型天然ガスのことです。天然ガスは頁岩中の隙間に閉じ込められていたり、鉱物や有機物に吸着されています。天然ガスの主成分はメタンで、エタン、プロパンなどを含むことがあります。不純物として二酸化炭素や硫化水素が含まれます。二酸化炭素濃度が高いとガスの発熱量(カロリー)が下がります。

シェールガスの成因は天然ガス田と同じです。ただし、シェールガスでは、ガスが緻密なシェールの中に閉じ込められているために、石油やガスが貯まりやい場所(背斜構造)に移動して濃縮されてはいません。それで、在来型天然ガスのように井戸を掘っただけではあまりガスが出てきません。そのため、シェールに500〜1000気圧の水圧をかけて人工的に割れ目を作り(水圧破砕と言います)、天然ガスを回収します。ガスシェールは、オイルシェールと兄弟の関係で、石油や天然ガスの根源岩の熱熟成温度が高いとガスシェール、ほとんど熱熟成を受けないとオイルシェール(誤解を生みやすいのすが、オイルシェール中に含まれている有機物はケロジェンで油ではなく固体です)になると考えられます(詳しくは本ホームページ内の「石油と天然ガスの起源」をご覧下さい)。
在来型天然ガスと非在来型天然ガス(タイトサンドガス、コールベッドメタン、シェールガス)の模式図を次の図−3に示します。

図−3 在来型天然ガスと非在来型天然ガス(タイトサンドガス、シェールガス、コールベッドメタン)の模式図
アメリカエネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)のホームページから
http://www.eia.gov/oil_gas/natural_gas/special/ngresources/ngresources.html

在来型の天然ガス田や油田では、透過性のない緻密な地層が帽子のように覆いかぶさっている場所(背斜構造)に、ガスや石油が貯まっています。実際には空間に溜まっているのではなく、多孔質の砂岩や多孔質の石灰岩の隙間に溜まっています。これに対して、タイトサンドガスやシェールガスは、ガスの透過性の小さい砂岩や頁岩中に分散して閉じ込められています。つまり、ガスが移動できなかったため、在来型ガス田のように一カ所に濃縮・貯留されていないのです。

コールベッドメタンは石炭層に閉じ込められているメタンガスのことです。炭鉱ではガス爆発の原因となります。そのため、採炭する前にドリルで穴を開けて「ガス抜き」をしておきます。上司が仕事でストレスのたまった部下にたくさんお酒を飲ませて、突然の爆発を未然に防止することを「ガス抜き」といいますが、炭鉱用語だったのかも知れません。コールベッドメタンは日本にもあります。

シェールガスは、図−3の模式図のように、在来型油田や在来型ガス田よりも概ね深いところにあります。深い地層ほど温度が高く、有機物の熱熟成が進み、油よりもガスになりやすいからです。また在来型油田や在来型ガス田は、多孔性の地層中の油やメタンガスが地圧によって上方に絞り出され、背斜構造に貯留されたものなので、シェールガスより相対的に浅いところに存在します。在来型油田や在来型ガス田が資源的に格段に優れている理由は、地中のあるところに濃縮・貯留されていることです。

在来型ガスと非在来型ガスの質、埋蔵量、生産性の関係は次の図−4の通りです。質の高いものが在来型ガス田、質の落ちるものがタイトガス、コールベッドメタン、そしてさらに質が落ちるのはシェールガスです。また、三角形の底辺に行くにしたがってコストが高くなり、採掘技術も高度になり生産性も低くなります。一番下のガスハイドレート(メタンハイドレート)は今のところ採掘の対象になっていません。


図−4 天然ガスの資源量トライアングル Masters (1979)による
出典:(参考文献2)井原賢 「シェールガスのインパクト」

したがって、非在来型天然ガスは埋蔵量が多いことは間違いありませんが、在来型と比較して質が低く、生産性が非常に低く、コストが高くなります。図−4の三角形の右辺を見れば判りますが、生産性が中位の在来型ガス田(10md)の1万分の1、生産性の高い在来型ガス田(1,000md)のなんと100万分の1です。在来型天然ガス田のように自然が濃縮したものを井戸を掘るだけで採掘するのと、シェールガスのようにまばらに存在するものを、井戸を掘った上に機材とエネルギーを大量に動員して採掘するのでは、エネルギー投資効率の桁が違います(エネルギー投資効率については、本ホームページ内の「エネルギー投資効率(EROIまたはEPR)」をご覧下さい)。それではなぜシェールガスが開発されるようになったのでしょう。一つには、水平坑井掘削技術や水圧破砕技術などの進歩があったことです。もう一つは、アメリカの在来型天然ガスのピークが過ぎたからです。次にシェールガスの採掘法と環境問題、そしてアメリカのピークガスについて述べます。

シェールガスの採掘法と環境問題

図−5はシェールガス採掘法の概念図です。シェールガスは緻密なシェールに閉じ込められている天然ガスを採取するために、井戸を掘ってから500〜1000気圧の水圧をかけて、井戸のまわりのシェールに割れ目を入れます。水圧破砕(フラクチャリング)といいます。水圧破砕後には、9%程度のプロパント(砂のようなもの)を含んだを水を注入し割れ目が閉じないようにします。


図−5 シェールガス採掘のイメージ図
出典:(参考文献1) エネルギー白書2011

図−5では垂直坑井と水平坑井の例が描かれています。水平坑井を用いた採掘は、頁岩層が厚くて断層やクラックや破砕帯などが入っていない地層で行うことができます。断層やクラックがあったり、グズグズのシェールだと水圧が抜けてしまいます。

掘削や水圧破砕用の水には0.5%程度の薬剤(ゲル化剤、界面活性剤、潤滑剤、酸、スケール防止剤、腐食防止剤、殺菌剤、鉱物油、アルデヒド類など。ヒトにとって有害物質が多い)が含まれています。いくら深いところ、例えば地下2000メートルで水圧破砕をするとはいえ、地層の弱い部分が貫通されれば、500〜1000気圧もの水圧がかかるので、チャンネリング(通路を作ること)を起こして地表に通じてしまい、水源地や井戸水を汚染してしまいいます。井戸水が濁ってしまったとか、井戸を使っている家庭の水道の栓をひねったら、蛇口から天然ガスが出てきたなどということが起こっています。蛇口に火をつけると燃えます(下の写真)。メタンガスはかなり水に溶けます。


写真−1 水道の蛇口からメタンガス
出典:http://wvhighlands.org/wv_voice/?p=3949

このため、水源地や地上に人家がたくさんあるようなところではシェールガスの開発はできません。また、チャンネリングによってメタンガスが大気に放出されたり、油分が河川に流れ込んだりする環境汚染も問題になっています。

さらに、石油や天然ガスの採掘と精製過程では、メタンガスやメタン系炭化水素などの他に、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、硫化水素、二硫化炭素などの有毒ガスが発生します。シェールガス採掘業者には中小の業者も多く、必ずしもこれらの有毒ガスが適正処理されている訳ではありません。また、1井戸あたり掘削や水圧破砕に用いられる7.500〜25,000トンの廃水(参考文献4)の処理も課題になっています。地下に押し込んだり、池に溜めたりしていますが、添加薬剤の有毒性が問題になっています。この他に、井戸を掘った時に掘り出された岩石や泥に含まれた重金属(ヒ素、カドミウム、水銀など)による汚染も問題になっています。

エネルギーや資源開発は自然破壊を伴います。シェールガス開発においても、エネルギーを得る代償に、自然破壊や環境汚染、そして、作業員や近隣住民の健康被害が起こります。エネルギーはただでは手に入りません。誰かの命や健康や環境破壊を代償にしていることを知らずに、私たちはエネルギーや資源を使って快適な生活を送っているのです。ゼロリスクのエネルギーはありません。

アメリカ連邦政府もシェールガス開発が環境破壊を起こしていることは当然知っています。しかし、シェールガスの開発をするメリットとデメリット、開発しないことの国家的リスク、すなわちエネルギーセキュリティーの問題を考えた場合、シェールガスの開発をせざるを得ないという結論になったのです。後述するように、アメリカの天然ガス消費量は日本の6.6倍と莫大な量です。シェールガスの開発をしないと、アメリカはエネルギー危機に陥ってしまいます。また、アメリカの在来型天然ガスが衰退してしまった今、これを輸入でまかなうことは資源的にも、貿易収支的にも無理だからです。ただし、シェールガス開発はアメリカのほとんどの州にまたがり、かつ掘削井数が膨大な数になるのであまりにも環境負荷が高く、環境問題による制約を受ける可能性が高いです。

なお、残念ながら日本には採掘の対象となるようなシェールガスはないと考えられます。日本の地層は新しいからです。でも、国産の天然ガスは国内需要の約0.4%生産されています。日本にはコールベッドメタンはあります。ただし、採算にのるかどうかは別です。

シェールガスの採掘法についてはYouTubeに動画があります。英語の解説ですが動画なので水圧破砕(hydraulic fracturing または fracking)の手順が良くわかります。まず垂直に井戸を掘り、シェール層に達したら水平に井戸を掘ります。掘った井戸を保護するためにケーシングと呼ばれる鉄パイプを入れ、鉄パイプの外側にセメントを送り込みケーシングを固定します。次にたくさん穴の開いた特殊なパイプ(パイプガン)を入れて火薬を爆発させ、ケーシングを突き破ってシェールにひびを入れます。次に水圧をかけてシェール層のひびを拡散拡大します。最後に「プロパント」という砂のようなものを含む水を送り込み、プロパントを割れ目にはめ込んで割れ目が閉じないようにします。これを水平抗井の中で繰り返します。
http://www.youtube.com/watch?v=lB3FOJjpy7s&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=7ned5L04o8w&feature=related
マルセラス(Marcellus) シェールガス田(Chesapeak Energy社)の爆発火災事故
http://www.youtube.com/watch?v=NiLRJeE8h2w

アメリカのピークガスは1970年代

図−6は、アメリカの天然ガス生産量と井戸出口価格の推移です。


図−6 アメリカの天然ガス生産量の推移
出典:英文のウィキペディアから、濃いブルーが生産量、赤が価格
(縦軸の生産量の単位:×10億立方メートル、井戸出口価格:ドル/1000立方メートル)

図−6から、アメリカのピークガス(天然ガスの生産ピーク)が1970年代初頭にあったことが判ります(2001年という説がありますが、上図が正しいと思います)。アメリカのピークオイルも1970年です。アメリカはピークオイルとピークガスを同時に迎えました。そして、ピークオイルとピークガスが過ぎてから天然ガスの値上がりが始まりました。天然ガスの価格はもちろん景気の動向に左右されます。しかし、1975年頃までの天然ガス価格は恐ろしく安いです(1立方メートル約0.03ドル)。

1980年代前半はレーガン政権が金融引き締めを行いました。金融引き締めによってインフレからの脱出には成功したしましたが、莫大な貿易赤字が計上され、財政赤字も累積して「双子の赤字」状態になりました。

1985年9月の「プラザ合意」によりドル安に誘導されました。天然ガス価格は、生産量は変わらないのに2000年頃から上昇します。そして2008年のリーマンショックで暴落します。このように、化石燃料の価格は経済と密接に結びついています。この続きはいくつか図を紹介してから再開します。

上の図−6ではピークガス後でも、アメリカの天然ガス生産量が低下せずに横ばいになっています。何が起こっていたのでしょう? 次の図−7は、アメリカの天然ガス生産量の推移、実績と予測を示しています。この図でアメリカの天然ガスの中味が判ります。なお、下の図は「シェールガス革命」をもてはやす時によく引用される図です。


図−7 アメリカの天然ガス生産量の推移、実績と予測
出典:(参考文献3 ) Annual Energy Outlook 2011 (縦軸:兆立方フィート、20兆立方フィート=5663億立方メートル)
USエネルギー省エネルギー情報局 (DOE/EIA)のエネルギー見通し年鑑2011年版

図−7で「Lower 48」というのは、USA50州のうち、アラスカとハワイをのぞく48州のことです。アラスカ開拓民から見たら、アメリカ本土は地図の下の方にあるからLower 48なのだそうです。俺たちはアメリカ最後の開拓者だというアラスカの人の誇りに敬意を表して、本土の人間が自分たちはLower 48だと公式文書で使っているところがアメリカらしいところです。こういうシャレは日本のお役所では許されないですね。

図−6と図−7の二つの図で判るように、1970年にアメリカがピークガスを迎えて、陸上の在来型ガス田が衰退しはじめました。それに代わったのは1987年頃から生産の始まったメキシコ湾の海底ガス田でした。しかし、メキシコ湾の海底ガス田も2000年頃から衰退をはじめました。代わりに、1990年頃から非在来型のタイトサンドガスとコールベッドメタンが順調に増加しています。在来型ガス田の衰退の穴埋めをしたのは、実はタイトサンドガスとコールベッドメタンです。そして2004年頃からシェールガスが増えはじめました(しかし、上の図−7では、2009年から右側のシェールガスの生産予測がずいぶんと膨らんでいます。ホンマカイナと思います。図−4の天然ガス資源量のトライアングルからみたら、とんでもない数の井戸を掘らないといけません。現実にはあり得ないシナリオです)。下の図−8をご覧下さい。


図−8 アメリカの非在来型ガスの生産推移
(右縦軸は天然ガス生産全体に占める非在来型天然ガスの割合)
出典:(参考文献2)井原賢 「シェールガスのインパクト」

ずー7と図−8から判るように、「シェールガス革命」とはいうものの、非在来型ガスの主体はタイトサンドガスとコールベッドメタンなのです。ただし、赤の線が示すように、アメリカの天然ガス生産に占める非在来型ガスの割合は2008年に50%を超えました。換言すれば、「アメリカの在来型天然ガスは、1970年初頭にピークに達して衰退しはじめた。そのため、メキシコ湾の海底ガス田と非在来型ガス田の開発を進めた。タイトガスやコールベッドメタン、さらにはシェールガスの開発も進めた。しかし天然ガスの消費量に追いつかずに、カナダからの天然ガス輸入も増えた」ということになります。とはいえ、上の図−8からアメリカの非在来型ガスの生産は順調に増えていることが判ります。

次にシェールガスの中味を見てみましょう。下の図−9Aはアメリカのエリア別シェールガス生産量です。シェールガスの生産が始まったばかりの頃なので、生産量はうなぎ登りです。


図−9A アメリカのエリア別シェールガス生産量
(縦軸は生産量 百万立方フィート/日)
出典:同上

図−9Aから判るように、シェールガス生産の主役はテキサス州フォートワースのバーネット(Barnett)シェールガス田でした。図−7の2009年までのシェールガス生産増のほとんどは、Barnettによるものなのです。フォートワースBarnettはダラスのすぐ隣です。ダラスやフォートワースはテキサスの油田・ガス田地帯のど真ん中に位置しています。天然ガスが出てもおかしくないところです。ここで大当たりしたのです(Annual Energy Outlook 2011でもスウィート・スポット“sweet spot”という表現が出てきます)。

図−9Bは最近のエリア別生産量です。Barnett、Fayetteville、Arkoma Woodford、そしてHaynesvilleは2012年には頭打ちになっています。現在、シェールガスの生産増に寄与しているのはMarcellusですが、そのMarcellusも頭打ちになっています。シェールガス田は井戸1本当たりの生産量が在来型よりもはるかに少ないです。現在の生産量を維持するためには、新しい井戸を自転車操業のように掘り続けないといけません。さらに、図−7のようにさらに生産量を増やそうとすれば、アメリカ中にとんでもない数の井戸を掘らなければなりません。


図−9B 最近のアメリカのエリア別シェールガス生産量
(縦軸は生産量 ×10億立方フィート/日)
出典:USエネルギー省エネルギー情報局 (DOE/EIA)

なお、シェールガス田の掘削コストは、垂直坑井と水平坑井の違い、深さ、水平坑井の場合は長さなどによりますが、500万〜1000万ドル(4億〜8億円)(参考文献2)、また、日量生産量は、シェールガス田ごとに異なりますが、生産性が中位の在来型ガス田(10md)の1万分の1、生産性の高い在来型ガス田(1,000md)の100万分の1程度と見られます(数値の出所は図−4、md(ミリダルシー)は石油やガスの貯留層の岩石の浸透率の単位)。生産コストの安い、めぼしいシェールガス田は開発してしまったので、これからは小規模なシェールガス井を、ものすごいスピードでたくさん掘らないといけないでしょう。


1990年以降のアメリカの天然ガス価格推移

それでは、もう一度天然ガスの価格推移に戻ります。下の図は1990年以降のアメリカの天然ガス価格の推移、実績と予測を示しています。


図−10 アメリカの天然ガス価格の推移、実績と予測(縦軸は$/MMbtu)
出典:(参考文献3)Annual Energy Outlook 2011

2000年代に入って天然ガス価格は急上昇しました。この図と図-7、図-8と見比べてみると、この価格急上昇によりシェールガスの開発が急拡大したことが判ります。

2007年には「サブプライム問題」が顕在化しました。2008年9月に「リーマンショック」がありました。そして、2009年にかけて石油と同様に、天然ガス価格が8ドルから4ドルへと暴落しました。景気後退によるものです。

この図−10の天然ガス価格の実績と予測のグラフを眺めていると、「2000年代の天然ガスの暴騰は特殊な要因によるもので、天然ガス価格は今後ゆるやかに上昇する。それは“シェールガス革命”のおかげだ。」と主張していると受けとめることができます。

しかし、上の予測に見られる4$/MMBtu台の天然ガス価格は、シェールガス採掘業者にとっては受け入れがたい価格のようです。この予測通りの天然ガス価格で推移すると、シェールガス採掘業者はやっていけないかも知れません。次の図−11の在来型天然ガスとシェールガスの供給コストと可採埋蔵量の関係をご覧下さい。


図−11 在来型天然ガスとシェールガスの供給コストと可採埋蔵量の関係
(左縦軸:千立方フィート当たりの供給コストが何ドルか、横軸:可採埋蔵量の積算:10億立方フィート/日、右縦軸:熱量を原油1バレルに換算して何ドルか)
出典:(参考文献2)井原賢 「シェールガスのインパクト」

ここでは、天然ガスの供給コスト=(探鉱コスト+開発コスト+操業コスト)=(CAPEX+OPEX)です。グラフの下方にBase Productionとありますが、在来型天然ガスのことです。在来型の天然ガスの供給コストは1$/mcfととても安いのです。次の表−1の井戸出口価格 3.71$/mcfを見ると、図−11のMarcellus、Barnett Core、Haynesvilleのシェールガスは採算にのりますが、その他のシェールガス田が採算にのるのは先の話のようです。なお、このホームページを書いている時点(2012年1月)でのHenry Hub のスポット価格は2.295$/mcfで 3$/mcfを割っています。シェールガスが太刀打ちできない価格です(技術の進歩があっても下がりすぎなので、シェールガス開発への参入が増えて過当競争が起こっているのでしょう。気体の天然ガスは貯蔵ができませんので投げ売りされているのだと思います)。

シェールガス開発はこのように採算の問題も抱えていますが、雇用創出には大きく貢献しているようです。ペンシルベニア州での雇用効果は4万8千人とのことです(参考文献2)。テキサス州ではもっと多いでしょう。そのため、シェールガス開発には住民から土地を借りるリース料などへの補助金(アメリカでは地下資源は土地所有者のもの、日本では鉱業権と土地所有は別もの)、税制上の優遇など手厚い保護政策がとられています。アメリカ連邦政府がシェールガス開発に力を入れているのは、シェールガスに期待していると同時に雇用創出効果があるからです。どこの国でも政治家が欲しいのは選挙の時の票です。雇用創出は最重要の政策課題で票に直結します。採算割れでも簡単に撤退する訳にはいかないでしょう。

2009年の天然ガス生産量と消費量のデータはAnnual Energy Outlook 2011にあります。表−1にその抜粋を示します。

表−1 アメリカの天然ガス生産量と消費量 (2009) 
     単位:Tcf/year (1兆立方フィート/年)

出典:(参考文献3)Annual Energy Outlook 2011

この表が意味するところは、アメリカが天然ガス生産大国であり、かつ消費大国であり、そして天然ガス輸入大国でもあることです。Net輸入量になっているのは、カナダからパイプラインで輸入していますが、逆にカナダやメキシコに輸出もしていることによります。表−1の生産量、Net輸入量、消費量を立方メートルに換算すると、生産量5935億立方メートル、Net輸入量746億立方メートル、消費量6431億立方メートル(誤差があって生産+輸入の合計とあいません)になります。

アメリカの天然ガス消費量6431億立方メートルは、日本の天然ガス輸入量974億立方メートルの6.6倍と莫大な量です。そして、アメリカのNet天然ガス輸入量の年間746億立方メートル(2009)は、日本の天然ガス輸入量の年間974億立方メートル(2010)に匹敵します。ですから「シェールガス革命」などと囃したてられていますが、アメリカの天然ガスが余っている訳ではないのです。

次の図−12にアメリカのソース別Net天然ガス輸入量の実績と予測を示します。

図−12 アメリカのソース別 Netの天然ガス輸入量の実績と予測
単位:Tcf:1兆立方フィート
出典:(参考文献3)Annual Energy Outlook 2011

参考までに、北米の天然ガスの輸送網の様子を図−13に示します。確かに北米の天然ガスは日本に較べて安いのですが、北米全体で天然ガスが余るかどうかが重要です。

図−13 北米の天然ガスの輸送網の概略図
出典:(参考文献3)Annual Energy Outlook 2011

図−12によれば、「シェールガス革命」が本当だとしても、アメリカのNetの天然ガス輸入は2035年頃まで続きます。図−7を再掲します。

図−7 アメリカの天然ガス生産量の推移の実績と予測(再掲)
出典:(参考文献3 ) Annual Energy Outlook 2011 (縦軸:兆立方フィート、20兆立方フィート=5663億立方メートル)
USエネルギー省エネルギー情報局 (DOE/EIA)のエネルギー見通し年鑑2011年版

図−7と図−12の意味するところは次の通りです。

 @ NAFTA(北米自由貿易協定)があるので、今のところアメリカはカナダから大量の天然ガスを安く輸入できます。
   (カナダ側から見るとアメリカに天然ガスを安く買い叩かれています)
 A アメリカはNAFTAにもとづいてメキシコに天然ガスを安く輸出する予定です。
   (メキシコはかっては石油輸出国でした。天然ガスも輸入国になりました)
 B 南米から輸入しているLNGは2020年頃から減る予定です。
   (コスト次第では)
 C アメリカ国内の天然ガスの需要増はシェールガスの増産で間に合います。
   (最初のうちは生産量が急増しますが、落ち込みも激しいかもしれません)

図−7の論理構造はたぶん逆でしょう。すなわち、アメリカの天然ガス需要増(図−7のTotalの上昇線)が先にあり、Lower 48の在来型ガス田(陸上)とLower 48の在来型ガス田(海底)の衰退分をシェールガスでまかないたいという願望、足し算・引き算の筋書きと読み取ることができます。シェールガスだけで50%近くの天然ガス需要をまかなうのは常識的に無理です。コストと環境破壊を無視してアメリカ中にシェールガス井を掘りまくらないといけません。表ー1を見れば判るように、都市ガス、産業、発電用に大量の天然ガスが使われています。もし、図−7通りにシェールガスの生産が進まなければ、アメリカは深刻な天然ガス不足に陥ってしまいます。図−7は、「革命とか革命でない」とかの話ではなく、アメリカの在来型天然ガスは大きく衰退しており、否応なく非在来型にシフトしていることを明確に示しているのです。したがって、図−7はそんなにオメデタイ図ではないのです。

カナダのエネルギーの専門家たちがNAFTAの問題点を指摘しているのではっきり書いておきますが、NAFTAがあるために、アメリカはカナダのエネルギー資源を安く自由に手に入れることができます。カナダのエネルギーを「合法的に収奪できる」のです。「シェールガス革命」というメッセージでカナダの国民と世論を油断させて、カナダの天然ガスを一年でも二年でも安く買い叩ければ、アメリカはとても助かります。

アメリカでは、原子力や石炭火力より天然ガス火力のコストの方が安いのと(実際は図−10のように天然ガス価格の乱高下に悩まされている)、今後、石炭火力に排煙脱硫装置などの設置が義務づけられる可能性が高いので、天然ガス火力をさらに増やしたいのです。アメリカの天然ガス需要はこれからもっと増えます。したがって、残念ながらアメリカには天然ガス/シェールガスを日本に輸出する余力はありません。カナダは上記のようにアメリカに大量に天然ガスを輸出しなければなりませんから、日本に輸出する余力はあまりありません。仮にあったとしても輸出してくれるかどうかは別の話です。

「シェールガス革命」というメッセージは天然ガスの高騰を抑える効果があります。アメリカはそれによってものすごく得をしています。輸入天然ガスに頼っている日本やEUにとってもありがたいメッセージです。(しかし、日本の輸入天然ガスは石油価格にリンクしているので直接的なメリットはないです)。もしかすると天然ガスの高騰を抑えるために、DOE/EIAとIEAが意図的に流しているメッセージなのかも知れません。DOE/EIAとIEAはピークオイルを空とぼけていた前科があります。エネルギー予測では現実とメッセージが180度反対のことがあります。価格高騰を抑えるために楽観的見通しを流すからです。

準国産エネルギーである原子力を除くと、エネルギー自給率が4%しかない日本が、アメリカやカナダのエネルギーを当てにして「シェールガス革命」を囃したてるノーテンキさが私には理解できません。メディアや有識者・学識経験者に「シェールガス革命」を囃したてる人がけっこういるので、日本を安易に原子力放棄に走らせることが心配です。民主党政権好みの「有識者・学識経験者」には、民主党の先生方と同様に「エネルギー音痴」の方が多いです。ただし、「エネルギー音痴」は民主党の先生方だけではありません。メディアも「エネルギー音痴」の大合唱になっていて聞くに堪えません。


シェールガスの減退率は非常に大きい

歴史は「革命」が短いことを教えています。「シェールガス革命」が風船のように急速にしぼむ可能性も高いです。「シェールガス革命」の先行きはここ数年を見ていれば、それが本当かどうか見極めがつくでしょう。Barnett、Fayetteville、Arkoma Woodford、Haynesville、Marcellusなどのシェールガス田が衰退しないで、さらにそれに代わるシェールガス田が次々と登場するでしょうか? どうもそれは望み薄のようです。DOE/EIAはシェールガスの減退率が非常に大きいことを公表しています。次の図−14(Figure 54.)をご覧下さい。


図−14 アメリカの代表的なシェールガス田の生産量推移(平均)(縦軸単位:×100万立法フィート/年)
(1,000×100万立法フィート/年の横線が28,317,000立方メートル/年に相当します)
出典:(参考文献5)米国エネルギー省(DOE/EIA) Annual Energy Outlook 2012 (June 2012)、エネルギー見通し年鑑2012年版 (pp.59)

シェールガス井の生産量が多いのは1年目と2年目くらいで、3年もすると衰退してしまいます。右上中抜き図のEURとは、Estimated ultimate recovery (or Estimated ultimate reserves)のことで推定究極埋蔵量のことです。大きいガス田ほど早くEURが100%に近くなります。シェールガス井の寿命は短いです(詳しくは本ホームページ内の「アメリカのシェールガス生産は2012年に頭打ち?−シェールガスとタイトオイル(シェールオイル)の減退率は大きい−」をご覧下さい)。現在の生産量を維持するだけでも、次から次に井戸を堀まくなければいけません。ましてや、図−7のように生産量を増加させようとしたら、とんでもない数の井戸を掘らないといけません。シェールガスの埋蔵量は莫大ですから、図−7のようなシナリオを描いても数字上はウソにはなりません。でも、実現可能性は別の話です。もう一度図−9Bを再掲します。


図−9B 最近のアメリカのエリア別シェールガス生産量(再掲)
(縦軸は生産量 ×10億立方フィート/日)
出典:USエネルギー省エネルギー情報局 (DOE/EIA)

図−14と図−9Bを見ていると、メディアが吹聴している、「加速するシェールガス革命」や、「世界のエネルギー事情を一変させるシェールガス革命」が、ほんとうなのかどうか首を傾げてしまいます。あと数年動向を注視していれば、「シェールガス革命」がほんとうかどうかはっきりするでしょう。


このように不確定性の高い「シェールガス革命」が、日本のエネルギー危機を救ってくれるでしょうか? アメリカは大量に天然ガスを輸入しているのに、日本に天然ガスを輸出してくれるでしょうか? 「シェールガス革命」を囃したてることが、安易な原子力放棄につながらないでしょうか? よその国のエネルギーを当てにして、さっさと原子力を放棄して後悔することはないでしょうか? 日本の政治と世論を見ていると日本の将来にますます自信をなくしてしまう毎日です。希望をこそ語りたいのに。

それとともに実に残念なことは、日本は石油も天然ガスもほとんど産出しないことです。そして、エネルギーとして質の低い非在来型天然ガスのシェールガスや、非在来型石油のタールサンド/オイルサンドすら日本にはないのです(非在来型とはいえ石炭のガス化や液化よりはかなりましだと私は思っています)。日本は化石燃料の輸入に頼る以外に手がないのです。しかし、これから化石燃料は先細りになり高騰していきます。エネルギー自給率が4%しかない日本が生き残っていくためには、原子力を使いこなしていくしか選択肢がないと思います。そういった日本のエネルギー事情の冷厳な現実を、政治家も、メディアも、そして国民も、そろそろ理解しないといけません。

「シェールガス革命」を評価するためには、このように長々と文章を書き、たくさんの図表を引用しなければなりませんでした。科学や技術の論証は、以上のように七面倒くさいのです。「シェールガス革命」を囃したてるのはかっこよいし簡単です。IEAやDOE/EIAの受け売りをすれば良いだけですから。しかし、筋道を立てて反論するのはこのように大変です。しかも、生意気・不遜にもIEAやDOE/EIAなどのエネルギーの権威に異議を唱えるのですから。我ながら「お疲れ様でした」です。終わりまで読んで下さってありがとうございました。

(参考文献1)エネルギー白書2011
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/index.htm
(参考文献2)井原賢 「シェールガスのインパクト」 石油天然ガスレビュー 2010.5 Vol.44 No3 p15
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=201005_015a%2epdf&id=3574(PDFファイル)
(参考文献3)Annual Energy Outlook 2011(USエネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)のエネルギー見通し年鑑2011年版)
http://www.eia.gov/forecasts/aeo/
(参考文献4)"ARE WE ENTERING A GOLDEN AGE OF GAS?" Special Report, World Energy Outlook 2011(IEA 国際エネルギー機関)
http://www.anga.us/media/208268/2011%20iea%20golden%20age%20of%20gas%20report.pdf
(参考文献5)米国エネルギー省(DOE/EIA) Annual Energy Outlook 2012 (June 2012)、エネルギー見通し年鑑2012年版
http://www.eia.gov/forecasts/aeo/pdf/0383(2012).pdf


(2012/01/22追記)
この記事を読まれて、「こいつ何を言っているのだろう」とお思いになった方がおられるかも知れません。私が「シェールガス革命」に違和感を持ったのは、むしろ資源的に豊かなはずだと思っていたアメリカが、何で非在来型、しかも生産効率の悪いシェールガスに手を出しているのだろうということでした。図−7を見て愕然としたのは、アメリカの在来型ガス田(陸上と海底)の目を覆うばかりの衰退ぶりです。アメリカの在来型天然ガスの衰退は、私にとっては「シェールガス革命」のインパクトより大きかったです。“The end of cheap oil”(安い石油の終わり)という言葉がありますが、図−7は“The end of cheap gas” アメリカの安い天然ガスの終わりを示しています。たしかに、アメリカの在来型天然ガスはタダみたいに安かったのです。しかし、在来型天然ガスが衰退し、非在来型天然ガスに頼るようになったということです。それは「革命」ではないでしょう。

アメリカの天然ガス不足が、瞬間風速的にシェールガスでまかなわれるかも知れませんが、ここ10年間程度は、カナダからの天然ガスの輸入と、南米からのLNGの輸入でまかなわれるのだろうと思います。しかし、カナダの在来型ガス田もピークアウトしています(カナダのピークガスは2002年との説があります。アメリカと同様、1970年代初頭かも知れません。ご確認下さい)。カナダがいつまでもアメリカに天然ガスを送り続けることはできません。アメリカもカナダも、一人当たりのエネルギー消費量は日本の約2倍です。節約をすれば良いはずですが、人間は一度エネルギーをふんだんに使ってしまうと、生活習慣になって抜け出せないようです。

アメリカのピークオイルとピークガスは1970年代初頭でした。世界は2005年にピークオイルを迎え、2025頃にピークガスを迎えます(本ホームページ内のポール・チェフルカ「2050年までの世界のエネルギー見通し」のサマリーをご覧下さい)。私たちはいつまでもふんだんにエネルギーを使える訳ではないのです。

Annual Energy Outlook 2011の全文に目を通し(いろいろなケーススタディーをしています。天然ガスの価格がどうなるかによってシナリオがまったく変わってしまいます。価格が乱高下するのでDOE/EIAは頭が痛いのです。)、図−7をもう一度見てみると、アメリカは天然ガスだけには頼れないため、中長期的には石炭火力と原子力に移行していくことが判ります。石油と天然ガスという使いやすいエネルギーから先に使われ、なくなっていくからです。「シェールガス革命」というメッセージによって、アメリカはカナダの天然ガスを安く買うことができ、石炭火力と原子力への移行のための時間稼ぎができます。日本も本当はアメリカと同じく、この先10数年は天然ガスに依存するとしても、石炭火力と原子力に軸足を移していかなければならないです。今の日本の脱原発路線、その結果としての天然ガスへの過大な依存は、近い将来に、日本をさらなるエネギー危機へと追い込むことになります。

アメリカは世界最大の石油輸入国でもあります。アメリカのエネルギー事情は思っていたよりも深刻です。しかし、原子力を除くとエネルギー自給率が4%(原子力を入れると18%)しかない日本のエネルギー事情は、エネルギー自給率が67%(原子力を入れると77%)のアメリカとは比較にならないほど深刻です。そして、エネルギー自給率77%のアメリカが、(lower 48から)長期的に日本にエネルギーを輸出してくれるとは考えられません。政治家の先生方、メディアの皆さん、原発をやめて何で代替するのですか? 教えて下さい。まさか自然エネルギーとかシェールガスとかではないですよね。


(2012/02/10追記)
「米、34年ぶり原発建設を認可=スリーマイル島事故後初」
時事通信 2月10日(金)5時54分配信
 [ワシントン時事]米原子力規制委員会(NRC)は9日、東芝子会社が開発した原子炉を採用した米南部ジョージア州の原子炉建設計画を認可した。建設認可は1978年以来、約34年ぶり。79年のスリーマイル島原発事故以降、凍結してきた原発の新規建設の再開に踏み切った形だ。原発輸出の拡大を目指す日本勢にとり、大きな弾みとなる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120210-00000024-jij-int

(ominoコメント) シェールガスがたっぷりあるのに、どうしてアメリカは原子力発電所を新設するのでしょう? エネルギー安全保障上の観点から、エネルギーのベストミックスを目指しているからだと思います。石油の供給動向も不透明だし、シェールガスについても不確定な要素があるからです。アメリカやカナダが、日本にシェールガスを輸出してくれるかどうかは交渉してみないと判りません。また、太平洋岸に日本向けの天然ガス液化設備を作らないといけません。もし、日本がアメリカやカナダからシェールガスを輸入したいのであれば、友好関係が必要ですし、TPPやFTAを結ぶことが求められるでしょう。TPPやFTAの話になると、すぐ鉢巻きをしめて反対する人たちがいますが、政治家の皆さん、そしてメディアの皆さん、どうするのでしょう? どちらにつくのですか?

ピークオイルと「シェールガス革命」というメッセージは、石油も天然ガスも「非在来型」に頭を切り換えないといけない時代になったということでしょうか。しかし、それは原子力を使えず、エネルギー自給率が4%しかない日本にとって、とても厳しいメッセージです。「非在来型」はコストが高く、これからさらに貿易赤字が増えることになります。エネルギー資源のない国でありながら、これまで在来型石油と在来型天然ガスの権益確保をないがしろにしてきたツケを、これから払わなければいけないのでしょう。


(2012/02/18追記、02/26更新)
「シェールガス 開発権取得」
NHK Newsweb 2012年2月18日 5時39分
<引用>
 三菱商事は、カナダ西部にある世界最大規模のガス田の開発と生産を行う権利の40%を、カナダの資源会社から取得することで合意しました。開発する費用も負担することにしており、投資額は合わせておよそ60億カナダドル(日本円にしておよそ4700億円)に上ります。このガス田の埋蔵量はおよそ7.2億トンと見込まれており、日本で消費されている天然ガスの9年分の量に相当するということです。
<引用終わり>
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120218/k10013113341000.html

三菱商事のプレスリリースです。
<引用>
 CRP(註:カットバンク・リッジ・パートナーシップ、Cutbank Ridge Partnership)が保有する天然ガス資産の合計可採埋蔵量は、35兆立方フィート(約7.2億トン)以上と推定され、日本の天然ガス年間需要の約9年分に相当する膨大な量が見込まれており、今後5年間でCRPとして総事業費約60億カナダドル(約4,800億円)以上を投じ、累計約600本以上の生産井を掘削して開発を進めます。生産期間は50年以上であり、CRPとして今後10年の間に日量約30億立方フィート(約2,250万トン/年)の生産を目指します。
 現在、カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めておりますが、本資産の取得に伴いその検討を加速させ、将来的にはカナダの経済発展及び雇用創出に寄与し、日本をはじめとする東アジアのエネルギー安定確保を実現することを目指しております。
<引用終わり>
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2012/html/0000014164.html
(ominoコメント) カナダ政府が天然ガスの輸出に同意している訳ではないのでした。CRPが開発しようとしているのは、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州のMontoneyシェールのガス田です。アルバータ州との州境近くにドーソンクリークという町がありますが、その南にある鉱区です。

ブルームバーグの記事は興味深いです。
<引用>
 三菱商事はカナダの天然ガス生産会社エンカナのカットバンク・リッジ天然ガス資産の権益40%を14億5000万カナダ・ドル(約1160億円)で取得することで合意した。同天然ガス資産をめぐっては、中国の石油会社ペトロチャイナ(中国石油)が8カ月前に取得合意を撤回していた。天然ガス価格の下落を背景に、エンカナは掘削コストを調達するため資産売却と事業提携を進めている。同社は昨年、35億米ドルの資産売却を発表。エリック・マーシュ執行副社長は7日にコロラド州で開かれた会議で、合弁相手による年10億−20億米ドルの出資を見込んでいると述べた。
<引用終わり>
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZJL651A1I4M01.html

(ominoコメント) このところの天然ガス価格の下落で、天然ガス生産会社が厳しい経営状況にあるようです。ブルームバーグの記事の数字によれば、投資29億カナダドルに対して当面9000億立方フィートの生産を想定しているようです。29億カナダドル/9000億立方フィート=29億カナダドル/9億mcf=3.2カナダドル/mcf。カナダドルはUS$とほとんど同じですから、井戸出口原価で3.2$/mcfになります。これを精製し、西海岸の港まで送り、そこで液化してタンカーで日本に輸送していくらになるかという話です。日本経済新聞によると、ドーソンクリークから西海岸のキティマット(ブリティッシュコロンビア州)に建設する予定の液化基地まで、ロッキー山脈を越える約700kmのパイプラインを敷設するとのことです。
 一番上の図−1にあるように、日本のCIFで10$/MMBtu(ほぼ10$/mcf)以下になればシェールガスをカナダから輸入するメリットが出ます。しかし、ガス原価3.2$/mcfに、精製コスト+パイプライン輸送コスト+液化コスト+日本へのタンカー輸送コストが上乗せされますから、メディアが言っているように、現在日本が輸入しているLNG価格を下げるほどのインパクトがあるのかどうか不明です。それに、すぐに輸入がはじまる訳ではありません。早くて2020年頃です。先の長い話なのです。
 また、日本で消費されている天然ガスの9年分の権益を取得しただけですから、これからもどんどんシェールガス権益を買いつづけないと、「シェールガス革命」の恩恵には浴せません。利益を得るためにはリスクをとらないといけませんが、商社とはいえ民間企業がリスクをとることは大変なことだと思います。メディアは、自らは常に外野席にいて「シェールガス革命」を囃したて、「何で早くシェールガスを買わないのだ」と言わんばかりの記事を書きます。そのうえ、「シェールガスがあるから原発はいらない」と言わんばかりの論調もあります。高い知性を持ち、責任ある報道をしなければいけない方々のおやりになることではないでしょう。
 天然ガスは将来も必要です。カナダにとっては、アメリカに天然ガスを売るよりも日本や韓国に売る方が儲かります。ガス田への投資、パイプラインへの投資、液化基地への投資は巨額です。総額で1兆円近くになります。経済効果も大きく、雇用創出にもつながります。しかし、日本側としてはリスクも大きいです。日本の商社がリスクを冒して決断して取り組むのですから、このプロジェクトの成功を願っています。


(2012/02/23追記)
「米産LNG輸入交渉、首脳会談で合意目指す」
読売新聞2012年2月22日(水)3時6分配信
 エネルギー事情の深刻化を受け、政府が米本土産の液化天然ガス(LNG)の対日輸出許可を求め、米政府と交渉に入ったことが21日、明らかになった。 日本国内の原子力発電所の相次ぐ運転停止やイラン産原油の輸入削減を受け、エネルギー調達先を多様化する狙いがある。米国はこれまでLNGを戦略物資と位置づけ、輸出を規制する姿勢をとってきたが、同盟国・日本の強い要請もあり、今春予定する野田首相訪米の際、オバマ大統領とLNG輸出で合意する方向で両政府が調整している。関係筋によると、日本政府は、米ルイジアナ、メリーランド両州で進む民間のLNG生産プロジェクトからの輸出許可を求めている。米国では技術向上によって天然ガスの採掘量が急速に伸びており、両プロジェクトの年間輸出見込み量は計1700万トン。許可が下りれば2016年から輸出が始まる見通しで、アラスカ州を除く米本土で産出するLNGの初の対日輸出となる。プロジェクトには三菱商事などの商社、中部電力や東京ガスなどの電力・ガス大手が参入に関心を示しているという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120221-00001253-yom-pol

(ominoコメント)普天間基地移設問題で日米の信頼関係にヒビを入れ、原子力発電所の事故を起こして世界のエネルギー政策に影響を及ぼしてしまい、脱原発にまっしぐらに走ってしまい、今度はLNGが足りないから譲って下さいという話が通るのでしょうか? 何だかガキの言い分みたいです。アメリカは応じてくれるでしょうか。「米国はこれまでLNGを戦略物資と位置づけ、輸出を規制する姿勢をとってきた。。。」当然だと思います。こちらも、米国政府が輸出に同意するかが問題です。石油や天然ガスを手に入れるのは、築地の市場でマグロを競り落とすのとはワケが違います。米国政府もカナダ政府も、日本の商社などがリスクの高いシェールガス開発に投資してくれることはwelcomeでしょう。見返りにある程度の天然ガスの輸出は認めてくれるかも知れません。しかし、日本が輸入しているLNG価格を下げるほどの量が確保できるかどうかは判りません。資源やエネルギーに詳しい人ならば、常識的には非在来型のシェールガスやタールサンドに手を出すことにはためらいを感じるとおもいます。今後の動向を注視したいと思います。


(2012/03/22追記)
この記事を書いてからも、メディアによるシェールガスに関する報道が続いています。NHKテレビは「シェールガスブーム」ということで報道していました。とくに雇用創出に貢献しているとのことです。しかし、どうも投資先がなくてだぶついているマネーが、シェールガス開発に向かっているのではないかという気が私にはします。かっての住宅バブルと同じようにです。EXXONがシェールガスに対してクールになったという記事も見かけました。

天然ガスが石炭とともに今後十数年発電の主力であり、現在、天然ガスが黄金時代を迎えていることは間違いありません(その先が問題です)。天然ガス調達先を増やすことは、日本のエネルギーセキュリティーを向上させる上で非常に重要なので、カナダやアメリカから天然ガスを安く輸入することができるのなら、それにこしたことはありません。しかし、日本の輸入しているLNG価格を下げるほどの大量の天然ガスを、天然ガスの大量消費国であるカナダやアメリカから長期にわたって輸入するのは難しいと考えるのが常識です。

日本は、ロシアとの間では領土問題を抱え、さらに過去にサハリン天然ガスプロジェクトで痛い目に遭っています。しかし、日本のエネルギーセキュリティーを考えるならば、ロシアから可能ならばパイプラインで天然ガスを輸入すること考えるのが本筋でしょう。感情的な問題がありますが、日本の生き残りのために冷静になって、ロシアとwin-winの関係を築くべきです。政治家もメディアも目先の受けを狙ってばかりしていないで、将来の世代のために一つくらい良い仕事をして下さるようお願いします。


(2012/03/28追記)
「シェールガスに期待しすぎてはいけない−持続的と考えられていない米国のLNG輸出−」
テクノバの大場紀章さんが、日経BPの「そもそも」から考えるエネルギー論に、上記の標題の記事を書いています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120321/230119/


「石油『輸入』国サウジ(2012年3月21日)」、「石油ブームの米国(2012年3月28日)」
毎日新聞の潮田道夫さんが、「水説」に相次いで石油に関する二つの解説を書いています。

前者は、石油輸出国サウジが石油輸入国になる日が来るという大場紀章さんの、「そもそも」から考えるエネルギー論を受けたものです。サウジの石油輸出量が、国内消費が増えているために減少し、いずれは石油輸入国になるという話です。実際に世界の原油取引量は2007年から減っています。このことは、本ホームページの「食料、化石燃料、人口が連動」の「世界の原油取引量」のグラフで見ることができます。

後者の要旨を引用すると次の通りです。
<引用>
科学雑誌「ネイチャー」の1月26日号に掲載されたオックスフォード大学のデビッド・キング教授とワシントン大学のジェームズ・マレー教授の「石油は転換点を越えた」によればシェールオイルは所詮、あだ花に過ぎない。世界の既存油田の産油量は年々4・5〜6・7%も減少し続けており、シェールオイル(註:下のOminoコメント参照)やタールサンドなど非在来型石油の生産も焼け石に水だという。産油量はこれまで、石油価格の上昇とともに拡大してきたが、05年以降は年率15%ずつ価格が上がっているのに生産が増えていない。両教授は世界の石油産出量は05年に天井に達した、つまりピークオイルを迎えたと結論する。「現在はかろうじて横ばいの高原状態」である。
<引用終わり>
潮田さんの「水説」は、残念ながらアップロード後1ヶ月くらいで新しい解説に置きかえられて読めなくなってしまいます。URLは次の通りです。
http://mainichi.jp/select/opinion/ushioda/news/20120328ddm003070123000c.html

(Ominoコメント、2012/05/09書き換え)ここでいう「シェールオイル」とは、主として、米国北部モンタナ州やノースダコタ州にある"Bakken Shale"(図−9参照)から採れる中軽質油のことで正式には「タイトオイル」と呼ばれているものを指しています(「シェールオイル」はメディアがシェールガスから「連想ゲーム」ででっち上げた俗称です)。シェールガス採掘技術を応用して、シェールというよりはタイトサンドに閉じ込められた石油を採取しているようです(有機物を含む石油や天然ガスの元となる根源岩の熟成温度が、七面鳥を焼く温度(145℃)だと天然ガス、コーヒーを入れる温度(82℃)だと石油になります。だから石油と天然ガスが共存する場合が多いのです。本ホームページの「石油と天然ガスの起源」を参照してください。)初期生産量が大きいものでも日量4000バレル(636キロリットル)で「シェールガスと同様に、初期時の生産水準からその後急激に減退するものの、その後数十年に渡って低位で生産することが可能とされる(下の引用文献)」とのことです。ずいぶん頼りない話です。
(引用文献)市原路子「米国:シェールガスからタイトオイル開発へ −新技術がもたらす可能性−」石油・天然ガス資源情報 2010/12/20
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通常「オイルシェール」とは10%くらいまでの油分を含む頁岩を指します。見かけ上はまるっきり石で、油が滲み出てしたたる様な代物ではありません。「オイルシェール」から油分を取り出すには、オイルシェールを破砕して、天然ガスなどを熱源にして乾留しないといけません。オイルシェールから油分を回収するのであれば、石炭を乾留した方が余程ましです。とても採算に乗る代物ではありません。

タイトオイル(シェールオイル)やタールサンドなどの非在来型石油は、在来型の石油・天然ガス生産が衰退した後の「あだ花」に過ぎないとの指摘です。私もそう思います。
 民主党政権は、代替エネルギーが明確になっていないのに、全部の原子力発電所を止めてしまいました。原子力を自然エネルギーで代替できるとか、シェールガスを輸入したいとか、非現実な願望を前面に出して拙速に将来のエネルギー構成を決めようとしていますが、それでは日本をエネルギー危機に追い込んでしまいます。


「石油備蓄の放出、依然選択肢=ガスへの日本の関心考慮―米長官」 時事通信 2012年3月30日(金)11時53分配信
米エネルギー省のチュー長官は30日、都内で記者会見し、ガソリン価格高騰の抑制策として戦略石油備蓄(SPR)を放出することについて「選択肢の一つだが、まだ決定はされていない」と述べた。一方、日本が輸出を求めている「シェールガス」などの天然ガスについては、「自由貿易協定(FTA)締結国が優先される」としながらも、「日本は強い関心を表明しており、考慮する」と述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120330-00000069-jij-int

(ominoコメント)外交用語で「考慮する」というのは、その反対の意味ではないでしょうか。枝野経済産業大臣がチュー長官に会った際に「シェールガスを輸出してくれることに強く期待している」と表明したというNHKのネットニュース記事は、なぜかあっという間に消え去りました。


「シェールガスは本当に有望か」FINANCIAL TIMESより日経ビジネス2012年3月7日
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120302/229375/
(関連記事)
「米国で湧く『シェールガス革命』に待った−懸念される環境汚染−」Bloomberg Businessweekより日経ビジネス2011年3月3日
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110311/218939/
原文は"Fracking: The Gratest Shale Gas Rush" by Jim Efstahiou Jr. and Kim Chipman Bloomberg Businessweek 2011年3月3日

「米国から初のシェールガス輸入へ、三井物産と三菱商事が基本合意」産経ニュース2012年4月18日00.31配信
<以下引用>
三井物産と三菱商事は17日、米エネルギー大手のセンプラ・エナジー(カリフォルニア州)から液化天然ガス(LNG)を最大800万トン調達することで基本合意したと発表した。年内の正式合意を目指す。「シェールガス」と呼ばれる新型天然ガスを原料にLNGを生産し早ければ2016年後半から日本に輸入する方向で協議を進める。米国はFTA(自由貿易協定)締結国向けに制限していたLNG輸出の規制を緩和しており、センプラは非締結国の日本向け輸出を米政府に申請している。 実現すれば、米国からシェールガスを原料とするLNGを輸入する初のケースとなる。
<引用終わり>
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120418/biz12041800320000-n1.htm

(ominoコメント)やはり実現すればの話です。2016年頃にはシェールガスが「あだ花」か「あだ花」でないか判ると思います。今後、米国での天然ガスの需要増、価格上昇が見込まれるので、仮に天然ガスを日本に持ち出せなくても、日本の商社は米国内向けに天然ガスを販売すれば良いのであって、損をすることはないでしょう。今、アメリカの天然ガス権益は底値のようですから、三菱商事や三井物産にとっては良い買い物だったのかもしれません。

「槍田松瑩三井物産取締役会長の指摘」 資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本問題委員会(第20回会合、2012年4月26日)
<以下引用>
「シェールガスに頼ったガスシフトは必ずしも簡単ではない。地政学的リスク等によりガス価格は変動するものであり、安全保障の観点からもガスに大きく依存する状況は危険。」
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/20th/20-1-1.pdf

(ominoコメント)資源エネルギー調査会基本問題委員会でもシェールガスが取り上げられています。過大な期待を持っている人が何人かいるようです。エコノミストの様です。エコノミストの予想は当たった試しがないような。私も「ロシアからのパイプラインを作る」ことには賛成ですが、2030年までに実現するでしょうか?
 資源エネルギー調査会基本問題委員会では、阿南久(全国消費者団体連絡会事務局長)、飯田哲也(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所長)、植田和弘(京都大学大学院経済研究科教授)、枝廣淳子(ジャパン・フォー・サステナビリティー代表、幸せ経済社会研究所所長)、大島堅一(立命館大学国際関係学部教授)、高橋洋(富士通総研主任研究員)、辰巳菊子(公益社団法人日本消費者生活アドバイザー・コンサルタント協会理事)、伴英幸(認定NPO法人原子力資料情報室共同代表)の8委員が連名で、「エネルギーミックスの選択肢」について、そもそもこのような枠組みは適切でない、エネルギー需給の観点から社会経済のあり方を構造改革することが問われているとの意見書を出しています。
 社会経済のあり方の選択肢としては、例えば、@供給者主導か消費者選択か、A計画経済か市場メカニズム活用か、B経済産業優先か市民の安心安全優先か、C大規模集中型か地域分散型か、D短期的経済合理性か長期的持続可能性か、といった点が問われるべきです、との主張です。要するに、二項対立、すなわち「原発をなくして自然エネルギーで代替する方向でのエネルギー政策を基本問題委員会で決めろ」ということなのでしょうね。
 太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電などの自然エネルギー利用設備も、石油、天然ガス、石炭などの化石燃料がないと作ることができません。原子力も同じことです。自然エネルギーだから持続可能ではないし、原子力に経済合理性がないとも言い切れません。残念ながら衰退しつつある日本が、限られた経済力でどうやってエネルギーを手に入れて生き残っていくのか、それが今問われているのだと考えています。もちろん、人類全体のことも。。。

「<日米首脳会談>首相、LNG輸出拡大を要請」 毎日新聞2012年5月1日(火)11時58分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120501-00000032-mai-pol
<以下引用>
 LNG輸出には米政府の認可が必要だが、オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。
<引用終わり>
(ominoコメント)日本のメディアはと「有識者」はずいぶんと米国のシェールガスに期待を振りまいてきました。結局はこんなところでしょう。

「天然ガス購入計画推進の見合わせを=米政府が日本などに要請」
ウォール・ストリートジャーナル日本版2012年5月31日(木)8時37分
http://jp.wsj.com/US/node_451985
<以下引用>
関係者によれば、野田佳彦首相は4月30日にワシントンで行われたオバマ米大統領との首脳会談で、天然ガス輸出問題を提起したが、米側は政治的に微妙な問題であることなどを理由に、状況を見守るよう伝えた。米政府当局者は、「日本は非常に難しい状況にあり、同情する」としながらも、「この問題についてもっと多面的に考察する必要があるだろう」と述べた。
<引用終わり>(ブラウザーのもとに戻る←を押してください)

「米、ガス輸出許可を見合わせ」 共同通信2012年5月31日(木)13時32分
<以下引用>
【ワシントン共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は30日、米国産天然ガスの輸出を求める日本政府に対し、オバマ米政権が輸出の許可を当面見合わせる方針を伝えていたと報じた。米議会や米産業界から、輸出を認めることで天然ガスの価格上昇を招く恐れがあるとの声が寄せられていることが背景にあるとみられる。
<引用終わり>

「シェールガスは魔法の杖か 天然ガスシフト、冷静に戦略を」
日経産業新聞編集委員 松尾博文
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD3003Q_R30C12A5000000/

IEA 「天然ガスの黄金時代のための黄金律」 Executive Summaryの全訳
国際エネルギー機関(IEA)2012年5月29日
−天然ガスの黄金時代は、環境問題等への真摯な対応なくしては訪れない−

「未来の資源 膨らむ夢」
朝日新聞デジタル 2012年07月07日
http://mytown.asahi.com/akita/news.php?k_id=05000001207070005

<以下引用>
「未来のエネルギー資源」として世界的に開発競争が始まっている「シェールオイル」が由利本荘市西沢の鮎川油ガス田で確認され、試験生産が始まる見通しになった。再生可能エネルギーの開発など「エネルギー供給県」として売り込む県内関係者からは試験生産の成功や地元雇用に期待する声があがった。
シェールオイルは地下深くにある泥岩層に含まれる石油を指す。強い水圧で層に亀裂を入れる技術手法が開発されたことで、採掘が可能になった。
鮎川油ガス田は由利本荘市役所から南へ約16キロの山あいにある。構想では、良質なシェールオイルを見つけた石油・天然ガス開発会社「石油資源開発」(東京)が来年にも試験生産を始めるという。
<引用終わり>
(Ominoコメント)シェールガスやシェールオイルで夢を膨らませるのは結構ですが、夢が萎んだ時のことも考えて下さい。「シェールオイル」は、「タイトオイル」と表現した方が実状に近いと思います。

(2012/08/23追記)
"ConocoPhillips Ships Third LNG Shipment From Alaska to Japan" BY GCAPTAIN STAFF ON AUGUST 21. 2012
「コノコフィリップスはアラスカから日本向けに3回目のLNGを出荷」
http://gcaptain.com/conocophillips-ships-third-lng-cargo-alaska-japan/
アメリカは例外的にアラスカ州から日本への天然ガス輸出を認めています。lower 48(米本土)の天然ガスが豊かだった1970年以前からアラスカ州の経済を支えるために、天然ガスの輸出を認めていたのです。アラスカには日本向けの天然ガス液化プラントがあります。天然ガス液化プラントも、LNGタンカーも、LNGコンバインドサイクル発電も日本が開発したお家芸技術です。日本は、消費地からあまりにも遠い天然ガス田の天然ガスや、余って燃やして捨てている油田の随伴天然ガスを何とか利用できないかと考えました。天然ガスを液化天然ガス(LNG)にして、何とか利用しようと考えたのは、日本のガス会社と、今、原発事故で袋だたきにあっている日本の電力会社と、プラントメーカーや造船メーカーのエンジニアたちでした。エネルギー自給率が4%しかない日本で、相対的に安い電力を供給できたのは、技術者の骨身を削る努力と、民間企業の努力と、そしてMITI/METIの優れた官僚たちの先見性などによるものです。日本のアラスカからの天然ガスの輸入量は、日本のLNG輸入量の0.8%(出典:エネルギー白書2011 pp.97)でしかありません。でもありがたいことです。
仮にシェールガスが輸入できるとしても、4〜5年先のことです。アメリカにアラスカからのLNGの輸出を増やしてもらえないのでしょうか。アメリカには、アラスカからカナダ西部を通って米本土へ天然ガスパイプラインを建設する計画がありましたがシェールガスブームで中断しています。代わりにLNGにしてアジア向けに輸出する計画が提案されていますが、実現は未知数です。

「米国内で高まる天然ガス輸出を求める声、反対する声 −輸出の可否を判断する材料とは?」
杉野綾子 日経ビジネスONLINE 2012年7月6日(金)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120705/234155/
(DOE/EIAがシェールガスの可採埋蔵量を下方修正)

「シェールガスに暗雲、米国干ばつの影響」
ナショナルジオグラフィック ニュース National Giographic News, August 8, 2012
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2012080801&expand#title
(アメリカ、ペンシルバニア州ブラッドフォード郡で、埋蔵天然ガスの水圧破砕(フラッキング)作業を行う採掘業者。干ばつの影響で河川の水量や地下水位が低下し、同州の多くの地域ではフラッキングの水使用が停止されている。)
(最終更新2013年1月9日)
この記事に関連する本ホームページ内の記事へのリンク
「アメリカが石油輸出国になる? World Energy Outlook 2012」
「アメリカのシェールガス生産は2012年に頭打ち?−シェールガスとタイトオイル(シェールオイル)の減退率は大きい−」
「シェールガスブームが失速?(1)」−シェールガス頼みの危ない日本のエネルギー政策−
「シェールガスブームが失速?(2)」−住民の健康と環境への深刻な影響−
シェールガスブームが失速?(3)−IEAもDOE/EIAも埋蔵量を下方修正−
IEA 「天然ガスの黄金時代のための黄金律」 Executive Summaryの全訳
ローマクラブ成長の限界(1972年)、40年後の検証

2050年までのエネルギー見通し【ピークオイル】のHOMEへ

判りやすいけれど間違っている。正しいけれど判りにくい。エネルギー問題がその典型です。

 

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コメント
 
01. taked4700 2013年1月19日 15:46:06 : 9XFNe/BiX575U : SSAoXcUB66
この記事の著者は原発を即時廃炉にすることに反対している。しかし、日本の場合、人為的な原因による事故や地震による事故が起こる可能性はかなり高い。もともそ、ある程度以上の大きさの地震が原発直下で起こったことがなく、ほぼ確実にマグニチュード5強程度の地震が原発直下の30キロより浅いところで起これば相当な被害が出て、結果的に福島第一原発事故を大きく上回る放射能漏れ災害に至る。

ともかく、脱原発は危険だとか無責任とかいう人たちは、次の事故が起こる可能性をあまりに軽く見ていると思う。

なお、シェールガス開発に使う水平掘りやクラックを入れる技術は全て高温岩体発電で使う技術であり、アメリカは高温岩体発電へ急速にシフトすることを狙っている。更に、アメリカの現状は中西部の農業地域を高温岩体発電による電力確保で一気に工場地帯へ変身させることも狙っているはず。

このまま行くと、日本は工業も農業さえもできない貧困国に陥れられる可能性が高い。


02. 2013年1月24日 00:52:30 : xEBOc6ttRg

日本が世界を率いる「水素社会」

3・11がその到来を後押しする理由

2013年1月24日(木)  山根 小雪

 日本のエネルギーの未来は、ともすると真っ暗なように思える。原子力発電所の停止による火力発電用燃料の輸入増は、2012年度だけで3兆円に達すると言われ、貿易収支に打撃を与える。新興国などとの資源獲得競争は熾烈を極め、燃料調達は簡単ではない。

 だが、暗いシナリオがすべてではない。日経ビジネス1月21日号の特集「エネルギー国富論」では、エネルギーを取り巻く環境が熾烈さを増していくからこそ、日本企業が培ってきた超省エネ技術が勝機を生むとお伝えした。

 実は燃料調達の分野でも、新しい動きが水面下で進んでいる。3・11の前は“絵空事”にすら聞こえた取り組みが、じわりと現実味を帯びてきたのだ。

「液化水素」という未知の燃料

 「液化天然ガス(LNG)以外の選択肢が日本には必要です」。川崎重工業新事業企画部の横山稔副部長は言う。新しい選択肢とは「液化水素」だ。川崎重工は豪州で産出する低品位石炭「褐炭」から液化水素を作り、タンカーで日本へ運ぶプロジェクトを進めている。

 豪州には膨大な量の褐炭が存在する。水分の含有量が多く、掘り出して積み上げておくと自然発火してしまうため、輸出には向かない。日本が石炭火力発電所や製鉄所で使用しているのは、「瀝青炭」と呼ぶ高品位な石炭だ。

 豪州にはラトロフバレーという褐炭の産地がある。褐炭の産地としては世界最大規模で、ここに眠る石炭のエネルギー量は日本の一次エネルギーの40年分に相当するという膨大さだ。現在は、採掘地に隣接する石炭火力発電所で燃料として使っている。発火を防ぐために、採掘してから18時間以内にコンベヤーで発電所に運び込んで燃やしている。

 褐炭を発電に使うと、水分を多く含んだ石炭を燃やすために、発電効率がすこぶる悪くなるのが問題だ。ラトロフバレーの場合、約28%にとどまる。日本の石炭火力発電所の平均が40%を超えていることを勘案すれば、その低さがわかるだろう。もちろん、CO2(二酸化炭素)排出量も非常に多い。

 豪州は1人当たりのCO2排出量が世界最大の国だ。豪州政府には、CO2排出量を減らしたいという思いがある。そこで、液化水素を志向する川崎重工と思惑が一致。褐炭から液化水素を生成し、日本へ運ぶプロジェクトが動き出した。

 同社はラトロフバレーで褐炭をガス化する。その行程で発生する水素とCO2のうち、CO2は「CCS(CO2の回収・貯留)」で海底の空洞へ押し込む。この空洞は、かつて天然ガスを採掘し枯渇した跡地だ。既に豪州政府は2012年2月に約80億円を投じて、CCSの検証も開始している。世界各国で検討が進むCCSだが、ラトロフバレー近海は数ある候補地の中でも最も実用化しやすい適地といわれている。

 一方の水素は、超低温に冷やして液化し、タンカーで日本へ運ぶ。扱い方はLNGとほぼ同じ。天然ガスをセ氏-162℃で冷やして液化するのに対して、水素はさらに低い-253℃で液化する。いったん液化してしまえば、1日にタンクから漏れて減る量はわずか0.09%。タンクに入れて長期保管することも、タンカーで輸送することも難しくない。

 川崎重工業は、2013年中に技術開発にめどを付けて、パイロット事業に着手する計画。まずは2017年までに少量の褐炭から液化水素を作り、日本へ運ぶ。そして2025年に、より大型化した実証プラントでの検証を始め、2030年の商用化を目指すという。

 日本へ運んできた液化水素は、当面は火力発電所の燃料として使う考えだ。水素を直接、燃料として利用する発電機の開発も同時並行で進めている。将来は、水素を使う燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池「エネファーム」などへの供給を視野に入れる。同社は、ロケット燃料に使う液化水素用のタンクやローリーなどを20年来、手がけてきた実績もあり、水素インフラへは全方位で取り組む構えだ。

3・11が引き寄せる水素社会

 水素社会の到来が指摘されて久しいが、それでも水素は未来の技術であり、当面の選択肢には成り得ないという印象が大勢だろう。

 ところが、原発の停止は水素社会へ向けた時間軸を短縮し始めている。川崎重工には3・11以降、行政や政治家からの問い合わせが殺到。「液化水素の商用化をもっと早く実現できないか」という要望が大半だ。

 原発停止後の日本の天然ガス調達量は膨大だ。圧倒的な売り手市場であるがゆえに、価格も高止まりしている。新型天然ガス「シェールガス」を日本へ持ってくるといった調達先の多様化はもちろん必要だが、燃料の種類自体を増やすことも、日本の交渉力を強める効果がある。

 水素の供給体制が整えば、水素を使うアプリケーションの普及スピードも飛躍的に早くなるはずだ。産業の裾野が広く、日本企業が優位な製品が多いのも見逃せないポイントだ。その代表格が、エネファームとFCVだろう。

 東京ガスとパナソニックは1月17日、新型のエネファームを発表。投入したガスに含まれるエネルギーのうち、電力や熱として利用できた割合を示す総合効率は95.0%と、世界最高水準に到達した。燃料電池本体の技術進化にくわえ、部品点数を2割ほど減らすなどの工夫を重ね、現行品に比べて約75万円の値下げを実現。初めて200万円を下回る価格を設定した。新型機は年産1万5000台を目指すとしている。

 パナソニックは、ドイツと英国に研究開発拠点を設立済み。ドイツのボイラーメーカーとも提携しており、海外進出に向けた準備を着々と重ねている。エネファームは、パナソニックらのほか、東芝や京セラなども開発を進める。家庭への燃料電池導入量で、日本は世界のトップを独走している状況だ。

 FCVも日本の自動車メーカーが、並み居る競合に対して優位性がある。特に、「トヨタは世界トップクラスの完成度にある」(業界関係者)。

 現在、自治体などがリースしているトヨタのFCVのコストは1億円を超えると言われる。それが、2015年にも発売となる量産型では1000万を切る水準にまで下がりそうだ。劇的なコスト削減を実現できるまで、技術は進化している。

 トヨタらがFCV開発に本気なのも、3・11は無関係ではない。原発が生む夜間電力を使うのが前提だった電気自動車(EV)の戦略に、陰りが出てきた。余っている電力を有効活用する手段だったはずが、EVのために化石燃料を燃やして電力を供給するとなると、環境性能は当初想定より低下してしまう。

 一時は次世代エコカーの本命はEVかと思われた。ところが、「原発事故以降はFCVの普及が当初想定よりも早まるのではないかという声も聞こえ始めた」(業界関係者)

 さらにトヨタは、水素インフラでも新しい取り組みを始めている。「HyGrid(ハイグリッド)構想」と言われ、電力を水素に変えて貯める方法を指す。

 ハイグリッド構想は、トヨタと川崎重工が水面下で検討してきた。国は2015年に向けて、4大都市圏で合計100カ所の水素ステーションを整備する方針を固めている。だが、それだけでは、FCVをプリウスのようなヒット車に育てるのは不十分。都市部に限らず、全国各地に水素インフラが必要だ。

 そこで、2012年秋からアイシン精機の子会社でトヨタも出資するシンクタンク、テクノバ(東京都千代田区)が中心となってハイグリッドの事業化評価を始めた。

 グリッドは電力網という意味。今後、風力や太陽光といった再生可能エネルギーが普及すると、発電量の変動が電力網へ影響を及ぼすようになる。一時的に増える電力を電池に貯めるアイデアが検討されているが、電池はコストが高い。電気事業連合会は、電池にまつわる追加費用は6兆円と弾く。そこで、電気を電池ではなく「水素」で貯めるハイグリッドの出番だ。

 余った電力を使い、水を電気分解して水素を作り、その水素を液化してタンクに貯める。「電力を水素にして貯めればコストは劇的に安くなる。例えば、NAS電池と比べて10分の1で済みそうだ」(テクノバの丸田昭輝氏)。風力発電所に水素タンクを併設すれば、水素ステーションに早変わり。しかも、タンクに貯めた水素はローリーで運ぶことも容易だ。

 トヨタは、ハイグリッド構想のほか、宮城県宮古市でバイオマスから水素を作るための実証にも加わる(関連記事「トヨタ燃料電池車が拓く復興」)。トヨタ技術統括部の三谷和久主幹は「水素インフラの構築は当社のFCVの普及を後押しするのはもちろん、日本のエネルギー状勢を好転させる効果も大きい」と指摘する。

 3・11に端を発するエネルギー危機は、日本企業の背中を新しいステップへと押し上げている。その1つが水素であることは間違いないだろう。水素をめぐる技術開発は急ピッチで進んでおり、企業がリスクを取って実証を始める動きも増えてきた。数十年単位の時間を要する巨大システムの構築に、怯むこと無く挑戦することが、日本に新しい未来を導いてくれる気がしてならない。


山根 小雪(やまね・さゆき)

日経ビジネス記者。


記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。


03. 2013年1月24日 00:53:36 : xEBOc6ttRg
洋上風力の次のエースは「波」や「潮流」

20年後の主役、海洋エネルギーで先行するスコットランド

2013年1月24日(木)  山家 公雄

 今回から波力・潮流などの海洋エネルギーを取り上げる。研究開発の途上であるが、膨大なポテンシャルに「次の再エネ」の期待が高まっている。まず英国・スコットランドの政策に焦点を当て、圧倒的に先行している欧州の動向を見る。

大きなポテンシャルが魅力、研究開発ブームに

 海洋エネルギー(オーシャン・エナジー)は、再生可能エネルギーの残された最後ともいえるフロンティアである。海洋に分類されるエネルギーは、波力(wave)、潮流・海流(tidal current)そして海洋温度差発電(ocean thermal energy conversion)を指すことが多い。これに洋上風力が加わる場合もある。

 海上や海中、海底にエネルギー変換装置やタービン・発電設備を設置するので、陸上とは全く異なる環境下での稼働を強いられる。稼働する部分を含め直に海水と接することから、環境への影響、設備の耐用性、大型化の限界、設置やインフラ整備への制約、設置後のメンテナンスの難しさがある。陸上よりもコストが高くなり、開発は進んでこなかった。

 しかし、ネクスト・リニューアブルとしての期待は大きく、研究開発ブームの様相をも呈している。海洋エネルギーの魅力は、その膨大なポテンシャルにある。地球表面の7割は海洋であり、人が住んでいないことから立地面での制約も陸上に比べて小さい。まとまった海域を発電所として確保できる可能性がある。概して洋上風力よりも陸に近いところで操業できる。欧州を主とする最近の活況は、「20年前の風力発電開発をほうふつとさせる」あるいは「航空機産業の黎明期であるライト兄弟の実証実験に匹敵する」と例えられる。


三井造船が開発中の波力発電システム

川崎重工業は潮流を利用した発電装置の開発を進めている
将来は風力と並ぶ巨大市場に

 欧州連合(EU)海洋エネルギー協会(EU-OEA:Ocean Energy Association)の推定によると、欧州での導入量は、出力ベースでは2020年で3.6GW(360万kW)であるが、以降急速に増加し(テイクオフし)、2050年には188GW(1億8800万kW)まで達成可能としている(資料1)。

資料1.EUの海洋エネルギ−設置容量見通し(累計)

(出所)EU-OEA. European Ocean Energy Roadmap 2010-2050
 この開発を前提に発電量をみてみると、2020年で9TWh(1テラは1兆)、2050年で645TWhとなり、それぞれ電力消費量全体の0.3%および15%となる。EUの電力消費総量は2007年では約3000TWhを記録している。また、海洋エネルギーは2050年水準では1億3600万トンのCO2削減効果と47万人の雇用創出効果がある、と試算している。

 このように、長期的に海洋エネルギーは大きな位置を占めるが、その根拠として、風力発電成長カーブとのアナロジーを挙げる。約20年前に本格的に始まった陸上風力は、EU再エネ普及の先陣を切って急拡大した。陸上の適地が少なくなると洋上風力に焦点が当たりこれも陸上と同様の成長カーブを描きつつある。海上は陸上と同じ軌跡を描くという考え方である(資料2)。

資料2.陸上風力、洋上浮力、波力発電の設置予想

(出所)EU-OEA. European Ocean Energy Roadmap 2010-2050
 EUは地域をあげて再エネ普及を推進している。2020年にはエネルギーの2割を再エネとする目標を持つが、電力に絞れば35%のシェアとなる。2020年以降も新たな目標を定めるはずで、洋上風力後のエースを育てていく必要がある。その候補が膨大なポテンシャルを持つ海洋である。陸上風力と沖合油田開発で培ったノウハウで洋上風力の技術を軌道に乗せ、洋上の技術とインフラ整備を基に海洋に打って出る。こうした連続性は関係者や投資家に対しても説得力を持つ。

 各国は相次いで開発計画を発表しており、既に域内に16カ所もの実証試験フィールドが存在している。大手の電力会社やメーカーを主に、有力なベンチャーへの投資が相次いでいる。特に、事業環境に恵まれ、実証実験サイトや補助制度が充実しているスコットランドへの進出が目立っている。

 資料3は、主要国の海洋エネルギー設置状況及び目標値である。最も野心的な目標を掲げているのは英国で、2020年に200万kWとしている。以下、フランス80万kW、アイルランドとデンマークが50万kW、ポルトガルが30万kWと続く。スペインは2010年目標で10万kWである。

資料3.海洋エネルギ−現状及び将来目標(欧州諸国)

(資料)EU-OEA. European Ocean Energy Roadmap 2010-2050
(出所) IEA:Annual Report 2010,Implementing Agreement on Ocean Energy Systems
経済発展の柱に据える

 英国は、陸上風力の開発余地があるうちから洋上風力に力を入れてきた。出遅れた陸上風力は、開発を進めても関連産業の投資呼び込みが難しく雇用効果に限界があるが、これから本格化する洋上風力は、先行すれば産業と雇用を呼び込めると考えた。領海は国王(クラウン・エステート)の所有物であり、管理やリースは他国に比べてやりやすい。洋上風力を開発するために、沿岸から遠くの沖合へとこれまで3回にわたり海域利用権を設定・募集しており(ラウンド・リース)、完全に主導権を握っている。

 洋上風力に関係する技術、ノウハウ、インフラは、潮流や波力発電を開発するうえでも役に立つ。潮流や波力でも欧州をリードするのは英国、とくにスコットランドである。スコットランドは、自治政府が旗振り役になり、地域の振興を海洋エネルギーに賭けていると言えるほどの力の入れようである。

 北側沿岸とその北方のオークニー諸島との間のペントランド海峡は、世界有数の潮流が横たわり、オークニー諸島海域は波のエネルギーも大きい。欧州でのポテンシャル割合を見ると、スコットランドは潮力で25%、波力で10%を占めている。

 スコットランド自治政府は、海洋エネルギーを含む再生可能エネルギーの開発を進め、2020年には電力の100%を賄うことを目標としている。2011年度には35%と、目標の31%を上回る実績を記録した。2020年以降は輸出を増やしていくことになる。

 海洋エネルギーにはポテンシャルがあるが、商業化に時間がかかることから、市場資金はまだつきにくい。そのために多くの投資誘因策を打ち出している。具体的には、補助金や専門ファンド、政策金融で支援するほか、実績を作った事業に対する賞金などの優遇策を準備した。

 その結果、世界の多くのビッグネームが商業化で先行する洋上風力を主に、巨額の技術開発投資を実施・決定している。前述のように洋上風力の商業化は、海洋エネルギー開発の基盤となるのである。

世界の巨人が活発に資本投下

 スコットランドには、1年半ほどの間に以下のような大企業が進出している。スペインのGamesaは、2011年にR&D施設をグラスゴーの近くに、20112年には洋上風力発電の製造工場をエジンバラに建設し、800人の雇用を生んでいる。

 三菱重工業は、洋上風力の革新技術の開発センター建設するため、1億ポンド(約140億円)をエジンバラに投下する。地元の期待は大きく、この技術を「ゲーム・チェンジャー」と称している。日本企業では、以下に紹介するEMECへの進出が決まっている川崎重工業への期待も大きい。

 サムソン重工業は、7000kWの風車を開発する拠点をやはり1億ドルかけて建設する。同社初の欧州製造拠点として彼の地を選んだ。ABBは、風車や波力・潮力関連のシステム開発拠点を置く。

 フランスのアルストムは、波力発電の適地として魅力を感じ進出した。スコティッシュ・アンド・サザン・エナジーのグループ会社(SSE Renewables)とJVを組み、特に潮流、波力の開発拠点とする。

世界最大の海洋実証サイトEMECを整備

 スコットランド自治政府のやる気と高いポテンシャルを評価した英政府やEUなどの出資を受け、欧州最大の規模の実証サイトEMEC(European Marine Energy Centre、欧州海洋エネルギーセンター)が2003年に整備された。

 波力・潮力発電は、海洋で実際に実験しないと性能や環境影響の評価はできない。しかし、海洋では、漁業や運送業の仕事場であり、多様な生物が生息している。また、国や地方を含む多くの公的機関が関係する。

 私企業が実験の都度、関係者と調整するだけでも長い期間と多大な労力を要する。さらに、実験が終わった後は、設備を撤去しなければならない。そこで、国などの主導で関係者の調整などを一括して行い、公的な実験場を整備するとともに、実験後は商業化も可能となるエリアを選定し、その場所を官民の研究機関にリースする場所が重要になる。

 EMECは、変電所や観測所などの実海域試験に必要なインフラを備えている。設立後は民間が運営している。利用者は順調に増えてきており、現在は利用者からのリース収入によって経営が成り立っているとされる。海底ケーブルも敷設し、実験の成果が認められれば電力会社との接続も円滑に行われる。企業にとっては安心して実験できるので、海外を含めて多くの企業を引き付ける。

 現在、潮流と波力でそれぞれ2カ所に「実験海域」があり、その周囲に事業用にリースする海域をゾーニングしている(資料4)。スコットランド最北端とその北方に位置するオークニー諸島との間に横たわるペントランド海峡は世界有数の潮流となっている。また、大西洋と北海から高い波が打ち寄せる海域である。

資料4.EMEC実験サイト

(出所)EMEC資料に加筆
2020年160万kWの事業をリース

 スコットランド自治政府は、領海を管理するクラウン・エステートと緊密に調整し、ペントランド海峡、オークニー海域で潮流5事業、波力6事業の開発を計画、事業者に海域をリースする。

 EMECでの実証試験を経て商業化を目指す技術は多い。応募者の計画を見ると、それぞれ5万〜20万kWの規模を想定しており、2020年で総出力160万kWに達する。潮流が100万kW、波力が60万kWである。総投資額は30億〜40億ポンド(4200億〜5600億円)を想定している。

 なお、英国には、EMECを含めてこうした実証サイトが3カ所ある。初の波力専用サイトとして整備しているのが「ウェイブ・ハブ」であり、南西イングランドのコーンウォール沖に建設した。沖合16km、深さ55mで重量12tのハブを設置し、周囲にそれぞれ2km四方の4つのバースを整備して、海底で系統と接続できるようにした。同時に4機種が比較できる。最大2万kWまでの実験が可能になるが、将来は5万kWまで拡張する。2011年に最初のデバイスが設置される。

 最も新しいサイトはNaREであり、3000kWの実証リグ「ノーチラス」をイングランド北部の北海沿岸都市ブライスBlythに建設された。2011年9月に最初の実験が始まっている。

補助金などの支援措置も充実

 EMECの整備に加え、英政府やスコットランド自治政府は、複数のファンドを組成し、補助金などを交付している。

 2010年3月に、1300万ポンドのファンド「WATERS」(the Wave and Tidal Energy Rsearch, Development & Demonstration Support funds)を組成した。政府系のスコットランド・エンタープライズをはじめ、スコットランド自治政府などが資金を拠出し、欧州地域開発ファンド(ERDF:the European Regional Development Fund)も協力した。

 波力と潮流のプロトタイプの開発および関連インフラ整備に対して補助金を支給する。第1ステージとして1300万ポンドを5つの事業に交付した。第2ステージは2012年8月に790万ポンドで5事業を採択した。英政府も補助事業を採択しているが、同じ事業が選ばれるケースが多い。

 また、スコットランド自治政府は、1000万ポンドのサルティア賞(Saltire Prize:Saltireはスコットランド国旗を意味する斜め十字)を用意した。スコットランド海域に設置した事業で、最大の発電量を記録した事業に授与する。現時点で4事業が候補に挙がっている。

 電力買い取りでの優遇措置もある。英国は、再エネ普及のために小売会社に再エネ買い取り義務(Renewables Obligation)制度を導入しているが、陸上は1単位、洋上は1.59単位、波力・潮流は5単位と優遇している。1単位当たり6円程度であり、海洋は30円程度で購入してもらえることになる。

EMEC発の技術が登場

 このような、実証事業への環境整備や多くの助成措置により、様々な波力、潮流の技術が集積しつつあり、小規模な試験機から中規模な実験機へと着実にスケールアップしてきている。波力、潮力ともに複数の種類の技術が競っているが、その代表事例の多くはEMEC発である。

 EMECでは既に多くの事業者が進出し、5つのデバイスが稼働している。3つの波力と2つの潮力である。波力では、ボイス・ウェイブジェン(Voith Wavegen)社のLIMPET(護岸・防波堤に設置する空気圧式)、アクアマリン・パワー社(Aquamarine Power)のOyster(海底に設置する振り子式)、ペラミス・ウォーター・パワー社(Peramis Water Power)のPeramis式(沖合で海面に漂う細長い筏の接合部分の伸び縮みを利用)である。潮流は、オープンハイドロ社(OpenHydro)、アトランティス・リソーシス社(Atlantis-Resources)のタービンである。いずれも、この分野では著名である。

 次回は、スコットランドで開発されている代表的な技術を紹介する。


山家 公雄(やまか・きみお)

1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行入行、新規事業部環境対策支援室課長、日本政策投資銀行環境エネルギー部課長、ロサンゼルス事務所長、環境・エネルギー部次長、調査部審議役を経て現在、日本政策投資銀行参事、エネルギー戦略研究所取締役研究所長。近著に『今こそ、風力』


再生可能エネルギーの真実

今年7月1日から固定価格買い取り制度(日本版FIT:Feed In Tariff)が導入されるのをはじめ、日本が再生可能エネルギーの普及に本腰を入れ始めている。この連載では、風力や太陽光などの発電の種類ごとに、その実力と課題を解説する。http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130117/242401/?ST=print


04. 2013年2月05日 09:01:14 : zBYc960RaI
ゲンパツ屋の必死のステマが見苦しい。
実際は日本は地熱で十分だがそれだとエネルギー利権ができないので封印して
いるだけだとバレている。
天然ガスも日本は自給できる。
千葉県の大多喜ガスは一例にすぎない。
なぜ輸入しているのかというと、世界的な資金循環の一部を担う目的からだよ。


05. 2013年2月13日 00:39:46 : mb0UXcp1ss
日本は「シェールガス革命」の恩恵を受けることができない?

スイッチングコストが高い代替品の限界

2013年2月13日(水)  尾崎 弘之

 2月6日、東京電力(東電)は、三菱商事や三井物産を通じて米国産の液化天然ガス(LNG)を輸入する計画を発表した。このほかにも割安なLNG調達ルートを確保し、2010年代後半をメドに年200万トンを輸入する計画だと報じられている。東電は新ルートにより現在より約3割安くLNGを調達することができ、年500億円程度の燃料費圧縮が可能になる。

 東電の福島第1原子力発電所の事故以降、順次国内の原発は運転を停止し、現在の日本は電力の大半を火力に頼っている。2012年のLNG輸入量は前年比11%増の8730万トンに上り、貿易赤字の主要な原因となった。

 原発再開のメドが立たない日本にとって、LNGの輸入コストを下げるのは喫緊の課題だが、これまで日本は、価格はともかく安定的に調達できる長期契約をガスの産出国と結んできた。従って、天然ガス市場が世界的に軟化しているのに、日本はそのメリットを享受できず、米国市場と比較して最大5倍も割高なLNGを購入している。

 ところが、日本にとって「朗報」がある。それは「シェールガス革命」による天然ガスの大幅な供給増である。シェールガス革命は日本にどのような影響を与えるのだろうか。ガス市場の需給構造が変われば、世界最大のLNG輸入国の日本にとって大きなメリットがあるはずだが、果たして楽観できるだろうか?

日本のエネルギーは天然ガス火力発電に依存してきた

 2度のオイルショックを経た後、図1が示す通り、日本のエネルギー政策は原子力と火力による発電が中心であった。資源エネルギー庁の『エネルギー白書2011』によると、2010年の発電量の大半をまかなっていたのは、火力発電(59.3%)と原子力発電(30.8%)であった。


 このうち火力発電の燃料については、歴史的に石油への依存を減らし続けてきた。1973年の第1次オイルショック直前、火力発電の88%を石油燃料に頼っていたが、2010年の石油火力の比率は14%まで下がった。

 この穴を埋めたのが、石炭と天然ガスである。2010年の火力発電のうち、石炭は40%、天然ガスは45.8%である。石油は常に枯渇の心配がされるが、石油メジャーの英BPによると、石炭は現在の採掘ペースでもまだ118年分の埋蔵量があるという。

 天然ガスの可採埋蔵量は58年と石炭より短いが、燃料として使った時の二酸化炭素(CO2)排出量が少ない。国際エネルギー機関(IEA)によると、天然ガスのCO2排出量は石炭の6割、石油の7割5分に過ぎない。CO2排出量が少なく、石油より枯渇の心配が少ない天然ガスの利用が、世界的にも主流となりつつある。

 天然ガスは諸要素を考えると効率的なエネルギーであるが、先進国にとって大きな問題が2つある。1つは、ロシア、アルジェリア、トルクメニスタンのように政治的に不安定な国の生産量が多いことである。

 2番目の問題は、ガス産出国自身の経済成長によって国内のガス消費量が増え、先進国へ輸出できる余力が減っていることである。日本は、マレーシア、インドネシアといった高成長国からの輸入に頼っているため、将来的な供給不安がある。

 また、日本以外の先進国も天然ガスの輸入を増やしており、ガス産出国の買い手に対する交渉力は強まっている。これでは、天然ガスが効率的といっても、オイルショックの時と同様、ガス産出国のパワーに日本などの買い手は翻弄されてしまう。

天然ガス産出国の脅威である『シェールガス』という代替品

 ところが、ガスの仕入れ先の立場は大きく変化している。背景にあるのは「シェールガス」の採掘コストの低下である。シェールガスは天然ガスの一種だが、地表近くにたまっている在来型天然ガスと異なり、シェール(頁岩)と呼ばれる地下100〜2600mの深くて固い岩盤に閉じ込められている。

 ガスの流れやすさが在来型ガス田の1万分の1以下なので、採掘コストが高く、これまで実用化されてこなかった。それが、過去10年間の技術革新によって生産コストが大幅に低下したのである。 技術革新とは、井戸の掘り方、水圧のかけ方といった細かい改良の集積である。

 シェールガスの埋蔵量は膨大で、IEAによると、米国では在来型ガスの2倍以上の埋蔵量があり、合計すると在来型ガスの産出で世界一のロシアに迫ると見られている。天然ガスは発電用の燃料だけでなく、バス、タクシー、トラックなどの燃料や化学製品の原料として使うことができる。

 今後、シェールガスの生産が本格化すると、世界の天然ガス市場の需給構造は大きく変わる。だから、シェールガスが国際エネルギー市場に与える大きなインパクトを指して、「シェールガス革命」と呼ばれているのだ。

 シェールガス革命はエネルギー構成だけでなく、ガス産出地域の産業構造をも変える。シェールガスの埋蔵は石炭鉱山の周辺に集まっているが、米国では、ペンシルバニア州、オハイオ州といった、石炭、鉄鉱石、製鉄の斜陽産業が集まる「ラストベルト(赤さび地帯)」に偏在している。

 このラストベルトは、ニューヨークやその北側のボストンをはじめとするニューイングランド地方といった大消費地に近いので、パイプラインの輸送コストを低く抑えることが可能だ。シェールガスのおかげで、米国はエネルギー輸出国に変身することができ、今後数十年間、先進国で最も競争力を高めると予測されている。

 今まで日本に在来型天然ガスを輸出してきたカタール、マレーシアなどはシェールガスという代替品に脅かされ、ガスの買い手である日本の交渉力は強くなりそうだが、実際はそうなっていない。日本が長期購入契約を結んでいる天然ガスは原油価格に連動しており、天然ガス市場が割安になっている恩恵をあまり受けていないのだ。

 どうして、このようなことが起きるのか? この問題を考えるには、経済学の「スイッチングコスト」という概念がカギになる。

なぜ日本の天然ガス輸入コストは下がらないのか?

 このコラムの前回(再生可能エネルギーは一般消費者にとって“おトク”になり得るか?)で説明した通り、代替品とは、今ある商品と同じ程度の機能を違った形で提供するものである。シェールガスは在来型天然ガスと成分はほぼ同じなので、代替品となる。


「マイケル・ポーターの5つの競争要因」
 代替品に換えることで価格が下がれば、ユーザーが乗り換えるインセンティブが高まるが、単に価格が下がるだけでは、ユーザーは乗り換えるとは限らない。

 例えば、現在使っている商品を代替品に換えると、いろいろな不都合が起きる場合だ。「代替品導入のために追加投資を行わなければならない」「予想外のトラブルが起きる」「業務フローが不安定になる」などの弊害が生じることは珍しくない。このように代替品に置き換えることによって負担しなければならない有形無形のコストを、「スイッチングコスト」と呼ぶ(図2参照)。


 スイッチングコストが高い状態とは、商品やサービスの利用者が安価な代替品に切り換えようと思っても、なかなか換えられないことを意味する。例えば、銀行のATMシステムには高度のセキュリティーと安定性が要求されるので、システムの変更自体が難しい。従って、価格が高くてサービスが悪いシステムでも、顧客の銀行は我慢しながら使い続ける羽目になる。

 日本が市場で安価な天然ガスを調達できないのは、購入先を変更する際のスイッチングコストが高く、仕入れ先を分散させて調達リスクを下げることが困難なためである。

日本にとって高くつくスイッチングコスト

 現在のガスの仕入れ先を値段が高いという理由で変更しようと思えば、新しい仕入れ先からすぐにガスを輸入できる体制になっていなければならない。ところが、日本には外国からガス用のパイプラインが敷かれておらず、自由に売り手を選ぶことができない。

 パイプラインがあれば、ガスを、気体のまま加工せずに生産地から消費地まで運ぶことができるが、島国の日本は、ガス生産国とパイプラインでつながっていない。そこで、やむなく液体のLNGに加工している。LNGは、ガスを低温(約マイナス162℃)で液体化して体積を600分の1まで圧縮したもので、タンカーに積んで運搬されている。

 LNGを輸入しようと思えば、天然ガスをLNGに加工する設備を生産国の港湾に設置し、LNG輸送用の特殊タンカー(巨大な魔法ビンのようなもの)を用意しなければならない。結果的にパイプライン輸送と比べてコスト高となり、買い手は売り手を柔軟に変えることができないのだ。

 これに対して、同じくガス輸入大国のドイツは、ロシア、ウクライナ、ノルウェー、英国、北アフリカなど多くのガス産出国とパイプラインでつながっており、安い売り手を選ぶことができる。ドイツが天然ガスを購入する場合のスイッチングコストは日本より低く、仕入先のリスクが分散できているのだ。

 では、日本はどうすればいいのか? 対策として、海外から単にガスを輸入するのではなく、生産国のガス田の権益に投資することが行われている。スイッチングコストを下げることは困難なので、ガス田から得られる利益によって、高い買い物のコストを国全体として相殺するという戦略である。

LNGの供給不安、高いスイッチングコストにどう対応するか

 例えば、国際石油開発帝石が仏トタールと共同で開発する、豪州の『イクシスLNG計画』がある。ここに、ガスの買い手である東京ガス、大阪ガス、中部電力なども資本参加を表明している。

 同様にシェールガスの権益への直接投資も行われている。例えば三菱商事は2010年、2億3700万ドルでカナダのシェールガスプロジェクトの50%の権益を獲得した。三井物産は2011年6月、米テキサス州でSMエナジーが開発・生産中のプロジェクト権益の12.5%を6億8000万ドルで取得。三井物産はさらに、ポーランドのシェールガスプロジェクトへも投資している。シェールガスの採掘技術は在来型ガスと比べて未成熟なので、日本企業が今から技術開発を行う意義が十分にある。

 天然ガスは効率的なエネルギーだが、LNG輸入しかできない日本にとって、ガス産出国と交渉するうえでの地理的、設備的制約が大きい。そうであれば、経済的に非効率でも、次のような対応が必要になる。

リスクを負って産ガス国の権益に投資をする
米国だけでなくロシアも含めて調達先を多様化する
ロシア、韓国とパイプラインを敷設する
 シェールガス革命はロシアにとって大きな脅威なので、日本にとってはチャンスである。原発依存が難しくなった日本は、シェールガス革命を生かしながら、柔軟なエネルギー調達を行う必要がある。


尾崎 弘之(おざき・ひろゆき)

1984年東京大学法学部を卒業。90年米ニューヨーク大学でMBA(経営学修士号)を取得、2005年早稲田大学大学院博士後期課程を修了、博士(学術)。野村証券、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス投信執行役員、ディナベックCFO(最高財務責任者)などを経て、2005年から東京工科大学教授。環境省委員、研究・技術計画学会理事。主な著書に『社会変革期の成長戦略――グリーンラッシュで生まれる新市場を狙え――』(日経BP社)、『環境ビジネス5つの誤解』(日経プレミアシリーズ)、『次世代環境ビジネス―成長を導き出す7つの戦略』『投資銀行は本当に死んだのか―米国型資本主義敗北の真相』(いずれも日本経済新聞出版)。TBS系テレビ「みのもんた朝ズバッ!」に毎週金曜日出演中。ホームページはこちら→http://hiroyukiozaki.jp/


戦略論で読み解くグリーンラッシュの焦点

 再生可能エネルギーの推進やシェールガスの実用化などによって、エネルギービジネスはどう変貌するのか。産業発展論と経営戦略論の視点からエネルギービジネスをとらえ直す。戦略論のフレームワークをを駆使して、最新の動向を読み解く。


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