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石炭火力、欧州で増加 :割安の米国産流入、シェール革命で余剰に:であれば、LNGに価格下押し圧力
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/854.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 2 月 21 日 17:38:19: Mo7ApAlflbQ6s
 


石炭火力、欧州で増加
割安の米国産流入、シェール革命で余剰に
英、14年ぶり高比率/独電力大手も

 【ロンドン=松崎雄典】天然ガスの価格が高止まりする欧州で、安価な石炭の消費が増えている。発電燃料に占める石炭の比率が英国で14年ぶりの高さとなり、ドイツでも電力大手RWEが7割まで高めた。「シェール革命」で余剰になった米国産の石炭が流入しているためだ。石炭火力は二酸化炭素(CO2)の排出量が多いため、EU(欧州連合)が掲げる削減目標に影響しかねない。

 英国では2012年7〜9月の発電に占める石炭火力の比率が、前年同期に比べ12.5ポイント高い35.4%となった。14年ぶりの高水準だ。これまで最も利用が多かった天然ガス(28.2%)を上回った。
 ドイツでは、RWEの12年1〜9月の発電は72%が石炭火力となり、前年同期に比べ6ポイント高まった。
 RWEは12年夏、「褐炭」と呼ぶ低品質の石炭を燃料とする発電所を西部ケルン近郊で稼働させるなど、石炭火力の建設案件が多い。

 欧州諸国は再生可能エネルギーの普及を急いでいるが、全体の発電量はまだ小さい。英国では洋上風力の発電量が年率5割で伸びているものの、発電全体に占める比率は1割強。依然として化石燃料に頼らざるを得ない。

 化石燃料のなかでも石炭の比率が高まる最大の原因は、天然ガスの価格が高止まりしていることにある。
 欧州諸国がロシアやノルウェーからパイプラインや液化天然ガス(LNG)の形で輸入する天然ガスは、価格が原油に連動する契約。ガス火力発電は「ほとんど利益がでない」(独電力大手イーオンのヨハネス・ティッセン最高経営責任者=CEO)のが実情だ。

 一方で、欧州の石炭価格は指標となる北西部の価格で、1トン80ドルと安い。ドイツ銀行のエコノミストは「160ドル以上になるまでガスに比べ割安だ」と分析する。

 石炭の供給源は米国。頁岩(けつがん)から採掘するシェールガスやシェールオイルの生産が急増し、発電に使う一般炭が余剰になった。欧州の米国からの一般炭の輸入量は12年7〜9月に925万米トンと、2年前の4倍超となった。英国やドイツ、イタリア、オランダが輸入を増やしている。

 国際エネルギー機関(IEA)は、欧州の石炭消費量は13年にピークになると予想。その後は、再生可能エネルギーの普及や、老朽化した石炭火力発電所の閉鎖で、減少に向かうとしている。

[日経新聞2月18日朝刊P.7]
 

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01. 2013年2月22日 00:39:21 : xEBOc6ttRg
独再生エネルギー推進に試練

2013年2月22日(金)  The Economist

脱原発、再生エネルギー促進を国家目標に掲げる独政府。エネルギー助成金が電気料金を押し上げ、国民負担は重い。最大の問題は州政府間の統一がなく、送電網が建設できないことだ。


 「Energiewende(エネルギーヴェンデ)」――。ドイツの多くの地域と同様、ライプチヒ周辺のザクセン州北部も、この言葉で盛り上がっている。その意味は「エネルギーの大転換」であり、「エネルギー革命」である。

 これはドイツが掲げる「2022年までに脱原子力発電」「2050年までに電力の80%を再生可能エネルギーで供給する」という目標実現に向けた合言葉だ。

欧州で最も高いドイツの電気料金


総選挙を控え、独メルケル政権の「エネルギー大転換」は政治的分裂を招きつつある(写真:ロイター/アフロ)
 エネルギー関連企業が1000社近く集まるライプチヒの将来は、この国家プロジェクトと密接に結びついている。既にライプチヒの電力会社が消費者に提供する電力の大半は、太陽光や風力、バイオマスによる「グリーン」電力となっている。

 トウモロコシの発酵臭が充満する研究所では、研究者らがいかにトウモロコシからより多くガスを抽出するか、その方法に頭をひねっている。独BMWのライプチヒ工場では今年、同社初の「ゼロエミッション車」の生産が始まる。また昨年には、約120ヘクタールの太陽光パネルも新設された。

 にもかかわらず、総選挙の年である今年*1、エネルギーヴェンデは政治的火種になっている。ドイツ人は今や、この言葉から電気料金の請求書しか連想しなくなりつつある。この1月も電気料金が再び上がった。ドイツの平均的消費者が支払う電気料金は、ライプチヒの欧州電力取引所における実際の価格ではなく、税金と再生可能エネルギーへの助成金が加わって2倍近い金額になっている。ドイツ人は欧州で最も高い電気料金を払っているのだ。

*1=秋に連邦議会(下院)選挙が行われる予定

 助成金の負担が消費者にのしかかる背景には、国際競争力の維持を理由に大企業はその負担が免除されていることがある。その結果、「助成金は誰が負担すべきか」を巡る論争が起きている。つまり、政治家には電気代に気をもむ有権者の機嫌を取ろうとする者がいれば、産業や雇用を心配する層に訴える者もいる。加えてエネルギーコストの高さゆえに、ドイツが国際競争力を失うかもしれないという漠然とした懸念もある。

 エネルギー革命が長期的にはコスト低下と競争力向上につながるとの反論を聞いても、どこか曖昧に聞こえる。

 そのため、2000年以来導入されてきた再生可能エネルギーへの助成金が論争の的となっている。ペーター・アルトマイヤー環境相は先日、助成金に上限を設けたいと述べ、各党はその方法について争っている。だが、再生可能エネルギーは予想以上に急成長しており、その普及を目的とする助成金は、もはや主たる問題ではない。

州を越えた送電網が作れない

 むしろ問題は、再生可能エネルギーの保存と輸送だ。北部の洋上風力発電で作られた電力を南部の工場や都市に届けるには、巨大な「電力スーパーハイウエー」が必要になる。しかもそれはドイツ16州をまたぐ、1つの統合システムでなければならない。

 だが、この統合という概念がドイツのエネルギー革命には欠けている。森に送電線を通したくないという中部のチューリンゲン州もあれば、風力エネルギーの輸出を計画している北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州や自給自足を目指す南部のバイエルン州のような州もある。

 それぞれが勝手に主張し、混乱する状況は連邦政府も同じだ。アルトマイヤー環境相はエネルギー担当を自任するが、経済相は送電網を管轄下に置きたいとしており、研究相は蓄電技術に、農業相はバイオガスに目をつけている。エネルギー革命は、その他多くの革命と同様、目的を達成する前に内紛で頓挫するリスクを抱えている。

©2013 The Economist Newspaper Limited.
Feb. 8, 2013 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


02. 2013年2月22日 01:59:13 : xEBOc6ttRg
米西部とシェール革命:莫大な埋蔵量、大きなためらい
2013年02月22日(Fri) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年2月16日号)

カリフォルニア州がシェール革命に加わりたいかどうかの決断を下そうとしている。

 ノースダコタ州のシェール開発は、州民の所得を引き上げ、失業率を労働人口の3.2%まで低下させた。これは全米で最も低い水準だ。

 カリフォルニアの人々が米国中西部に羨望の眼差しを向けることは、めったにない。だが、失業率が9.8%、貧困率が全米一の高さになっている自分たちの州に、米国本土最大のシェールオイル鉱床が眠っている可能性があることが分かると、一部の人は、地下1万フィート(3000メートル)に自分たちの救いがあるのではないかと考えるようになった。

 カリフォルニアは1865年から産油地だった。主に従来の方法で産出できる石油埋蔵量がまだ残っているおかげで、同州は今も国内第3位の産油量を誇っている。カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)によると、州の産油量は近年、年間2〜3%ずつ減少しているという。

 ところが2011年に、連邦政府のエネルギー情報局(EIA)が、カリフォルニア南部・中部地域の45万ヘクタールに渡って広がるモントレーのシェール層に、採掘可能な石油が154億2000万バレル埋蔵されていると発表した。米国本土48州の推定埋蔵量の64%に匹敵する量である。

シェール革命か、環境保護か

 失業と財政難の長い歴史を持つカリフォルニア州にとって、これは魅力的な展望なはずだ。だが、カリフォルニア州ではかねて環境意識が財政運営の失敗と同じくらい大きな特徴であり、シェール開発を巡る戦いが勃発しようとしている。

 「非伝統的」な掘削方法で石油やガスをシェール岩から抽出する際によく使われる水圧破砕(フラッキング)技術に反対する人々は、12月に州政府から提案された規制では、地下水汚染や大気汚染を十分に防げないと主張する。地震に対する不安を口にする人もいる。地震活動が活発で大きな農業部門を抱える州では、そうした懸念は理解が得られている。

 一方の石油業者は、フラッキングは長年、カリフォルニアで何の問題もなく行われてきたと反論する。さらに、環境への影響を懸念する人たちだって、規制の緩い地域から石油が運び込まれてくるよりは、カリフォルニア州の厳しい規制の下でできるだけ多くの石油を生産したいはずだと付け加える。

 中には、失業率が特に高く、政治がより保守的な内陸部の郡と、沿岸部の自然保護論者との間で亀裂が生じ始めていると見る向きもある。今年中に規制の見直しが予定されていることから、論争は当分くすぶり続けるだろう。

 一部の業者にとっては、モントレーのシェール層の複雑な地質は、採掘の代替手段への道を開く。

 ロサンゼルスの北西およそ240キロに位置するサンタバーバラ群の小規模な石油生産会社サンタ・マリア・エナジーは、深さ2500フィート前後の場所にあるシェール岩に生じた自然な裂け目を利用し、1日当たり200バレルの原油を生産している。

 同社はフラッキングを行う計画はないが、デビッド・プラット社長は好んで、モンテレーはカリフォルニアが「財政のトイレ」から抜け出す道だと言う。

経済的な奇跡は期待できない

 「サウジアメリカ」をはやす議論の一部は大げさだ。また、たとえカリフォルニアがモントレーの開発を積極的に進めたとしても、経済的な奇跡が起きる可能性は低い。

 カリフォルニア州の人口はノースダコタ州の50倍以上に上るうえ、シンクタンク、ミルケン・インスティテュートのケビン・クロウデン氏が指摘するように、カリフォルニア州では所有地を採掘に差し出す機会損失が一部の州よりずっと高い可能性がある。

 モントレーで大規模な採掘を行う方法を見つけた生産業者はまだない。だが、地質や規制に不確定要素があるにもかかわらず、複数の企業がその将来性を見込んで大きな賭けに出ている。

 また、やはりシェールが埋蔵されている西部の他州は陽気に計画を推し進めている。コロラド州知事(民主党)のジョン・ヒッケンルーパー氏は2月12日の上院聴聞会で、以前フラッキングに使われる液体を1杯飲んだことがあると言って、自らの立場を鮮明にした。

 一方、シェール革命に弾みをつけた技術は今も前進している。中には真水ではなく塩水を使ったフラッキングや、水を全く使用せず行うフラッキングについて興奮気味に話す者もいる。業界団体ノースウエスト・ガス協会のダン・カーシュナー氏は、シェール産業はここ数年間で急速に進歩したため、シェール資源を「非在来型」と呼ぶのがもはや奇異に感じられるほどだと話している。


03. 2013年2月27日 00:22:46 : xEBOc6ttRg
米国、シェール革命でも増える中東からの石油輸入
2013.02.27(水)
Financial Times:プロフィール
(2013年2月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米国では昨年、中東からの石油輸入に対する依存度が上昇し、シェール革命がもたらすエネルギー自給率の上昇にもかかわらず、米国にとっての中東地域の重要性が浮き彫りになっている。

 シェール革命による国内生産の急拡大を受け、米国が20年後もホルムズ海峡など世界で最も重要なシーレーンを守るのか、あるい中東からの原油輸入への依存度が急激に高まっている中国が米国に取って代わるのかという激しい議論が生じた。

 湾岸諸国からの石油輸入の最近の傾向は、米国が中東で安全保障の役割を担い続ける可能性がある理由を示唆している。昨年の国内生産は過去150年間で最大の伸びを見せたが、米国政府は今週中に、湾岸諸国からの石油輸入が増加し続けたことを確認する見通しだ。

 米エネルギー省の統計によると、米国は昨年11月末までにサウジアラビアから4億5000万バレルの原油を輸入しており、2009年、2010年、2011年の実績を上回った。サウジアラビアからの輸入が米国の石油輸入全体に占める割合は、2003年以来初めて15%を突破。湾岸諸国全体では米国の輸入量の25%を占め、9年ぶりの高水準となった。

 湾岸地域の他の輸出国でも、米国からの需要がいつになく強くなっている。クウェートが11月末までに米国に出荷した石油の量は1998年以来最大となった。アナリストらは、週内に発表される年間統計が、11月までに見られたトレンドを裏付けると見ている。

 米国では、新たな採掘技術によって、従来は採掘不能と思われていた莫大な炭化水素資源が解き放たれ、中東石油に対する米国の依存度がいずれ低下するとの期待が高まっていた。

米国が中東の安全保障から手を引く日は・・・

 こうした事態の展開を受け、米国のエネルギー自給の可能性が高まり、湾岸地域の安全保障に対する米国政府の長期的なコミットメントに関する議論が沸き起こった(湾岸地域では1995年以降、米国海軍の第5艦隊が活動を展開している)。

 先週ロンドンで開かれた石油業界の会議で、英BPのチーフエコノミスト、クリストフ・ルール氏は、米国の大統領が「今から15年後に中東の問題を見て、『私には関係のないことだ』と言う」可能性を提起した。

 だが、米国務省で国際エネルギー問題のコーディネーターを務めるカルロス・パスカル氏は今年、石油は代替可能な国際商品であり、米国政府は今後も中東石油の安全保障に関与し続けると述べている。

By Ajay Makan in London


 


米国の農業:黄金の畑
2013年02月27日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年2月23日号)

農家は価格高騰の恩恵を受けている。

 ニュースの見出しだけを見ていたら、昨年の記録的な干ばつが米国の農業に壊滅的な打撃を与えたと考えても仕方ないかもしれない。中西部全域(そして、さらに遠く離れた地域)では、26州にまたがる1000以上の郡が自然災害被災地域に指定され、米農務省が下した被災指定の決定としては過去最大となった。

 しかし、作物は枯れ、土壌は干上がり、野火による被害はあったものの、コモディティー(商品)市場の好況と農地価格の記録的高値のおかげで、農業が新たな黄金期の真っ只中にあると考える向きもある。

大干ばつをよそに所得急増と農地価格の高騰に沸く農家


昨年は記録的な干ばつが米国を襲った(写真はイリノイ州アシュリーのトウモロコシ畑)〔AFPBB News〕

 近年、食糧とバイオ燃料に対する世界的な力強い需要が穀物価格を押し上げてきた。干ばつは利益を損なうどころか、逆に押し上げることになった。

 トウモロコシを生産できた農家にとっては、干ばつは価格を急激に上昇させた。昨年のトウモロコシの平均価格は2010年と比べ2割ほど上昇し、8月には1ブッシェル(約25キロ)当たり8.49ドルの高値をつけている。

 それ以外の農家では、作物の収量保険の支払いが始まり、2月中旬には保険金の支払い総額が過去最高の142億ドルに達した。保険会社が支払い請求を確定するにつれ、その数字は少しずつ増え続けていく見込みだ。

 2月11日に発表された農務省の報告書によると、今年の農業所得は14%増の1280億ドルに達し、実質ベースで1973年以来最高を記録する可能性がある。

 作物価格が上昇する一方、金利が歴史的な低水準となっているため、投資家にとって、農地の価値が高まっている。農地価格は驚くべき速さで上昇してきた。シカゴ地区連銀が発表した最新の報告書によると、中西部の農地価格は昨年16%上昇した。

 さらに、農地価格の大幅な上昇はこれで3年連続で、2012年は1970年代後半以降3番目の上げ幅となった。2010年から2012年にかけての地価上昇は累積で52%に達しており、40年前の上昇率に匹敵する。

 トウモロコシと大豆の最大産地であるアイオワ州では、農地価格が2割も高騰し、中西部の5大農業州(残りはイリノイ、インディアナ、ミシガン、ウィスコンシン各州)で最大の上昇率となった。別の地域を管轄するカンザスシティ地区連銀も、1年前と比べ農地価格が20〜25%上昇したと報告している。

 このようなバブルめいた数字を受け、1970年代の農地バブルと現状を比較する声が相次いでいる。当時はその後、バブルが崩壊し、農地価格が最盛期から4割落ち込んだ。

 昨年7月、インディアナ州にあるパデュー大学のブレント・グロイ氏は農地価格に関するシンポジウムで、近年の地価上昇は過去50年間で見られた最も劇的な高騰に匹敵すると述べた。

 この急速な値上がりは既に規制当局を不安にさせている。銀行預金を保証し、業界の財務状態を監視する連邦預金保険公社(FDIC)は2010年に金融機関に書簡を送り、農地価格の高さに油断して、融資基準を甘くすることがないよう警告した。

行く手に待ち受けているのはバブル崩壊か?

 多くの観測筋は今、バブルとバブル崩壊の繰り返しが迫っているのかどうか思い悩んでいる。農務省のほかにも一部の楽観主義者は、農家の債務は過去の農業ブームで見られたようには急増していないと主張する

 一方で、状況はもっとムラがあると指摘する向きもある。カンザス州立大学のアレン・フェザーストーン教授は、カンザス農業経営協会(KFMA)に加盟する農家を調査したところ、2010年には資産に対する債務の比率の平均が1979年よりも高いことを発見した。また、資産に対する負債の比率が40%を超す農家と同70%以上の農家の割合も当時より高くなっていた。

 コモディティー価格が急落した場合、一部の農家の先行きは、黄金の未来とはほど遠いものになるだろう。


04. 2013年3月01日 10:35:56 : xEBOc6ttRg
本当に安い?シェールガス

2013年3月1日(金)  北爪 匡

米国産シェールガスを輸入するための動きが広がっている。低価格ばかりに注目が集まるが、今後の価格動向に不安も。地域分散や価格安定化といった大局的な調達戦略が必要だ。

 「米国産以外のガスでも契約の一部に『ヘンリーハブ』を適用してほしい」

 日本の電力会社からの要望に、ある大手商社の天然ガス担当者は面食らった。ヘンリーハブとは、米国における天然ガスの指標価格の名称。現在の天然ガスの指標価格は欧州、アジア、北米の3地域で分断されており、ヘンリーハブの価格が足元では100万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル強と群を抜いて安い。とはいえ、この価格を他地域で適用するのは異例中の異例だ。

 ヘンリーハブの安さの背景には、北米で進展する「シェールガス革命」がある。地中の頁岩層から産出される非在来型のシェールガスを低コストで開発できる技術が確立され、北米では開発が進展。供給能力の大幅な拡大によって、ヘンリーハブは暴落し、昨年は一時、100万BTU当たり2ドルを割り込んだ。

 福島第1原子力発電所の事故以降、火力発電需要が急伸し、LNG(液化天然ガス)輸入が急拡大する日本が、10ドル台後半の高水準で購入していることを考えれば、その安さが分かる。このため、日本企業でも低コストのシェールガスを液化して米国から輸入しようという機運がにわかに高まった。

 中部電力は大阪ガスと共同でシェールガスの輸出プロジェクトに参画。直近では東京電力が三菱商事と三井物産の進める米国のシェールガス輸出プロジェクトなどからの調達を決めたばかりだ。近くこれらの輸出許可が米政府から下りる見通しもあり、日本政府も輸出企業へ1兆円の債務保証枠を創設することを検討している。

 確かに、日本の燃料調達費は増大し、昨年には6兆9000億円超という過去最大の貿易赤字を生み出す主因になった。低価格のガス輸入は待ったなしの状況であることは間違いない。問題は、ヘンリーハブの「安さ」ばかりに注目が集まっている点だ。

 「ローカルマーケットの田舎価格」。つい最近まで、ヘンリーハブはこう揶揄(やゆ)されてきた。北米のみに閉ざされた市場価格であるがゆえに、取引量が少なく、小さな要因でも価格が乱高下しがちだ。今でこそ世界最低水準にある価格も、かつては10ドル以上の高水準に達したこともある。


需給が締まる北米、緩むアジア

 また、米国内ではパイプラインで流通するガスも、輸出するとなると液化や輸送のためのコストが10ドル前後上乗せされることになる。さらに、今後は米国内で鉄鋼や化学メーカーなどがシェールガスの利用に乗り出すほか、火力発電でも石炭からガスへと燃料シフトが進み、需給は逼迫(ひっぱく)する見通しだ。

 一方、アジアにおける取引では、東南アジアやオーストラリアなどでガス田開発が進み、2020年までに複数案件で生産が始まる。アジアでは需給が緩み、ヘンリーハブの割安感が薄れる懸念もある。米国からの輸出が始まるとされる2016年以降、シェールガスは必ずしも「安いガス」であり続ける確約はない。

 そもそも日本の天然ガスの調達戦略の最大の欠点は、中東やアジア太平洋地域に集中し、電力・ガス会社がそれぞれ小口の契約を結んできた点にある。世界最大のLNG輸入国でありながら、交渉力が弱く、高値づかみを強いられてきた。

 シェールガスの輸入はコスト面以外に、地域分散や各地域で分断された価格体系の打破などの意義がある。目先の低価格に踊らされない、調達戦略が求められている。


北爪 匡(きたづめ・きょう)

日経ビジネス記者。


時事深層

“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。


05. 2013年3月05日 01:39:47 : xEBOc6ttRg
シェールガスがもたらす石炭復権

温暖化対策の先頭を走ってきたEUが翻意したワケ

2013年3月5日(火)  山根 小雪

 2月22日に行われた日米首脳会談。TPP(環太平洋経済連携協定)や原子力政策などと並んで話題になったのが、シェールガスだ。

 安倍晋三首相はバラク・オバマ大統領に、米国から日本へのシェールガスの早期の輸出許可を要請。オバマ大統領は前向きな姿勢をみせた。

 日本企業が参画するシェールガスのプロジェクトには、中部電力と大阪ガスが米フリーポート社と手がけるプロジェクトや、住友商事と東京ガスのコーブポイントLNGプロジェクトなどがある。全てのプロジェクトに許可が降りるのかどうかは不透明だが、遠からず何らかの認可は出るのだろう。そうなれば、2017年ごろの日本への輸入は現実のものとなる。

 シェールガス革命の影響はあまりに大きく、世界のエネルギー情勢がシェールガスの動向に左右されているといっても過言ではない。天然ガスを大量に輸入していた米国が世界最大の産ガス国になり、中東依存から脱却することは、エネルギー供給だけでなく安全保障の観点でも、世界に大きな変化をもたらす可能性すらはらんでいるのだから、当然かもしれない。

 米国に世界中の注目が集中するなか、シェールガスの影響で思わぬ変化が起きている地域がある。

石炭火力発電が急増する欧州

 EU域内では2012年、発電量に占める石炭火力の割合が前年比で7%以上も増えた。伸び率は過去40年で最高水準というから驚く。

 欧州といえば、京都議定書の策定を牽引し、CO2排出量の削減を声高に叫んできた地域だ。EU-ETS(欧州域内排出量取引制度)を世界に先駆けて導入し、着実にCO2排出量を減らしてきた。温暖化対策で大きな効果を上げてきたのが、石炭から天然ガスへの燃料転換だった。

 石炭の発熱量当たりのCO2排出量を100とすると、天然ガスは60と少ない。石炭火力発電のCO2排出量は、天然ガス火力発電所のざっくり2倍とイメージすれば良い。(もちろん、最新鋭の石炭火力発電所の環境性能はもっと高い)。

 当然ながら、EUのCO2排出量も増えている。シェールガスの可採埋蔵量が急増し、安価なガスの流通が始まった途端に石炭の消費が増えるというのは、何とも皮肉だ。

 なぜEUで石炭火力が急増しているのか。国際エネルギー機関(IEA)チーフエコノミストで、IEAが毎年発表している「世界エネルギー展望」の編集最高責任者のファティ・ビロル氏はこう説明する。

 「シェールガスが見つかった北米で石炭が余り、行き場を失った安価な石炭が欧州へ流入した。北米でのガス価格が適正水準よりも遥かに安価になってしまったことが、石炭消費を押し上げている」

 北米のガス市場「ヘンリーハブ」で取引されている天然ガスの価格は3〜4ドルと低迷。日本の輸入価格の約5分の1という水準だ。ビロル氏は、「ヘンリーハブでのガス価格が安すぎて投資の魅力が薄れ、ガス資源の開発が停滞している」と嘆く。

日本でも始まる石炭復権

 翻って日本。東京電力・福島第1原子力発電所事故を契機に全国の原発が停止し、天然ガスの輸入量が急増した。世界最大の買い手である日本が、凄まじい勢いで天然ガスを買い漁ったことで、ヘンリーハブとの価格差が広がった経緯がある。

 原発停止による燃料費の負担増で、電力会社はこぞって電力料金の引き上げを申請している。天然ガス価格の高騰も電力料金を押し上げる大きな要素だ。経済産業省は、電力料金の審査に際して、燃料費の削減を考慮するよう要請している。

 こうした情勢のなか、日本でも石炭火力が復権しそうな兆しが見えてきた。

 東電は2月15日、新規の火力発電所の入札の受け付けを開始した。東電が提示する発電価格などの条件から勘案するに、石炭火力発電でなければ応札は不可能だろう。東電は昨年11月に公表した「改革集中実施アクションプラン」のなかでも、福島県の復興策として「世界最新鋭の石炭火力発電所プロジェクト」を上げている。

 地球温暖化が叫ばれるなか、国内での石炭火力の新設は不可能と言われてきた。2000年前半に電力自由化の流れとともに、複数の石炭火力の新設計画が持ち上がった。オリックスと東芝の合弁企業や、三菱商事の子会社のダイヤモンドパワーが新設を試みるも、環境省の認可が降りず、断念した経緯がある。

 今回の東電の入札に際しても、環境省は石炭火力による新設に猛反発している。だが、東電管内での原発再稼働は見通しが立たないことを考えると、ベース電源として石炭火力を増やすのは現実解だ。

 石炭火力のCO2排出量は、日本が得意とする高効率の石炭火力で抑える。発電部門だけでなく、ほかの産業部門や民生部門など全体のバランスのなかで石炭火力による増加分を抑えていけばよい。

 何事もバランスが大事。エネルギーを巡る議論を見ていると、結局、最後は同じ結論にたどり着く。


山根 小雪(やまね・さゆき)

日経ビジネス記者。


記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。


06. 2013年3月06日 22:08:12 : N5Q7P3dtvI
米国のエネルギーと経済:ガス輸出のススメ
2013年03月06日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年3月2日号)

バラク・オバマ大統領がよりクリーンな世界と豊かな米国を望むのなら、天然ガスの輸出を認めるべきだ。

 米国のメキシコ湾沿岸部に、休眠状態の大規模な工業施設がある。何キロにも及ぶ湾曲したステンレス製パイプと巨大貯蔵タンクが、太陽を浴びて無為に光っている。米国が液化天然ガス(LNG)の輸入を扱うためにガス基地に数千億ドル投じたことを思い出させる光景だ。


シェール革命に沸く米国(写真は米ペンシルベニア州でマーセラス・シェールガス田の掘削機に近づく作業員)〔AFPBB News〕

 国内のシェールガスブームのおかげで、もはや、こうしたLNGを輸入する必要がなくなった。米国は国内消費をほぼ賄える量を生産しており、近くに消費量を大幅に超えるガスを生産するようになる。

 ならば、こうした遊休施設ですべきことは、当然、輸出を扱うよう設計し直すことだろう。

 米国は船積みされてきたLNGを受け入れ、再気化させる代わりに、米国産のガスを持ち込んで液化し、タンカーに船積みすべきだ。プラントの用途転換は安くはなく、1基当たり少なくとも50億ドルかかるだろう。しかし潜在的な利益はその費用を大きく上回る。

LNGの輸入基地を輸出基地に転用せよ

 米国のガス価格は、100万BTU(英国熱量単位)当たり3.4ドル前後だ。欧州では12ドル程度する。ガス資源に乏しいアジアでは、スポットカーゴ(現物)が最大で20ドルで取引されている。

 ガスを液化して輸送し、ガスに戻すコストは100万BTU当たりざっと5ドルだから、米国はガス輸出で一儲けできるだろう。こうした輸出が汚染源となる石炭に取って代わる限り、地球温暖化を抑制する助けにもなる。

 全米に二十数基あるLNG輸入基地の大半が、輸出許可申請を提出している。しかし実際に設備を改修し始めたのは、ルイジアナのサビンパス輸入基地のみだ。サビンパス発のガスは、2015年末までに国際市場に流通し始める予定だ。他の基地はなぜ、好機をつかむのにこれほど手間取っているのか?

 ガス基地の転用は容易ではない。企業は輸入LNGの気化ではなく、ガスを液化するために、「液化トレイン」と呼ばれる高額な冷却装置を何台も備えなくてはならない。

 しかし、転用を本当に妨げているのは政治的な障害だ。サビンパス以外のLNG基地には輸出の認可が下りていない。米国の法律では、エネルギー省がガス輸出が公共の利益になるか否か判断することが義務付けられており、オバマ政権は決断を急いでいないのだ。

 ガス輸出に声高に反対する圧力団体は、フラッキング(水圧破砕、水圧をかけてシェールからガスを抽出する方法)に反対する環境保護主義者と、エネルギーを大量消費する米国企業を結束させている。

 こうした反対派は、輸出を認めれば、国内消費者向けのガス価格が上昇することになると懸念している。例えば、自分たち自身のような消費者である。

環境保護主義者と日和見主義者

 どちらのグループの反論も説得力に欠ける。環境保護主義者は、フラッキングは空気や地下水を汚染すると主張しているが、そのような汚染はどれも限定的であるという証拠が示されている。

 ガス火力発電所やアルミニウム製錬業のような大量のエネルギーを必要とする企業は、国内のガス価格上昇は、米国の製造業の復活を妨げると懸念している。エネルギーを大量消費し、かつガスを原料としているダウ・ケミカルのような企業は特に心配している。だが、バラク・オバマ大統領は2つの理由から、こうした企業の言い分を跳ねつけるべきだ。

 まずはモラルの問題だ。ガスを大量消費する企業は、天然ガスの保有者が一番高い値段を付けた企業にガスを売るのを妨げようとしている。それは隣家が誰か他の人に家屋を売るくらいなら、安値で自分に売ってくれるよう、政府に対しロビー活動しているようなものだ。それは純粋なレントシーキング*1であり、認めるべきではない。

 2番目は経済性の問題だ。米国のガス価格は持続不能なくらい低く、輸出の認可が下りようが下りまいが、いずれは多少上昇する。しかし、他国が米国ほど巧みにシェールを水圧破砕ができないため、米国のガス価格は今後もよそよりずっと安価なままだろう。

 オバマ大統領が企業に米国産ガスの輸出を禁じたら、ガスは地下に眠ったままになる。輸出した場合と比べると、世界はより汚染された場所になり、米国はより貧しい場所になる。

*1=超過利潤を得るため、政府に嘆願すること


07. 2013年6月06日 10:13:09 : niiL5nr8dQ
「シェール革命」の行方を左右するTPP交渉

やはり日本は足元を見られるのか?

2013年6月6日(木)  木暮 太一

日本は「革命」の恩恵を受けられるのか?

 少し前から話題になっている「シェール革命」。今回は「世界のエネルギー地図を描きかえる」と言われているこのシェール革命について振り返ってみます。

 そもそも「シェール革命」とは何なんでしょうか? これは粘土質の頁岩(けつがん、シェール)層に閉じ込められた天然ガス・原油が、技術革新によって採掘できるようになったことを指しています。

 このシェールガス・オイルは、北米のほか南米、中国など世界に広く分布しています。存在自体は以前から判明していましたが、技術が追い付かず採掘が難しかった。しかし、地下数千メートルの岩盤を破砕する新技術の開発によって採掘が可能になり、人類が入手することが可能になったのです。それ自体が非常に画期的だったため、「革命」と呼ばれています。

 最近はアメリカを中心に、このシェールガスの生産が拡大しており、供給増加のため天然ガス全体の価格が大幅に下落しています。エネルギー資源のほとんどすべてを輸入で賄っている日本にとっては、非常にありがたい話ですね。

 ただし、日本がこれらの安いエネルギーの恩恵を自動的に受けられるわけではありません。自然に日本に入ってくるわけではないのです。

 シェールガスの埋蔵量は150年分とも300年分以上ともいわれています。これが本当にすべて活用可能であれば、人類にとってかなりの「安心材料」になるでしょう。

 とにかく埋蔵量が多く、なおかつ環境に優しい。CO2排出量が石炭に対して40%、石油比では15%少ないといわれています。そのため未来のエネルギーとして注目が集まっています。日本の場合は震災後の電力問題もあり、急いで代替エネルギーに目を向けないといけない状態にあるため、特に重要です。

 ただ、残念ながら日本国内にはほとんどありません。なので、輸入する必要があります。そこで外交問題、TPP(環太平洋経済連携協定)の問題が絡んでくるのです。

 現在、シェールガスを最も有効に活用しているのはアメリカです。埋蔵量が多い上に、採掘方法などの知的財産を特許で固めており、エネルギー輸出国としての存在感がどんどん強まってきています(シェールガスの埋蔵量で世界最大なのは中国と言われていますが、採掘技術が追い付いていないため、まだ活用できずにいます)。

アメリカが日本にシェールガスを売る2つの理由

 元々アメリカは、シェールガスを日本に輸出することを原則として認めていませんでした。日本とアメリカがFTA(自由貿易協定)を締結していないからです。しかし、アメリカは、2017年から日本への輸出を解禁することを決めました。

その理由は、大きく分けて2つあります。

 1つは、日本がTPPへの交渉参加を表明したこと。日本がTPPに加盟すれば(というか、既に加盟を前提としてアメリカは考えていますが)、日米は“自由貿易協定”を結ぶことになります。だから輸出OKになるのです。

 もう1つは、アメリカ国内でシェールガスがダブつくからです。アメリカは、2005年以降からシェールガスの生産量が急増しています。そのためアメリカ国内では供給過剰に陥り、天然ガス価格は、かつて100万BTU(英国熱量単位)当たり13ドル(2008年時点)だったのが、昨年は2ドル前後まで暴落しています。

 いくらたくさんとれるとは言っても、ここまで価格が急落してしまうと、採算が合わなくなってしまいます(※シェールガスの採算ラインは4ドルから6ドルといわれています)。そのため、輸出を加速して国内の供給過剰を解消するというのが狙いです。

 「ではアメリカからどんどん輸入すればいい。これですべての問題が解決!」と思うかもしれませんが、それほど簡単ではありません。

 アメリカは、シェールガスの主な輸出先として韓国や台湾、日本などを考えています。そして、日本もアメリカから買いたいと思っています。表面的には互いの思惑は「一致」しています。

 しかし、切迫感が違います。

 日本では震災以降、原子力の代替として化石燃料の消費量が増大し、輸入額が1日当たり100億円も増えています。日本はこの安価なエネルギーがノドから手が出るほど欲しいのです。

 また日本は今、100万BTU当たり約15ドル前後で買っています。日本の液化天然ガスの輸入相手国は、マレーシア(19.1%)、オーストラリア(17.8%)、カタール(15.1%)、インドネシア(11.9%)、ロシア(9.1%)などです(かっこ内の%は構成比)。これらの国から非常に高い値段で液化天然ガスを買っています。

 一方、アメリカでは、同じ量が約3ドルで取引されています。随分差がありますね。

 しかし、これらの値段を単純に比較することはできません。日本にガスを運ぶには、気体のままだと効率が悪いので、冷やして液体にする必要があります。つまり“液化”天然ガスとして輸入するわけです。そして、当然、気体を液体にするためには相応のコストがかかります。

 とはいえ、アメリカで同じ量が約3ドルで取引されていることを考えると、“異常な高価格で買わされている”と言ってもいいでしょう。日本は、なんとしてもこの安いエネルギーが欲しいのです。

 ですがアメリカはそうは考えていません。もちろん、アメリカも「日本に売りたい」とは考えているでしょう。しかし、“安価”でとは考えていないかもしれません。さらに無理してまで売りたいというほどではありません。つまり、この交渉は明らかに日本が不利です。アメリカは、日本に“売ってあげる”代わりに、別の条件を出してくるはずです。

売ってあげてもいいけどさ……

 それが「TPP交渉時」に出てくるでしょう。アメリカが出す条件を日本がのめばシェールガスを輸出してあげる、というイメージです。具体的には、自動車、医療保険などの分野で強気の要求を出してくるでしょう。

 来月、日本は初めてTPP交渉に臨みます。日本にとっては、エネルギーも大事、産業やそれに伴う雇用も大事です。かなり難しい交渉を迫られることは間違いないと思います。

 ただ、だからといって「アメリカに足元を見られるから、アメリカから買うのはやめよう」と考えるのは得策ではりません。それでは自分たちの選択肢を減らすだけです。日本が考えるべきことは、“アメリカから輸入”というカードに加えて、アメリカとの交渉の選択肢を増やしておくことだと思います。

 そこで注目したいのがロシアです。ロシアはもともと資源大国で、天然ガスをヨーロッパへ大量に輸出していました。ですが、安いシェールガスの登場で天然ガスの相場が崩れ、対ヨーロッパの輸出戦略は破たんしつつあります。ロシアは今、ヨーロッパに代わって天然ガスを買ってくれる国を探しているところなんです。

 この状況を生かすべきでしょう。将来的にアメリカからのシェールガスを受け入れられるようにしながら、同時にロシアとの関係も深めておきます。先月、安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領と会談し、経済・エネルギー分野について大きな進展がありました。シェールガス革命により、天然ガス輸出相手国を失いつつあるロシアが日本に急接近してきています。これは大きな転機です。

 現在、日本は隣国とのトラブルを抱えています。しかし、日本が取るべき行動は、当然ながら「孤立すること」ではなく、「仲間を増やすこと」です。特に自前で確保できないエネルギーのことを考えると、アメリカとの外交(TPP参加を含む)やロシアとの外交は大きな意味を持つことでしょう。

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