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メタンハイドレートの有効利用はまだまだ無理
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/864.html
投稿者 taked4700 日時 2013 年 3 月 12 日 22:01:35: 9XFNe/BiX575U
 

<font size='4' color="#00084">メタンハイドレートの有効利用はまだまだ無理

 本日の明るいニュースとしてメタンハイドレートの試験採取成功が大きく報じられている。しかし、実用化というか商業的な利用はまだまだ無理だ。以下その根拠。

1.深さ1000メートルの海底から更に200mから300m深い地殻の中から掘り出すわけで、1000メートルの水深だけを考えても、水深10メートルで1気圧なので100気圧程度の圧力がかかる。沸騰水型原発の圧力容器で耐圧100気圧はないということで、この深さで動く機器の開発はとても大変。

2.メタンハイドレートは高圧と低温でメタンガスが結晶化しているもの。そのままでは固体なので海底から連続的に取り出すことはできない。海底油田のように連続的に取り出すためには気化させる必要があるが、気化させるためには減圧する範囲を決める必要がある。しかし、そもそもどのぐらいの範囲にどのようにメタンハイドレートが分布しているのかはほとんど分からない。多分現状はかなり推量で範囲を決め、そこを物理的に何らかの形で囲い込んで減圧している。だから、物理的に囲い込んだ部分からはガスを採取できるが、そこだけなので、新たにまた物理的に囲い込みをしなければならず、こんなことをやっていたらとても採算は合わない。つまり、減圧法ではそれこそ数十メートル四方ごとに井戸を掘るようなことになるがとても無理。

3.そのためたとえば温水を送り込んで強制的に気化させるような手法が考えられ居るはずだが、これだとコントロールが難しく、海底の地盤に閉じ込められているメタンハイドレートが勝手に気化しはじめて地盤を壊し、海中へどんどんと漏れてしまう可能性がある。ある程度は海水に溶けるがかなりの分量が大気中へ漏れることになるはずで、これは大変な環境汚染になる。メタンガスの温暖化効果は二酸化炭素よりもずっと大きい。

4.陸上まで運ぶためには、船上で再度液状化する必要があるが、これがまた大変。液状化しないのなら海底パイプラインを引くことになるがこちらもかなりの技術開発が必要。つまり、海底から採掘したメタンハイドレートは水分などが含まれていてそのままパイプラインで送るのはいろいろな問題がある。ガス自体の純度だけでなく圧力調整などいろいろな関門がある。

5.そもそも、実用化のめどが5年後となっているが、それまでに化石燃料の輸入代で日本経済がパンクしてしまう。財政破たんが4年後程度で来るはずで、とても間に合わない。

6.日本には地熱があり、既に商業的に十分に利用できる状態になっている。こちらが利用できないのに、まだ技術開発もできていないものに希望をかけるのはおかしい。原発再稼働への圧力があってそれがすべての世論をゆがめている。日本以外の地熱資源国はアメリカをはじめとして今大規模に地熱開発をやっている。

********************
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130312-OYT1T00555.htm?from=top
メタンハイドレートの試験採取成功…愛知沖

 経済産業省は12日、愛知県沖約80キロ・メートルの海底地層から天然ガスの一種「メタンハイドレート」の試験採取に成功したと発表した。

 海底からのガス採取は世界で初めてという。日本近海には、国内の天然ガス消費量の約100年分に当たるメタンハイドレートがあるとの推計もある。政府は2018年度の商業化を目指しており、安定的な生産の道筋がつけば、豊富な国産エネルギーとして活用することが期待できる。

 地球深部探査船「ちきゅう」が同日午前6時前、水深約1000メートルの海底までおろした掘削機を使って、固形状のメタンハイドレートを水と天然ガスに分解し、ガスを取り出して海上まで引き揚げる作業を開始。約4時間後の同10時頃、船尾に設置したバーナーから、ガスの産出を示す炎(フレア)が上がった。

(2013年3月12日13時24分 読売新聞)
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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130312/k10013138431000.html
海底からメタンハイドレート採取に成功
3月12日 11時51分


資源エネルギー庁は、将来の国産天然ガスの資源として期待されている「メタンハイドレート」について、愛知県と三重県の沖合で世界で初めて海底からのガスの採取に成功したと発表しました。

発表によりますと、12日午前9時半ごろ、愛知県と三重県の沖合で、国の委託を受けた独立行政法人のJOGMEC=石油天然ガス・金属鉱物資源機構が中心に進めているメタンハイドレートの試験開発で、海底より数百メートルの深さの地層から天然ガスの採取に成功しました。
資源エネルギー庁によりますと、海底にあるメタンハイドレートからの天然ガスの採取は世界でも初めてということです。
メタンハイドレートは、天然ガスと水が結びついてシャーベット状になった天然資源で、「燃える氷」とも呼ばれています。
日本近海の海底でも埋蔵が確認されているため、将来の国産天然ガス資源として期待が高まっていて、政府はこのうち愛知県と三重県の沖合で、ことし1月から試験開発を進めてきました。
現場では今後、2週間ほどかけてガスが安定的に採取できるかを調査するということです。
今回の海底には日本の天然ガス使用量の14年分に相当するメタンハイドレートの埋蔵が見込まれていて、資源エネルギー庁は、5年後をめどに商業化に向けた技術を確立したいとしています。

課題は生産コストと効率
エネルギーのほとんどを輸入に頼っている日本。
特に原発事故以降は、火力発電用の燃料輸入が増大しているため、国産エネルギーの開発を急ピッチで進めています。
この中でも、将来の国産のエネルギー源として最も期待されているのがメタンハイドレートです。
メタンハイドレートは、日本近海の広い範囲で埋蔵されていることが分かっています。
今回、試験開発されている海域だけでも、日本の天然ガス消費量の14年分の埋蔵量が見込まれています。
さらに、新潟県の上越沖や北海道の網走沖、日本海の秋田県から山形県にかけての沖合などで実際にメタンハイドレートが確認されているほか、紀伊半島から四国、九州にかけての太平洋沿岸でも埋蔵の可能性が指摘されていて、日本近海の埋蔵量を合わせれば、日本の天然ガス消費量の100年分に相当するという試算もあります。
このため、政府内には「商業生産が実現すればエネルギーの輸入依存体質を大きく変えられる」といった見方もあり、開発にはこれまで588億円が投じられています。
ガスと水が結びついたシャーベット状のメタンハイドレートから、天然ガスを採取するには高い技術が求められますが、日本はこの技術面で世界をリードしています。
世界で初めて内陸部のメタンハイドレートからガスが採取されたカナダ北西部の内陸部での試験開発も、日本政府が中心になって進めました。
一方、課題は生産コストです。
通常の天然ガスは、埋蔵している地層にパイプを通せばガスが出てくるのに対し、メタンハイドレートは、シャーベット状の固体からガスだけを取り出す必要があります。
このため、今回の試験採取については、アメリカで生産が増加しているシェールガスと比べても、コストは17倍になっているという試算もあります。
また、一般的なガス田に比べると、メタンハイドレートからガスを採取する効率は10分の1程度とされ、効率の悪さも課題です。
政府は、商業生産に向けて5年後をめどに生産技術の確立を目指すとしていますが、コストの圧縮や、効率の向上が大きな課題となりそうです。
一方、電力会社やガス会社は、今回のガス採取について期待感をもっているものの、商業生産に向けてはまだ多くの技術的な課題があるとして、今後の開発状況を見極めたいとしています。
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http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE92B04L20130312
愛知沖でメタンハイドレート生産に成功、実用化には課題も
2013年 03月 12日 16:34 JST

[東京 12日 ロイター] 経済産業省資源エネルギー庁は12日、愛知県と三重県の沖合の深海で天然ガスの一種であるメタンハイドレート10+ 件の産出に成功したと発表した。

同庁によると海洋でのメタンハイドレート10+ 件の生産成功は世界初。日本近海に豊富な埋蔵が見込まれるため、国産資源としての期待は高いが、商業ベースでの本格的な実用化には採掘技術やコストなどで課題があるという。

今回の地点は、愛知県の渥美半島から約80キロ、三重県の志摩半島から約50キロの沖合。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(独立行政法人)が事業主体となり、操業を担当した石油資源開発(1662.T: 株価, ニュース, レポート)が地球深部探査船「ちきゅう」を用いて、メタンハイドレート10+ 件を分解し天然ガスの成分を取り出す試験の準備を1月下旬に開始。深度約1000メートル海底面からさらに270─330メートル下にあるメタンハイドレート層まで掘削装置を貫通させ、12日に生産実験を始め天然ガスの生産を確認した。この試験は約2週間実施し、生産されたガス量の集計や実験結果の解析を行う。

エネ庁によると、過去の探査で今回の海域(東部南海トラフ)には、日本の天然ガス消費量の約11年分に相当する1.1兆立方メートルのメタンハードレートの埋蔵が推定されている。政府の計画では2018年までに取り出す技術を完成させることを目標に置いている。エネ庁の担当者は実用化までに「10年以上かかると見込んでいる。(克服すべき課題は)まだまだある」との見通しを示す。

メタンハイドレートは天然ガスの主成分であるメタンが低温、高圧の状態で結晶化した物質。主に海底に分布するが、陸地では永久凍土の中に存在することもある。石油や天然ガスだと生産井から自噴するように取り出せるが、メタンハイドレート10+ 件の場合、シャーベット状という形状のため簡単に取り出せないことが難点だ。今回の試験でも、「ポンプで吸い上げるという、人工の手間をかけているので、その分コストが割高になる」(同)と課題が指摘される。

*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています<<1380>>TC:38620, BC:21649
 

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コメント
 
01. 2013年3月12日 23:49:13 : zBYc960RaI
これは技術的なイシューではなくむしろ政治経済的なイシューなのであって、
メタンハイドレートを採掘するとなると、日本がエネルギー購入に費やす
莫大な金額が外国へ行かず、国内で循環するこということだ。
需要を失うことで当然国際間取引価格の暴落を誘う。

採掘はできる。しかし価格交渉を有利化ならしめるブラフだろう。
要は日本が莫大な資金を投入して開発する動機ができるような価格まで
天然ガス価格を吊り上げることは認めない、ということだ。


02. 2013年3月13日 02:19:43 : aYqv9mvkOg
価格に関して取りざたしているが、エネルギーの安全保障の観点で国策として、国が掘り出して安く民間に卸せば済む事。それでコストを抑えて電力に使用すれば、産業の日本回帰も出来るのでは?雇用の創出につながる。 太平洋側は、地震のリスクが高いので、地震発生による設備の損傷を含めたマネージメントが必要では?日本海側の方がリスクが少ない?

03. taked4700 2013年3月13日 11:11:56 : 9XFNe/BiX575U : ZaavhAbCrM
>>01

>これは技術的なイシューではなくむしろ政治経済的なイシュー

 おっしゃっていることは理解できるつもりです。ただ、仮に政治経済的なイシュ‐であったとしても、実現可能性がまだまだではないでしょうか。多分、シェールガス開発と同じような水平掘りのようなことをすればかなり開発効率は上がるのでしょうが、メタンハイドレートのような結晶化しているものに使えるのかどうかよく分かりません。

 でも、自分自身、地熱に対する思い入れが強すぎる面がありますから、メタンハイドレートが開発に向けて動いていくのはもっと肯定的に見る必要があるのかなと思います。

 自分が地熱にこだわるのは東北地方での冬季の熱利用が可能だからです。


04. 2013年3月14日 00:41:21 : xEBOc6ttRg
「黒潮」と「温度差」の膨大なエネルギーを活用

日本の海洋エネルギー開発2

2013年3月14日(木)  山家 公雄

 前回は、日本の海洋エネルギーの概要と波力発電を紹介した。今回は潮流・海流そして温度差発電の開発状況を解説する。海洋資源の象徴とも言える黒潮や、膨大な賦存量を誇る表層と深層の温度差をいかに活用するかのチャレンジである。

 潮流・海流は、一定以上の速度で流れる海水のエネルギーを利用する。風力発電と同じ原理でエネルギー設備としての技術的な課題は小さく、空気(風)に比べて海水は800倍の密度を持つ。一方で、その高密度ゆえに羽根の長さに限界がある。また潮流・海流は速度が遅く、秒速2m以上の場所の確保がポイントになる。

 潮流は太陽、地球、月の重力の影響を受けて、1日に4回生じる潮の流れを利用するもので、特定の海峡や水道で生じる。場所は限定されるが、陸に近く送電投資負担は相対的に小さく、潮の流れは予想できる。

 海流は、偏西風などにより生じる幅百km以上に及ぶ長大な流れで、膨大なエネルギーを持つ。常に一定方向へ流れる点は長所だが、陸から遠く海底までの距離が長い。日本領海内の海流の代名詞は黒潮だが、黒潮の蛇行という言葉があるように、流れが変わることもある(資料1)。


資料1.黒潮の流速分布例
(出所:IHI、東芝、東大、三井物産戦略研のプレスリリース)
 開発は、潮流で事業化を進めていき、海流利用を目指すということになる。前々回紹介したように、海外では大企業がベンチャーと組み有望な潮流海域(タイダルレンジ)で競うように実証事業の準備を進めている。大規模な潮流発電群(タイダルアレイ)の計画が登場している。

 日本では、1980年代に日本大学が来島海峡において世界初の潮流発電に成功した。その後、日本大学や新日本製鐵が研究を行い、2002年には海上保安庁が明石海峡に浮灯標電源用の小型システムを設置したが、本格的な実証研究は行われていない。だが、ここへきてNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に、海洋エネルギーの技術開発に力を入れるようになった。

総合力で潮流に挑む川崎重工

 川崎重工業は、海洋エネルギーのなかで潮流発電に着目する。同社は、船舶プロペラ、潜水艇、海洋技術、ガスタービンなど、多くの事業基盤を持つ。その総合力を活かせると判断した。2011年にNEDOの海洋エネルギー技術研究開発事業に採択され、国内の海域調査などを実施した。ゆくゆくは黒潮での海流発電も視野に入れる。

 同社のタービンは3枚羽根、直径18mで、水深40〜50mの海底に3本足で固定する(資料2)。流速2.7m以上、設備利用率40%、定格出力1000kWの仕様である。羽根は1分間に15回転、1回転に4秒とゆっくり回る。


資料2.川崎重工業が開発中の潮流発電装置
(出所:川崎重工業)
 メンテナンスの際、タービンを引き揚げたり、設置し直したりすることは大きな負担になるため、メンテナンスの省力化を目指している。例えば、発電機器などを納めたナセルは、海底に据え置く構造物(ベース)から切り離して容易に海上へ引き揚げることができるなど、様々なシステムを検討している。また、潮流は1日に4回向きが変わるため、基礎部分を安定させる設計に注力している。貝・藻類の付着を防止するために塗装にも工夫する。

 日本での事業展開のほか、英国をはじめとする海外のタイダルレンジでの事業化を狙う。開発スケジュールは、2012年から10分の1スケールの模型試験を経て、2015年からスコットランドの欧州海洋エネルギーセンター(EMEC:European Marine Energy Center)で実証を行う予定である。EMECへの進出で発電技術を実証でき、海外市場へのステップになる。

 前々回紹介したようにオープンハイドロ、アトタランティス、ハンマーシャフトなどの世界の潮流(タイダル)デバイスメーカーは、大手と組んで(資本参加を受けて)、設計、海洋環境、製造、アセンブリ、建設、運転と一貫した事業体を組成し、サプライチェーンをまとめて事業を遂行している。

 ベンチャーが開発したタービンを関連企業の協力で事業化する構図が多いスコットランドでは、総合エンジニアリング会社である川崎重工への期待は大きい。サモンド首相は、同社のEMEC進出の意義について、一度ならず言及している。

 NEDOは、2012年度もシステム開発実証として潮流3事業を採択している。佐世保重工業が油圧式技術に、五洋建設などが橋脚からぶら下げるような形で設置する橋脚利用式に挑戦する。三井海洋開発は、浮体式を採用し、浮体上部に垂直軸型風力発電を下部に潮流タービンを設置する。

 富士電機は、水力発電機器世界最大手であるドイツのフォイト・ハイドロ社と富士フォイトハイドロを設立した。日本国内で潮流発電や波力発電の導入促進を図っている。フォイト・ハイドロは、潮流発電の実証を積極的に進め、スコットランドEMECで1MW規模、韓国のJindoで110kW規模の実験を行っている。

海中凧で海流発電

 東大、IHI、東芝、三井物産戦略研究所の4者は、世界初の浮遊式海流発電の概念実証を進めている。この事業は、NEDOの要素研究委託事業でもある。

 このシステムは、海中で凧を揚げるように一点で係留し、飛行機のように安定させる。海底に重石(おもし)を置き、そこから一本のワイヤでブレード(羽根)をつなぎ、凧のように泳がせる(資料3)。東大で水槽による40分の1規模の実験に成功した。ブレードを0.1ミリ単位で調整することで、発電機が錐もみ状態に陥らないようにバランスを追求した。


資料3.水中浮体方式の海流発電システム
(出所:IHI、東芝、東大、三井物産戦略研のプレスリリース)
 今後はスケールアップし、3分の1から2分の1の大きさで実証する予定である。2020年までに2000kW程度のデバイスの実用化を目指す。日本には、流れが強く幅が広い黒潮があり、ポテンシャルは十分ある。水面から100mぐらいまでは海流が速いため、タービンを深さ50mぐらいの海中に吹き流しのように漂わせる。直径40mのタービンを2つつなぎ出力2MWにする。70%の稼働率で3ノット(毎秒1.6m)の流速があれば十分に経済性があると見ている。

ベンチャーが描く壮大な構想

 新しい分野の技術は、しがらみや定説に距離を置くベンチャーが切り開く場合が多い。ノヴァエネルギーの鈴木清美代表取締役が提唱する「マグロ型潮流発電機」もその1つであろう。同社の「ツナタービン」は、流れに対して前方が細く後方が太いマグロの形をしており、曲がった3枚のプロペラ(羽根)が後方についている(資料4)。

資料4.ノヴァエネルギ−の海流発電構想

出所:ノヴァエネルギ−
 神戸大学と韓国海洋大学の協力で、流れを効率的に利用しながら、海中の漂流物による損傷を防ぎ、藻なども付着しにくい形状を開発した。膨れているところで流れが加速したうえでプロペラに当たる。プロペラを曲げたのは漂流物などが当たっても壊れにくくするためだ。タービンはFRP製または鉄製で、内部の空洞を海水が出入りするため、深海部でも浮力、重力、圧力に関係なく流れに対して常に平衛を保つ。

 タービンの先端は「ユニバーサルジョイント」というシステムでつなぎ、常に最適な向きに保つ。水の流れに沿ってタービンが回転するため、プロペラ先端でのキャピテーション(泡の発生・消滅による空洞現象)は発生しない。低速回転のため、水中の生き物の生息に影響を与えず、タービンの回転時に魚などを傷つけることはない。かなりの低コストとなることが見込まれる。

 淡路島岩屋沖の明石海峡にて実証している。現在全長6m、プロペラ直径3m、定格出力10kWのNT-001と全長14m、プロペラ直径7m、定格出力300kWのNT-030の2種類が製品化されている。いずれも流速1.5ノット(毎秒0.78m)から発電を開始する。

 鈴木社長は、マグロタービンを利用した様々なアプリケーションを描く。中古の船(浮体)に取り付け錨をおろしておけば、潮流によってタービンが回り発電船とすることができ、小型電力動力船向けの「海上給電所」となる。300kWタービンを明石海峡大橋の橋脚に設置し、大橋のイルミネーションと橋脚のライトアップに利用する。

 大容量発電プラント構想もある。1ユニットあたり2000kWの発電力とその組み合わせにより大容量の発電群(タービンアレイ)を実現する。独自に開発した長さ120mの大型ブイに500kWのプロペラ4基を取り付け、1ユニット2000kWの発電装置とする。2km四方の海洋に200ユニット設置できるが、これは総計40万kWの大容量発電プラントとなる(資料4)。垂直ブイの水上部20mにコントロールハウスを設置する。ここに2メガワットの発電機、油圧モーター、電力コントロールパネルなどを保管する。

 全体システムを概観すると、プロペラタービンを3〜4ノット(毎秒1.5〜2m)の流速で回転させ、それを低回転大出力で完全無漏の油圧ポンプで圧力に変換し、動圧を海上のハウスにホースで送って、油圧モーターで発電機を回す。上部をヘリポートとし、内部機器のメンテナンスはヘリコプター輸送によって行う。

海洋温度差発電を貫いた佐賀大学の実力

 海洋の表層100m程度までは太陽熱が蓄えられている。一方、極地方で冷却された海水は海洋大循環によって低緯度地方へ移動し、600〜1000mの深層に沈み込んでいく。海洋温度差発電(OTEC:Ocean Thermal Energy Conversion)は、25〜30℃の表面の高い温度と5〜6℃の深層の低い温度の差を利用して、沸点の低いアンモニアなどを媒体に蒸気タービンを動かして発電する。

 いわゆるバイナリー発電であるが、地熱、バイオマス、工場廃熱など利用に比べて温度差が小さい。また、通常のバイナリー発電と異なるのは、深層水を汲み上げる工程があること。ポンプを作動させ、そのための動力として発電の一部を回す必要がある。効率の高い熱変換装置などの開発が不可欠になる。年間を通じて安定した発電が可能で、その発電ポテンシャルは1兆kWと膨大で、建設可能な国は約100カ国におよぶと言われる。

 海洋温度差発電の研究は、石油危機後世界で始まったが、石油価格が落ち着く一方で、システム技術の課題などが明らかになり下火になった。日本でも、1974年に始まったサンシャイン計画に取り上げられ、1979年には島根沖で初の洋上実験が行われたが、その後中止になった。


資料5.30kW海洋温度差発電システム
(出所:佐賀大学)
 こうしたなかで、佐賀大学は研究を継続してきた。2003年3月に世界初となる総合海洋エネルギー研究センターが完成。OTEC(ウエハラサイクル、30kW)、海水淡水化(10t/日)、水素製造及び貯蔵、リチウム回収の基礎実験装置および海洋深層水環境模擬実験装置で構成する。建設に当たっては、熱交換器開発・製造メーカーのゼネシスが協力している(資料5)。

 定格30kWのOTEC装置が伊万里に設置されているが、現在稼動している世界で唯一のプラントである(資料5)。日本は、数十kW級の実証研究ではトップクラスの実績をもつが、同大学の成果に負っている。

 佐賀大学は1994年に、熱効率がトップレベルのウエハラサイクルを開発した。アンモニア・水混合液を作動流体に使い2段階で発電する。また、蒸発器と凝縮器に独特のプレート式熱交換器を用いる。従来高効率とされるサイクルよりも10%程度上回ると試算しており、12カ国で特許をもつ。混合液は熱効率が上がる一方で、熱交換器の電熱性能が低下する懸念がもたれており、これらの克服が課題となっている。

 海洋温度差発電のコア技術は熱交換器、高効率発電サイクル、システム制御、プラントシステムになる。ゼネシスは、チタンを利用したプレート型の熱交換器を開発しており、温度差発電特化型として高い評価を得ている。

 2011年、このシステムがNEDOの実証事業として採択された。佐賀大学が神戸製鋼所の協力で、高性能熱交換機の要素技術である伝導促進加工チタン薄板を開発している。コストを削減するためには、高価な熱伝導素材の使用料を減らす必要があるが、一方で深層水の温度を極力無駄にしないことも不可欠であり、この二律背反へのチャレンジが求められる。成功すれば10%のコスト削減が可能になる。

 沖縄県も温度差発電の実証事業に取り組んでいる。久米島に沖縄県海洋深層水研究所があり、これを利用してIHI、ゼネシス、横河電機が佐賀大学の協力を得て、50kW程度のプラントを建設する。2013年3月に実証設備が稼働する予定である。商業化を視野に入れた実海域での実証試験は世界初である。久米島の研究所は、深層水の持つ栄養価の高さなど素材性に着目して設立された。エネルギーだけでなく素材としての価値を併せて利用することで経済性を高める研究も検討されている。

温度差発電の実用化を目指して

 海外勢も開発に復帰してきている。ロッキードマーチンは、ハワイ沖で1万kW級の建設を目指しており、フランスのDCNS(旧海軍造船局)はインド洋の同国領の島で1万kWの建設を予定している。台湾、韓国も熱心に進めている。

 温度差発電は、規模の経済が働く。取水管の設置に要する費用がコストの半分を占めており、この比率を下げる必要がある。数百kW以下では発電だけでは経済性を確保できず、海水淡水化、漁場造成、水素製造・リチウム回収などの複合利用が不可欠になる。発電コストは、設備利用率90%を前提に1MWでkWh当たり50円、10MWで20円、100MWで10円と試算されている。1MWは発電コストの高い離島での可能性が拓ける。10MW以上では、需要量が確保できる本島での利用になる。佐賀大学は、沖縄実証後早期にMW級の開発を進める予定である。

 今回紹介した海洋エネルギーは、息の長い開発が必要な海洋エネルギーのなかでもより長期を要する。海流・温度差は、浮体式洋上風力と同様にこれから開発が本格化する分野で、国内でも適地が多く、その意味でも注目される。

 5回にわたり海洋エネルギーを解説してきた。再生可能エネルギーの最後のテリトリーとも言える。海洋国家としての日本の底力が試されている。


山家 公雄(やまか・きみお)

1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行入行、新規事業部環境対策支援室課長、日本政策投資銀行環境エネルギー部課長、ロサンゼルス事務所長、環境・エネルギー部次長、調査部審議役を経て現在、日本政策投資銀行参事、エネルギー戦略研究所取締役研究所長。近著に『今こそ、風力』


再生可能エネルギーの真実

今年7月1日から固定価格買い取り制度(日本版FIT:Feed In Tariff)が導入されるのをはじめ、日本が再生可能エネルギーの普及に本腰を入れ始めている。この連載では、風力や太陽光などの発電の種類ごとに、その実力と課題を解説する。


05. 2013年3月17日 07:02:28 : 3nTXkp9TvA
化石燃料にしろ、ウランにしろ、採掘や精製や輸送手段に手間が掛かる
エネルギー資源の方が独占し易く、価格を自由に設定し易い…
というのが有るのではないでしょうか?
各家庭毎に太陽電池発電されてはエネルギー資源の独占は出来ないし、
地熱や風力も「燃料」というわかりやすいカタチでないから
今イチ儲けが出にくいとか…?

06. 2013年3月19日 06:48:13 : eDSpB4Kx1M
01に同意
海外に流出していた資金が国内で回る。このことだけでも凄い経済効果を生むだろう。天然ガスの2倍や3倍の価格でも、積極的に進めるべし。
地熱発電と違って、火力発電に関する既存のインフラが、若干の手直しをするだけで利用可能であることだ。
自動車についても、石油からガスへの転換は可能だ。これも少しの改良で実現できる。

07. 2013年6月01日 10:41:26 : 8edmQxe8lA
日本には地熱がある。
天然ガスが必要であれば南関東ガス田を掘ることもできる。

メタンハイドレード騒ぎは、日本に無駄金を使わせようという宗主国の意向が働いている。


08. 2014年2月02日 01:19:11 : Em2BlmV28c
メタンハイドレートの利用が「まだ無理」というのは全然「嘘」。
そもそもメタンハイドレートは、政府+東大が開発を行っている採掘の困難な太平洋側ではなく、日本海側には「塊」の状態で「大量」に眠っていることが現段階の調査途中で判っている。日本海側ではちょうど露天堀のような形で採掘できるので、「採掘」も「分離」「利用」も容易である。
しかも海底に「塊」の形で眠っているので、漁船探知機で簡単にみつけることが出来る。(この調査手法は日本の独立総合研究所が国際特許をとっている)

既に韓国はシェル石油と組んで、竹島近隣の海底に眠っている6億トンに達するメタンハイドレートの採掘を行うことを世界学会で発表している。
 ▼
https://www.youtube.com/watch?v=W0wTXDLZzZw&feature=player_detailpage
https://www.youtube.com/watch?v=_oEF5oGdWB8&feature=player_detailpage


09. 2014年2月02日 01:22:48 : Em2BlmV28c
ちなみに、日本海側のメタンハイドレート調査については、様々の妨害工作がある模様。

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