★阿修羅♪ > エネルギー2 > 948.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
世界で広がる「再エネバッシング」の裏側 日本は先行ドイツを見習うべきか
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/948.html
投稿者 SRI 日時 2013 年 10 月 22 日 00:58:52: rUXLhToetCnYE
 

世界で広がる「再エネバッシング」の裏側

日本は先行ドイツを見習うべきか

2013年10月22日(火)  山根 小雪

 今年も再生可能エネルギーへのバッシングが強まる時期がやってきた。

 10月15日、ドイツの送電会社4社は、2014年の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)にともなうサーチャージ(賦課金)の金額を発表した。これは、毎年の恒例行事である。

 来年は今年に比べて18%増の1キロワット時あたり6.2セント(約8.3円)になる。ちなみに2013年のドイツの家庭向け電力料金は1キロワット時当たり28.6セント。このうち再エネ賦課金は5.3セントだ。

 10月11日には、再エネ賦課金の金額の公表に先んじて、欧州の大手電力10社のCEO(最高経営責任者)がずらりと顔を揃えて会見を開き、「FITは廃止すべき」と訴えた。9月末にはドイツの電力会社などで構成する独エネルギー水道事業者連盟(BDEW)も、FITによる負担増を指摘する声明を出している。

 ドイツがFITを導入したのは2000年のこと。日本はドイツに遅れること12年、昨年ようやくFITを導入したばかりだ。いわば日本にとってドイツは再エネ政策の先生だ。そのドイツの制度が揺らいでいては、日本の制度設計へ不安を感じる声があがるのも、やむを得ないことかもしれない。

 確かにドイツ国内では、電力料金の引き上げに繋がるFITに対して批判の声がある。ただし、欧州の電力会社がこぞってFIT廃止を求めているからといって、制度そのものが失敗かと言えば、そうではない。

経営悪化に苦慮する欧州電力会社

 こんなデータがある。2005年のドイツの電力市場は、大手電力4社が約80%のシェアを占めていた。ところが、2011年にはこれが約70%にまで下落しているのだ。シェアを奪ったのは、再エネを手かげる事業者たちだ。1社ごとの規模は決して大きくないが、FITの追い風に乗って電力市場での存在感を高めつつある。

 ドイツはFITの下、再エネは一定期間、固定価格で電力会社が買い取ることが義務付けられている。ただし、買い取りに伴うコストは再エネ賦課金として広く国民が負担する。電力会社が再エネに投資すれば、新興の発電事業者と同じく、再エネによる収益を得ることができる。ところが、大手電力会社の再エネ投資はさして増えることなく、現在に至っている。

 大手電力会社にとってみれば、既に投資済みの原子力発電所や火力発電所の稼働率を高め、収益をあげることの方が重要だったのだろう。だが、こうした戦略も、昨今の政策変更によって暗雲が立ち込めている。

 ドイツが2022年までに脱原発を果たす方針を固めたことで、電力会社は巨大な初期投資と引き換えに手に入れたはずだった原発による電力をあきらめざるを得ない状況に陥っている。さらに、火力発電も風向きが悪い。

 世界銀行を筆頭に欧米の政府系金融機関は今年に入って、二酸化炭素(CO2)排出量の大きい石炭火力発電所への融資を停止または削減する方針を打ち出し始めており、石炭火力の新設は世界的に難しくなりつつある。加えてドイツでは、再エネによる発電量の変動を調整するために、大手電力会社の火力発電は電力需要の小さい時間帯でも稼働させることを余儀なくされ、効率が悪い。電力市場での販売価格の低下などが引き金になって、独エーオンやRWEなどドイツの電力大手は今夏、石炭火力や天然ガス火力発電所を閉鎖する方針を明らかにしている。

 原発や火力発電を中心にした電源ミックスを死守してきた大手電力会社の収益は悪化している。RWEのように株主への配当を減らす電力会社も出てきている。「欧州ではステークホルダーが電力会社にビジネスモデルの変革を求め始めており、電力会社の経営を考えると再エネを増やすことが欠かせない」とある専門家は説明する。

 電力会社が今回のようにFITの見直しや廃止を求めるのは当然の流れだろう。この構図自体は日本も同じだ。「FIT導入前には家庭へのコスト負担増を理由に、再エネへのネガティブキャンペーンが繰り広げられた。日本の電力会社にとっても避けたい事態だからだ」(電力業界関係者)。

電気料金が上がっても再エネ賛成のドイツ人

 ドイツのエネルギー議論が成熟していると感じさせられるのは、電力会社がFITへの反発を強める反面、多くの国民は再エネ導入を推進することに理解を示していることだ。たとえば、ドイツの消費者団体VZBVが今年実施した調査では、82%のドイツ人が再エネに舵を斬ったエネルギー政策は正しいと答えている。先月のドイツ連邦議会選挙でも、主要政党はいずれも再エネ推進を表明した。

 2000年にはわずか6%だったドイツの再エネは、現在では25%超にまで増加しており、エネルギー安全保障の大きな柱となりつつある。2020年には35%に到達する見通しだ。さらに、再エネがもたらす産業振興や雇用効果という恩恵もある。

 再エネに力を入れる発電事業者が業績を伸ばしているだけでなく、化学や鉄鋼などの素材メーカーや機械メーカーに商機が巡ってきている。ドイツでは既に35万人以上の雇用が生まれている。

 もう1つ、見落としてはならないのは、ドイツの電力料金引き上げの要因のすべてが再エネによるわけではないということだ。ドイツの電力料金はFITが導入された2000年以降、確かに上昇傾向を続けている。FITによる賦課金も上昇しているが、コージェネレーション(熱源併給)の賦課金や付加価値税などもそれぞれ上昇している。

 一方の日本はどうか。日本経済新聞電子版のアンケートでは、回答者の3分の2が「FITを評価しない」と答えている

 日本のFITは始まったばかりで、再エネ賦課金もドイツに比べると微々たるものだ。しかも、エネルギー安全保障の観点からは、日本はドイツよりもはるかに分が悪い。

 ドイツは巨大な欧州の送電網によってフランスなどの近隣国から、不足があれば電力を購入することができる。島国で隣国との送電線を持たない日本に比べて、エネルギー確保の選択肢は多い。そのドイツですら、必死で再エネを増やしてきたのだ。

 日本では再エネの占める割合はわずかに1.6%(2012年度)で、先進国の中では最低レベルだ。原発をやめて再エネで代替するといった極端な議論に終始するのではなく、エネルギーを確保するための選択肢を増やすことを考えるべき時期だ。

 日本もFITによって再エネが現在の約1.6%から、10%、15%と増えてきて初めて、ドイツと同列に条件を議論する必要が出てくる。

「太陽光バブル」だけは留意が必要

 ただし、太陽電池ばかりが一挙に増える「太陽電池バブル」のコントロールだけは、日本も早めに対応する必要がありそうだ。

 ドイツのFITを振り返ると、2000年の導入時から2009年までは再エネ賦課金の上昇率も穏やかなものだった。ところが2009年を境に太陽電池の導入量が急増し、賦課金の上昇率が跳ね上がったのだ。この間も、風力発電など他の再エネは、急激すぎることなく、着実に増えてきた。

 太陽電池の発電コストは、風力や地熱に比べて高く、消費者が支払う電力料金への影響も大きい。しかも、導入時のリードタイムが短いことから、太陽電池の買い取り価格などが好条件になると、爆発的に導入が増える。せっかく原発や火力に並ぶ新たなエネルギーの選択肢を増やそうというときに、太陽電池ばかりが増えるのでは本末転倒だ。

 FITが始まったばかりの日本は、まさにリードタイムが短い太陽電池の導入が一気に進んでいる状況にある。今後、風力や地熱なども導入が進むとはいえ、中長期が考えたときに太陽電池ばかりにならないような、買い取り条件の設定が欠かせない。

 日本が、いかにコストパフォーマンス良く、バランスの取れたエネルギーポートフォリオを作り上げられるか。再エネ政策で出遅れたからこそ、先人たちの経験を、表面上だけでなく深層まで学びたいものだ。

このコラムについて
ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20131021/254855/?ST=print  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2013年10月25日 03:40:17 : niiL5nr8dQ
大詰めを迎えるエネルギー基本計画の議論

安定供給には原子力も天然ガスも海洋も総動員

2013年10月25日(金)  柏木 孝夫

 エネルギーは、産業にとっても、生活においても、いわば血液ともいえる必要不可欠なものだ。その安定供給を確保できるか否かは、経済活動の根幹に関わり、市民の生命にも関わってくる。そして、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略においても、エネルギーの安定供給は不可欠だ。

 現在、新たなエネルギー基本計画の策定に向けた議論が大詰めを迎えている。そこにおいても、エネルギーの安定供給は最重要課題となっている。

日本にも恩恵をもたらし始めたシェールガス革命

 安定供給は、自国だけでどうにかできるものではない。日本のように資源を持たない国であれば、なおさらである。

 日本では現在、国内の原子力発電所50基すべてが稼働を停止している。電力のほとんどを火力発電に頼らざるを得ず、中でも天然ガスへの依存度が急激に増している。


米QUICKSILVER RESOURCES(テキサス州フォートワース)のシェールガス採掘現場。移動式のやぐらの導入で、採掘作業が一気に加速した(2013年9月、著者撮影)
 我が国は、石油のみならず、天然ガスも、これまで中東の産油国に多くを依存してきた。原油価格に連動し、“ジャパンプレミアム”とも呼ばれる高い価格で、天然ガスを輸入せざるを得なかった。2012年度の貿易収支は過去最大の8兆円超の赤字だったが、その半分近くは火力発電の燃料輸入費の増加によるものとなった。

 しかし、状況は一変しつつある。米国発のシェールガス革命によってだ。米国では、まるでかつてのゴールドラッシュのように、猛烈な勢いでシェールガスの採掘が進んだ。その結果、米国における天然ガス価格の指標となる「ヘンリーハブ」の価格は一時、百万BTU(英国熱量単位)当たり約2ドルにまで下落した。

 日本にとってはチャンスである。調達先の多様化によって価格上昇を抑制するという意味でも、米国のシェールガスを輸入したい。一方の米国にとっても、日本に輸出することで、価格の下落を抑えられ、外貨も稼げる。両国の利害は一致する。

 これまで米国は、自由貿易協定(FTA)を結んでいない国への天然ガスの輸出を制限していた。しかし、ここ数カ月の間に、中部電力・大阪ガス、住友商事・東京ガス・関西電力の各グループが、DOE(米エネルギー省)長官の認可を得て、輸入できることとなった。三井物産・三菱商事のグループも、まもなく輸入の許可が得られる見込みだ。ようやく日本にも、シェールガス革命の恩恵がもたらされようとしている。

原子力は維持すべき

 シェールガス革命は、世界全体の需給構造まで、大きく変えてしまった。米国はガスシフトを進め、中東からの原油輸入を減らした。それによって供給過多になった原油が価格を下げたことで、欧州は輸入量を拡大し、代わりにロシアからの天然ガスの輸入量を減らす。そこでロシアは日本へ積極的に輸出しようとしている。こうした動きを的確に捉え、賢く活用して価格上昇を極力抑えることも、これからの日本のエネルギー戦略では極めて重要だ。

 エネルギーの安定供給を考えるうえで、原子力も決して忘れてはならない。以前から一貫して主張してきたように、原発は一定数を維持すべきで、安全性が確認されたものは速やかに再稼働すべきであると、わたしは考える。天然ガスなど他のエネルギーの輸入価格が上昇することを抑制し、安定供給による産業の国際競争力向上にも寄与するからだ。

 エネルギー基本計画の策定に向けて議論する、経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の第7回会合が、10月16日に開催された。この回の議題は、「今後の原子力政策について」だった。そして、以下の7つの課題について議論した。

(1)原子力事故への備えの充実
(2)更なる安全性向上とそれを担う人材・技術の強化
(3)国民の信頼回復/立地地域との関係構築
(4)高レベル放射性廃棄物の問題解決への取組み
(5)核燃料サイクル政策の取組み
(6)世界の原子力平和利用/核不拡散への貢献
(7)今後の原子力事業環境の在り方

 まず何よりも重要なのは、(1)、(2)の安全性の問題だ。原子力は総合工学である。シビアアクシデントを起こさないように、ハードもソフトも、あらゆる技術を総動員し、リスクマネジメントしなくてはならない。それによって世界最高レベルの安全性を実現することは、シビアアクシデントを起こした当事国である日本の責務といえる。

 安全性に関しては、事実を明確に理解しなくてはならない。シビアアクシデントを起こしてしまった福島第一原発もあれば、起こさなかった女川原発もある。その違いは何か。端的に言えば、電源喪失に帰着できるだろう。その対策を確実に強化することが重要だ。

ガスシステム改革や海洋エネルギー開発も

 (4)の高レベル放射性廃棄物の問題には、これまで以上に国が積極的に関与すべきである。例えば、最終処分場に関しては、今までのように自治体に手を挙げさせる方法では、いつまでも進展しない。国内外を問わず、地質学など科学的な見地から、最適な候補地を選定し、国が主導して進めることも必要だろう。国際共同利用施設のようなかたちにすることも検討すべだ。

 原子力を維持するには、(7)の今後の事業環境の在り方として、賠償問題や人材育成などを真剣に考えなくてはならない。事故を起こした場合の賠償に関しては、日本のように事業者の責任範囲が無限に定められた国ばかりではない。米国、英国、フランスなどでは、有限になっている。日本でも、国が関与するなどして、有限にすることも考えるべきだろう。そうでなければ、現実問題として、事業の継続が難しくなってしまう。

 人材育成の面からも、原子力を維持できる環境を整備することは不可欠である。即時であろうと将来的にであろうと、原発ゼロを目指すのであれば、新たな人材は集まりにくく、育ちにくい。世界最高レベルの技術を継承できなくなってしまう。中国や韓国をはじめ、新興国も含めて世界は原発を捨てないのが現実である。より安全な原発を建設し、その運用技術を世界に提示すると同時に、そのための人材を育成していくことも、シビアアクシデントを起こした当事国としての責務だろう。

 新たなエネルギー基本計画は、安定供給および成長戦略の観点から、あらゆる政策を盛り込む方向に進みそうである。

 成長につながる規制改革として、電力システム改革のための電気事業法改正案が、今臨時国会(第185回臨時会)の初日の10月15日に閣議決定され、内閣提出の第1番の法案として受理された。同様な規制改革として、ガスシステム改革の検討も始まり、これも新たなエネルギー基本計画に盛り込まれる方向だ。

 また、海洋エネルギー開発についても、積極的に開発する方針を盛り込むことになりそうだ。メタンハイドレートや、洋上風力、波力、潮力などの再生可能エネルギーの開発を進める。

 これらを盛り込むための議論の時間が必要で、新たなエネルギー基本計画の策定は、少なくとも年末までかかることになりそうだ。

このコラムについて
エネルギー革命の深層

エネルギー基本計画、原発再稼働問題、再エネ特措法、電力改革……。東日本大震災以降、歴史的な転換期を迎えているエネルギー政策の抜本的な見直しについて、議論の現場、その舞台裏、水面下での攻防などを交えて、ニュースの報道などだけでは分からない「深層」を、国のエネルギー政策づくりに長年かかわり続けてきた筆者が解説する。

[12削除理由]:無関係な長文多数

02. 2013年10月30日 07:53:33 : wyVw1RueP6
まず原発の発電能力の過大評価がある。
原発1基100万kWが1年間の稼働率(設備利用率)は震災前で約65%ほどで、年間の発電量は57億kW*1となり、
太陽光発電の発電量194億kWh*2なので代替する電力量は原発3.5基分*3となる*4

次に話の重点である、賦課金についても誤りがある。このままでは20年で2013年5月現在の設備認定容量1937万kWだと、
その買取総額は20年間で16兆2156億円となる。それは間違いではない。しかし、実際に課せられる賦課金は買取総額から
回避可能費用*5を引いたものになるので、その額がそのまま請求されるわけではない。
その回避可能費用は計算すると3兆8740億円となるので*6、実際に電力消費者に回される請求書の金額は20年間で12兆3389億円となる。

もちろん20年間だと12兆3389億円というのは、たしかに十分大きい金額だ。それが1世帯あたりの電気料金となると一体いくらかかるかを試算してみた。
まず年間の賦課金は6169億円となる。これを国内の総消費電力量9000億kWhで割ることにより、1kWhあたりの金額を計算すると0.685円/kWhとなる。
標準世帯だと一般的に月々約300kWhの消費という話なのでこれをかけると300kWh*0.685円/kWh=約200円となる。
つまり、1世帯あたり月々たった200円、缶ジュース2本にもならない金額で原発3基分の再生可能エネルギーでできた電力を得ることができたということになる。

今後買取価格が下がっていくことも考えるとそれで経済が立ち行かなくなるほどの電力料金が高騰することも、ドイツ並み*7になることも、考えにくいだろう。

*1:100万kW*24時間*365日*0.65=56.9億kWh
*2:1937万kW*1000kWh/kW=193.7奥kWh
*3:194億kWh/57億kWh=3.4
*4:さらに言えば記事で使っている太陽光発電の設備容量2150万kWを計算に使用するならば、その場合の電力量は3.77≒約原発4基分と言える。
*5:ようは太陽光発電が供給した結果、その分不要になった燃料費のこと
*6:回避可能原価を10円として、1937万kW*1000kWh/kW*20年*10円/kWh=3兆8740億円 となる。
*7:2013年時点で月1世帯あたり1500円ほど、10年前からFITを導入している分かかる費用がでかくなってしまっている

http://d.hatena.ne.jp/tei_wa1421/


03. 2013年11月12日 00:49:47 : niiL5nr8dQ
エネルギー自給率160%の町、その新たなる挑戦
岩手県葛巻町、優秀な若者を呼び込む施策とは
2013年11月12日(Tue) 川嶋 諭
経営力がまぶしい日本の市町村50選(20)

 岩手県葛巻町は知る人ぞ知る最も有名な日本の地方自治体の1つである。その理由は何と言ってもエネルギー自給率が160%を超えるという、エネルギー立国ぶりにある。東日本大震災で原子力発電に疑問符がつくはるか前から自然エネルギーに着目し、風力や太陽光、バイオマスなどの自然エネルギー開発に力を入れてきた。

 そしてもう1つが、もう古くなってしまったが「じぇじぇじぇ」で有名になった岩手県久慈市の隣町ということだろう。ただし、久慈市に行くには山を1つ越えていかなければならない。また盛岡など岩手県のほかの町に行くにも山を越える必要がある。

 それほど山深く農業や林業以外に目立った産業がなかったために過疎化の進展が急速で、そこに強烈な危機意識が芽生えたことが「エネルギー立国」に目覚めるきっかけとなった。日本中から毎年多くの見学者を集め、地方自治のモデル地域の1つと見なされるようになった。

 しかし、実は、その取り組みは完成の域に達したと言うにはほど遠い。エネルギー完全自給という華やかな施策の裏で人口の流出が止まらないからだ。

 ただし、それは町の経営が失敗していることを意味するのではない。むしろ成長痛と呼ぶべきものだろう。町は問題点をよく把握しており、若者を呼び込むあの手この手の施策を用意し実行し始めている。

 また、有名になったエネルギー自給も、例えば地熱発電には全く手を出していないなど、さらに大きく進展する可能性がある。

 過疎に苦しむ地域をいかに蘇らせるか。葛巻町の取り組みは、日本の未来を懸けた壮大な実験と言えるのかもしれない。目の離せない自治体の1つである。

クリーンエネルギーは第1次産業を一歩ずつ前進させてきた結果

川嶋 葛巻町は早くから風力や太陽光、バイオマスなどクリーンエネルギー発電に力を入れ、エネルギー自給率166%の町になりました。その経緯からお聞かせいただけますか。


岩手県葛巻町の鈴木重男町長
鈴木 そもそも町でエネルギーを自給しようという考えはなかったんですよ。

川嶋 え、そうなんですか?

鈴木 私たちは町の基幹産業を第1次産業に据え、それを一歩ずつ前進させてきただけです。バブルの頃も含め、どんな時代も淡々とやってきました。

 昭和20〜30年代は燃料が木炭だったので、町内の山林所有者は裕福でした。しかしそれが石炭、さらに石油に代わり、薪や木炭などが使われなくなってきた。それでも山で木を切ったら植える、管理して育てるということをずっとやってきました。

 また、東北一の酪農の町になりたいという夢を描き、昭和50年当時、町には乳牛が約5000頭しかいなかったのを1万頭に増やそう、牛乳も1日30トンの生産から100トン生産する町にしようと取り組んできました。そういう林業と酪農の町づくりを推進してきたんです。

川嶋 その一歩ずつというのがすごく大事だと思うんですね。地方の多くはそれができず衰退していきました。例えば、林業も多くの地方で管理ができず荒れ果ててしまった。それができた理由はなんですか。

鈴木 山の管理は森林組合が中心となって行っていますが、町も財政的に森林組合をずっと支援し続けてきました。昭和30年代から、平均で年間数千万円です。

川嶋 結構な額ですよね。それを昭和30年代から50年以上も続けてきたと。

鈴木 そうやって第1次産業を一歩ずつ前進させてきた結果として、いまのエネルギー自給があるんです。


くずまき高原牧場。子牛や羊の世話、シイタケ栽培、アイスクリーム作りなど自然に触れる様々な体験ができる
 例えば、酪農の町をつくるにしても、平地がないから山の上を活用して放牧場をつくり、採草地をつくった。そうしたらそこにはいい風が吹いていて、風車を回そうということになって、風力発電が始まった。

 また、牛の数が増えたら糞尿の処理をどうするかという問題が起き、それを活用したバイオマスプラントができた。

 さらに、いまは化学肥料をどんどん使う時代ではないということで、牛の糞尿を堆肥化して、畑に還元しようと。いま葛巻の農業は化学肥料をほとんど使っていません。ほぼゼロです。

川嶋 ほとんど有機農業ということですか。

鈴木 ほぼ有機です。化学肥料はゼロではないですが。そういったことを一歩ずつ進めながら地域循環型の農業になってきたんです。

 林業も間伐材が売れないので、間伐材を使ってバイオマス用のチップにする、あるいはそれを活用して木質バイオマス発電をやろうとかですね。我々がやってきたのは決して先進の町づくりではなく、淡々と第1次産業を推進してきた結果にすぎません。

生ゴミをバイオマスプラントの燃料に活用

鈴木 いま世界的にエネルギー問題が言われていますが、私は食糧問題のほうが深刻だと考えています。

 日本の人口は減る傾向にあるけれども、世界の人口は増えている。一方で、穀物の生産はそれほど増えていない。これまで日本はカネにものをいわせて海外から食糧を買ってきたわけですが、これからはそうはいかないと思うんです。

 そんな中で、日本では毎日大量の食品が捨てられています。ここにまずメスを入れるべきです。食品に消費期限や賞味期限などを表示する必要はなくて、単に「食べられるまで」と表示すればいいと思うんです。買った人は自分の責任において食べればいい。

 生で食べられなくなったら火を通す。火を通しても食べられなければ、次を考えればいい。人が食べられなければ、家畜に食べさせればいい。家畜も食べられなければ、堆肥化して、肥料として畑に入れて、もう1回食に帰るようにする。

 とにかく、食べ物はゴミに出してはいけない、という法律を作るべきです。葛巻町は昨年秋から、ゴミ焼却場に生ゴミを出してはならないということにしました。

川嶋 生ゴミはどうやって処理しているんですか。

鈴木 町が収集車で集めてバイオマスプラントに運んで、エネルギーに変えています。当初、このゴミ分別は浸透するまでに時間がかかるだろうなと思ったんですね。以前は生ゴミも紙クズも一緒に出していましたから、楽だったわけですよ。

川嶋 燃えるゴミと燃えないゴミの分別ですね。

鈴木 ええ、わが家もそうやってました。その燃えるゴミを紙クズと、台所から出る野菜クズとか豆腐のような食べられるものなどを分けて出す。これは浸透するのに時間がかかるだろうなと思ったら、始めて1カ月で燃えるゴミの量が25%減ったんです。今は約31%減です。

川嶋 1年でそれだけの効果が出たわけですね。やればできるんですね。

鈴木 そう、できるんです。みんな協力してくれる。


鈴木重男町長の著書『ワインとミルクで地域おこしー岩手県葛巻町の挑戦ー』(創森社、1905円、税別)
川嶋 ただ、費用の問題はどうですか。分別して集めるとおカネがかかりませんか。もちろん意義は分かるので、多少おカネがかかってもやるべきだとは思いますが。

鈴木 確かにそこは微妙なところで、おそらくトントンだと思います。というのは、ゴミの量が減ればゴミ焼却炉の延命化につながるんですよ。

 焼却炉の寿命は20年くらいで、新設するのに100億円程度かかる。その炉の延命化になることと、炉を燃やすための石油の量が減ることなどを計算すると、トントンくらいかなと。

川嶋 トータルで見るとトントンか多少のプラスになると。

鈴木 そうです。それと、おカネの問題以外に、町民の間にムダにしないという意識が生まれます。

川嶋 意識改革が一番大事ですね。

都市と山村は、ないものを補い合う「連携」関係への転換を

鈴木 戦後68年、日本の都市と山村の関係は「取引関係」でした。売った買ったという取引。都市は山村に対して、買ってやるから作って持ってこい、と。その取引で、山村は1回も勝ったことがない。

川嶋 0勝68敗ですか。

鈴木 全敗。山村は負け続け、衰退疲弊し、都市だけが大きくなった。

川嶋 買う方が強かったということですね。

鈴木 だから今後は取引はしない。これからは「取り組み」の時代です。

川嶋 「取引」から「取り組み」ですか。

鈴木 そうです。山村の持っている力を都市の人たちに理解してもらって、我々も都市の役割というものは理解しながら、お互いにないものを補い合う。つまり連携です。

 それはおカネだけでなく、人もそうです。過密の都市と過疎の山村の差を少なくするために、都市住民に山村に来てもらわないと、山村は今後やっていけなくなる。


葛巻町役場
 現在、日本の国土総面積の57%が過疎地と言われています。そこに住む人は人口の8%程度、1200万人もいない。人口の1割にも満たない人間で、6割の国土を保全することなどできないわけです。

 都市住民に山村に来てもらわなければならない。そこで葛巻では、都市住民を受け入れる体制をつくっています。

川嶋 具体的には何をしているんですか。

鈴木 葛巻町に来て、家を建ててくれたら300坪の土地を差し上げますと。ただし、新婚さんの場合、夫婦どちらかが45歳以下という条件があります。以前は年齢の条件はなかったんですが、若い世代、子どものいる世代に絞ろうと。

 そのほかに、モノを作る力のある人、すなわち職人を育てる取り組みをしています。いま日本は職人を粗末にしています。モノづくりの職人が昔は町中に何人もいました。桶屋、下駄屋、鍛冶屋、何でもあったけど、いまは何もない。

 時代的に下駄屋や桶屋が復活するのは難しいと思いますが、ガラス細工や木工品、陶芸などいろんなモノづくりの職人を育てていきたい。そこで職人になろうという人に町が補助金を出しています。

川嶋 都会から職人を呼び込むんですか。

鈴木 いまは町内だけですが、将来的には外からも呼びたいと考えています。職人を育成して町に工房をつくりたいんです。工房をつくるには2000万円ぐらいかかるだろうと見積もって、その8割を補助金として出そうと。

川嶋 8割とはなかなか太っ腹ですね。

鈴木 2000万円の8割とすると1600万円ですね。しかし、こんな小さな町に10軒も工房ができたら、町が変わると思うんですよ。

 陶芸家がいたり、ガラス細工の作家がいたり、お菓子職人がいたり、木工とか何か作る人がいたり。10軒で町が変わるのであれば、1億6000万円は決して高くはないのではないかと。

川嶋 工房が10軒あったら、外からいろんな人が来ますよね。いつから始めたんですか。

鈴木 昨年からです。すでに酪農家の女性グループがジェラート工房を立ち上げました。

再生可能エネルギーで電気料金を下げ、企業誘致を図る

鈴木 都市と山村の連携についてさらに言うと、山村としては企業の誘致にも取り組む必要があると思います。

川嶋 日本の企業はどんどん海外に出ていっていますが、どうやって誘致するんですか。

鈴木 安いエネルギーを供給するんです。

川嶋 なるほど。電気代が安ければ、企業が来る可能性がありますね。

鈴木 例えば、国がいまの電気エネルギーの3割は再生可能エネルギーにし、何年までに達成するという数値目標を決めれば、電気を大量に使っている都市部は何とかしなければならない。

 その時はエネルギー自給率166%の葛巻に来ればいい。電気代は現在22円(1kwh当たり、全国平均)ですが、これを15円ぐらいにする。30%以上安くなります。

川嶋 日本の電力システムの考え方は本当におかしいですよね。企業を海外に出さないためには何をしなければいけないのか。法人税の減税もあるけれど、電気代を下げるというやり方もある。もっと国家戦略的に、真剣に考えなければダメですよね。


くずまき高原牧場のメガソーラー
鈴木 そうなんですが、そこに風穴を開けるのはたいへんなことなんですよ。国や研究機関、エネルギー業界など、全関係者の理解と合意、協力が必要不可欠なんです。

 でも、原発はもうやめようよと。再生可能エネルギーをどんどん増やして。ただ、再生可能エネルギーは儲かるという感覚はよくないですね。

 これは先行投資ですから、この先20年は儲からなくてもしょうがない。しかし、20年後はいまより安くしなければならない。そのためにどうするか。エネルギーの地産地消です。

鈴木 エネルギーは遠くに運ばず、作ったところで使う。そのためには、一般事業者の新規参入ができる環境をつくることです。それには送電線を開放しなければいけない。

川嶋 本当にその通りです。発電と送電はそれぞれに任せなさいと。

鈴木 そう、分離です。これは電力会社10社をつぶせということではなくて、電力会社は安定しない電源を集めて、精製して質の高い電気に作り替えるということをやってくれればいいんです。電力会社と連携しながらやっていこうということです。

川嶋 仕組みを変えていくということですね。

町長自ら医師をスカウト。豊かな自然を生かした医療の産業化も

鈴木 葛巻では現在、医療の充実も図っています。これは私の2期目の公約です。

川嶋 何をされているんですか。

鈴木 老朽化した町立病院の建て替えと、医師を増やすことです。周辺の町では医師がいなくなって、病院が診療所になったり、ベッドが無くなったり、閉鎖になったりしている。

 私が町長に就任した時は、町立病院には医師が2人しかいなかったんですが、いまは5人います。

川嶋 医師を確保するのはたいへんですよね。特に地方は難しいと思います。どうやって3人も増やしたんですか。

鈴木 人脈を使って会いにいってお願いするんです。「来てください」と。東京や長野など県外にも行きます。いま、すでに2015年4月から来られる先生が決まっています。山形から来る31歳の若い内科の先生です。

 この先生の子供が葛巻小学校に入ります。それで高校ぐらいになったら東京へ出て、医師になって、最終的に葛巻に戻ってくれるといいなと。山村からは、なかなか医師になる人が出ません。それが医師不足につながっている面もある。

川嶋 お医者さんの子供が小学校に入れば、周りの子供たちに刺激を与えて、もしかしたら医学部を目指す子供も出てくるかもしれないですね。

鈴木 葛巻高校の生徒には、医学部に進んだら町が学費をすべて出すからと言っています。

川嶋 それは素晴らしい。私立の医学部でもいいんですか。

鈴木 かまいません。県はすでにやっています。例えば、私立の岩手医科大学には15人の地域枠があって、県内の高校出身者を優遇しています。親は国立大学医学部と同じ授業料だけ払えばいい。年間60万円弱ですね。あとは県が出すという制度があります。

川嶋 面白いですね。第1次産業が盛んで、クリーンエネルギーがあって、職人の工房があって、そこに充実した医療がある。

鈴木 今後は医療も1つの産業になるかもしれません。豊かな自然環境の中で、1カ月ほどリフレッシュもしながら人間ドックを受けたりするわけです。

川嶋 富裕層が来るかもしれない。インターネットの時代だから、半日は診療などを受けて、半日は仕事することだって可能ですよね。

鈴木 ほかに野菜を作ったり、牛にエサをやったり。

川嶋 そうやって自然の中で過ごすことで体が活性化して元気になりますよ。

鈴木 そうするとこんな山村でも、医療が1つの産業になる可能性があると思っています。

【数字で分かる葛巻町の財政事情(平成23年度)】(協力:大和田一紘)

葛巻町は類似団体と比較しても地方税が少なく、財政力指数注1が低い。

○人口1人当たりの地方税
葛巻町:67,713円 ⇔ 類似団体:105,186円

○財政力指数
葛巻町:0.15 ⇔ 類似団体:0.25

少子高齢化、過疎化の進行による人口減少や、全国平均を上回る高齢化率(平成23年度末37.9%)に加え、町内に大型企業が少ないことなどにより財政力指数が低く、類似団体の中でも最下層に位置している(111団体中97位)。特に人口減少率が8.9%と(平成17年と平成22年の人口比較)、依然として高水準であることが非常に気になるところである(平成12年と平成17年の比較では8.1%の減少)。東北一の酪農地域であることと盛岡市や八戸市という大きなマーケットに近いという地理的優位を生かして、酪農の6次産業化などを推進することで若者向けの雇用創出を図るなどの対策が必要と思われる。

一方では、第5次行政改革大綱(平成23年策定)に基づいた歳出の徹底的な見直しにより、行政の効率化、事業の重点化が徐々に成果を出しつつある。具体的には経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費などの経常的な支出に充当された経常的な収入の割合)については、前年度対比で、人件費が△2.6%、公債費が△25.7%と大幅に減少した。行政改革大綱において「人件費の抑制」と「地方債現在高の削減」を目標に掲げ、全庁的に財政健全化に取り組んだ結果、経常収支比率も4年連続で改善が見られる。

○経常収支比率
平成19年:91.9% ⇒ 平成23年:85.7%

○地方債現在高の推移
平成15年:94.7億円 ⇒ 平成23年:60.6億円

さらには、公共事業の重点化による投資的経費注2の抑制により行政運営経費の節減が図られているところも注目に値する。

○人口1人当たりの投資的経費(カッコ内は普通建設事業費)
葛巻町:141,736円(87,836円)⇔ 類似団体:155,188円(146,140円)

注1 財政力指数(3カ年の平均値)= 基準財政収入額 ÷ 基準財政需要額
基準財政収入額…自治体の標準的な収入である地方税収入の75% などを対象とする。
基準財政需要額…人口や面積などにより決められる標準的な行政を行うのに必要と想定される額。

注2 投資的経費…固定的な資本の形成に充てられる予算で普通建設事業や災害復旧事業・失業対策事業などに係る経費
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38991

[12削除理由]:無関係な長文多数


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト

 次へ  前へ

▲上へ      ★阿修羅♪ > エネルギー2掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

▲上へ      ★阿修羅♪ > エネルギー2掲示板
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧