http://mainichi.jp/area/fukui/news/20100223ddlk18040554000c.html

もんじゅ：４０年の軌跡／９　１９９６年　犠牲者　／福井

　◇「体質改善されていない」

　９６年１月１３日午前６時過ぎ、東京都中央区日本橋兜町にある８階建てホテルの非常階段わきで、動力炉・核燃料開発事業団（動燃）の総務部次長だった西村成生さん（当時４９歳）が倒れていたのが見つかった。同６時５０分、死亡確認。遺書が見つかり、「自殺」とされた。

　西村さんは高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故によるビデオ隠し問題の内部調査チームの一員で、前日に開かれた記者会見でも記者からの問いに答えていた。

　「なぜ夫は亡くなったか。少しでも夫の行動が知りたい」と、西村さんの妻、トシ子さん（６４）は動燃にたずねたが、詳しいことは何も分からなかった。亡くなる１週間前からは家にほとんど帰らず、「夫がどんな仕事をしているかもほとんど知らなかった」。

　トシ子さんは０４年１０月、動燃が改組した核燃料サイクル開発機構（当時）に約１億４８００万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。「動燃にうその発表を強いられ、死に追いやられた」と主張し、真相を明らかにするよう求めたが、０７年５月、東京地裁は請求を棄却。昨年１０月には東京高裁が１審の判決を支持。納得がいかず、昨年１１月１０日に上告した。

　夫の死の原因究明は続いているのに、もんじゅは運転再開に向けて動いている−−。トシ子さんは「動燃の隠ぺい体質は組織が変わっても改善されていない。このまま再開して事故があったらまた同じ事が起こる」と警鐘を鳴らす。【幸長由子】

毎日新聞　2010年2月23日　地方版

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