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中国で進む頭部移植の研究―倫理問題惹起も
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投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 10 日 12:50:55: tW6yLih8JvEfw
 

中国で進む頭部移植の研究―倫理問題惹起も
SHIRLEY S. WANG 原文(英語)
2015 年 6 月 8 日 15:15 JST
 【ハルビン(中国)】レン・シャオピン博士(53)は10時間にわたった手術を終え、誇らしげに患者を見詰めた。それは新しい茶色の頭部を持った黒いマウスだった。レン博士が、その小さな生き物の喉から人工呼吸器を外すと、すぐに頭部は呼吸を始めた。1時間後に体が動き、数時間後には目を開いたという。
 2013年7月のその動物実験以降、ハルビン医科大学のレン博士のチームは、1000匹近いマウスで同様の手術を行ってきた。生存期間はこれまでで最高1日間に達している。同チームの成果を記した研究論文は、昨年12月に国際医学誌CNSニューロサイエンス&セラピュティックスに掲載された。
 頭部移植は現実に少しずつ近づいている。レン博士は、今夏にサルで自分の医療技術を試す予定だ。中国政府は1990年代半ば以降、画期的な成果を上げられそうなプロジェクトを中心に、科学研究分野に資金を投じている。同博士は、「中国はトップになりたいと願っている。研究で大きな利益を得られると思えば、支援資金を提供する」と話す。中国の最終的な目標は、科学大国として認められることだと専門家らは指摘する。英ノッティンガム大学のカオ・コン教授(現代中国論)は、「中国の政治指導者は中国人がノーベル賞を受賞することを望んでいる」と話す。
 中国の研究には、論争を巻き起こすものがある。4月には広東省の科学者チームが、ヒト受精卵の遺伝子を改変するゲノム編集を行ったと発表し、西側の倫理専門家や科学者はヒトのゲノム編集を中止するよう呼びかけた。レン博士の研究も議論を呼ぶ可能性がある。
• ヒト受精卵に世界初の遺伝子操作−中国チーム、国際的な物議
 同博士はハルビン生まれで、15年以上米国で研究生活を送り、シンシナティ医科大学の研究員となったが、3年前にハルビンに戻った。妻と2人の娘は米国にとどまり、博士が年に数回帰米している。レン博士がハルビンに戻った理由としては、中国政府が潤沢な資金援助を申し出たほか、米国で頭部移植の研究を進められるか疑問を持ったことがある。
 ヒトの頭部移植は、前代未聞の倫理上の問題を提起するだろう。新しい体を持った人はいったい誰なのか。ヒトの頭部移植が可能になったとしても、何人にも臓器移植ができるのに、1人がドナーの臓器をすべて受け取ることは正しいのか。
 ハーバード大学医学大学院生命倫理センターのロバート・トゥルーグ所長は、頭部移植は「個人のアイデンティティという重大な問題を伴う」としながらも、「将来的には海外で実際に行われると思う」と予想する。頭部移植などぞっとすることだと言う専門家もいる。ニューヨーク医科大学の生物倫理学者アーサー・キャプラン氏は「ばかげたことだ」とし、動物を犠牲にして実験を行う価値はないと一蹴する。


頭部を移植されるネズミ(上)と頭部を提供するネズミ Xiaoping Ren

 レン博士が頭部移植について考え始めたのは10年前だった。外科医として、同博士は不治に思える病を治すことを常に夢見てきた。同博士は1996年に米国に行き、ルイビル医科大学で5年間にわたり、マイクロサージャリー(顕微鏡手術)の訓練を受け、手の移植の先駆けとなったチームに加わった。その後、シンシナティ大学の研究員となり、臓器移植における最大の難題の1つについて12年間研究した。ドナーの臓器の虚血、つまり酸素不足を防ぐという難題だ。レン博士は徐々に「何が次のフロンティアなのか」を考え始めたという。同博士の分野では、それが頭部移植だったのだろう。
 レン博士は「米国だったら、人々は大きな衝撃を受けていただろう」と話した。同博士は1990年代終わりに行われたルイビル医科大学のチームなどによる手の移植や、その後に行われた顔の移植で、倫理学者からの批判が相次いだことを覚えていた。博士は2012年に中国に戻ったが、ロヨラ大学(シカゴ)の非常勤研究員の地位を保持し続けている。ロヨラ大学の関係者は、同大学が同博士の頭部移植に一切関与していないと述べている。
 中国では頭部移植のための資金を集めたり、承認を受けたりするのが簡単なだけでなく、実験用の動物の入手も簡単だ。レン博士は中国南部蘇州市からカニクイザルを入手できると考えている。カニクイザルは小さくて人なつこい動物だが、ハルビンの寒さに慣れるには時間が必要だとみられる。1月のハルビンの平均最高気温はマイナス14度だ。同博士はサルが地元の空港に到着後、電話さえすれば、大学に運んでもらえると考えている。
 レン博士はハルビンに大きくて真新しい研究所を設置し、神経外科医、心血管の専門家、脊髄再生の専門家、それに免疫学者を含むチームを作った。同博士の同僚の多くは、最初はクレージーな考えだと思ったが、徐々に協力に傾いていったと述べている。ある同僚は「非常に困難な課題だが、面白くもある」と話した。
 この研究に対する臓器移植専門家の意見は分かれている。ルイビル大学時代にレン博士の同僚だったジョン・H・バーカー博士は、レン博士が有能な外科医だとし、人間の頭部移植は理論上可能だと述べている。現在ドイツ・フランクフルトにあるJ.W.ゲーテ大学に在籍するバーカー博士は、免疫学と倫理的な見地からすると、手や顔の移植に似ていると指摘した。
 手の外科医で、レン博士の訓練を行ったシンシナティ大学のピーター・スターン教授(整形外科学)はレン博士の研究について、「興味深く、超未来的だが、非常に多くの点で難題を抱えた分野だ。倫理的問題や免疫拒絶のほか、頭部は非常に複雑な臓器であるため、技術的な問題、とりわけ神経再生の問題もある」と指摘した。
 レン博士は自分が死ぬまでに頭部移植が人間の医療手段になるかは分からないとしながらも、少なくとも大きく前進させて、次世代の科学者がそれを基に研究できるようにしたいと語る。今は不可能だが、将来可能になれば、脊髄損傷やがん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など病気やけがで頭部以外の部分に障害を抱える患者を救えるようにるかもしれないという。
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