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取材源の秘匿 【小倉秀夫の「IT法のTop Front」】 & 「取材源にかかわる」と証言拒否を連発【浅野ゼミ】
http://www.asyura2.com/09/hihyo9/msg/194.html
投稿者 きすぐれ真一 日時 2009 年 3 月 28 日 11:13:57: HyQF24IvCTDS6
 

小倉秀夫の「IT法のTop Front」
http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/c7422900a2746df5661e0459c6412aea
Hotwired / Blog / 小倉秀夫の「IT法のTop Front」
[Weblog] / 2005年01月03日

取材源の秘匿

 かつて孔子は、「君子は言を以て人を挙げず、人を以て言を廃せず」と言ったらしいです(『論語』衛霊公第十五)。しかし、それは、情報の信頼性を判断するのに、その出所の如何を斟酌すべきではないという意味ではありません。
 
 実際には、その情報を正しく認識する能力及び立場を有する者に端を発する情報か否か、その者には正しい情報を提供する動機があり、かつ、誤った情報を提供する動機がないか否か、その者の認識が変容せずに正しく伝達されているかということが、当該情報の信頼性を判断する上で重要です。したがって、欧米では、マスコミと雖も、情報源を秘匿しないのが原則です。
 
 もちろん欧米のマスメディアだって、権力による不正を暴く等のために、情報源を秘匿することを約束して情報提供を受ける必要がある場合もあります。ただし、ASNE(米国新聞編集者協会)の「Statement of Principles」の第6条に、

ARTICLE VI - Fair Play. Journalists should respect the rights of people involved in the news, observe the common standards of decency and stand accountable to the public for the fairness and accuracy of their news reports. Persons publicly accused should be given the earliest opportunity to respond. Pledges of confidentiality to news sources must be honored at all costs, and therefore should not be given lightly. Unless there is clear and pressing need to maintain confidences, sources of information should be identified.

とあるように、「情報源を秘匿するという約束は全てのコストを支払っても守られるべきだが、それ故、そのような約束は軽々しくすべきではない。匿名を維持する明白かつ差し迫った必要がない限り、情報源は明らかにされるべきである」というのが少なくとも米国の報道機関の基本スタンスであるようです。
 
 それは、一方では、「読者との信頼」を守るために必要とあれば、情報源との約束を破り、巨額の賠償金を支払わせるリスクを負ってでも、情報源を公開するという行動に繋がります。
 それが端的に表れたのが、俗に言うコーエン事件です。これは、ミネソタ州知事選の投票日直前に、共和党候補の運動員だったPRの専門家、ダン・コーエン氏が、地元の四人の記者に、情報源が自分であることを秘匿するという条件で、「民主党の副知事候補(女性)は、十二年前、シアーズ店で六ドル(七百円)相当の万引きをして有罪になっている」という情報を提供したが、スター・トリビューン紙とパイオニア・プレス・デイスパッチ紙は、記事にコーエン氏の名前を載せ、悪質な選挙戦術として、紙面でコーエン氏を激しく批判したという事件で、コーエン氏が両紙を相手取って損害賠償請求を提起したというものです。この事件は、州地裁で20万ドルの損害賠償と50万ドルの懲罰的損害賠償が認められ、州控訴審では懲罰的損害賠償が否定され、州最高裁では通常の損害賠償も否定されたが、連邦最高裁で州最高裁の判断が破棄差し戻しになるという複雑な経緯を辿りました。
 前澤猛氏の「「情報源の明示」を考える ― コーエン事件と鬼頭事件から」によると、「アメリカのマスコミの多くは、基本的には両紙編集責任者の姿勢を支持している。それは「取材源の秘匿に固執するより、公開に努力する方が、記事の真実性は保証され、新聞は読者の信頼を勝ち取れる」とみるからだ。そして、マスコミ、とマスコミ法学者は、この裁判が、連邦憲法修正1条と新聞の現実面に触れず、事件の争点が「契約破棄」という私法上の問題に限定されたことを強く批判している。」とのことです。

 他方、権力の腐敗を暴くような情報が提供されたような場合には、取材源の身を守る必要性が高くなります。この場合、米国のマスコミは、取材源に関する法廷での証言を拒絶し、法廷侮辱罪で収監されても、取材源を秘匿します(裁判所は、マスコミに対して、取材源に関する証言拒絶権を与えているわけではありません。)。実際、米中央情報局(CIA)工作員名漏えい疑惑では、米タイム誌の記者や米ニューヨーク・タイムズ紙の記者が、法廷侮辱罪で収監を命じられています。
 
 情報提供者との間で「取材源を秘匿する」という約束をすることはこれほど重大なことなので、前澤・前掲によれば、米国の報道機関では、そのような約束を行う権限を現場の記者に与えない等の内部規則を作っているようです。
 
 これに対して、日本のマスメディアはどうでしょうか。
 
 浅野健一氏の「「取材源にかかわる」と証言拒否を連発 健康食品会社損害賠償訴訟でNHKデスク」を見てみましょう。ここでは、「取材源の秘匿」は、(誤った内容を含む)捜査情報を非公式にリークした警察職員を庇うために「取材源の秘匿」を活用(というか濫用)されています(なお、このような「取材源の秘匿」の濫用は、NHKに限りません。)。
 
 1996年5月ころ、警察は、ある医師の告発を信じて、札幌の食品会社「玄米酵素」の事務所等を、薬事法違反の疑いで家宅捜索しましたが、結局、薬事法違反の事実は発見されませんでした(その後、嫌疑不十分で不起訴となりました。)。これが事件の発端です。なお、警察は、この家宅捜索について、正式な記者会見は行いませんでした。ところが、NHKは定時ニュースにて、「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた札幌の食品会社『玄米酵素』の事務所や工場を警察などが薬事法違反の疑いで家宅捜索しました」と報じてしまいました。そこで、「玄米酵素」が警察を相手取って国賠訴訟を、NHKを相手取って損害賠償請求訴訟を提起しました。
 
 警察は、家宅捜索の件をNHKにリークしたことを否定していましたが、捜索差押え令状に関する審理は公開の法廷では行いませんし、たまたま警察が「玄米酵素」に家宅捜索に入った場面を目撃したところで詳しい容疑までは分かりませんから、警察関係者がリークしたことは明らかです。ですから、この事件では「取材源の秘匿」といっても警察関係者のうちの誰がリークしたのかということを秘匿しているにすぎません(警察は、そもそも警察関係者がリークしたと言うこと自体否定していたようですが。)。そして、所轄の警察署の意思として家宅捜索の事実をNHKにリークしていた場合、取材源を明らかにしたとしてもリークした個人が処分される理由はありませんし(警察が国家賠償等の対象となることはあるかもしれませんが。)、所轄の警察署の意思とは離れて個人的に家宅捜索の事実をNHKにリークした場合は、そのリークをした人は、国家公務員法上の守秘義務違反として処分されることはあるかもしれませんが、かばい立てする理由はありません。薬事法違反を行っているという告発を受けて警察が「玄米酵素」の工場等を家宅捜索を行った段階では、薬事法違反の嫌疑が明白であるとは未だ言えないのであり、警察がこの段階での正式な記者会見を控えると言うことは、「玄米酵素」の名誉や信用を徒に傷つけないように配慮するという観点から正しいと言えるのであり、組織としてのそのような正当な判断を個人の独断で勝手に打ち破るというのは処分に値するし、他方、「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた札幌の食品会社『玄米酵素』の事務所や工場を警察などが薬事法違反の疑いで家宅捜索した」という事実には「玄米酵素」が劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していたという事実とは全く別個の独立した報道価値などないからです。
 
 したがって、ASNEの「Statement of Principles」に示された基準に則るならば、「玄米酵素」事件の場合、そもそも「取材源の秘匿の約束」をすべきではない場合にあたるというべきです。しかし、日本のマスコミは、そのような場合にも、暗黙の了解で、取材源を秘匿する旨の約束をしてしまっているようです(あるいは、特段の約束がなくとも、取材源を秘匿するのが原則だと思っているのかもしれません。)。
 
 日米の報道機関の「取材源の秘匿」に関する態度のこの顕著な差は、「真相を探求して報道する」ということに関する意欲の差に端を発しているのかもしれません。なにせよ、日本の報道機関には、その報道によって読者又は視聴者が印象づけられる事実が真実か否かを探求する気が全くありません。
 例えば、「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた札幌の食品会社『玄米酵素』の事務所や工場を警察などが薬事法違反の疑いで家宅捜索しました」という報道がなされれば、それを試聴した者は、玄米酵素が「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた」のだろうと認識することは明らかです。したがって、この件について報道するのであれば、玄米酵素が「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた」ということについて裏付け取材を行い、それが真実であると信じるに足りる資料を収集してからとすべきでしょう。しかし、日本のマスコミは、「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた札幌の食品会社『玄米酵素』の事務所や工場を警察などが薬事法違反の疑いで家宅捜索した」という事実がありさえすれば、玄米酵素は「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品」を実際には製造・販売していなくとも、「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた札幌の食品会社『玄米酵素』の事務所や工場を警察などが薬事法違反の疑いで家宅捜索しました」という報道を行い、読者・視聴者に玄米酵素が「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた」という印象を植え付けても無問題と考えているようです。
 
 自らの報道によって、読者・視聴者が誤った事実認識をしてしまいその結果正しい判断をすることが阻害されることになろうとも、あるいは報道の対象となった人・企業が不当に名誉または信用を毀損されて致命的な損害を被ることになろうとも、そんなことはどうでもよいというのが、我が国の多くの報道機関の基本的な発想です。
 
 このような考え方でいるものですから、日本の報道機関は、報道内容の真実性を根拠づける「取材源」をできる限り明示しようという考えに至らないのでしょう。そして、2ちゃんねるのような匿名掲示板や匿名blogの隆盛を見るにつけ、そのとき面白おかしければ、情報の正確性などどうでもよいというのは、日本社会に根付いた文化なのだろうかということで、新年早々暗澹たる気持ちになってしまいます。


──貼り付け終わり──


「関係者によると」といっても、その関係者が信頼に値するのかどうか判断するその材料さえ与えられないのではその関係者が信頼できるかどうかわからず、したがってその情報も信頼すべきかどうか判断のしようがない。したがって基本的には取材源は明らかにすべきである。

ということであろう。

にもかかわらず、正体を明らかにせずに「関係者によると」を連発しているのは、例えばNHKは「我々を信用してれば間違いない」とでもいうつもりなのか?

「大本営発表〇時〇分・・・」とやってたのは誰だwww


さて、その「玄米酵素」事件の話です。


──貼り付け開始──

【浅野ゼミ(同志社大)】
http://www1.doshisha.ac.jp/~kasano/FEATURES/2002/shokuhinnhk.html

2002年4月4日
「取材源にかかわる」と証言拒否を連発
 健康食品会社損害賠償訴訟でNHKデスク
浅野健一
 NHKは自分が訴えられた名誉棄損裁判では、取材した記者やデスクは「取材源の秘匿」「編集権の自由」を盾にほとんど答えない。報道の自由を守るために証言を拒否することも多い。
 例えば、北日本に本社のある健康食品会社が北海道と宮崎県、それにNHKを相手取って札幌地裁に起こしている損害賠償訴訟の場合を見てみよう。NHKが講談社を訴えている「爆弾漁法」やらせ撮影裁判と比較してほしい。

 宮崎の医師が健康食品会社の製品を服用したために体調を崩したと告発したのを受けて、北海道警と宮崎県警は、同社が甲状腺ホルモン系の医療品を混入し、製造販売したという薬事法違反の疑いで、1996年9月20日、全国11カ所を家宅捜索した。家宅捜索について当局は一切記者発表を行っていない。ところがNHKは9月20日午後3時からローカル、全国中継ニュースで同社社屋などの映像を入れて伝えた。北海道新聞と毎日新聞なども同日の夕刊で報道。他紙も翌日朝刊で報道した。混入したとされる甲状腺ホルモン剤などの「事実」が極めて詳細であり、道警本部生活安全部の課長レベルが夜回り担当の記者にリークしたと思われる。 
 その後、健康食品会社は書類送検されたが、97年11月、証拠不十分で不起訴になった。ホルモン剤を入れたという証拠など全く出てこなかった。健康食品会社の社長は96年11月、NHKを相手取って謝罪報道と計1億9800万円の損害賠償を求めて提訴。翌月には、北海道と宮崎県を相手取り1億9800万円を求めて国家賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした。
 原告は「捜索差押がマスコミなどにより大々的に報道され、創業以来25年間にわたって築き上げた社会的信用、名誉が傷つけられた。また捜索差押によって15日間の製造停止を余儀なくされ、しかも売上が激減した」と主張している。捜査当局が発表もしない捜査段階初期の出来事が、かなり断定的に全国津々浦々まで報道されてしまった。
 国倍訴訟は一審で敗訴、原告側が控訴した。NHK訴訟では、一審審理が今も続いているが、裁判所がNHKに事実上の謝罪である「遺憾表明」することで和解を勧告している。NHK側は当初、遺憾表明などとんでもないと強気だったが、最近は態度を軟化しているようだ。4月19日が和解期日になっており、最終の詰めに入っているようだ。NHKは自らが正しいと思うなら、きちんと判決を出してもらうべきではないか。喜田村洋一弁護士によく相談してほしい。対講談社裁判との整合性も忘れないでほしいと思う。
 
*「証言すると警察取材がやりにくくなる」などと証言拒否
 1998年5月21日午前中の国家賠償事件の口頭弁論では、道警生活安全部の幹部2人が出廷し、「報道機関には情報を提供していない」「夜回りの記者は来たこともない」と証言。また証人として出廷したNHK札幌放送局の篠田憲男記者は「具体的に証言すると警察取材がやりにくくなる」などとして証言を一切拒否した。
 私も同日、犯罪報道の仕組みや問題点について原告側証人として証言した。証言するに当たり、関係する新聞記事、NHKニュースを調べた。警察の捜査がかなり強引だったことと、マスメディアの報道がほとんど警察からの情報に依拠していることが分かった。最初の捜索差押の報道の際、容疑を受けた側の健康食品会社には取材がなかったようだ。警察は捜索差押について公式の記者発表を全く行っていない。捜査の端緒で大きく取材報道することが、これまでも深刻な報道被害を生み出してきた。報道を苦に自殺した人もいる。生活を破壊された人は無数にいる。
 
 NHKは1996年9月20日午後4時半頃、大相撲の中継中に報道。午後7時のニュースでも全国中継で伝えた。約30秒で次のように報じた。「たくさん摂取すると不整脈や食欲不振などの副作用があるために、劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造販売していた札幌の食品会社、健康食品会社の事務所や工場を、警察などが薬事法違反の疑いで家宅捜索しました。この食品は、厚生省の認可を受けずに甲状腺ホルモン剤の一つのトリヨードチロニンが入った顆粒で、全国各地や海外に販売されていました」。
 北海道新聞は9月20日の夕刊で「健康食品にホルモン 札幌の健康食品会社 使用者に副作用も 全国で家宅捜索 薬事法違反の容疑」(1面)「健康食品に落とし穴 健康食品会社強制捜査 医薬品との線引きあいまい」(社会面)と報道した。

*「警察が疑ったのは事実」と居直るデスク
 2000年11月14日午後2時から札幌地裁で開かれた対NHK裁判(平成八年ワ第二七六一号)の第15回口頭弁論で、NHK札幌放送局ニュース部門の副部長だった吹野俊郎氏(NHK報道局テレビニュース部チーフプロデューサー、53歳:当時)が証言した。以下は証人尋問からの抜粋である。( )内は代理人弁護士の質問で、《 》内は吹野の発言。記者名を一部伏せた。
 
 被告代理人(宮川弁護士)の尋問に、次のように答えた。
 《取材のデスクをしていました。平成八年の九月二〇日の七時のニュースを担当しました。本件ニュースの取材は司法警察のグループが担当していた。司法警察担当のキャップ(細川記者)に指示をしていました。記者たちは北海道警の幹部らに取材を重ねました。北海道警察の幹部に確認取材をしました。あてるという確認を取っております。要するに、積み重ねてきた取材、これを幹部の方に、これで正しいかどうかを確認する作業であります。一つ一つ、いわゆるあてるという作業をしまして、感触を取って、言えないとか答えられないとか、そういう日ごろの取材関係の中で、うそとか真実ということは感触でつかみます。
 大相撲中継のときは取組の合間を見てやりますので、四時を過ぎてからの取組の合間というところで放送しました。》(要旨)
(犯罪捜査のどの段階から実名で伝えるかという問題があろうかと思いますが)
 《例えば逮捕されたとか、あるいは捜索が行われたといった強制捜査に入った段階ですと、基本的に実名報道で行っております。被疑事実が事実であるかどうかを断定するようなことは、NHKの立場ではありません。解明する立場にはありません。
 起きた事実をそのままに伝えたというふうにやっています。
 捜索が行われた事実をそのままに放送したものというふうに考えております。
 故意にとか、断定的というようなことは一言もいっておりません。》(要旨)

 原告ら代理人(村松弁護士)とのやりとりは次のようだった。
 《公式発表はありません。(篠田憲男という記者がいましたか)はい。16,17日ごろから取材をしています。
(首都圏ネットワークにそういう情報が入ってきたとおっしゃるけれども、その情報は、どこの警察から入手したものですか)。
 《それについては、取材源にかかわるところがありますので、お答えを控えさしていただきたいと思います。》
(北海道警察などが大規模な薬事法違反事件に着手するという情報ですね。これは必ずしも北海道警察から入手したという意味ではないんですか。)
 《それについては、取材源にかかわることなので、控えさせてください。》
(だれから入手したかも言えませんか。)
 《はい。》
(一五日の段階で、鑑定が行われて、その結果が出ているということは入手しましたか。)
 《その情報の中には入ってなかったと思います。》
(一五日の夜そういう情報を得て、NHKとしては道警の幹部と接触を当然持ったわけですね。)
 《幹部以外も含めて。》

(どの地位の幹部からの情報を入手したんですか。)
 《そういった方々全般からということです。》
(固有名詞は結構ですから、職名と言うんですか、地位を述べてくれませんか。)
 《取材対象が絞られてくるかと思いますので、控えさしていただきたいと思います。》
(添岡という人はいましたか。)
 《私は知りません、その人は。》
(冨樫満雄という人はいましたか。)
 《私は知りません。》
(田口健次という人はいましたか。)
 《私は知りません。》
(キャップの細川さんの立場では、一九日の午後の段階で既に鑑定結果を知ってたことになりますか。)
 《鑑定が出ているということは、情報で、この段階では仕入れております。》
(鑑定結果はどこから入手したんですか。)
 《それは、取材源にかかわることですから控えさせていただきます。》
(あてる場合はどういう聞き方をするのですか)
 《私の一般の取材経験の中では、そんなこと言えないよとか答えられないとか、そういうような表現で、日ごろの取材の中で、大体うそを付いている、うそを付いてないということは分かりますし、それは念を押して何度も試みますので、その中から感触をつかめていると思います。》
(正確に言うと、捜索が行われたこと、容疑の内容を確認する義務があるということですね)
 《容疑が事実かどうかではなくて、容疑の内容を確認しております。容疑の内容がどうかということは、私ども解明する立場にありませんが、警察がどういう容疑を持って捜索を実施したか、どういう容疑内容で実施したかということは、確認する必要があります。》
(道警は、御存じのとおり、一切取材に対して中身を漏らしていないと、こういうふうに主張していることは知っていますか。)
 《知りません。》
(道警は、別の事件で、一切報道機関に対して事実を漏らしてはいないと、NHKで放送されたり新聞記事に出たので、驚いて、内部に注意をして、調査までしたと言うんですよ。
 全中ニュースのほか、衛星放送では流してませんか)
 《衛星放送では流れております。「ニュース7」がそのまま流れます。》
(トロントで見ている人がいるんですが)
 《衛星放送そのままじゃなくて、テレビ国際放送ということで流しているものだと思います。》
(一番視聴率が高いのはどの時間帯のニュースですか)。
 《一般的には夕方の時間帯になります。》
(午後七時の全国ニュースですね。)
 《はい。》
(あなたの陳述書に、最も影響の大きい午後七時のニュースで、「劇薬に指定されている甲状腺ホルモン剤の入った健康食品を製造・販売していた札幌の食品会社『健康食品会社』の事務所や工場を警察などが薬事法違反の疑いで家宅捜索しました」とこうなっている。こんなふうに全国放送されてしまったら、原告会社であたかも甲状腺ホルモンを混入した製品を製造販売しているというふうに受け取れませんか。)
[被告代理人が「もう論争になっていますから」と割って入る]
(健康食品を標榜している会社が、その食品に劇薬を入れるということは、よほど何か特別な理由があるはずだと思いませんでしたか)
 《動機については、私どもは警察の解明を待つだけです。》
(被疑者になる立場のものについては、放送前に、やはりあてて事実を確認すると、これは必要だと考えているんですか。)
 《放送前ということは、必ずしもないと思います。》
(三時、四時の段階では、警察報道をそのまま右から左に流してもいいと、そういうことですか。)
 《容疑内容と、捜査が行われた事実を現認しましたので、捜索が行われた事実を報道したということです。》
(NHKとしては、別に事実の裏付けなどは必要ないと、要するに、捜査機関から入手した情報をそのまま記事にして放送すれば構わないんだと、こういうことですね。)
 《容疑内容が確認されて、捜索が行われたということが確認された範囲では問題ないかと思いますし、そういうことで新聞の夕刊もそのように報じております。》
(今回も、問題はなかったと思っているんですか。)
 《その時点では、それで、きちんと事実を確かめた報道だと思っています。》
(今は。)
 《今もそうです。》
(家宅捜索の段階でこういう放送してしまって、これは不起訴になることもあり得るわけでしょう。その場合にはNHKとしては何の責任もないんですか。)
 《好き勝手な放送したということでしたらその責もあろうかと思いますけれども、容疑があって、法的な手続を経て捜索が行われた、その事実を放送したものでありますから、その事実は事実だということだと思います。》
(これは、道警は、こういう経済的損失とか名誉とかこういうものを考慮して、一切厳秘扱いでこの捜査を続けていたと、そうやって言っているんですよ。先ほど言いましたように、この放送に驚いて、内部で調査も行ったと、こう言っている。これは後で調書出しますからね。それは、道警においても、被疑者とされるものの立場を配慮しなければいけないと、こう考えていたということなんですよ。NHKさんは、道警から確認を受けたらそのままストレートに放送してもいいと、こういう立場であるというふうに伺っていいんですか。)
 《捜索を行われた事実を伝えたわけですので。》
(被疑事実も合わせてでしょう。)
 《はい。》
(それは構わないんですか。)
 《そういうことはあり得ます。》
(現在まで、この製品に甲状腺ホルモンは混入されていたんですか。そういう事実は確認できましたか。)
 《科警研の鑑定で混入されていると思っております。》
(この実名報道に対応するものとして、匿名報道というのを聞いたことあると思いますが、御存じでしょうか。)
 《はい。》
(被疑事実で、捜索差押え受けた段階であっても、結局は間違いであったと、あるいは犯罪は成立しないということがあり得る場合が多いと思いますけれども、そういった場合に、推定無罪を受けている被疑者に対して、匿名報道をしないで実名報道をするというのは、どういった理由なんでしょうか。)
 《推定無罪という考え方がありますし、私もそれは考え方として重く受け止めておりますけれども、この場合について言いますと、公権力が法的手続をきちんと行って捜索を行ったという事実の下に、我々は実名で報道したという判断であります。匿名にするケースもありますし、ケース・バイ・ケースで対応しております。》
(実名で報道される人と匿名で報道される人というのは、NHKの腹づもり一つで決まるということになるんでしょうか。)
 《腹積もり一つと言いますか、例えば少年犯罪ですとか、公権力が出ない段階とか、一応の線はある中で、それらを突き合わせながら実名にしたり匿名にしたりというのを考えていっているのが現実です。》
(NHKには、匿名にするか実名にするか、基準みたいな内部規約みたいのはあるんでしょうか。)
 《基本的には実名報道というのが原則で、それぞれの被疑者とか少年とか、そういう状況を考慮しながら匿名ですることもできるということで、そういったような大まかな原則というのはあります。》
(推定無罪が働き、かつ冤罪の可能性もある人たちが実名で報道された場合に、被害は甚大だと思うんですけどね、そういった被害はあえて感受すべきであるということなんでしょうか。)
 《まあ、公権力が法的にきちんと行われたという事実を報道したということで、ちょっとお答えするしかありませんけれども。》
(先ほどあなたは、被疑事実が事実か否かを解明する立場にないとおっしゃったんですね。捜索されたことを確認するんだと、捜索されたという事実を報道すればいいということになるんでしょうか。)
 《容疑内容がどういう容疑かということと、捜索されたという事実です。》
(その薬事法違反の中で、本件においては甲状腺ホルモンを混入しているとか、トリヨードチロニンが入っているといったようなことまで、なぜ報道する必要があったんですか。)
 《我々は、それを確実に確認したというふうに判断しております。》
(警察が公式発表もしないこういった被疑事実を、なぜ報道で発表しなければならないんでしょうか。捜索差押えされたという事実だけで十分なんじゃないですか。)
 《それだけで納得されるものでしょうか。捜索がありましたというだけで、どういう容疑でどういうことをしたんでどうだということは必要ではないでしょうか。それから、発表を待つということは、何も、我々は発表を待つだけが記者の仕事ではないというふうに思っています。》
 (会社が甲状腺ホルモンを混入させたということを報道しているわけですけれども、それは真実に反していたということですね。)
 《混入していた容疑の疑いで捜索したということ、その事実をここでは放送しているだけです。二〇日の段階では。》
(当時、司法警察担当の方は、細川さん、名前の出てる篠田さんのほかに、あと三人はどういう人がいたんでしょうか。)
 《若い記者が三人いました。・・・A、A、Yだったと思います。》(以上)

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Copyright (c) 2002, Prof.Asano Ken'ichi's Seminar

──貼り付け終わり──


戦争中さんざん大本営発表で国民をあおったあげく、敗戦後は「我々NHKは軍部にだまされただけだ」「悪いのは軍部であり大本営だ。我々NHKは被害者なのだ!!!」とわめきちらして責任転嫁をしてたころと全然かわってない。要は、「大本営なり警察なりがやったり発表したりしたことを我々は伝えているだけだ。」したがって我々には何の責任もないといいたいのだろう。

国民から受信料をとってその金で営業しているのだから、その使い道や使った結果に責任がないわけはなかろうがや?


責任はないと考えるからヘーキで下のような次第になる。そういえばこのころのマスコミはことごとく「自己責任!」と叫んでいたはずだが。

参考:
「アルカイダ冤罪」事件:「新聞は私を商売に使った」(謝罪したのは「日刊リベタ」だけ)【辺境通信】
http://www.asyura2.com/0406/bd37/msg/555.html
投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 10 月 21 日 07:56:29:akCNZ5gcyRMTo

 

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