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看護師の心身を蝕む過酷な“夜勤”の無限ループ 「命のガイドライン」を巡る利害関係者の綱引き - ダイヤモンド・オンライン
http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/539.html
投稿者 千早@オーストラリア 日時 2012 年 6 月 08 日 12:14:03: PzFaFdozock6I
 

http://diamond.jp/articles/-/19748

過酷な夜勤にはもう耐えられない――。
病院から姿を消した看護師の日常生活

「あまりに過酷な夜勤に耐えられなくなった」

 都内の有名民間病院で働く看護師の大木智子さん(仮名・29歳)は、夜勤の多さに心身のバランスを崩し、こう言い残して病院から姿を消した。

 高齢患者で溢れる病院で、看護師たちは恒常的に多くの夜勤をこなしている。企業戦士のなかにも「徹夜は当たり前」という人はいるだろうが、看護の現場における夜勤のきつさは、おそらくその比ではなかろう。過酷な「夜勤の無限ループ」のなかで、体を壊す看護師が続出しており、病院を辞める者も少なくない。それがさらなる人手不足と夜勤の増加を招くという悪循環を生み出している。

 その1人である智子さんは、勤務先の病院から去らざるを得なくなるまで、いったいどんな日常生活を送っていたのだろうか。

 智子さんの看護師としてのスタートは、内科と外科の患者が混在する病棟への配属だった。当初の月給は額面で17万円。業務に慣れない新人は最初の半年は夜勤に入ることができず、しばらく基本給のみの収入が続いた。

 病院の寮に住んでいたからこそ、やっていけた。勤務帯は3交代制で、日勤(8時30分〜17時30分)、準夜勤(16時30分〜1時)、深夜勤(0時〜翌8時30分)のシフトの組み合わせ。入職して半年後、夜勤に入るようになった。

 夜勤では、看護師たった2人で40人を看る。寝たきりの患者や外科の重症患者がベッドから起き上がって転倒すれば骨折してしまい、頭を強く打てば死亡事故につながりかねないため、気が抜けない。

 転倒予防のため、患者の足もとには「待った君」「転倒虫」などと呼ばれるセンサー付きのマットレスが敷かれ、患者の体重がかかると大きなブザーが鳴る。

 夜中はあちこちでブザーが鳴るため、その度に看護師は走って駆けつける。その間に、オムツ交換、点滴のチェックなど患者のケアをしていくため、仮眠はほとんどとれない。救急搬送で入院患者が来れば、1人はその準備や手続きに回り、夜勤は事実上1人ということもある。

 そうしたなかでナースコールが鳴り、患者に呼び止められても「ちょっと待ってね」と言ったきり、なかなかベッドサイドに行くことができない。

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http://diamond.jp/articles/-/19748?page=2

 智子さんは「眠れないと訴える患者に、本当なら足浴やマッサージをしてあげたいが、そのような余裕はない。止むなく医師に相談して睡眠薬を処方してもらう。看護ケアというより、業務をこなす毎日。これで看護と言えるのか」と疑問を感じているが、理想と現実は違った。夜勤中、万歩計をつけると1万5000〜2万歩という忙しさだ。

 内科や外科など、様々な専門知識を勉強しながら処置に当たった。担当の患者については、ぞれぞれの点滴の種類と打つ時間、既往歴、薬の種類など全て頭に入れておかなければならない。

 夜勤の日は朝8時30分に申し送りをして終わるはずが、ナースコールがひっきりなしに鳴るため、業務が終わらない。昼頃まで看護記録をつけたり、入退院する患者の書類をまとめたりと、残業は続く。

月12〜13回にも上る過酷な夜勤
実質24時間激務に朦朧とする意識

 夜勤は平均月10回。ひどい時には12〜13回に及んだ。そもそも夜勤は、看護師確保法(1992年施行)の指針によって、3交代で月8回以内という努力義務がうたわれているため、明らかに異常な回数だ。

 休みの日も、安心はできない。病院の隣に寮があり、夜間、救急搬送の受け入れなどで人手が足りなくなれば、いつでも呼び出される。休日にも勉強会や委員会などがあり、休みはほぼ1年中とれない。

 同僚の看護師が妊娠しても、出産ギリギリまで夜勤は免除されず、若手は次々に辞めるため、師長などを除けば看護師歴7〜8目で“古株”と呼ばれ、滅多にいない40代は“生き残り”と言われる。過労から心身の不調を訴える看護師が、各科で1人はいる状況だ。

 シフトは「日勤―深夜」や「準夜―日勤」が度々組まれ、智子さんは悲鳴を上げた。「日勤―深夜」では、始業1時間前の朝7時30分に出勤して患者の情報収集にあたり、残業が夜8〜9時まで。

 いったん寮に帰るものの、3時間後には深夜勤に入る。頭が朦朧としながら夜勤に入り、「24時間連続勤務」と言っても過言ではない。残業は師長に申告できず、ほぼサービス残業だ。

 1年ほど前から病棟が2交代になった。「日勤―深夜」「準夜―日勤」のような働き方があまりに過酷で、夜勤が16時30分から翌8時30分までの2交代を真理子さんや同僚は希望した。

次のページ>> 看護師のサーカディアンを狂わせる「逆循環」のリスク
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 しかし、実際に2交代になってみると、拘束時間は16時間だが、定時終業時刻に終わることがない。「ろくな休憩もとれず、ふらふらになりながら、やっとの思いで朝を迎え、帰るのは昼近く。毎回、徹夜だと思ってこなしている」と、かえって疲労困憊した。

 そのうち、すれ違いの生活で恋人とも別れてしまった。智子さんはバーンアウト(燃え尽き)し、「このままでは過労死してしまう」と、退職を決めたのである。

専門家も指摘する過剰夜勤のリスク
「逆循環」がサーカディアンを狂わせる

 智子さんのようなケースは、探せば枚挙に暇がない。夜間、本来は人が眠る時刻に過剰に働くことは、健康被害が大きく、最悪のケースでは死に至ることもある。実際に、人が過剰な夜勤を続けるリスクははどのくらい高いのか。専門家や労働組合などに聞くと、その影響は小さくないことがわかる。

 たとえば、看護師の夜勤問題について詳しい労働科学研究所の佐々木司・慢性疲労研究センター長は、こう解説する。

「もともと人間は『時間』で動くものではなく、『時刻』に左右される存在です。『日勤―深夜』の組み合わせは、時刻で生きる人間のサイクルに最も適さないシフト。『日勤―深夜』や『準夜―日勤』のようなシフトは概日リズム(サーカディアンリズム)を狂わせ、人間のリズムに対して逆循環となります。

 日勤終了後、普段は眠らないような夜間の早い時刻に寝ようと思っても、なかなか眠れない。ちょうど日勤と深夜の間の午後7時頃は、『睡眠禁止帯』が出るため、日勤が終わって疲れた看護師が、さあ寝ようと思っても十分に眠れず、疲労が回復しなません。そのまま深夜勤に入るため、『日勤―深夜』が辛い、つまり3交代が辛いと思ってしまうのです」

 つまり、『日勤―深夜―準夜』といった始業時刻が早まるシフトは逆循環。『日勤―準夜―深夜』というように始業時刻を遅くずらしていくようなシフトが正循環となり、身体を新しいリズムに乗りやすくするというのだ。たとえば普段、22時に眠る人が23時に眠ることは容易だが、21時や20時という普段より早い時刻に眠るのが難しいことと同じ原理だ。

次のページ>> 「準夜勤」と「深夜勤」を繰り返す「2交代」の悲惨
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 この「逆循環」がいかに危険か。海外の研究機関が老齢ラットで行なった「リズムのずれと生存率の実験」では、リズムを崩さないラットの8週間後の生存率が83%に対し、正循環で6時間ずらした場合は同68%、逆循環では同47%という差が出たという。つまり、逆循環ではラットの半数が死んでしまうことになる。あくまで動物実験だが、人の過労死問題を考える上では、無視できないデータではある。

 また、夜間の労働には乳がんや前立腺がんになるリスクがあるとも言われており、デンマークは09年3月に夜勤と乳がんの関係を認めて、元看護師に労災認定を行なっている。

 さらに、長時間夜勤は患者の安全も脅かす。前出の労働科学研究所の佐々木氏は、「真夜中から明け方にかけての夜勤中は、作業能力が酒気帯びと同じレベルまで落ち込むことになり、長時間の夜勤は危険です」と指摘する。長時間夜勤で仮眠もままならい状況では、「ヒヤリ・ハット」(重大な事故につながる一歩手前の状況)の医療ミスも増える。

「準夜勤」と「深夜勤」がひとくくり
16時間以上拘束の「2交代」が9割近くに

 このように、過剰な夜勤のリスクは大きいにもかかわらず、病院の現場では激務に拍車をかけるかのように2交代夜勤が広がっているのだ。労働組合などの統計を見ると、夜勤の実態は想像以上に深刻だ。

 日本医療労働組合連合会の『2011年度夜勤実態調査』によれば、2交代の比率は2005年に8.3%だったものが、11年には23.7%に増加した。2交代のうち、16時間以上の拘束となる夜勤は6割を超えている。組合活動によって長時間夜勤を食い止めているケースもあるため、小さ目の数字といえるが、それでも増えている。

 日本看護協会の『看護職員需給調査』でも、08年時点でも2交代制のみ(変則2交代を含む)が44.5%に上り、3交代か2交代かを選択できる病棟などを含めると、合計60.2%に上っている。

 また、同協会の『2010年病院看護職の夜勤・交代制勤務等実態調査』でも、2交代で16時間以上の拘束時間が87.7%となっており、いかに長時間労働の2交代が増えているかがわかる。ちなみに、10年の日本看護協会の調べでは、3交代の夜勤は2人に1人が月9回以上、4人に1人が月10回以上となり、2交代では5割以上が月5回以上という多さだ。

次のページ>> 残業代やタクシー代が浮く2交代は「おいしい仕組み」
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残業代やタクシー代が浮く2交代は
病院側にとって「おいしい仕組み」

 一方で経営側にとっては、準夜勤と深夜勤がひとくくりになる2交代のメリットは大きい。なぜなら、準夜勤で発生する残業代がなくなり、深夜のタクシー代などの交通費が浮く。人員配置も少なくて済み、日本医労連の調査では、3交代と2交代の病棟で比べると2交代は2.6人少ない配置となっている。

 そうしたことから、病院によっては年間の人件費が数千万円単位で削減されるため、看護師の健康リスクや患者の医療安全と引き換えにするように、2交代が広がっているのだ。

 労働科学研究所の佐々木氏は、「米国での看護師の生活時間調査では、16時間のシフトは全体の1.4%というほど珍しいもので、イレギュラーな勤務とされている。欧米では、12時間労働でも問題にされてきた。16時間もの夜勤を放置しているのは、国際的に見ても日本くらいであり、これは恥ずべきことだ」と強調する。

「健康や安全を守るには、夜勤は3交代の8時間で、最低でも2時間は仮眠しなければならない」(佐々木氏)という。

 また同氏は、「看護師には、3つの不規則性がある」と指摘する。それは、デスクワークとは違い、(1)患者の「生き死に」に常に直面する、(2)勤務時間が不規則、(3)一緒に働く相手が不規則――ということが、もともと看護師にとって大きな負担となっている。

 そのうえ、夜眠らずに徘徊する患者を管理するなど、労働負荷が高い。夜勤1回の疲労から回復するには2日かかるため、勤務間隔は48時間以上ないといけないという。

 夜勤は看護師だけの問題ではない。24時間何かが動いていれば、その背後には労働者がいる。システムエンジニア、スーパー、コンビニ、飲食、航空業界など、様々だ。今年4月に起こった、金沢と東京ディズニーランドを結ぶ高速バスでの居眠り運転事故を思えば、夜間労働のリスクは明らか。

 佐々木氏は「いわゆる夜勤でなくても、深夜までの残業や早朝出勤など、夜勤帯に重なるようにして働く人は大勢いるため、他人事ではない」と警鐘を鳴らす。こうした過酷な夜勤の影響で、毎年12万人以上の看護師が現場を去っているのだ。

 足もとでは、こうした状況を改善しようとする動きも出始めた。しかし、立場が違う関係者の思惑が入り混じり、目下のところ、その歩みは一進一退だ。

次のページ>> 「命のガイドライン」を巡る省庁や業界団体の動き
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 これまで筆者の取材に対し、厚生労働省医政局看護課は「看護師は法で守られている。これ以上の保護は必要ない」「看護師の労働実態については、新聞で知るくらい。こちらが教えて欲しいくらい」「労働問題は経営者の問題では」などと、正面から看護師の労働問題について取り組む姿勢を見せなかった。数年前には20代の看護師の過労死が労災認定され、それを受けた日本看護協会の調査では、過労死レベルの看護職が全国に2万人も存在しているというのに、だ。

事態の深刻化に腰を上げた厚労省
「命のガイドライン」を巡る動き

 しかし、事態を深刻に受け止めた厚労省は、ようやく重い腰を上げた。昨年6月に関係5局の医政局、労働基準局、職業安定局、雇用均等・児童家庭局、保健局長が都道府県に対し、連名で「看護師等の『雇用の質』の向上のための取り組みについて」という通知を出したのだ。労働環境を整備するため、現状や問題点を細かくまとめ、労働時間のあり方についてのコンサルタントによる支援を、行政として実施することなどを決めた。

 もともと国際労働機関(ILO)第149号条約の『看護職員の雇用、労働条件および生活状況に関する条約』では、看護職の働き方について、(1)1日の労働時間は8時間以内(超過勤務を含め12時間以内)、(2)週休は継続する36時間以上、(3)交代制は間に12時間以上継続した休息を入れる、などを規定している。

 かねて日本医療労働組合連合会は、ILO看護条約にならった方針を提唱してきており、自治労や連合もILO看護条約を参考にした労働条件の改善や、診療報酬上でも夜勤の月の上限を短縮すべき旨を指摘し、それぞれの立場でほぼ一致した対策を求めている。

 特に日本医労連が1989年から行なっている看護師闘争「ナースウエーブ」という運動では、それまで病院のなかでしか見られなかった白衣姿のナースが街頭に出て夜勤の辛さや激務を訴え、増員を求める署名活動などを継続的に行なっている。

 開始当時、ナースウエーブが注目を浴び、看護師問題とは縁遠いイメージがある『週刊プレイボーイ』が取り上げるなど、社会問題化。看護師の労働を守らなければならないという気運が高まり、92年の看護師確保法の施行にこぎつけ、指針で夜勤回数の制限が努力義務化した背景があり、現在は長時間夜勤に歯止めをかける活動が行なわれている。

 ここへきて、看護師の職能団体である日本看護協会も、『看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン』をまとめている最中で、この秋にも完成する予定。トップダウンの強い看護の世界において、各病院の看護部長などの管理職に影響力を持つと言われる日本看護協会が方針を出すことの意義は、決して小さくない。

次のページ>> 看護不足の現場では、どだい正常シフトは無理?
http://diamond.jp/articles/-/19748?page=7

 同ガイドラインでは、健康、安全、生活の3つのリスクなどについて説明。ガイドラインのなかで、夜勤の勤務編成について対策を提案している。現段階の具体案は、(1)勤務間隔を11時間以上空ける、(2)拘束時間は残業も含めて13時間以内とする、(3)3交代の夜勤は月8回以内を基本とする、(4)連続の夜勤は2回までとする、(5)連続勤務日数は5日以内とする、(6)正循環の交代周期にする、など11項目に及ぶ。

 ガイドラインの趣旨について、日本看護協会の小川忍・常任理事はこう説明する。

「私たちには、自分たちの健康を守って、安全な医療を提供する責務があります。病院は夜勤が不可欠。だからこそ、ガイドラインをつくることによって、夜勤と健康、安全、生活のリスクの関係について、正しく理解して欲しいと思います。ガイドラインにある全てをすぐに実現しようとするのではなく、職場の事情を見ながらできることから取り組んでいただきたい。

 このガイドラインは、人員を増やすことなく、勤務のシフトを組み替えることで対応できるはず。働きやすいシフトが組まれ、離職が1%でも減れば、単純計算でも約9000人の人材が現場に留まる計算となり、その効果は大きい」

看護不足の現場で正常シフトは無理?
ガイドラインに難色を示す病院経営者

 しかし、病院の経営者側からは反対の声が上がっている。日本精神科病院協会はガイドラインについて、次のような声明を出した。

(1)7割が2交代で最大拘束時間を13時間までとすると、傘下の病院の8割以上が達成不可能。

(2)「夜勤回数を月8回以内にすることは、4割の病院で達成できない。

(3)このガイドラインが実施されると、日精協1病院あたり平均23名の看護師を増員する必要があり、日精協全体では2万7800人も不足することになる。

 他の経営者団体も、「看護師がよほど余っていなければ実現不可能」と言う。とはいえ、労働基準法を大きく逸脱する無法地帯のような環境では、患者の安全は守れない。逆に病院側も、国や社会に対して看護師の増員を訴えるほうが理にかなうのではないだろうか。

 その点について、現役の看護師であり、東京都庁病院支部書記長を務める大利英昭氏は、こう意見を述べる。

「看護協会がガイドラインを作成していることは、職場改善へつながる第一歩。ただ、2交代の夜勤を12時間に制限するには、それまで16時間あった4時間分を誰かがカバーしないとならず、日勤をそれまでの8時間から12時間にする必要が出てしまいます。しかし、12時間の『ロング日勤』が行なわれると現場は疲弊する。ガイドラインに沿うなら、日勤と夜勤の間の『中勤』をつくるなど、各病棟で少なくとも3人の増員が必要となるでしょう」

次のページ>> 流れに逆行しかねない診療報酬規程の変更も
http://diamond.jp/articles/-/19748?page=8

 また同氏は、夜勤を伴う看護職が、正循環のシフトで勤務できるようになるには、欧州にならって週労働時間を短縮する必要があるとして、週32時間労働を提言している。自身が務める病院で、実態を調査しているところだ。

「現状では、少ない人員で看護の質を保つために相当な努力をしており、それがシャドー・ワークとなっています。まずは、看護師がどの程度、いわゆるサービス残業を行なっているか、正確な労働時間を把握することが必要」(大利氏)

流れに逆行する診療報酬規程の変更
夜勤専従者の負担はさらに重くなる?

 こうして議論が紛糾しながらも、環境改善への意識が高まりつつある一方、新たな火種も生まれている。今年度、病院が収入源とする診療報酬の規定について、夜勤制限に逆行するかのような変更点があったのだ。

 これまでは、診療報酬で最高点の「7対1」看護配置基準(患者7人に看護師1人)をとるには、一般病棟における要件として、「看護師の夜勤時間が月72時間以内」「夜勤専従者の所定内労働時間についてはその2倍以内」という規定があったが、それが削除されたのだ。

 看護師が不足するなか、子育て中の看護師の夜勤を免除するなど、離職防止を図ろうと思えば、その分の夜勤を誰かが代行せざるを得ない。そのため、夜勤専従者を置く病院が増えているが、この変更により、夜勤専従者への負担がより増える危険がある。

 自治労衛生医療評議会の鈴木崇文事務局長は、「診療報酬で夜勤専従者の労働時間の上限が月144時間から緩和されたことは、本来あるべき姿と逆行しており、大問題」と訴える。

「そもそも、『7対1』看護などに設けられた『夜勤制限72時間』というルール自体を規制すべきです。看護師確保法などに照らせば、8時間の夜勤が月8回となるのだから、診療報酬でも月64時間以内に制限しなければいけません」

 看護師の夜勤問題は、まさに問題が山積みである。後期高齢者が増加する2025年を迎えるにあたり、看護師が60代になっても働き続けられる労働環境の整備は不可欠だ。現在、定年延長で働く60代の看護師にも夜勤が強いられ、離職者が増えているため、せっかくのベテランの存在が失われつつある。どの世代にとっても、夜勤の問題は深刻だ。

 24時間365日、病院のなかで患者の命を安全に守るためには、交代制勤務の中で、看護師が残業することなく、次のシフトへとスムーズにバトンタッチできる体制が理想的だ。

 そうした「交替」制勤務を実現するためにも、きちんとしたルールづくりと現場の状況に応じた看護師数の充足は、不可欠である。紆余曲折はあるものの、その努力に向けた一歩が、ようやく踏み出されようとしている。


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