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忙しすぎる医者と不幸な患者たち:診察時間はものの数分で説明は専門用語だらけ 破綻した患者との関係を修復する時
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投稿者 あっしら 日時 2012 年 10 月 18 日 01:48:05: Mo7ApAlflbQ6s
 


「ニューズウイーク日本版10・10号」

P.45〜47
『忙しすぎる医者と不幸な患者たち

医師:診察時間はものの数分で説明は専門用語だらけ 破綻した患者との関係を修復する時が来た

シャノン・ブラウンリー(ニューアメリカ財団上級研究員)


アメリカン大学のフレッド・ホリデー教授が体調に異変を感じ始めたのは4年前のこと。まず体重が減り、血圧が上がった。次に肋骨が折れ、げっそりするほどひどい背中の痛みに悩まされるようになった。
 当時38歳だったホリデーは、新しい問題が起きるたびに同じ医者のところに行き、それぞれの症状について治療を受けた。
 医者はまず高血圧治療薬を処方した。肋骨が折れたときは、風邪による激しいせきのためと診断。そして背中の痛みには鎮痛剤として医療用麻薬を処方した。痛みがひどくなると、処方量を増やしただけだった。

 数カ月後、不安を感じたホリデーの妻レジーナが夫の症状をネットで調べてみた。すると症状が全部当てはまるのは「腎臓癌」。驚いた夫妻がいつもの医者のところへ行くと、医者はホリデーのカルテをチェックして、顔も上げずに聞いた。「ホリデーさん、気分が落ち込むことがありますか」
 それは何度も病院にやって来る人に対して、医者が決まってする質問だ。レジーナは信じられないという思いで笑いだした。
「そりや夫の気分も落ち込むでしょう」と、彼女は当時を振り返って言う。「医者がちゃんと診てくれないのだから」

 レジーナが強く求めたので、医者はMRI(磁気共鳴映像法)検査を指示。その結果、ホリデーには腎臓癌が確認された。3カ月後に彼は死んだ。
 同じような話が、最近いろいろなところから聞こえてくる。ホリデーのような悲劇的な結末を迎えるケースは少数派だが、医療の世界で何かがうまくいっていないのは確かなようだ。
 患者は医者のぞんざいな態度に怒り、アンケート調査や口コミサイトで不満をぶちまける。ものの数分で診察室を追い出された、医者が重大な異常を見落とした、診察中にコンピューターの画面しか見ていなかった、間違った薬を処方した、患者の話を全然問いていない……。

 ここ30年余り、医者に対する患者の満足度と、医者が質の高い医療を提供してくれているという満足感は急降下している。コンシューマー・リボーツ誌の最近の調査によると、70%の医者も昔と比べて患者との絆が失われたと感じている。


検査や投薬が多過ぎる

 昔はたいていの家庭に「かかりつけ医」がいた。病気になったときに診てくれるだけでなく、患者の子供たちがどこで生まれたか、患者が仕事や配偶者についてどう感じているかまで知っている良き相談相手でもあった。患者が痛みを我慢するタイプか、それとも仮病を使うタイプかもお見通しだ。

 今は違う。医者が患者の病歴どころか、名前を覚えていてくれたらラッキーだ。
 問題の一因は、80年代後半〜90年代にかけて起きた管理医療革命にある。当初は医療費の高騰に歯止めをかけ、医療の質を改善することが目的だったが、これが結果的に医者と患者の関係を壊してしまった。

 多くの保険会社は医療の質よりも医療費削減を優先し、医療行為に制限をかけた。このため医者は患者に、「あなたにはこの治療法が必要だと思いますが、保険会社がその支払い.を承認しないでしょう」と告げなければならなくなった。

 さらに保険会社は、医者のネットワークをつくり、被保険者にはそのネットワーク内の医者にかからせた(それ以外にかかると医療費は自己負担になる)。このため雇用主が保険会社を替えるたびに、新しい医者を探さなければならない人が増えた。「患者が保険プランとかかりつけ医をしょっちゅう変えるのは、医者と患者の信頼関係を築く上で最悪の問題だ」と、カリフォルニア大学デービス校内科のリチャード・クラビッツ副研究部長は言う。

 保険会社からの医療費削減圧力は、医者の収入にも影響を与えた。専門医なら検査や手術を増やして収入源の減少をカバーすることもできるが、プライマリーケア医(患者の健康上の問題を総合的に相談に乗る医者)は診察回数ベースで料金を取る。つまり彼らが収入を増やすには、患者数を増やすしかない。

 カリフォルニア大学サンフランシヌコ校医学大学院のトーマス・ボーデンハイマ一教授によれば、プライマリーケア医が質の高い仕事をするための理想的な患者数は1800人以下。ところが現在、アメリカの平均的プライマリーケア医の患者数は2300人にも上る。

 その一方で、チェックしなければならない疾患は増えるばかり。糖尿病や心臓病などの一般的な疾患の治療法も複雑になっている。「患者1人につき15分しか時間を取れない上に、往診や入院患者の診察もある」と、ボーデンハイマーは言う。「私は30年以上フルタイムでプライマリーケア医をやったが、死にそうだったよ」

 これでは最適な医療を提供できるはずがない。カナダとアメリカのある合同調査によると、患者が自分の症状を説明し始めると、平均23秒で医者に遮られる。25%の患者については、医者はどこが悪いのか聞くことさえしない。
 34人の医者による計300回以上の診察を録音した別の調査によると、医者が患者に病状や治療法を説明するために費やした時問は平均1分20秒(医者たち自身は8分以上かけていると思っていた)。しかも平均的な患者にとって、医者が提供する情報のほとんどは専門的過ぎて理解できていなかった。
 適切ではない検査や投薬が多過ぎる傾向もある。CTスキャンの年間の実施件数は00〜05年に2倍近く増え、7500万件を超えている。専門家によるとその多くは習慣的に行われているか、医療訴訟に備えたものだ。
 抗菅薬の処方も同じ5年間に急増しており、精神疾患がなくても処方される場合も少なくない。高齢の患者を中心に薬の過剰投与も日常化している。


患者の話を聞くスキル

 医者が時問に追われ、医療が複雑になるにつれて、患者との関係が崩れている。しかし多くの調査から、医者とのコミュニケーションが患者の満足感や症状、総体的な健康に影響を与えることが明らかになつている。
 例えば、カナダの研究者はかかりつけ医39人の診察を延べ300件以上録画し、患者に医者との関係に基づいて診察を評価させ、健康状態を追跡調査した。すると、医者が自分の感情や不安に留意して真剣に話を開いてくれると感じた患者は、精神的に安定するだけでなく、病気の症状も客観的に少なかった。
 患者との問に適切な「治療関係」が必要なことは、賢明な医者は昔から知っていた。一方で医者の側も、薬の服用を勝手に中断したり、食事や生活習慣の助言に従わなかったりする患者に不満を抱くことが多い。しかし本当の問題は両者の関係にあるのかもしれない。

 形成外科医のジェームズ・リッカートは5年前に非ホジキンリンパ腫を再発した。骨髄移植手術は2種類あるが、どちらも深刻な副作用を伴う。腫瘍医は片方の手術を熱心に勧めたが、その理由を質問したリッカートは憤慨して診察室を出た。「彼には説明するつもりがなく、そもそも説明できなかった。患者の私は医者だというのに」
 勧められた手術を受けることにはしたが、リッカートは信頼できる医者を探し始めた。昨春、服用中の薬が原因で肺炎を起こして2回入院した後、彼は新しい医者にメールで相談してみた。
「彼女はすぐに電話をかけてきて、薬を飲み続けるべき理由を説明してくれた」。リッカートは投薬計画を守り、最近は薬の量を減らせるようになった。

 こうした医者と患者の関係は、患者が本当は病気ではなくても重要になる。ラウン循環器学研究財団のビカス・サイニ理事長によれば、厄介なのは「健康だが病気に過敏な人」の不安をなだめることだ。

 特に、検査や薬、処置の数の多さを、医者の真剣さの証しと感じる人が増えている。医者が薬や検査は必要セいと言えば、怠慢で冷淡だと思われかねない。

「患者が『胸がドキドキする』と違和感を訴えても、たいてい最初の数分で深刻な問題はないと分かる」と、サイニは言う。そんな場合も彼は1時間近くかけて患者の話を開き診察をしてから、心配は要らないと告げる。
「自分の話をあまり開いてくれないと思ったら、その医者が適切な投薬や検査をしてくれると信頼できるはずがない」
 それでも患者は基本的に医者を替えようとしないし、世論調査をすれば医者は最も信頼できる職業の上位だ。幸いなことに、政策決定者や医師も医者と患者の関係の重要性を理解して、改善策を考えている。

 医学部の入学選考は基本的に学力試験を重視してきた。だがたとえ試験の点数が高くても、患者の話を開く社会的能力が高いとは限らないと、カリフォルニア大学デービス校医学部のマイケル・ウィルクス教授は言う。
「試験の成兢が良い学生が、必ずしも良い医者になるわけではない」
 ウィルクスは20年前から医学生に患者とのコミュニケーションの取り方を教えている。ほかの医学部でも、入学選考で対人能力を見るような面接を行うところもある。


診察時間の質を高める

 臨床の現場でも取り組みが進んでいる。10年に米議会で可決された医療保険改革法案の目玉の1つは、かかりつけ医が司令塔となつて、患者がさまざまな場所で受ける医療全般を監督する仕組みをつくることだ。
 かかりつけ医が臨床専門家や看護師、薬剤師、医療コーディネーターとチームを組めば、医者自身がより多くの時間を患者にかけられる。「医者がやることの50%は、医者ほどの専門的な訓練を受けていない人にもできる」と、カリフォルニア大学のボーデンハイマーは言う。

 これは「メディカルホーム」と呼ばれる概念で、かかりつけ医の負担を増やさずに包括的な初期医療を提供しようというものだ。ほかにも、病院に来る必要のない患者と電話やメールでやりとりして医者の時間を節約すれば、患者と向き合う際に質の高い時間を提供できる。
 治療に関する意思決定を共有することも、医者と患者の関係改善につながる。例えば初期の乳癌では、腫瘍を摘出して放射線療法を行うか、乳房全体を切除するかという選択肢がある。
 患者がそれぞれの選択肢の長所と短所を理解するためには、パンフレットやビデオも役に立つだろう。しかし最終的な決断には、医者や臨床専門家との十分なコミュニケーションが必要になる場合も多い。
 外科医がロボットを使って手術をし、医療がますます専門的になる時代にあって、時間は医者が患者に掟供できる貴重な贈り物となっている。
 入院中の病室に顔を出し、外来診察から1週間以内に数回電話をかけるだけでも患者の気持ちに大きな変化が生じると、カリフォルニア大学のタラビッツは言う。ささやかな振る舞いで医者と患者の関係が円滑になれば、「永遠の絆ができる」。』


 

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コメント
 
01. 2012年10月25日 11:27:41 : mAKWjxKjsw
これはアメリカの話のようだが
日本でも「医者が患者の病歴どころか、名前を覚えていてくれたらラッキー」
というのは同じだと思う
「それはこのあいだ言いました」と思うことは何度もあった。
医者も人間、と思わないといけないんじゃないかな
そして、医者は職業だ
相手は、仕事としてやっている
ということを、忘れたらいけない。
昔医学生に聞いた話
患者が死亡したら、医者は裏から逃げる、怒った遺族をなだめるのは
別の医者の役目、だそうです
誠意とか思いやりなんか期待しちゃいけない。

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