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「延命」に支払うつら過ぎる代償:死を目前にした検査、巨額の請求書
http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/593.html
投稿者 あっしら 日時 2012 年 10 月 18 日 01:55:42: Mo7ApAlflbQ6s
 


「ニューズウイーク日本版10・10号」


P.48〜51
『「延命」に支払うつら過ぎる代償

終末医療:死を目前にした検査、巨額の請求書 末期癌の夫を看取った経験を通して人生の幕引きドラマがどうあるべきか考える

アマンダ・ベネット(ジャーナリスト、作家)


 病院の診察室で、床に倒れた夫テレンス・フォーリーは立ち上がれなかった。07年11月8日のことだ。腎臓癌との闘病生活は7年続いていた。
 既に癌細胞は体中に転移していた。せき込んだ夫は体力がないので座っていられない。床で身をよじって、楽な姿勢になろうとする。私は彼の上着を丸めて頭の下に置き、自分のコートでその体を覆った。

 病状は深刻だったが、私たちは諦めていなかった。主治医のキース・プラハティは、ある実験的な薬に望みを託していた。そして転移した腫瘍をやっつけるために、しかるべき専門医を紹介してくれた。

 ところがその医師は治療を諦め、テレンスをペンシルベニア大学病院の進行癌治療病棟に人院させた。その時点で医療チームの顔触れが一新し、人生の幕引きへのドラマが始まった。アメリカ各地で毎日のように繰り広げられているドラマが。

 テレンスは4日間で8回も採血された。採尿は2回以上。胸部のCTスキャンと脳のMRI検査もした。理学療法士が顔を出した日もある。闘病生活は体力を消耗するのでカロリー摂取が大切だと説く栄養士も。
 テレンスと関わったのは、医師9人を含む少なくとも29人の専門家。みんな初顔だったし、大半の人とは一度きりしか顔を合わせなかった。

 主治医と違って、彼らの所見は楽観的ではなく、テレンスの死は近いと見ていた。それでも夫の体に針を刺し、スキャンし、検査していた。そのことに気付いたのは、数年後に医療記録を見たときだ。退院記録には「緩和ケア」しかできなくて残念だったと書いてあった。退院から33日後の12月14日、夫は別な入院先でこの世を去った。

 あれから5年近くたった今私には分かる。なぜ私たちは、あれほどまでに生きようとしたのか。
 私たちは、冒険好きで勉強好きの夫にはもっと生きる時間が必要だと信じていた。私たちはその20年前に中国で出会い、結婚し、息子を儲け、養女を迎えていた。
 夫は私と旅するたびに職業を変えていた。ラジオのアナウンサー、歴史の先生、不動産鑑定人、高級食品の販売業者。デキシーランド・ジャズとフィルム・ノワールを愛していた。6カ国語を操り、7つ日も勉強中だった。60代で中国史の博士号を取得していた。子供はまだ成人していない。いい年だけど、まだまだ生きなくてはと私たちは思っていた。


第三者がいない医療現場

 でも病院の人たちは? どうせ死ぬと思っていたのに、たった4日間の「緩和ケア」に、なぜ3万3382ドル分もの医療措置を施したのか。
 ある調査によれば、65歳以上の人の延命に掛かる費用は、70年代には1年当たり4万6800ドルだったが、90年代には14万5000ドルと3倍以上に増えていた。08年のスタンフォード大学とウオートン彼の共同研究によると、人工透析患者の命を1年延ばす平均コストは約12万9000ドルだ。

 もちろん、そうした支出が無駄ではない場合もある。主治医のフラハティも私自身も、テレンスは治療のおかげで17カ月問生き延び、20回目の結婚記念日を迎え、息子を大学に入学させ、娘と一緒にスペインを旅行できたと思っている。

 しかし、一般論としてはどうか。終末医療は、まるで癌細胞のように「自己増殖」を繰り返しているのではないか。

 テレンスの死から2年、治療費を計算してみようと思い立った。何カ月もあちこちに問い合わせ、医師たちから話を開き、私たちや保険会社の支払い内容を詳しく調べた。
 やっているうちに、医療費の3分の1が事務処理費なのも納得できた。とにかく仕組みが複雑過ぎる。だからコストの中身が見えにくい。

 もっと重要なのは、終末医療には真の意味の第三者がいないということだ。患者側の生きたい思いと、病院側の儲けたい欲望が、終末医療ではひそかに絡み合う。そこへ医療現場の調整不足や監視制度の不備が加わって過剰治療になり、法外な費用が発生する。
 テレンスは何回もCTスキャンを受けた。私は7年問で20回ちょっとかと思っていたが、実際は76回だった。CTスキャンには正当な理由があり、それなりに役立ったのだろう。それでも全部が必要な検査ではなかったと思う。

 ジャーナリストのシャノン・ブラウンリーは著書『過剰治療』で、スキャンを繰り返しても診断の精度は上がらないと主張している。
 30年近く終末医療コストを研究しているダートマス大学ガイセル医科大学院のエリオット・フィッシャー教授も、2倍の治療費を掛ける病院が他の病院よりも成果を挙げているわけではなく、かえって悪い結果をもたらすこともあると言う。

 新著『可能な限り最高のケア』の著者で競和ケア専門の医師であるアイラ・バイオックは、過剰治療は医学の進歩の不幸な副産物だと言う。

「私たちは優れた科学的知識、診断力、治療法を手に入れた」とバイオックは言う。だから入院した途端に、ある巨大なシステムに組み込まれてしまう。それは「人を大事にし、人の健康を守るのではなく、ただ個々の疾患に対処するだけ」のシステムだ。そこでは「流れ作業で次から次と専門分野ごとに診断が下されるだけで、病気の全体像は見えなくなる」。


保険によって費用が変化

 医療の専門化は両刃の剣だといわれる。バイオックによれば、それは確かに素晴らしい知識や治療法を生み出し、多くの命を救うことにつながる。しかし一方で、治寮の打ち切りや最終的な死の受け入れを「失敗」と見なす考え方につながりかねない(いくら手を尽くして延命させても、人を永遠に生かすことなど不可能なのだが)。

 私たちの場合もそうだった。テレンスの病気が悪化するたびに、私たちはその局面に必要な医師を探した。もちろん癌に詳しい主治医はいた。でも喉に転移した腫蕩は?
 テレンスが床に倒れたのは、その専門医を待っていたときだ。腸に副作用が出れば消化器の専門医。皮膚に問題がでれば、壌和ケアの専門家か皮膚科医を訪ねた。
 専門医の診察を受けようとするたびに長いこと待たされた。入院しても状況は変わらず、変わったのは担当する医師の顔触れだけ。みんな症状の出ている部位しか気にせず、テレンスの体を、病状を、トータルに見ようとしなかった。

 テレンスの死から3年後、あるホスピス付きの牧師が、ホスピス職員のブラックジョークを教えてくれた。遺体を運び出す役目の磯貝が遺体安置所に行ったら、遺体は消えていて、「ただいま]線検査中」というメモがあった……。今の医療制度の中で、いかに検査や治療が自己目的化し、痛気の全体像や患者の尊厳を無視しているかを物語るジョークだ。

 過剰治療・過剰検査の原因は制度的なものかもしれないし、医者たちの善意ゆえかもしれない。だが、金の問題もある。

 病院や医師は、何らかの診療行為をすることで報酬を得る。病状が重い患者や高齢者を一般の長期療養施設から病院に移したがるのはそのためだ。施設への訪問診療は月1回だが、病院なら毎日、何らかの措置をできる(稼げる)。
 こうした問題に取り組む医療施設もあるが、うまくいかない。無駄な医療行為を減らせばコストは減るが、収入も減ってしまうからだ。
 入院中に個々の治療費を計算することはほぼ不可能だ。多くの場合、個々の医療機関が個々の診療行為について請求書を発行するので、1つの治療の請求書が何十枚にもなることがある。
 しかも費用は、保険会社と医師と病院の合意で決まる。無保険の患者は保険に入っている患者よりはるかに支払額が多くなりがちだ。保険もすべての治療をカバーするわけではないので、治療が長引くと貯金が底を突くこともある。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ彼の助教で救急医のレネ・シヤー医師が言う。「毎日のように『先生、これにいくら掛かる?』と患者に開かれるが、私には答えられない」。カリフォルニア州における単純な虫垂炎手術の費用を調べたところ、下は1500ドルから上は18万3000ドルまであった。中間値は3万3000ドルで、値段の違いに医学的理由はなかった。

 患者の中には、費用負担の予測がつかないために重要な治療を控える人もいる。「本当に困る。仕観みが複雑過ぎるからいけない」と、彼女は言う。


過剰治兼は心も傷つける

 私たちの場合、何日もかけて請求書を分析するまで、同じ病院で受けた同じCTスキャンでも、保険会社がいくら負担するかで776ドルだったり2586ドルだったりしたことに気付かなかった。
 重複と混乱には金銭的なコストだけではなく、感情的な犠牲も伴う。末期医療、特に痴呆の末期患者のケースを研究するブラウン大学のジョーン・テノによれば、患者が集中治療を受ければ受けるほど、患者の家族の治療に対する満足度は低下する傾向があるという。

 米国医師会報に載った最近の調査によれば、遺族のほぼ3分の2は延命治療の停止について医師と一度も話し合ったことがないという。そういう話し合いをしていない患者ほど積極的な治療を選びがちで、最後の数週間は悲惨な状態に陥りやすい。
 私たちにとって、さらなる感情的な損失は最後の最後にやって来た。私たちには、さよならを言う機会もなかった。ある若い研修医が延命治療停止の選択肢について話してくれたのはテレンスの死の数日前、彼が昏睡状態で集中治療室に入ってからだった。

 もっといい方法があったはずだ。医師や病院、保険会社のビジネスモデルではなく、患者のニーズを第1に考えるべきだ。聡明で中立的なカウンセラーがいれば、治療をすべきか否かに関する決定が楽になると考える人は増えている。

 患者一人一人の状況を考慮し、治療の選択肢だけでなく個人的な選択肢もきちんと示す。それが「可能な限り最高の治療」だとバイアックは言う。
 私たちの最後の選択を助けてくれる終末期アドバイザーがホスピスにいたら、テレンスと私はもっと早い時期にホスピスを選んでいただろうか。私には分からない。でも彼が受けていた治療のコストを当時から知っていれば、それだけでも彼の生きざまにふさわしい選択ができたのではないかと思う。

 7年間の治療費は総額61万8616ドルだった。それだけの金の使い道を自分で決める機会があつたら、彼は途上国の子供たちの予防接種に使ってくれと言ったに違いない。テレンスはそういう人だった。』

 

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コメント
 
01. 2012年10月19日 17:49:50 : veOkUshvFA
アメリカも日本と同じなんですね。抗がん剤は効きません。手術もリンパ球は取ってはいけない。医者は皆分かっているのに利益のために過剰手術、過剰診療を行います。私の友人も「横行結腸」のがんで最初から人口肛門になると教授が言ったので、親しい医者の名前を出したら「人口肛門」にはされませんでした。点数稼ぎで平気で患者に負担を掛けます。日本の医者は鬼畜です。

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